熱海市の土石流被災地区にある、障害者が働く作業所の厳しい現状

人権TODAY
熱海第一ビル地下一階にある「心象めぐみ会共同作業所」の売店

※下記に書いたように、「心象めぐみ会共同作業所」では2021年8月30日から、施設存続のためのクラウドファンディングを始めました。「熱海土石流災害で運営が困難に!障がい者就労支援施設の存続に力を貸してください!

7月3日(1カ月以上前)に起きた熱海市伊豆山地区の土石流災害ですが、現場では行方不明者の捜索、がれきの撤去作業が続いています。自宅が被害にあったり、生活のインフラの問題や二次災害の恐れで自宅に帰れない住民もいて、200名近くが避難生活を送っています。 

崎山記者が取材したのは、伊豆山地区にある、障害者の就労支援施設「心象めぐみ会共同作業所」。歩いて1分ほどの所まで土石流が迫りましたが、建物は無事。大雨で作業所は休みにしていたので、様々な障害がある17人の利用者と職員は無事でした。

ただ、作業所付近は立ち入りが規制され、建物が捜索の拠点となったため、利用者は「当面、自宅待機」となりました。静岡県に支援の要望書を出したりと、走りまわっていたところ、それまでの縁がつながり、10日後、7月13日から、熱海駅前の「熱海第一ビル」の中の会議室を無償で、使えることになったのです。施設長の伊勢井勝さんは「はじめはどうなるのかなと思ったんですけど、ほっとしました。これからのことを考えるとすごい不安でいっぱいでしたんですけど、こういう所で作業ができるということは、利用者はなるべく早く来たかったような感じでしたので、非常に良かったなと思っています」と話します。

 まずは、一人暮らしで寂しい、家族が働きに出ると一人になる、また、生活リズムが乱れやすいなど、早めの支援が必要な利用者6人が通い始め、7月26日から、フルメンバーになりました。私が仮移転先を訪れた8月3日、ある利用者の男性は「職員の方から電話を毎日のようにいただいていたんですよね。それで心の支えになって。再開できて、良かったと思っています。売店にも出てますよ。外の、一般の方と触れ合ったりとかそういうことができますんで、気分転換にはなります」と話します。

作業所では元々、熱海第一ビルの地下一階の通路で、作業所で作った、古い傘の生地を再利用したエコバッグとか、伊豆山地区の作業所周辺で拾ったどんぐりの根付などを週一回、売っていました。同じ地下一階のお店の経営者とかが動いたことが、ビルの会議室を使えるきっかけにもなったんですが、今は平日の9時半~14時半、店を開き、利用者が職員と一緒に店番をしています。作業所で作ったもののほか、三島市にある他の作業所が農場で作っている野菜を週二日ほど売るようになりました。

  一方、仮移転したことで、減った仕事もあります。話を聞いた男性は印刷した冊子の校正や製本の作業をしていますが、会議室は作業所より狭く、輪転機など印刷に関わる全ての機械は移せないので、印刷の仕事の一部はできません。同じ印刷の仕事をしている、別の利用者の女性は「いつもここの作業所に来てるのが日常だったので、自宅待機ということで、特にすることもなく、早く始まって欲しいと思ってました。今までがパソコンを使ってましたから、その機械をここに運ぶわけにはいかないので、それを使った仕事ができなくなってしまって、不便さと言いますか、その点は、手書きで書いたりとかしてます」と話します。

 新しい仕事、野菜の販売などは、お客さんから「野菜は今度いつ入るの?」と聴かれるようになりました。ただ、全体としては、利用者の仕事は減っています。土石流のがれき片付けもまだまだ終わらない状況ですし、二次災害の恐れもあり、伊豆山地区でやっていた、いろいろな場所の清掃の仕事は一部しか再開していません。「心象めぐみ会共同作業所」のサービス管理責任者、山根さよ子さんは「戻っていいものなのかどうなのか、それもあるし、お休みの分の保証がないんですね、国からの。一週間まるまる休んで、開所はしたけれど、狭さとか、何をしたらとか、まだ荷物も運び入れてなかった状態なので、限定的に6名先に入れようって言って、そこからなので、そのぶんのお金が入ってこないと、経営的にかなり厳しいです」と話します。

 就労支援施設は、どれだけの利用者がどれだけ働いたかに応じて、国から助成があることで運営されています。仕事が減ると、利用者の賃金が減り、働く職員の給与などの待遇、作業所全体の存続にも関わってきます。山根さんの話では、近く、作業所支援のためのクラウドファンディングを立ち上げる見通しだということです。土石流災害で、現地の住民の方がまだまだ様々な支援を必要としていますが、「障害者の働く場の確保」も大事な課題の一つです。

 取材報告/TBSラジオ・記者 崎山敏也

 

 

 

 

 

 

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