一橋大学アウティング事件から6年。学生サークルがドキュメンタリー映像を作成

人権TODAY

今回のテーマは「一橋大学アウティング事件から6年。学生サークルがドキュメンタリー映像を作成」

支援活動に対し浴びせられた誹謗中傷

今から6年前、2015年8月24日に起きたいわゆる「一橋大学アウティング事件」。当時大学に在籍していたゲイの男子学生Aが、同性の友人Zに恋愛感情を抱いていると伝えたところ、Zは本人達も参加するLINEグループでAがゲイであることを暴露、家族にもその事実を隠していたAは、第三者に暴露されたことを苦に自殺をしてしまったというものです。こういった本人の意思に反して性的志向や性自認などを第三者から暴露されることを示す「アウティング」という言葉は、この事件を機に広まりました。

ドキュメンタリー「UPGRADE HITOTSUBASHI Learning from the Outing Case」より

今回は、事件後に一橋大学の学生達が立ち上げたサークル「一橋大学LGBTQ+ Bridge Network」の活動について取り上げます。今回お話を伺った代表の本田恒平さん、ご自身はLGBTQ+の当事者ではないのですが、この活動に携わるきっかけは何だったのか、聞きました。

「実はその亡くなった学生が、自分の友人の女性の兄だったというのを知ってから、一回自分事になったというか。そこが自分が関わるようになった理由ではあったんですけど、活動している中でYahoo!ニュースとかで活動が取り上げられたりして、そこでこう、誹謗中傷を受けることがあったんですね。『黙ってろゲイ野郎』みたいなことを言われたりとかすることがあって。そういう暴言吐くというか暴力的な発言するっていうのはやっぱり容認できる社会じゃないなという風に思って」(「一橋大学LGBTQ+ Bridge Network」代表・本田恒平さん)

ドキュメンタリー「UPGRADE HITOTSUBASHI Learning from the Outing Case」より

もしかしたら亡くなったAも受けていたかもしれないこのような誹謗中傷を目の当たりにしたことで、社会問題としてこのアウティング事件をとらえるようになったといいます。

ジェンダー・セクシュアリティを学ぶ学生の増加

そして、事件から6年。学内でこんな変化があったと本田さんは話しています。

「やっぱりこう、認識っていうのが大きく変わった6年間。それと呼応するように、ジェンダー・セクシュアリティを研究テーマにしたいとか、学内でジェンダー・セクシュアリティ分野で活動したいという学生が非常に増えて、我々がやっている寄付講義を開催しても、一橋で登録者500人とか。それは非常に興味関心の高さを表している。」(「一橋大学LGBTQ+ Bridge Network」代表・本田恒平さん)

LGBTQ+の当事者などを招き、理解を深める講義が事件後に創設され、500人ほどが登録。通常は多い授業でも100人~150人だそうで関心の高さがうかがえます。他にも、本田さん達のサークルではLGBTQ+に関する資料が閲覧できたり、相談窓口の情報を知ることができるリソースセンターを学内に開設するなど、様々な活動を行ってきました。 

課題は「差別する自由」を唱える人が浮き彫りになった点

一方で、事件から6年経って、課題も感じているといいます。

「ジェンダー・セクシュアリティに関する認識、アウティング駄目だよねみたいのが学内で認識が高まっていけばいくほど、自分がLGBTQの人を受け入れられないことも認識してほしいとか、差別する自由みたいな、唱える人もいます。そういう人たちの声がやっぱりくっきりと浮かび上がってきているっていうのが、非常にこう溝ができているというか。じゃあそういう人たちにどういうアプローチするのかっていうふうなことが課題になっている。(「一橋大学LGBTQ+ Bridge Network」代表・本田恒平さん)

ドキュメンタリー「UPGRADE HITOTSUBASHI Learning from the Outing Case」より

この事件を巡り、Aの遺族側がZや大学を相手取って起こした訴訟の高裁判決でも、アウティングは人格権やプライバシー権を著しく侵害し、不法行為であるということを認めています。当初、Zの側は「突然恋愛感情を告白されたことがショックで、アウティングは正当な行為だった」と主張しましたが、その根底には同性愛差別があり、精神的な攻撃手段としてアウティングを行った、つまりいじめの構図と同じだということを遺族側は訴えました。同性愛差別の正当性を主張する人に対しては、本田さんは、対話を通じて理解を促進させていくことが必要だと考えています。

事件の概要をまとめたドキュメンタリー映像を公開

こうした中、本田さん達はAが亡くなってちょうど6年が経った先日8月24日に、Youtube上で裁判の経緯などをまとめた自主製作のドキュメンタリー動画を公開しました。裁判は去年12月に結審。Zとは和解が成立したものの、適切な対応を取らなかったとする大学側に対する訴えは控訴審で請求棄却となりました。ドキュメンタリーの最後は、Aの妹さんが語る場面で締めくくられます。

 

ドキュメンタリー「UPGRADE HITOTSUBASHI Learning from the Outing Case」より

「兄が他界してから5年で社会は変わりました。問題意識を持つ人の声が聞こえてくるようになりました。ですが、未だに性的マイノリティが差別・偏見の対象であることは肌身で感じています。知識、理解不足を理由に失うには尊すぎる命です。安心して学べる場、安心して働ける場、安心して生きられる社会。兄が生きたかもしれない社会が私は見てみたいです」

 ドキュメンタリー「UPGRADE HITOTSUBASHI Learning from the Outing Case」は、一橋大学LGBTQ+ Bridge NetworkのYoutubeチャンネルで公開されています。

(担当:中村友美)

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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