誤嚥性肺炎防止。介護を変える「やわらか食」

森本毅郎 スタンバイ!

9月20日(月)は、敬老の日。高齢の皆さんには元気にお過ごしいただきたいですが、その元気の基本、高齢者の「食」で、新しい動きがありました。「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)「現場にアタック」で取材報告しました。

実はいま、コロナ禍で、飲み込みやすく調理された「やわらかい食事」のニーズが、高まっているようです。まずは、「やわらか食」の開発に力を入れている京都の外科医、愛成会山科病院の荒金英樹さんにお聞きしました。

★やわらかい京料理を開発した医師

「京都は伝統の食産業の人がたくさんいるので、食べるのが困難になった方々に、最後まで喜んで口にしてもらえる物を作る活動をしています。見た目は、綺麗な「京料理の会席料理」。ただ食感は、口の中でフワッと消えていく感じ。例えばお魚も、通常ならペーストにするだけの所が多いですが、それをもう一回魚の形に成形して、焼き目を入れて、もう一回固め直してゼリー状にします。今、巣ごもり生活で、誤嚥性肺炎、飲み込む力が落ちてる高齢者が増えています。ですからこういう需要は、かなりあると思っています。」

愛成会山科病院・外科/京介食推進協議会・会長 荒金英樹さん

外出が減って足腰が弱るのと同じように、喋る機会が減って喉の筋肉が衰える人が増えているようです。

「誤嚥性肺炎」は、食べ物がうまく飲み込めずに気管に入ってしまい(誤嚥)、その細菌が原因で肺炎になる病気で、「ごっくん」とする、喉の筋肉が衰えていることが原因の一つとされています。

そういう人たちに飲み込みやすく調理されたのが、細かくすり潰した「嚥下食」や「介護食」ですが、見た目も味も「ダメ」という方も多いようです。

そこで、荒金さんは、地元京都のプロの料理人とタッグを組んで、様々な「やわらか食」の開発を続けてきました。

実際のお料理がこちら。


▲京都の料亭「せんしょう」と共同開発した、『やわらか京料理の個食3種セット』(税込 3,240 円)。上から時計回りで、「京の取り肴」、「京の焼き物」、「京の炊合わせ」。

▲「京の焼き物」の中身はこちら(秋鮭胡桃焼/ぶり照焼/あんず・枝豆しそまぶし)。一度ペーストにしたものを、再度成形し焦げ目をつけています。どれも、噛まずに舌先でつぶして飲み込める!さすが料亭の味、風味が良く、美味いです。

京都の料亭「せんしょう」の店舗でも食べられますが、宅配希望の方は、せんしょうにお問い合わせください。

 

★肉や野菜がトロトロになる!「デリソフター」

一方で、こうした専用の介護食を用意しなくても、形そのままの「やわらか食」が、家庭で作れる家電が昨年登場し、注目を集めています。その名も「デリソフター」。開発者のお一人で、ベンチャー企業「ギフモ」の小川恵さんに伺いました。

「「デリソフター」は、家庭で作った料理や、市販の惣菜や、冷凍食品を、見た目そのままで柔らかくする、調理機器です。ステーキ、野菜、果物、おやつも柔らかくなります。本体は、電気圧力鍋で、日本で唯一の「2気圧」が出せる機械。デリソフターの沸点は120度。「2気圧・120度」の庫内で、電子レンジでチンするような形で、柔らかくします。」

(株式会社ギフモ 小川恵さん)

▲まさに見た目はそのまま!(デリソフター公式サイト https://gifmo.co.jp/delisofter から)

▲「デリソフター」。見た目は、少し大きめの炊飯器です。ここに、手料理や市販のお総菜を入れて、少量の水を加えてボタンを押すと、高い圧力と蒸気の力で、30分前後でやわらかくなります。

実際に、唐揚げと、ブロッコリーを柔らかくしてみました。

▲まず、お肉の繊維を断ち切るため、加熱前に、72本の刃がついた「デリカッター」で切れ目を入れておきます(ブロッコリーはそのままでOK)

▲水200ccと、具材を、鍋に並べて・・・

▲30分加熱後がこちら。見た目はほとんど変わっていません。

▲唐揚げは、フォークやお箸でほぐせる程のやわらかさに。繊維がやわやわです。

▲ブロッコリーは、口に入れた瞬間、ふわっと溶ける程のやわらかさに。茎まで舌ざわり滑らかで、ペーストのようです。

「デリソフター」のお値段は、4万7300円(税込)で、ギフモのホームページで購入できます。

★お父さんの介護がきっかけ

実は小川さんは、元々はパナソニックの社員。同じパナソニックの先輩である水野時枝さんと、このデリソフターを開発し、ギフモという会社を起業したそうです。開発のきっかけは、水野先輩の116歳のおばあさんが、「家族で一緒に食べることの大切さ」を訴えていたことを聞き、「いっちょやったるか!」と、2人でアクションを起こしました。

また、小川さんご自身にも、こんな体験があったそうです。

「私の父親は突然「誤嚥性肺炎」になって、普通のご飯は食べれませんと言われた。家で作ったご飯なら、ミキサーをかけて、水分を入れてペーストにして、とろみもつける。手間暇かけて、お金をかけて父に提供しても「なんやねん、この餌みたいな食事は」と言われてた。最後まで残された楽しみが食べることなのに、「餌みたいなもの、それやったら死んだ方がマシや」って言われてた。文句ばっかり、しんどくなってくる。実際は、まだ飲み込む力があったので、もしデリソフターが間に合えば、お肉は食べられていたかな。」

(株式会社ギフモ 小川恵さん)

介護する側も辛い…。このような体験をされている方は全国に沢山いるようで、冒頭の荒金さんも、同じようなことを目撃したそうです。

京都の料亭の、やわらか食の体験会を開いたとき、高齢の親御さんが美味しそうに食べるのを見て、介護している側が涙を流していたそうです。親のために手間暇かけて作るけど、「こんなもの食べられるか」と言われてしまう。自分だけ美味しいものを食べるわけにもいかないので、その人は「食事が地獄でした」と話していたそうです。

京都の料亭の方は、最初は「やわらか食なんて作るつもりはない」と言っていましたが、その涙をみて、協力しようと動いてくれました。

高齢化社会では、飲み込みの問題も増えていきます。職人の腕で、あるいは技術で、やわらか食の問題の改善が進んで欲しいと思いました。
 

取材:TBSラジオキャスター 田中ひとみ

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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