ひきこもりの当事者1686人の声を集約した「ひきこもり白書2021」

人権TODAY

今回のテーマは、ひきこもりの当事者1,686人の声を集約した、「ひきこもり白書2021」

「ひきこもり白書2021」とは…

今年6月に発行された「ひきこもり白書2021」は、実際に“ひきこもり”を経験したことがある方々の当事者団体である一般社団法人「ひきこもりUX会議」が、おととし=2019年秋に実施した実態調査で集まったデータを基に、まとめたものです。年齢や性別を問わず、全都道府県の1,686名が回答。自由記述のコーナーには、46万字に及ぶ生の声が寄せられました。今回は「白書」の中で特に気になる部分について、「ひきこもりUX会議」共同代表理事の林恭子(はやし きょうこ)さんに、話を伺ってきました。まずは今回の調査で画期的だった点です。

「女性のひきこもりっていうのは、これまでになかなか認知されていなかったということもありますけれども、今回6割の回答者の方が女性だったんですね。女性のひきこもりの人たちの声も出すことが出来ましたし。また更に言えばセクシャル・マイノリティのひきこもりの当事者についても、今回調査で出すことは出来たというのはあるかな…。」(ひきこもりUX会議 共同代表理事 林恭子さん)

ひきこもりUX会議 共同代表理事 林恭子さん

 

林さん自身が10代から30代に掛けての“ひきこもり”経験者なのですが、現場の実感としては、男女の率は半々ぐらいだろうと、以前から言われていました。しかし従来の内閣府や自治体の調査では、調査対象が圧倒的に男性。それが今回は回答の6割が女性。これは「ひきこもりUX会議」が、全国各地で「女子会」イベントを開催している関係もありますが、女性のひきこもりの存在が認知されたのは、大きな成果と言えます。
今回セクシャルマイノリティでひきこもりの方の実像も浮かび上がりました。そうした方の半数ほどは、その「性自認」や「性的指向」がひきこもりの原因やきっかけになったと答えています。また、そうした方々のことをきちんと理解してくれる支援団体や相談窓口が不足していることも明らかになりました。

「ひきこもり白書」で明らかになった事実

「地方」に住むひきこもりの方々は、そもそも支援情報が乏しい上、心療内科などの医療機関や支援の窓口へのアクセスで悩みを抱えているケースが多いことがわかりました。また地域の閉鎖的な人間関係なども、当事者を追い詰めています。
仕事に就いたり、アルバイトを始めたりなどで、ひきこもり状態から脱したように見える人が居ます。しかし生きづらさを抱えたままでは、再びひきこもりになることが少なくないんです。就職したりアルバイト出来るようになっても、そこがゴールや終わりではないということです。
日本の少子高齢化問題は、ひきこもりの方やその家庭も直撃!いわゆる「8050問題」。80歳の親が50歳のひきこもりの我が子の生活を支えているという問題が、益々深刻になってきています。

「「8050」でひきこもりながらご両親、もしくはどちらかの親御さんの介護に入ってる方も居ますし。徐々に看取り始めているんですね。人によってはヘルパーさんが家に入って来るということ自体が、ちょっと困難なんで、1人で抱え込んでしまうということも起きますし。困ったときにすぐ助けてと、やっぱりなかなか言いづらい方も多いので。」(ひきこもりUX会議 共同代表理事 林恭子さん)

親と子が共に孤独死するという“ダブル孤独死”などが実際に起こってきています。「8050問題」が現在「9060問題」になってきている中で、親が亡くなった際の手続きやその後の生活をどうするかなど、地域ごとの「生き方支援」も、必要です。
さて様々な問題が浮かび上がる中で、衝撃的だったのは、アンケートの自由記述に寄せられた、当事者のこんな声でした。「安楽死を認めて欲しい。誰にも迷惑をかけずに死にたい。自殺すると迷惑をかける人がでてしまう」

ひきこもり当事者から寄せられた生の声

「10人以上の方が「安楽死」という言葉を使ってらっしゃったのは、私もとてもショックでしたね。もちろん本音だろうと思いますし、それだけ絶望してしまっているということだと思います。そういった方に、何とか少しでも人とのつながりというものを持ってもらうには、どうしていったら良いのかなと…。」(ひきこもりUX会議 共同代表理事 林恭子さん)

新型コロナ禍の深刻な影響

今回「白書」をまとめるに際しては、昨年暮れから今年はじめに掛けて、コロナ禍がひきこもりの方々にどのような影響を与えているか「緊急アンケート」を追加で行っています。コロナ禍で多くの方がステイホームを余儀なくされる中、ひきこもりの方々はそうした生活に慣れていて、楽しむコツを知っているのではないかという声もあったのですが、実態は違ったようです。

「やはり6割の方が、精神状態が悪化したと答えていました。で、それはやはり家族間の緊張が高まったというようなことですね。親子関係がよりちょっと難しくなったり、またご兄弟が家で仕事するようになって、仕事している姿を目の当たりにするわけですよね。それはなかなかキツいものだろうと、やっぱり思いますね。で、また家族からちょっと暴力というか、DVというようなことがある方もいらっしゃいますので…。」(ひきこもりUX会議 共同代表理事 林恭子さん)

社会不安が高まることが、弱い立場に居る者を直撃しています。経済的な不安も募る上、リアルな場での当事者会や自助会が行われなくなったため、精神的に不安定になる方も多いんです。
今回色々と深刻な実態が明らかになりましたが、林さんたちは、ひきこもりに関する公的な相談窓口や民間の支援団体が、この「白書」によって、ひきこもりと一言で言っても、千差万別、百人百様であることを知り、生かして欲しいと願っています。

「どうしてもひきこもりというと、何となく若い男性が、部屋の隅で膝抱えてゲームばかりやっているみたいな、ステレオタイプなイメージがこれまでずっと広がっていたと思うんですけど、「白書」を読んでいただけるとわかる通り、もちろん全くそんなことはなくて、それぞれバラバラと言って良いと思います。だからこそ支援のあり方も、ホントに沢山色々な種類というか、多様な支援というのが必要なんだなと思います。」(ひきこもりUX会議 共同代表理事 林恭子さん)

★一般社団法人 ひきこもりUX会議
https://uxkaigi.jp/
Email: info@uxkaigi.jp
※「ひきこもり白書2021」(定価2,970円)は、オンラインショップ( https://uxkaigi.base.shop/) やAmazon から購入できます。

(担当:松崎まこと<放送作家/映画活動家>)

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