東京新聞紙面連動企画『こちら特報部~就活で県外へ 学生にPCR検査「自費」で』

森本毅郎 スタンバイ!

毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。

東京新聞では、今、土曜と日曜の朝刊に「かわうそセブン」という4コマ漫画が連載されています。

これは、かわうそ君が主人公の、吉田戦車さんの伝説の不条理4コマ 漫画「伝染るんです。」が、27年ぶりに復活したものとして話題になっています。(私も「伝染るんです。」大好きだったから、懐かしくて毎回楽しみにしているんです!!)その連載の中で、家賃の支払いに困ったカブトムシの斉藤さんが、お金以外のもので家賃を払おうとする話がありました。

 

 

 

コロナ禍では、バイトができずに家賃の支払いも大変な大学生も多いですが、今日はそんな大学生について取り上げます。

実は、先月の「こちら特報部」の紙面に、就職活動をする山梨大学医学部の学生からのある訴えを受けて、東京新聞が取材をして記事になったものがあったのです。まずは、どのような訴えだったのか。

取材をした、東京新聞特別報道部の大平樹記者に聞きました。

★県外で就活。戻ったらPCR検査を自費で!?

「就職活動で県外に出て、戻ってきたらPCR検査を受けろ、と。受けること自体はいいんだけれども、その費用を一部負担しろ、という風に言われたのがちょっとそこまで学生が負担しなきゃいけないものなのか、というようなご主旨でお話を伺いました。

医学部の附属病院で実習をなさっているその合間で、就職活動を県外に出てなさるのですが、そもそも、県外に出るときにも、事前に大学に申請を出して認められないと出てはいけない、という風に言われているのがまず前提としてあって、それでさらに、戻ってきたら、PCR検査を受けさせられて、しかも費用の一部を負担して欲しい、という風なことなので、ちょっと学生さんには大変かな、という感じもしますね。

例えば、飲食店でのアルバイトをなさっている学生さんも多いと思うんですけれども、飲食店自体がコロナで経営がかなり厳しい中で、収入が減っている学生さんは、多そうなんですね。

そんな中で、さらに、必要な就職活動をやったことに対して、PCRの費用を出してほしい、っていう風になるとさらに追い打ちみたいな形になってしまう、ということですね。」(大平記者)

 

就職活動での県外移動なのに、PCR検査の費用を負担して欲しい、というのは納得がいかない、という訴えだったそうです。

学生は就活代をバイトで稼ぐことが多いですが、コロナ禍でバイトも減っている今、ただでさえ、生活が困窮している学生に、追い打ちをかけるような形になってしまっているのです。

大平さんが他の国立大の医学部に聞いたところ、費用を負担させている、という例は確認できなかったそうですが、PCR検査は受けなくていい代わりに県外から戻ったら2週間自宅待機で、その間は実習には参加できない、という措置をとっているところはいくつかあったということです。でも、実習は単位に直結なので、それはそれで大変・・・。

では、今度は大学の側の言い分について、大平さんのお話です。

★学生由来の院内感染は絶対に避けたい!

「大学としても就職活動の必要性自体は認めてはいるものの、県外に出て就職活動というものはできるだけ控えてほしい、ということを言っていて、それに従ってくれている学生さんも一定程度いて、だからそこに不公平感が出ないように、県外に出るんであれば、一部の費用は持ってほしい、というのが、大学の言い分ですね。

大学が感染対策に気を遣うっていうことには、とても理解ができるんですね。

大学病院というもの自体が、地域の中の医療資源としてとても大きな役割を果たしている、というのがまず前提としてあって、その中で、学生由来の院内感染が広がったら大変なことになる、っていう意味で、検査を励行すること自体は、とても理にかなっているという風には思うんですけれども、ただ、費用を学生が負担するべきなのか、というところには、ちょっと最後までそれはどうなんだろう、という風には思っています。」(大平記者)

 

たしかにオンラインでの就職活動も増えていますし、不平等感が出ないように、というのは、理解はできます。

しかも、山梨大医学部の場合、付属病院で実習をする学生さんには、三週間に一回程度、大学が無料でPCR検査を実施していますから、その検査日に合わない学生さんは、自己都合なのだから一部費用は負担してほしい、ということなのです。

この東京新聞に働きかけた学生さんの同級生たちの間では「地方は医師不足が課題。就活で県外に出ないようにというのは県内に就職して欲しいからじゃないか?」と噂になっているとか。(勘繰る気持ち分かるし、勘繰られても仕方のないカタチです。)

とはいえ、地域医療の要ともいえる大学病院で、学生由来の院内感染などがあり地域住民に迷惑をかけるようなことは、絶対に避けたい、という気持ちも分かります。

また、感染者数の少ない地域では、学生が就職活動で東京へ出かけて行くことに対して、地域住民が不安を感じていることも多い、とも言われていますから、大学側はしっかりと対策をして住民の理解を得たい、と思うのも当然です。

医学部以外でも、学生がコロナに感染して地元からかなりの批判を受けた大学もあり、「とにかく感染者を出してはならない、というスタンスの大学がほとんど。中には学生にアルバイトの自粛要請を出した大学もあり、さすがにそれは驚いたけれど

大学側の危機感の表れ」と理解は示しつつ、大平さんはこう話します。

★ひいては医者不足・看護師不足につながる話

「そうですね~、だれが悪いっていう話では無い、という風に思ってはいるんですけれども、やはり大学側はいろんな地域住民からの批判だとかを恐れるので、どうしても厳しい制限を加えたくなる気持ちもとても理解できるんですね。

ただ、学生はなかなかそれに対して、いやそれはちょっと勘弁してくださいよ、というのは言えないのが現状なので、やっぱり一生左右する話ですし、例えば、そのバイトするな、っていう要請を受けてバイトが出来なくて、それで悩んで卒業自体諦めてしまう、っていう学生さんが増えるようでは、お医者さんだとか看護師さんを将来目指していた人が諦めるっていうことになってしまいますから、そういう医師不足看護師不足というところに、長い目で見ればつながっていく話なわけで、改めて、養成機関というものがどうあるべきか、ということは、大学や専門学校はもう一度よく考えてほしいな、という風に思いました。」(大平記者)

 

ちなみに、学生さんの声を受けて東京新聞が紙面で掲載した後で、県外へ出る許可申請は原則認めるという方針に変わってくれたのですが、費用負担の方はなかなか・・・今のところは現状が変わっていないので、大平さんは、とりあえず一歩、いや半歩、いや四分の一歩ぐらいは進んだのかな、と仰っていました。

 

 地域の医療機関としての感染対策は分かるが、学生の就職を左右するような形はどうなのか。また感染対策としての検査なら一律大学病院負担にする方法もあるのでは・・・学生たちも苦しいので、何らかの支援の手が差し伸べられるとよいのですが。

取材・リポート、近堂かおり

東京新聞紙面連動企画 感想はこちらへ→ stand-by@tbs.co.jp

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