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【音声配信・書き起こし】田代まさしさんが語る、薬物依存症の実態と必要な支援とは?▼TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」2016年12月14日放送分

荻上チキ Session-22

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TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』(平日22時~生放送)
新世代の評論家・荻上チキがお送りする発信型ニュース番組。

Main Session 

「田代まさしさんと考える、薬物依存症の実態と必要な支援とは」

▼今年は芸能人などの薬物使用に関する報道も相次ぎましたが、「薬物依存症」の実態や必要な支援策について語られる機会はあまり多くありません。

▼そこで今夜は、自身も覚せい剤の使用で3度逮捕され、現在は、施設でリハビリを続ける傍ら、全国各地で講演会も行っている元タレントの田代まさしさんをスタジオに迎えて、改めて「薬物依存症」について考えました。

【スタジオゲスト】
元タレントで薬物依存症のリハビリを続けている田代まさしさん
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「ダルク女性ハウス」代表の上岡陽江さん
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【電話ゲスト】
埼玉県立精神医療センターの成瀬暢也さん

【全文書き起こし】

荻上:もう年の瀬ですけど、今年は振り返ると薬物報道もとても多かったなという印象です。一方で、報道のあり方について考えさせられる機会も多かったんですが、田代さん、薬物報道のあり方については、どのようにお感じになりましたか?

田代:あの、お話する前にちょっと一言みなさんに言っておきたいのは、僕はまだ刑務所から出てきて2年と4カ月。ダルクに繋がってそのくらいなわけですけども、まだ回復途上なのであまり偉そうなことは言えないんですよ。だから聴いてる方で「おまえが言うなよ」って方がたくさんいらっしゃると思うんですけど、僕の経験やダルクで勉強したことか、少しでもわかってもらいたいなって部分で今日はお話しますので、そこのところ、よろしくお願いします。

荻上:依存症は回復し続ける、回復している状態を続けることが大事なんですよね。

田代:そうなんです。やめるのは簡単なんですけど、やめ続けるのが難しいんですよ。

荻上:そうした中で、薬物依存症について無理解な報道も多かったと僕は思うんですけど、田代さんはいかがですか?

田代:ちょっと前に有名な野球選手が騒動になったときに、僕に今までテレビ出ちゃ駄目って言っていたのが、テレビ出てきて下さいってなって。コメント下さいってなって。

荻上:NHKにも出ていらっしゃいましたね。

田代:「NHKニュース7」が一番最初だったんですけど。なんていうのかな、僕たちは薬物依存が病気だから、回復、リハビリって言葉を使っているんですけど、どうしても報道の皆さんは更生って言葉を使いたがる。更生って、人のために更生しなさいってイメージが俺はあって。「お願いします、回復って使ってください」っていっても、「世間的には更生なんですよ」って言われちゃうので。

上岡:新聞報道でもおそらく更生って書かれていると思うんですけど。薬物依存症は病気なので、私たちは回復って言葉を使っています。

荻上:他の依存症ですと治療や回復が必要なんだ、って議論になるんですけど。

田代:最近テレビは変わってきましたよ、すぐダルクが出て「治療を早くした方がいいですよ」って言っているのに、司会者がまとめるときには「家族やファンの方たちのために一日も早い更生をお願いしたいと思います」ってまとめるじゃないですか。いやいや、今まで治療って言ってたのに、って。

荻上:癖になっているところはなかなか抜け切れないところがあるんでしょうね。

田代:そうなんですよ、そこらへんがちょっと残念かな。

荻上:それに加えて、回復に向けた社会を作ろうというような動きになかなかならず、メディアこそがバッシングを煽るというか、先ほどの野球選手の報道の際も、屋上から出てくるところをわざわざ撮り続けていたりとか、ホテルから顔をのぞかせている姿をパシャッと撮ったりとか。

田代:そうそう、その通りですよ。今回の歌手のときも、罪を犯したんだから、写真や映像を撮られるのは仕方ない。でも、撮っているカメラを車にぶつけたりとか。俺も車、傷だらけになったのよ、カメラがガンガン当たって。うわってなって。ヒッチコックの映画「鳥」のような感じで、傷だらけになって。いや、撮られるのはいいけど、傷つけるのはちょっとヤメて欲しいな、みたいな。

上岡:それってあとになって、社会が怖くなったりはしないの?

田代:でもね、自分のときはもう怖いというより「そんな騒動になるんだ」って。他の人の報道で、ヘリコプターで車を追いかけていて、「酷いなあ」って言ったら、「お兄ちゃんのときもヘリコプター飛んだから」って言われて。

荻上:そうか、田代さんのときもそうだったかあ。

田代:俺は観てないから、車乗っているから。

上岡:でもさ、そしたら、やっぱり妹さんはすごい辛かったね。

田代:だって洗濯物とか干せないらしいし、買い物行っても…

荻上:カメラが待ち構えていて。

田代:マンションも出て行ってくださいって。

荻上:迷惑だからってことですか?

田代:取材陣がばーっと押し寄せていたから、マンションに。

荻上:そういう報道がずっと続いていますよね。

上岡:あの報道で本人も家族も、相談もできないし、とても辛かったって言ってるんですよね。

田代:でもそういうこと言うと、「お前が悪いことしたんだから仕方ないだろう」って言う人がいっぱいいるんだから。

荻上:その話はまた後ほどしたいんですが、薬物依存症というものを、刑法で単純所持などで罰するという取り扱い方が、実は回復から遠ざけているんじゃないかって問題提起も、いろんな専門家からも聞きますし、海外でもそうした発想をもとに政策を転換している国もいっぱいあるんですよね。

田代:所持で罪になるのは日本を含めいくつかの国しかないんですよ。

上岡:再犯率が60%を超えているので、別な方法に移っていくことのほうが多くてですね。使用で捕まったとしても、先に治療に繋がるということの方が増えてきています。

荻上:その方が重要だし、本人にとっても周りにとっても大事だってことになるわけですよね。

上岡:特に私は女性の依存症を専門にやっているので、お子さんがいるような方もいらっしゃるんですよね。そうすると、地域の中で支援していく風に移っていく、移っているって国も増えていきます。

荻上:そうした中で今回の歌手に関する報道では、ドライブレコーダーの映像であるとか、あるいは実際に直前になって、テレビで電話出演したりであるとか、メディアの報道も過激になれば数字がとれるという方向にばかり着目して。

田代:野球選手の報道のときも、使って欲しいコメントは使ってもらえなくて、ツッコミやすいところを繋げたりするんですよ、編集されて。

荻上:どういうところが使われて、どういうところを使ってくれなかったんですか?

田代:テレビじゃなかったけど、スポーツ新聞の取材で「ダルクに繋がったときと、その前に薬を使っているときと、何が変わりましたか?」って訊かれたから、「前は『ごめんなさい、二度としません』ってウソついていたんですけど、やっとダルクで、『今日一日やめる努力は怠らない』ってことはお約束できるようになりました。それが前と違うところです」って答えたら、発売された紙面を見たら、見出しに「田代まさし、開口一番、『今日はやってません』」って書いてあったの。いやいや、昨日やっていたみたいな書き方じゃん、それ。

荻上:ネタにするような感じですね。

田代:そうそう。購買意欲を掻き立てるような。

上岡:何か皆さん、完璧にやめましたっていう風にいったら、完璧にやめるって考えられていると思うんですけど、薬物依存症って本当に病気で、強迫観念が強いので。薬物のことしか考えられない状況になっているんですよね。そうすると、薬物を辞めるってこともまた強迫なんですよね。だから…

田代:だからダルクとか上岡さんのところは「やめるのをやめなさい」ってところから始まるんです。

上岡:そうなんです。ダルクが30数年前にできたときの標語は、「やめようと思ってやめれなかったんだから、やめることをやめて、とりあえずダルクに来よう」ってことが標語だったんです。それでダルクは、薬物を使用する以外のすべてのことを練習してくような場になっています。そうやってスキルを増やしていくってことが大切なんです。

田代:だってワイドショーとか、報道とかは、「家族の人とかファンの人のためにも、薬物と戦ってほしいですね」って言うじゃないですか。戦って勝てなかったから何回も捕まっているのに。強い意志がなんにも役に立たないっていう病気なんですよ。

上岡:田代さんも、初めて薬物依存症が病気だって言われたときにどういう風に思われたんですか?

田代:最初は「俺、なんでやめられないだろう、薬」って。捕まる度に本当に思うんですよ、心の底から。絶対二度とやらないって思うのに、それよりも薬の強迫観念が強くなって、結局薬が勝っちゃうんだけど。

上岡:スキルを増やしていかない限りは、必ずそれに陥っちゃうんですよね。

南部:スキルっていうのは?

上岡:日常的な生活をする全てのスキルです。朝起きる、ご飯を食べる、運動する、それから同じ悩みをもった仲間たちと話をする、そして依存症を持った人たちが再度使わないための日常的な生活を取り入れていく。

田代:わかりやすく言うと、環境を変えてやる。いままでの環境に戻ると、また同じことが繰り返されるから。自分の意志で環境を変えて、そういうところに自分の意志で行くことがすごく大切。

上岡:わたし、田代さんが一番最後に捕まる前に、実は会っているんですよね。

田代:はい、イベントで。

上岡:そのときに田代さんに「ダルクの上岡です」って言って。田代さんが震えながらです(笑)。辛そうだなって思っていたんですけど、ひとりで、病気の全部を抱えているなって思って。私には病気にみえるので、田代さんにどういう風にしてあげようかなって思ったけど、田代さんは「大丈夫です、自分で何とかします」って。

田代:上岡さんは「うちにくればいいじゃない」って。

南部:そういう風に声をかけて。

上岡:はい。

田代:でも俺は「いやだ、行きたくないです」って。

南部:お断りになったんですか。

田代:はい。

荻上:どうして断ったんですか?

田代:当時は、薬物依存症の人たちが集まっているところに行くのは逆効果だと思ってたの。そこから少しでも離れたいのに、なんでわざわざ自分から行かないといけないんだって。「大丈夫です、ぼく一人で頑張るので」って。

荻上:そこまでじゃない、って意識もあったんですね?

田代:あったよ。自分はみんなとは違うって。

上岡:薬物を使っているときは、薬をやめている依存症者とはあんまり会わないですよね。使っている人たちとしか会わないから、やめている人たちがどんな人たちなのかってことを見たことないんですよ。だから、初めて10人くらいの人に会う、そこから30人くらいの人に会う、それからセミナーがあったり、コンベンションがあったりして、何百人っていう薬をやめている人に会っていくと、「ああ、もしかしたらやめられるかも」みたいなことが。

田代:目からうろこが落ちる瞬間がある。

上岡:違う生活ができるかもしれないっていうのが。

田代:こんなに日本の国の中に、やめようとする人たちがいるんだって思えたときに、もしかしたら俺も一緒にいたらそうなれるかもしれないって風に変わってくる。

上岡:そうなんです、私も32年前に、アルコールと薬物をやめたんですね。

南部:上岡さんも。

上岡:そうなんです。それで32年前って女性の依存症がいるっていうのは、家族もみんなも知らなかった時代なんです。そのとき私は、アル中でヤク中でどうにもならない状態だったんだけど、女の人が7人だけいたんです。男の人はやめている人100人くらいいたんだけど。

南部:その中の7人が女性。

上岡:そうだったんです。それでその人たちを見た瞬間に、「はあー」って。自分はやめられないかもしれないけど、せめてこの人たちのそばにいようって思って32年経ったんです。だから実は私、やめるってことを決心したことは一度もないんです。

荻上:ただ、やめ続けるというようなことと、仲間たちと一緒に支え合いつつ、見守りつつ、っていうことになるわけですよね。

上岡:そうなんです。そのときに(薬をやめている依存症の女性が)日本にはいないので、私は海外に会いにいくことになるわけですよね。そのときに支えてくれたのが、ハワイの依存症の女性たちと、ロサンゼルスの依存症の女性たち。いまでもすごく仲がいいんです、各国の女性の仲間たちとね。

荻上:ダルクの一つの理念もそこで学んだわけですか?

上岡:そのころ自助グループメンバーだったので、自助グループメンバーの中で、薬物をやめて生きるってことはどういうことかっていうのを教えてもらったんですよね。日本で女性で依存症って言うと、人生のすべてを失ったような状態。家族にも申し訳ないし、親戚にも申し訳ないし、そんなことを言ったら全部が壊れるって私は思っていたんですね。

南部:追い詰めていたんですね、自分を。

上岡:はい、追い詰めていたんです。病気だってことをわからないし。それでハワイで友人たちに会い、女性たちに会い、ロサンゼルスで会い、普通に生活し、普通に仕事し、普通に子育てし、みんなが楽しんでいるのを見て、「私はもう一回やり直せるかもしれない」ってそのときに思ったんです。

荻上:やっぱり仲間の姿とか、そういうもの見ることによって……

田代:そう、全然違う。

荻上:「自分も」っていうことになるわけですね。

田代:何が良いかっていうと、薬物をやったことない人に「やめなさい」って言われても「あんたやったことないですよね」って気持ちがすごくあるわけですよ。でも、やってたけどやめてる人の意見はすごく説得力があるわけ。

上岡:そうなんだよねえ。

荻上:実際に背中をみせてくれているっていうことで。

田代:そうそう。

荻上:そうか、実例があるじゃないか、と。その人と一緒にやっていこう、と。

田代:ついていけば、この人みたいになれるかもしれないって。

荻上:薬物依存になる様々な理由がそれぞれあると思うんですけど、居場所のなさとかプレッシャーであるとか、いろんな要因があるときに、そうしたものを共有してくれる、同じ戦える、じゃないけども、向き合っている仲間がいる、ということが心強かったわけですね。

田代:心強いし、うちの近藤(恒夫)代表がいつも言うのが、「ダルクという場所は、間違いを正す場所ではなくて、間違いに寄り添う場所なんだ」って。世間は「あなたは駄目です」ってレッテル貼りますけど、やっと「俺、ここに居場所があった」って思えたんですよ。

荻上:ここからは、田代さんの経験をもとに薬物依存症について考えていきたいと思いますので、田代さんの経験を今日は時系列に伺っていきたいと思うのですが。田代さんがはじめて薬物に手を出したときと言うのはどういうときだったのでしょうか。

田代:芸能界で売れているときに、けっこう上の、いまの若い人、僕が活躍していたこと知らないと思うんですけど。

荻上:めっちゃ出まくってましたもんね。

田代:ものすごい売れてました。

荻上:あれもこれもやっていましたもんね。

田代:飛ぶ鳥が落ちて、また飛び上がるくらい。

一同:(笑)

田代:その頃、一日にテレビの収録を3本とか4本くらいこなしていたんです。あちこちの局を。そのほかにもロケとかあったんですけど。

荻上:寝起きドッキリとか。

田代:はい、やってました。「おはようございます」……ってやかましいわ!(笑)そのときに、毎回同じことを言ったら飽きられる。同じギャグで消えていく人たちっているじゃないですか。そうなりたくないなって毎回いろいろ考えだして、いろんな小物仕込んだりとか。小道具の帝王とか呼ばれていたんですけど、いろいろ仕込んで、このときはこれを出そうとか毎日考えていて。最初の頃はよかったんだけど、だんだんそれが追い付かなくなってきて。いつまでこんなことずっと考えないといけないんだろうって思ったら、思い悩んできちゃって。

荻上:背筋が凍るというか。

南部:ずっと考えているってことですもんね。

田代:だから、元気なくなるわけじゃないですか、いつものテンションじゃなくなるときがあるじゃないですか。そういうときに限って、やばいものを供給してくれる人が現れたりするんですよ。

荻上:囁く人とか。

田代:それはテレビ局のADだったんだけど。「最近、田代さん元気ないですね。元気出ちゃうやつありますよ」って。

上岡:ひどいなあ。

田代:これ覚醒剤だなって思ったけど、気分が変えられるなら、俺は1回でやめられる、とか。俺は気分が変えられたらやめる自信があるから、とりあえず気分変えたいなっていうのが強くなって。もともと俺は、みなさんもご存知かもしれないけど、素行の悪い中学校・高校ってきてたから、周りが当たり前のようにタバコ吸ってたし。

荻上:まあ不良っていうグループですね。

田代:はいはい。周りが当たり前のようにシンナー吸ってたから、同じようにみんなもやっているからってシンナーも吸ってたし。でもシンナーも卒業できたから、覚醒剤も卒業できるって思っちゃった。甘かったね。全然別物だったね。

荻上:最初は勧められて、実際に体験して、次はまた勧められたんですか?

田代:自分から求めたね、2回目も。

上岡:よくみんなが、薬使うときに、何も考えなくて済むとか、疲れが取れるとかいうけど、そんな感じだったの?

田代:もうスーパーマンになったような感じだったの。

荻上:パっと悩みが吹っ飛ぶ。

田代:そう一瞬に。こんな幸せって。

上岡:でも、普通に生活している人たちはさ、実は薬を使ってもあんまり気持ちいいって思わないものなんだね。

田代:でも使ったことない人だから。

上岡:私、32年、施設、自助グループもやっていたから、元やっていた人たくさん会うんだけど、ほとんどは2、3回でやめちゃう人のほうが多い、実は。

田代:中には身体に合わないって人が。

上岡:多いんですよ、実は。そういう人たちと使わざる得ない人たちと2つあるような気がしていて。私は女性の施設をやっているので、85%の人が暴力の被害者なんですよ。だからみんななんで使い始めるのかというと、だいたい身体が痛かったからっていうのと。

田代:痛みから解放されたい。

南部:そうかあ。

上岡:それから親に言われたらもっと殴られちゃうから。友達の中にあった薬が覚醒剤って知らなかった。危険ドラッグだって知らなかった。病院に行くって一度も考えたことなかった。大人に言ったらもっと酷い目に遭うからっていう話はわりとよくある。

荻上:別のつらさや痛みをやわらげるために薬に依存していくってことになるわけですね。

田代:使い始めはそれぞれ違うけど、だいたいそういう打破したいとか、気分を変えたいという部分で使い始めるんだけど。でもみんなは薬をやめなさいって。それだけ取ったとしても元の問題は残っているんです。それを解決してやらないと。薬じゃない部分でどうやってそれを、気持ちを変えていくのが大事なんだけど。

荻上:環境とか、いろんな変化をさせることが重要だけど、やっぱり使っているうちはなかなかわからないし、できない。

田代:使っているときは、申し訳ないけど、薬やめろよっていわれても、俺にとって覚醒剤は「白い恋人」だったわけ。恋人の悪口言われると頭くるでしょ。それと同じようなことが起きるのよ。なんで俺の恋人の悪口言ってるんだよって。こんなに俺を解放させてくれてるのにって。

荻上:よく薬物依存の方はやると気持ちいいからじゃなくて、だんだんやらないと不安だからって変わっていくって聞くんですけど。

田代:変わってく。最初は仕事するために使っていたのが、今度は薬のために仕事していく。

荻上:優先順位が変わっていく。

田代:変わってくる。そのうち薬だけの生活になっていく。

荻上:そのときの仕事の状況って覚えていらっしゃいますか。

田代:覚えてるよ。

荻上:ずっとずっとその場その場で、薬を考えながら、生放送をしたりとかだったんですよね。2004年に逮捕されて刑務所に入られたわけですね。そのときはどういう風にお感じになりました?

田代:これを機会にやめようと思ってたよ。

荻上:反省しようとか、良好な態度で刑務所では過ごそうと思われていたわけですよね。

田代:でも正直な話、やめたいから良好な生活を、ってみんな思っていないから。

上岡:なんて思ってたの?

田代:例えば刑務所の中で薬物のプログラム受けますかって言われたら受けますって。それはやめたいからじゃなくて、受けてたら早く出られるから。そんな程度だよ。本人はね。

荻上:そのプログラムはどんなプログラムでしたか?

田代:ダルクの人が講師として来て、仮のミーティングみたいなのをやるんだけど、受ける人たち、やめたいと思っている人じゃないから。

上岡:マーシーが1回目に入ったときは、そういう状態だったと思うんだけれど、いまは刑務所の中は随分変わって、プログラムをおそらくもっとSMARPPというようなものを使うような感じに変わってきていると思うんだけども、やっぱりそこできちんと、なんていうのか、依存症者がやめる気持ちになるのは時間がかかるんですよ。

田代:かかる。自分で、よくミーティングとか、講演行ったときに、「薬物依存症者のマーシーです」って言って話し始めるんだけど、心の底からいえるようになるのにすごい時間がかかった。自分で薬物依存症っていうのは嫌だったの。

南部:嫌だったって言うのは、認めたくなかった?

田代:たぶん有名な人はみんなそうなんだと思うんだけど、プライドの方が大きい。

上岡:それはね、有名じゃなくても同じだと思う。だいたい初めての相談から始まって早く3年、私は5年くらいかかりました。自分でわかって、まずいなと思ってから、5年くらい相談できなかった。やっぱりそのくらいの時間が必要なんですよね。そこのところで、本人にも家族にもいろんな情報が入るってことが大切だって実は思っているんですよ。ややめるかやめないかではなくて、やめるかやめないかわからないけど、でもいろんなことがありますよって絶えず言ってほしいなって。

南部:情報を知るっていうことは、段階を進めることに役立つってことなんですか。

上岡:役立ちます、はい。

荻上:周りからの目も当然気になるってことなんですけど、ただでさえ著名だと、歩いているだけで、「薬物をやったマーシーだ」って見られているんじゃないかっていう。

田代:刑務所帰りとか。

上岡:つらいよねえ。

田代:夜遅くコンビニとか行くと、近所の人が「田代まさしが徘徊してた」とかいうんだよ。コンビニくらい行くだろう!って思うんだけど。

上岡:でもなんか怪しいね(笑)。

田代:なんで怪しいの!?(笑) コンビニで本当にお菓子とか買いに行っているんだから!

荻上:普通にね。

上岡:マーシーと一緒にコンビニ行くと、マーシー、いろんな人の顔見たくない瞬間があって、ずっとケータイ見てたりして。

田代:そんなことないよ。

上岡:もう大丈夫?(笑) でも本当に、すごく大変だったと思う。私、始めから見てるから。

田代:電車とか乗ってダルク通っているんだけど、俺の顔みたサラリーマンとかがスマホとかで俺の画像とか検索し出すんだよ。よりによって逮捕されたときの写真で止まるのよ、だいたい。見比べて首を傾げるのよ。あのときと俺違うから!って思うんだけど。

荻上:最近の画像もネット上にあがってきていますから、本人だって感じで確認するっていうのも見えちゃうわけですよね。

田代:うん。

荻上:そうしたことが積み重なると、チクチクしんどさっていうのが。

田代:でも、今やっと自分の過ちだった経験が役に立つこともあるんだって部分に少しずつ変えられてきているから。

上岡:2年。

田代:まだ2年と5カ月かな。

荻上:最初に逮捕されて、刑務所から出所されたときは、6年近く薬物をやめられていたというか。

田代:3年半いて、2年半やめていたんですよ。だから6年ですよ。そのときはね、早く芸能界に帰ることがみんなへの恩返しだと思ったし、償いだって思ってたから、いろんなイベントとかに出るようにしてたんだけど。ファンの中に怪しげな奴がいて、握手会のときに。

南部:握手会で?

田代:はい、最後写真撮って握手いいですよってときに、こう、覚醒剤のパケを渡された。「お気持ちをお察しします」って言われて。

荻上:それで手に入れたものを使って。

田代:いや、捨てようと思いましたよ、本当に。ここまでやめていたんだから、捨てなきゃって。でも依存症になっているんでしょうね、頭の中に天使と悪魔が出てきて。「やめろよ」って言って来てる天使と、「マーシーこれだけ、6年頑張ったんだからちょっと休憩しよう」って悪魔がいたりするのよ。でもちょっとだけならっていうのが勝っちゃうんだよね。一回やったら捨てよう、って。

荻上:そこからまた買いに行くってことになったわけですか。

田代:電話番号も入ってたからね。だから俺はターゲットなんだよね、いい。

荻上:太い客として、パケを渡して電話番号渡して、これから買ってくるに違いないってことで。実際に買ってしまったということになるわけですね。やっぱり再犯と言いますか、そこから回復に向かっていくのはなかなか難しくて、そういうささやきがあると、上岡さんのそうした再犯をするケースは多いわけですか。

上岡:厳しいよね。そのときすでに治療に繋がっていて、たくさんの知り合いとかがいてね、こういうときにどうするのかって聞いておいたりすると、ちょっとは大丈夫かもしれない。でも相当そのあと動揺する。

南部:そのときは病気なんだって認識は。

田代:思ってなかったよね。

上岡:だからまだいろんなところに相談とかされてなかったと思う。いまだとおそらく、田代さんが経験されたから、これから先もそういうことが起きるかもしれないんですよね。よくうちのメンバーなんかも、道を歩いていたら突然「あるよ」って言われちゃったりとかして。

荻上:歩いているだけで。

上岡:そう。「シャブあるよ」って言われて。そうすると、一生懸命やっているメンバーだと、こんなこと言われたって、「私が悪いのかな」「やめてもそう見えちゃうのかしら」ってみたいなことをいようなことになるんだけど、でもみんなで「今度そうなったらどうしようか」って話し合いをして、逃げるとか、その道を歩かないとか、洋服替えるって話もするので。マーシーも、今度握らされたらどうする?

田代:うーん・・・自信ないかも、まだ。正直に言えるようになった。もうないですよ、二度とないですよって前は嘘ついてたけど、ちょっと自信ないかもしれないって言えるようになった。

上岡:やっぱりそれはね、依存症の人たちはそこのところはちゃんと正直に言えないと・・・

田代:まず正直になることから始めないと回復はないですよ。だって、やめられないって言える社会じゃないじゃないですか?もし、やめられないかもしれないって言ったら、大変なことになっちゃうわけだから、記者会見とかで。かといって、俺、最初からダルクを信じたわけではないし。ダルクの近藤(恒夫)代表って見たことあります?

荻上:はい。

田代:俺、きっとこの人に高い壺とか売りつけられるんだろうなって思ってたんですよ。

荻上:言いたいことはよく分かります(笑)

南部:それがどうして、ダルクに行こうという気持ちになったんですか?

田代:この本(『マーシーの薬物リハビリ日記』)にも書いてあるけど。出所して初日に、近藤代表にしゃぶしゃぶに連れていかれたりして、しゃぶしゃぶダメでしょうって不安になったりするわけよ。でもいま思うと、「これからお前仲間だよ」っていうことと、「これからお前、シャブと向かい合っていけ」っていうことだったんだろうなって思えるようになってきたから。でも、刑務所出て初日に、しゃぶしゃぶ行くぞって言われたら「えーっ?大丈夫ここ?」ってなるじゃん。

荻上:まあ、そうですよね。

上岡:しゃぶしゃぶで、シャブとつながっちゃうわけ?(笑)

田代:なんで?だって、「しゃぶ」が一個多いから!ダルクってすごいって思っちゃったんだから。

荻上:ダブルですからね(笑)

田代:ダブルだから。

南部:本の中にも書いてありますよね。

荻上:狙っているわけではないですよね?

上岡:決して狙っているわけではなないです。

荻上:みんな最初はしゃぶしゃぶって訳ではないんですよね?

田代:と思うけど。

上岡:たまたまということです。

荻上:向き合うという意味では印象的なエピソードではありますよね。

田代:うん、印象的なエピソード。で、記者の人に、出所して食べたもので何がおいしかったですかと聞かれたので、初日に近藤代表がしゃぶしゃぶご馳走してくれて、いま思うと「向かい合っていけ」という意味と、「仲間だ」っていうメッセージが込められているんだなと思えるようになってきた。あのときの味は忘れられませんってインタビューに答えたら、その日の「Yahoo!ニュース」のトップに「田代まさし出所後、即しゃぶしゃぶ。あの味忘れない」って、それだけ書いてあるんですよ。俺、もっといいこと言ってるのに。その間、間に。

上岡:私もそれ見ましたよ。ひどいなと思いましたよ。

荻上:どこの媒体か覚えてますか?

田代:いやーちょっと・・・

荻上:いっぱいあるんでしょうね。いじりのネタみたいな感じで、その対象としてしまうことが、逆に当事者にとってネガティブに見られているみたいな、しかも追い込まれてしまうじゃないですか?

田代:でも、しょうがないかなって思うようにしているけど。やっぱり傷つくことは多いよね。

荻上:そうですよね。

上岡:やっぱり周りは、マーシーが張られていることを見るわけですよね。時々、施設の前に違う人がいたりとか、大丈夫かなとか、やっぱりみんな彼のことすごく心配していますよ。

荻上:やっぱり、そういった見方が「しょうがないという状況ではない」社会にだんだん変えていって、少しでも理解あるような状況にした方が・・・

田代:そのために講演活動とか、こういうラジオに出るようにしているんですけど。この前も、全国の刑務所にメッセージを届けている曹洞宗のお坊さんの前で講演して。僕たちは薬物依存という病気に罹っちゃったんです。でも、回復っていうことが病気だからあるんですよという話をしたんです。そして、最後に質問ありますかって聞いたら、その中の一人のお坊さんが「田代さんは先ほどから薬物依存は病気だとおっしゃっていますけど、病というもののは自分が罹りたくないと思っていても罹るものです。あなたたちは、自らその病になりましたよね」って言われちゃったんですよ。確かにその通りだと。違法なものと分かっててやりまたけど。でも、誰もこんなにやめられない病気に罹ると思って使い始めた人は一人もいないんです。あなたたちが刑務所にメッセージを伝えに行って、同じ薬物依存症の人に接したときに、「あなた病気だからやめられないんだよ」と言ったときに、また僕と同じような回復者が現れると思いますよって言ったら、「はぁ」って納得していましたけど。

上岡:やっぱりご家族も本人も、そういう風に言われると、だんだん入ってくるんですよ。

荻上:呪いの言葉で自分を固めてしまうと。

上岡:そう。私はここ5年くらいオーストラリアにスタディツアーに行っていて、オーストラリアの施設を見ていると、日本よりも8年くらい早く治療につながっているもんね。治療に来ている人たちももっと元気ですよ。

南部:元気?

荻上:しっかりと回復に向かって、取り組みを・・・

田代:そうそう。ハームリダクションといって、同じ針使わないで違う針使いましょうとか、覚醒剤に代わる少し体に優しい薬ですよとか…

荻上:ソフトドラッグを使いましょうとか…

田代:そういうのを渡していって、少しずつやめさせる。

上岡:そう。気軽に治療に乗るっていう感じになっているんですよ。フェイスブック上でチェックインして、気軽に自分の薬物の状態を相談できて、追跡的に連絡をくださったりしてね。治療のハードルが低いんです。そうすると、家族も早い段階で相談できるし、本人も早い段階で治療の場に現れるんです。それがすぐにつながらなかったとしても、次に状態が悪くなったときにつながればいいわけでから。

南部:別のアプローチもまた用意されていると?

上岡:そうなんです。

荻上:選択肢として身近にあり続けることが重要になってくるわけですね。いま、医療の話もありましたけど。後半は医療の立場からのお話と、田代さんにも質問が来ていますのでお答えいただきたいと思います。

《CM》

南部:TBSラジオをキーステーションにお送りしている「Session-22」。今夜のメインセッションは「田代まさしさんと考える、薬物依存症の実態と必要な支援とは」とはということでお送りしています。スタジオには元タレントの田代まさしさん、ダルク女性ハウス代表の上岡陽江さんをお迎えしています。後半もよろしくお願いします。

一同:(お願いします)

荻上:では、ここからはですね、医療のお話を伺いたいんですけど、日本でも数少ない薬物依存症の専門医のお一人、埼玉県立精神医療センターの成瀬暢也さんとお電話が繋がっておりますので伺っていきたいと思います。成瀬さん、こんばんは。

成瀬:こんばんは、成瀬です。

荻上:よろしくお願いします。今、医療につながることが重要だというお話を田代さん、上岡さんから伺ったんですけど、現在の日本の薬物依存症に対する医療体制というのはどうなっているのでしょうか?

成瀬:本当にこれは貧困な状況でして、日本は取り締まりについて世界でも一流といわれているんですけど、反面、治療とか依存症になった人の回復支援については、三流以下と言わざるを得ないような状況です。

荻上:三流以下?

成瀬:例えば、薬物依存症の専門医療機関は全国でも10か所程度しかないんですね。

荻上:全国でですか!?

成瀬:この20年間ほとんど増えていません。さらには、薬物依存症を専門に治療している精神科医っていうのは、我が国に精神科医が何万人といるなかで、10人、20人っていう、本当に医療システムも無きに等しいような状況が続いているんですね。でも、海外の先進国に比べて、例えば違法薬物の生涯経験率、一生に一回でも違法薬物を使ったことのある人の率というのが、欧米に比べて一桁は低いんですね。それだけクリーンな国であるということですけれども、我が国は取り締まり一辺倒で対処している稀有な国でもあるんですね。ですので、日本では薬物依存症者は完全に犯罪者だとみていて、病者である視点というのが著しく欠けている、そこが問題だと思います。

荻上:患者としてみる体制が少ないということですけど、これだけ依存症という形で話題になってきても施設を増やそうであるとか、医療者を増やそうであるとかいう、そういう動きはまだまだみられないのでしょうか?

成瀬:これは精神科医からみても一番関わりたくないのが薬物依存症者。どう治療していいかわからないとか、その治療法の前に、まず犯罪者という思いとか、かつての薬物依存症者のイメージである恐い暴力団関係者じゃないか、とかですね、そういった偏見がとても強くて。今は外見だけではなんの患者さんかわからないような、むしろ引きこもっている内向的な青年の薬物依存者が目立ってきている状況なんですけれども、まず、言うことを聞かないだろう、暴れるんじゃないか、関わりたくない、そういった陰性感情、忌避感情っていうのがなかなか払拭できてないという風に思います。

荻上:病院や医者の中でもそういった感情を持っている方が多いということですね。

成瀬:そうですね。「依存症は病気です」ということを言ってはいても、再使用っていうのは症状が出たと捉えるはずなんですけれども、その再使用をしたのを「けしからん」という治療者が多いわけですし、それを良いか悪いかでみていて、病気としてみていないからこそ、症状が出たから責めると。例えばうつ病の人が落ち込んでいるからといって「けしからん」と言わないでしょうし。

荻上:「元気ねえじゃないか、バカヤロウ!」なんてこといったらダメですもんね。

成瀬:認知症の人が物忘れをするからといって、「何やってるんだ」とは言わないですよね、治療者は。それを依存症の人が止めようと思っても使っちゃうっていうのは、これは症状なわけですけれども、依存症だけが症状出たからといって「何やっているんだ」、それも一回出ても「逮捕だ!けしからん!」。これではなかなか治療にはならないですね。だから治療者も意識が特別だという思いと犯罪という意識が強いものだから、患者さんとして、病者として、治療を提供するという意識の問題だと思います。

荻上:当然ながら体制として非犯罪化していく部分が出てくるであるとか、薬物を売ることの罪と単純所持とは分けようであるとか、そうした議論もあると思うんですけど、医療の面からみて、これからどういった取り組みが必要だと成瀬さんはお感じになっていますか。

成瀬:医療の面だけではなくても、とにかく依存症は病気であるっていうことが支援する側の者に共有できないといけないですね。少なくとも精神科医療の範疇で関わる病気なわけですから、精神科医療に関わる者すべてが「依存症は病気である」という認識で、自分たちが関わらなきゃっていう意識をどうやって高めてもらえるかということだと思います。

荻上:成瀬さんは、実際に医師の育成にも関わられていると聞いているんでけれども、これはどういった観点から関わられているんでしょうか。

成瀬:育成というような大げさなものではないんすが、僕が盛んに皆さんにお伝えしたいと思っているのは、この薬物依存症の治療は決して特別なものじゃないということですね。治療の提供する内容にしても、とにかく信頼関係を築いて、その上で動機付けをしていくという、ほかの精神疾患の治療となんら変わるものではなく、それを当たり前に治療者が偏見を持たずに出来るかどうかにかかっていると思います。ですから「診るべきである」とか、「こうしなさい」ではなくて、誰でも出来る薬物依存症の治療とか、こうすれば楽しく関われますよとかですね、そうすれば関わりやすいですよっていうことを一生懸命お伝えしようとはしています。

荻上:そうした仕方で医療機関との間というものを繋いでいく。それは患者が医療機関に来てほしいということもありますし、医療機関の側からより手を伸ばしやすい状況を作っていくということになるわけですね。

成瀬:そうですね。あとは犯罪ということでいうと、覚せい剤の人が受診した場合に通報の義務はないんですね。そういう人が来て今使っているとなったら通報しなきゃならないんじゃないか、っていう風にそれだけで混乱してしまうような状況ですけども、通報の義務はないので、そこだけでも担保して普通に関わってもらえれば、本当は治療が必要な人も、なかなか通報されて逮捕されるんじゃないかという思いがあると、安心して治療が受けられない。それで一人で何とかしようとして悪化していくと。あるいは精神病状態になっちゃう、あるいは自殺しちゃうということになってますね。やっぱり治療・支援を簡単にアクセスできるような工夫っていうものがないと病者は救われないですね。

荻上:そうしたものがアクセスしやすいような社会環境作り、これもまた行政・社会が対応していきゃなきゃいけないなと思います。成瀬さんありがとうございました。

成瀬:ありがとうございました。

荻上:埼玉県立精神医療センターの成瀬暢也さんにお話しをうかがいました。「ダメ、ゼッタイ」ってポスターを貼るぐらいだったら、もうちょっと医療機関とか相談機関がありますよってポスターをあちこちに配布していくような、そうした状況があってほしいですよね。「ダメ、ゼッタイ」って、どう思いますか、田代さん。

田代:やってるダメな僕たちから見ると、ダメ押しされてるわけですよ。使ったことない人にはいい傾向になるかなとは思うけど。

荻上:抑止として。

田代:うん。もう「わかってるのにダメなの、でも止められないんだよ」って、逆に思っちゃう。

上岡:今、一次予防もずいぶん変わってきていて。私、4月19日から21日まで開かれた国連の麻薬対策会議に出てたんですけれども、その中で、アイスランドの一次予防というのが紹介されていて。それは『ダメ、ゼッタイ』ではなくって、『この週末誰と過ごしてる?』っていうテーマなんです。それは、きちんとエビデンスベースで10年単位で研究した結果、高校時代に薬物やアルコールに手を出す子どもたちは、週末にひとりでいることが多い。そのことがわかってきて、高校単位でそれを地域と一緒になって考えて対策を練っていくっていう方法なんですね。

南部:ああ、孤立に向かないように。

上岡:そうです。孤立に向かないようにしていく。それは窃盗とか、その他の犯罪も減らしていったっていうエビデンスが実は出ていて、ヨーロッパの国々は、エビデンスベースの一次予防っていうふうに変わっていっています。だから日本は、おそらく『ダメ、ゼッタイ』ももしかしたら良い取り組みなのかもしれないんだけれども、そのエビデンスはどこにあるのかっていうことを、もうちょっとちゃんと作ったほうがいいかなっていうふうには思います。ただ、本人や家族にしてみると、もともとすごく相談しづらいところで『人間やめますか?』っていうふうに言われると、私と一緒に国連に行った家族のお母さんは泣いてました。「ここの場にいると自分も自分の子供も人間として扱われるけども、私は日本に帰ったら犯罪者の母親だ」って言って泣かれて、私もすごく驚いたんですね。

田代:だって人間やめちゃったんだったらもう、セカンドチャンスはないってことじゃないですか。

荻上:『人間やめますか?』って、やっぱり人間以下だっていうレッテルを社会的に発行するっていうことになるわけですね。

田代:成瀬さんも言ってたように、犯罪色が強い。さっきの有名なホームランバッターがテレビ出ただけで。俺がダルクでスタッフやってるんで、かかってきた電話とか取るんだけど。「なんでお前のとこの団体は犯罪者をテレビに出してるんだ」みたいなクレームがかかってきて。

荻上:はいはい。

田代:「お言葉ですけど、うちの団体みんな犯罪者なんです」って言ったら、「あ、そうですか」って切っちゃうんですけど。

上岡:元犯罪者ね。今、一生懸命薬物を止めることを頑張って支援してるんだけど、それにマーシーが出たっていうのが笑っちゃうね。

田代:いや、出ますよ俺!

荻上:仕事してますからね。

田代:テレビ局のオファーとかも、「ああ、ちょっとうちの田代は・・・」って、俺が出て断ったりしてるんだから。

荻上:ご本人が。最近たとえば再犯防止法が今国会で通ったり、そこで依存症の問題も触れられていたりと。少しずつ変わろうとしてる状況だと思うんですけれども。田代さんにいくつか質問がきています。

南部:「ラジオネーム・起きて寝てるホーリーミカン」さんです。ありがとうございます。「薬物依存症から回復するのは、かなり難しいことだと聞きます。50歳以上に限ると、再犯率は80%ともいわれています。田代さんご自身も何度か失敗しているようですが、ダルクに入ってからは回復の道をしっかりと歩まれているんでしょうか。私はアルコール依存症の回復プログラムとして、ミーティングで飲まない仲間であることを日々確認しあう仕組みは知っています。薬物依存症からの脱却は、自分一人だけの意思や努力では困難だと思います」というご意見です。

田代:その通りです。だから、他の仲間たちとやっぱり確認作業というか。

南部:話す?

田代:話して楽になる。社会にいたら、嘘ずっと付き通さなきゃいけない。正直に「またこの間もやりたくなっちゃったよー」って言える、楽な場所に、自分の意志で、自分の思いでそこに自らいることが大切。

上岡:人によっては、大勢の人が弱かったりするような人たちもいるので、いろんな方法があるっていうことは知っておいて欲しいと思います。

南部:さまざまなオプションが有るんだよと。

荻上:グループミーティングだけじゃないということですね。

上岡:はい、そうです。グループミーティングも必要ですし、モデルとなるような人を見つけることもすごく必要ですが、もしその方が行かれて、「ここは自分にとってしんどいな」と思われたら、また相談されて、別のやり方を探されるといいと思います。

荻上:こんな質問も来ております。

南部:「ラジオネーム 恩田三兄弟」さん。25歳男性の方ですけれども。「私は街で田代さんを見かけたとしたら、声をかけて握手を求めたいほど田代さんが好きです。ただその際、『頑張ってください』とか『信じています』といった言葉をかけてしまうとプレッシャーになるかもしれないからよくないだろうと思ってしまいます。こんなこと言われたら嬉しいとか辛いとかいったものありますか」。

田代:あー、なるほど。ありがたいっすよね。こんな何回もみんな裏切っててもこうやって思って、握手して。だって、俺が主催の本売ったときの握手会でさえ、「握手はけっこうです」って言われたことありますからね。

荻上:そうなんですか!

田代:はい(笑)。

荻上:え、すごいなあ。

田代:「本は買うけど握手はけっこうです」みたいな。「期待はしてるけど信じてはいない」とか。

荻上:触るのも嫌っていうのはなんか、すごい偏見が。

田代:しょうがないよね。言われるのはありがたいけど、前回僕が捕まったとき、みんなから「頑張って頑張って」って、「もっかいステージに戻って」って。「スポットライトの当たるところに一日も早く戻ってください」ってあまりにも言われ続けて。けっこうそれがプレッシャーっていうか。

荻上:背負っちゃって。

田代:うん。それでいて社会は全然許してくれないから。特殊な人たちでしょ、応援してくれる人たちは。世間一般はもう「あいつはダメなやつ」だから。

荻上:特にテレビ業界なんかねえ。

田代:絶対使ってくんないし。

上岡:この間、自助グループのコンベンションていう集まりがあって、600人ぐらい集まったんですけど、札幌で。そのときに、海外から来た田代さんの先輩みたいな人が、白人のラッパーですごい売れて全国を。

田代:ツアーで回ってて。

上岡:ツアーで回ってた人で。

荻上:ええ。

上岡:彼が20年止めたんですって。20年止めて、また再度デビューね。

田代:「有名なミュージシャンのアルバムも作れたんだよ」って嬉しそうに言ってたのを見ると、「ああ、そういうこともあるんだあ」って。

荻上:そうした意味で報道業界とか放送業界とかも変わるべきだし、たとえばロバート・ダウニーJrとか、『アイアンマン』として今活躍していたりして。それはやっぱり映画界とかが受け入れていたっていうこともあったりするわけですよね。そうした中でたとえば、「大ファンでした!」みたいな感じで握手求められるみたいなのも、「過去はそうだったのにな」みたいなことで反芻するみたいなこともあったりするんでしょうか。

田代:まあね、俺はそういう過去を持ってるって、改めて感じる部分なんだけど。前回はそれでダメだったから。今は一日一日、優先しようって思いでいます。

荻上:なるほど。

上岡:ずいぶん変わったねえ。良かったね。

荻上:こんな質問もきております。

南部:「ラジオネーム あんこ」さんから。「薬物依存症のリハビリを始めたときに、行政からこんな支援があれば助かるのにと思ったことはありますか?」

田代:それは、ダルクがしている、俺、近藤代表とか陽江さんのそばで、いつも見てて。やっぱり物入りっていうか、面倒みてくれる。最初は、助けたいという思いで始めただろうけど。だんだんおっきくなってったらさ、やっぱりみんな理解してもらって、支援してくれる人たちがいないとやっぱり、思いだけではやっぱり突き進めない。

荻上:行政のバックアップ、あるいはそもそもの司法などとの連携であるとか、そうしたようなところまで広げていかないといけないですね。

上岡:やっぱ私たちの悩みは、今話してるような薬物=犯罪者みたいな目で見られるっていうことをどうやったら変えられるんだろうかってことを、もしかしたら一番おっきいかもしれない。なぜかって言ったら、それによって家族が一番追い込まれるんだよね。

南部:周囲の人。何人もいらっしゃるでしょうね。

上岡:そう。やっぱり、一番初めに発見するの家族だし。もし子供がいたら子供も巻き込まれるしね。そのときに、そういうふうにバッシングすると、その人じゃなくてとても家族がつらい思いをしているってことわかってもらいたいし。そのためにどうやってわかってもらったらいいかなってのも思ったりしてるんだよね。

荻上:うーん、なるほど。そういうふうなしかたで、今カジノの問題で議論されている中で、僕、昨日も言ったけど、ああいう議論をするんだったら「依存症総合対策法」みたいなものをちゃんと作って欲しいなと思いますけど。

上岡:うん、そうなんですよ。

荻上:でも、再犯防止法なども含めて議論しようという動きは出てきているので、そうしたところに田代さんなどの声を届けたいですよね。

南部:薬物依存症に関する相談をしたいという方は、各都道府県にある精神保健福祉センターにお電話してみてください。

荻上:はい。というわけで、お話したっぷりうかがいましたけれども、またうかがいたいですね。

田代:こんな偉そうなこと言ってたけど、明日はわからないってことを、みなさん理解しておいて欲しくて。

上岡:私もです。

荻上:そういった意識が大事だっていうことですね。

田代:はい、そういうことです。

南部:田代さん、上岡さんありがとうございました。

田代:ありがとうございました。

荻上:ありがとうございました。

上岡:ありがとうございました。

※【全国の精神保健福祉センター一覧】 http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/mhcenter.html

マーシーの薬物リハビリ日記生きのびるための犯罪 (よりみちパン! セ) (よりみちパン!セ)薬物依存症の回復支援ハンドブック―援助者,家族,当事者への手引き

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