お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

放送中

放送中


  • 放送ログ
  • 音声あり

【逃げ恥】星野源の「恋」が、同性も異性もそれ以外も含んだ、新時代のラブソングである理由

ジェーン・スー 生活は踊る

大ヒット中のTBSテレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」。エンディングのダンスも話題の主題歌、星野源さんの「恋」。この曲は今の時代に歌われるべき、新しいラブソングなんじゃないか?というお話。「恋」について星野さんにインタビューをした音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんが解説しました。

生活は踊る161209

【高橋芳朗】
この番組でも何度も話題にしております大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の主題歌、星野源さんの『』。「星野源の『恋』は新しい時代のラブソングだ」と謳ってみましたが、これはどういうことかというと、星野源さんの『恋』はいまの時代に応じた新しい愛の概念を歌ったラブソングである、ということです。曲中に何度も出てくる「夫婦を超えてゆけ」という印象的なパンチライン、あれはドラマの設定に応じて書かれたところももちろんあるんですけど、でも「既存の夫婦の枠を超えてゆけ」という言葉以上の意味を含んだフレーズなんですね。で、僕はこの『恋』のリリースにあたって星野さんにインタビューをさせていただいたんですが、そのときにこの「夫婦を超えてゆけ」というフレーズについて星野さんに聞いてみました。星野さんはこんなふうに答えています。

ラブソングって、どうしてもある特定の条件を歌ったものが多いじゃないですか。片思いだったり、カップルだったり、夫婦だったり。その特定のシチュエーションや登場人物にこっちの感情のトリガーが勝手に引かれて共感するパターンがほとんどだと思うんですけど、そうじゃなくて、すべての恋に当てはまるラブソングにしたいと思っていて。恋愛のスタイルというものがどんどん多様化していますよね。異性でも同性でもその他にももっといろんなスタイルがあって。今まで当たり前だと思われていたものが古くなって、塗り変わっていく時代だと思うんです。あと、僕は物語や虚構の世界を愛している人たちが大好きだから、本来実在しないものに対して恋をしたり、それによってそのひとの人生が充実していたとしたら、それが一般的に呼ばれる恋や愛と一体なにが違うんだって思っていて。それも含めてフィットする歌をつくれないかって考えたときに、『夫婦を超えてゆけ』って言葉が思いついたんです

【高橋芳朗】 
この発言からもわかると思うんですけど、『恋』という曲はいまの時代に求められているラブソングとはどういうものなのか、そこに非常に意識的につくられている曲なんですね。ここには二次元のキャラクターへの恋も含まれていますし、もちろんLGBT、性的マイノリティへの理解を求める動きが広がってきた最近の社会情勢を踏まえたものでもある、ということです。しかも星野さんは、そういう時代の気分を「夫婦を超えてゆけ」という誰でもわかる超シンプルかつ平素な言葉で、でもいままで聞いたことのないような新鮮な言葉の組み合わせでナチュラルに曲に溶け込ませているわけです。

【ジェーン・スー】
あの、蓮見(孝之)アナウンサーさんがこの曲を特番の時だったかな? 生放送の時か、とにかくオフマイクの時に「『夫婦を越えていけ』っていうのはどういう意味なんだろうな?」っておっしゃっていたので、たぶん聞いている人にパッと考えさせる……「これってなんなんだろう?」って思わせるすごい強いパンチラインっていうか言葉なんでしょうね。

【高橋芳朗】
そうですね。そして、そういうメッセージがめちゃくちゃ楽しく踊れる曲に乗せて広くお茶の間に届けられているっていうのはすごい痛快なことなのではないかと。

【ジェーン・スー】
本当にそうですね。『逃げ恥』自体がそういうドラマであり、漫画だしね。

【高橋芳朗】
LGBTという点で言うと、ここ数年欧米のポップミュージックでも同性愛や同性婚を題材にした曲がたくさんリリースされているんです。もちろんそういう曲は昔からあるにはあったんですけど、特に最近はアメリカで同性婚が合法になったり、ロシアの反同性愛法が大きな問題になったりして、LGBTを支援していこうという機運がぐっと高まっているんですね。そして、そういう曲がちゃんとヒットしていたり、グラミー賞みたいなアワードでちゃんと高く評価されていて。だから、星野さんの『恋』はそういう世界の時流にも足並みを揃える曲でもあると思います。そのへんも踏まえて聴いてください。星野源さんの『恋』です。

M1 恋 / 星野源

【高橋芳朗】 
星野源さんの『恋』を聞いていただきました。LGBTを題材にした曲ということでは、最近では宇多田ヒカルさんのニューアルバム『Fantome』に収録の『ともだち』がありましたね。ではここからは、ここ数年欧米でLGBTの理解を求める曲がつくられるようになった流れについて超簡単に話したいと思います。まず、この風潮のひとつの契機になったミュージシャンとして、フランク・オーシャンという黒人R&Bシンガーの『Forrest Gump』という曲を紹介したいと思います。2012年の作品ですね。フランク・オーシャンは2012年の夏、メジャーデビューする直前に自分がバイセクシャルであること、19歳のころに男性に恋をしていたことをカミングアウトしたんです。これがたいへん大きな話題になりました。というのも、彼のようなヒップホップ世代の黒人ミュージシャンが同性愛をカミングアウトするのは非常に珍しいケースだったんですね。ヒップホップの世界は男性優位主義でホモフォビア(同性愛者嫌悪)が根強くあって、同性愛者であることをカミングアウトするということはアーティスト生命にダメージを与えかねないリスキーな行為なんです。でも、このフランク・オーシャンのカミングアウトは勇気ある行動として賞賛されました。きっとタイミング的にちょうどオバマ大統領が現職のアメリカ大統領として初めて同性婚を容認する発言をした直後だったから、その影響もあったのではないかと思います。で、フランク・オーシャンはカミングアウトした日の夜に「赤ん坊のように泣きじゃくった」っていうことを告白していて。でもそれは悲しいからではなくて、いままでに味わったないような幸せを感じたからだそうなんです。カミングアウトを経て、彼はこんなふうに話しています。「真実と誠実さ、そして寛容であることにはマジックがあるんだ」って。で、これから聴いてもらうフランク・オーシャンの『Forrest Gump』は、彼が恋をした男性に宛てた曲とされています。歌詞はフランクがフットボールを観戦しているという設定で、こんな内容になります。「いつも君の試合を見物していたんだ。君は44番をつけて走っていたね。でも君はどこまでも走り続けてエンドゾーンを超えていってしまった。君のことはぜったいに忘れない。この愛は本物なんだ」。こんな感じの独白が続いていく、とっても切ない歌詞になっています。それでは聴いてください、フランク・オーシャンで『Forrest Gump』。

M2 Forrest Gump / Frank Ocean

【高橋芳朗】
では最後にLGBTや同性婚への理解を求めるメッセージ・ソングの代表作として、マックルモア&ライアン・ルイスというヒップホップアーティストの『Same Love』という曲をご紹介したいと思います。これも2012年の作品で、グラミー賞のソングオブジイヤーにもノミネートされた曲になります。歌詞の大意を堀井さんの方に読んでもらいましょうかね。よろしくお願いします。

(堀井美香読み) 「小学生のころ、俺は自分がゲイだと思っていた。絵を上手に描けたし、部屋をキレイに片付けていたし、なによりもおじさんがゲイだったから。母親に涙ながらに『僕はゲイなのかな?』って訴えたら『あんた、幼稚園のころから女好きだったじゃない』って言われて、自分が先入観に囚われていたことに気がついた」

「同性愛は生まれつきのものなのに、保守派の人々はそれが彼ら個人の性格によるもので、治療すれば治ると思ってる。『勇敢なアメリカ』なんて言うくせに、自分たちが理解できないものや未知なものをいまだに恐れているんだ。神様は誰にでも分け隔てなく愛を与えてくれるはずなのに、旧約聖書を自分たちの都合のいいように言いかえてる」

「もし俺がゲイだったら、ヒップホップに嫌われていただろう。きっとYouTubeのコメント欄には毎日のように『なんだよ、ゲイみてーだな』なんて書き込まれるんだ。ヒップホップは抑圧から生まれた文化なのに、俺たちは同性愛者を受け入れようとしない。みんな相手を罵倒するときに『ホモ野郎』なんて言うけど、ヒップホップの世界ではそんな最低な言葉を使っても誰も気に留めやしない」

「俺はゲイじゃないかもしれないが、そんなことは重要じゃない。すべての人々が平等にならない限り、自由はないんだ。俺は全面的に支持するぜ。もちろん同性婚が法的に認められたところでなにもかもが解決したわけじゃない。でも、これは出だしとしては上々だ。法律で俺たちは変わらない。俺たち自身が変わっていかないといけないんだ」

【高橋芳朗】 
では聞いてください。マックルモア&ライアン・ルイスで『Same Love』です。

M3 Same Love feat. Mary Lambert / Macklemore & Ryan Lewis

【ジェーン・スー】
ねえ。これに関しては本当にグラミーのショー自体も素晴らしい演出でしたし。

【高橋芳朗】
2014年、マドンナと共演したんだよね。

【ジェーン・スー】
そうですね。出てきて『Open Your Heart』を歌っていましたが。ただ、『Open Your Heart』は歌ってはいたものの、まあ改めてこのコーナーで言いたいというか気をつけたい。私自体はLGBTではないんですね。そういう時にこういうことに対して理解を示す、尊重するということはすごく大事だけど。ただ、他者に、当事者に対してそれを告白することを強制したりとか、誘発したりするようなことは絶対にしちゃいけないなと思っていて。小学校の時だって、好きな子がいる子の好きな子をクラスのみんなで言うなんていうことは絶対にしちゃいけないってわかっていたわけだし。たとえ、自分がそのことに対して理解があったとしても、相手を尊重するっていうことはそれをパブリックにすることを強制することでは全くないので。そこを気をつけたいな、そこまで行くとまた次のフェイズかな? と思ったりしますね。

【高橋芳朗】
そんなわけで星野源さんの『恋』を切り口にして、昨今のLGBTを支援する曲がつくられるようになった流れを紹介しました。

※書き起こし byみやーん(文字起こし職人)

—— ◇ —— ◇ —— ◇ —— ◇ —— ◇ —— ◇ ——
当ラジオ番組では「日々の生活に音楽を」をコンセプトに、音楽ジャーナリスト・高橋芳朗さんによる洋楽選曲を毎日オンエア(稀にかかる邦楽はディレクター選曲)。最新1週間のリストは以下です。

12/5(月)

(11:05) Don’t Worry Baby / Don’t Worry Baby
(11:43) 99 / TOTO
(12:16) Guess Who’s Looking for Love Again / Ned Doheny

12/6(火)

(11:03) Work to Do / The Main Ingredient
(11:43) The Silence That You Keep / Milton Wright
(12:16) Love, Oh Love / Leroy Hutson
(12:25) Party Down / Little Beaver

12/7(水)

(11:03) I’m Gonna Sit Right Down (and Write Myself a Letter) / Nat King Cole
(11:15) I Can’t Believe That You’re in Love with Me / Dean Martin
(11:44) Stompin’ at the Savoy / June Christy
(12:17) A Lot of Livin’ to Do / Joni James
(12:51) Put on a Happy Face / Nancy Wilson

12/8(木)

(11:04) Instant Karma! / John Lennon
(11:15) Cecilia / Simon & Garfunkel
(12:14) Come and Get it / Badfinger
(12:24) Hitchin’ a Ride / Vanity Fair
(12:51) For the Love of Him / Bobbi Martin

12/9(金)

(11:02) I’m Every Woman / Chaka Khan
(11:14) Can’t You See Me? / Roy Ayers
(12:14) I Like What You Do / The Commodores
(12:25) All Night Long / Dexter Wansel