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実現した予言、しなかった予言

森本毅郎 スタンバイ!

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忙しい朝でもニュースがわかる「森本毅郎・スタンバイ!」
(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)
8時からは、話題のアンテナ「日本全国8時です」
全国ネットで、日替わりゲストとともに放送。
毎週木曜日は、東京大学名誉教授、月尾嘉男さんの「賢くなれる雑学コラム」!

月尾嘉男

10月20日(木)は「実現した予言、しなかった予言」

★当たった予言

今年1月に亡くなったアメリカの有名な予言者ロン・バードが1年前に、今年(2016年)10月までに富士山が噴火すると予言していますし、日本にも、2014年から2016年、遅くとも2018年までに噴火すると言っている預言者がいます。当たるも八卦、当たらぬも八卦と言ってしまえばそれまでですが、歴史の中にはかなり先の社会の予言で、実現したものが少なくありません。

フランスの作家で「空想科学小説の父」とも呼ばれるジュール・ベルヌは19世紀に、有人の月世界旅行を描いた小説を発表しています(1865年『地球から月へ』と1870年『月世界に行く』)。これは1969年のアメリカによる月面着陸によって現実になりましたので、ほぼ100年前に予言したことになります。さらにベルヌは、ロケットの打上げ場所はフロリダ半島の大西洋上に設定していますが、現在のアメリカのロケット発射基地ケネディ宇宙センターの近くですし、月までの飛行時間を97時間としていますが、アポロ11号が地球を出発して月面に到着するまでの時間が、102時間45分でしたから、これもほぼ当たっています。

アメリカの作家エドワード・ベラミーは1888年に発表した小説『顧みれば2000−1887』で、ヨーロッパを旅行するアメリカ人がクレジットカードで支払う状態を「金と同じくらい役に立つ」と書いていますが、実際、1950年代にアメリカの銀行がクレジットカードを発行していますので、60年以上先の経済活動の未来を描いていたことになります。

イギリスの作家H.G.ウェルズは1913年に発表した未来小説『解放された世界』で1950年代の世界を描いていますが、その中で、飛行機のパイロットが爆弾のヒューズを歯で噛み切ってコックピットの窓から外に放り投げ、一つの都市を破壊しつくすという状況を描写しています。飛行機の発達については予測を誤っていますし、爆弾も手榴弾ほどの大きさになっているなど実現した爆弾とは違っていますが、「原子爆弾」という名前で呼んでいることは正確で、これは1945年7月16日にアメリカのニューメキシコ州で実施された人類初の核実験に先立つこと32年の予言でした。

天才的学者として一時はノーベル物理学賞の候補にもなったニコラ・テスラは、エジソンの研究所にいましたが、送電技術についてエジソンと対立して研究所を1885年に飛び出しています。その後1904年にアメリカの技術雑誌に「人々は世界のニュースや特別な伝言を記録する携帯受信機を持ち運ぶ時代が来て、世界のどこにいても応答可能な社会が実現する」と書いています。トランシーバーのような特定の相手との通信は第二次世界大戦中に実用になっていますが、不特定の相手と通信できる携帯電話は70年代に実現しましたから、テスラは70年先の技術を予言したことになります。

★外れた予言

このように技術自体の将来は比較的見通しができる場合がありますが、それをビジネスにすると、欲がからむせいか当たらない事例が数多くあります。

有名な例はエジソンが1877年に発明した蓄音機です。発明自体は大変な話題になりましたが、エジソンは1880年に「蓄音機には何の商品価値もない」と助手に言ったと記録されていますし、技術の改良にも取り組みませんでした。現在はiPodような個体素子に録音する時代になってしまいましたが、2001年にiPodが発売されるまで100年以上、音楽を楽しむ手段として貢献しました。

またこれも有名ですが、IBMは紆余曲折があるものの、大型コンピュータが実用的な商品になる時代から現在までコンピュータ産業の巨人です。しかし、その初代社長トーマス・ワトソンは1943年に「世界でコンピュータの需要は5台程度」と語ったという伝説があります。これはワトソンの言葉ではなく、IBMの資金援助によって「ハーバード・マーク・ワン」というコンピュータを開発したハワード・エイケンが「各地の研究所に半ダースほどのコンピュータがあれば、アメリカのあらゆる計算需要に応えられる」といった言葉が誤って伝わったとされていますが、いずれにせよ現代の社会にはなくてはならない技術も、初期にはその程度の認識でした。

初期のコンピュータは手作りで、あまりにも高価だったという背景がありますが、コンピュータが安価になった30年後にも同様の間違いは発生しています。1957年にデジタル・エクイップメント(DEC)を創立して、IBMのコンピュータが数億円もしていた時代に、1000万円台の小型コンピュータを開発したケン・オルセンは1977年に「個人が自分の家庭にコンピュータを持つ理由はない」という講演をしています。ところが現在、パーソナル・コンピュータは日本の家庭の80%に普及し、所有している世帯あたりでは平均1.6台になっていますから、大間違いでした。

放射線の性質を解明し1908年にノーベル化学賞を受賞したアーネスト・ラザフォードは、「現在の知識では、原子力エネルギーを利用できると主張する者はたわ言を言っているに過ぎない」と発言しています。しかし、1954年にソビエト連邦で世界最初の商用原子力発電所が実現し、ラザフォードの発言の方がたわ言になってしまいました。

★欲が絡むと予言は外れる?!

このように見てくると、地震予知連絡会はなかなか地震を予測できませんし、火山噴火予知連絡会も十分に予測はできないように、複雑な自然現象の予測は困難のようです。一方、アインシュタインの「重力によって空間が歪む」という理論は3年後の日食の観測で実証され、2人の学者が1974年にフロンによりオゾン層が破壊されるという論文を発表してから10年後には南極上空で事実が確認されているように、科学理論は比較的短期間で実証されています。

しかし、レコードの普及やコンピュータの普及のように人間の欲望が関係すると予測は大幅に外れる例が多いということになります。古来、未来を予測することは人間の欲求ですが、それができないというところに人間の希望があると考え、あまり予言や占いなどに頼らないことが重要だと思います。