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【映画評書き起こし】宇多丸、『HiGH&LOW THE MOVIE』を語る!(2016.9.17放送)

ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル

2016/09/17_pic00

「映画館では、今も新作映画が公開されている。
 一体、誰が映画を見張るのか?
 一体、誰が映画をウォッチするのか?
 映画ウォッチ超人、“シネマンディアス”宇多丸がいま立ち上がる――
 その名も、週刊映画時評ムービーウォッチメン!」

宇多丸:
ここから夜11時までは、劇場で公開されている最新映画を映画ウォッチ超人こと<シネマンディアス宇多丸>が毎週自腹でウキウキウォッチング。その<監視結果>を報告するという映画評論コーナーです。今夜扱う映画は、先週「ムービーガチャマシン」(ガチャガチャ)を回して当たったこの映画……『HiGH&LOW THE MOVIE』!

(BGM: テーマ曲が流れる)

あの、いきなりさ、エンジンのピストンがこうボーン!っていう(OPタイトル映像が)、もういきなりMAX行きます!っていう感じですごかったですけどね。

EXILE TRIBEのメンバーが主演する人気テレビドラマシリーズ『HiGH&LOW〜THE STORY OF S.W.O.R.D.〜』の劇場版。5つのチームがしのぎを削る「SWORD地区」と呼ばれる荒廃した危険な街に、かつてその一帯を掌握していた伝説のチーム「ムゲン」の総長・琥珀が帰ってきたことで波乱の幕が上がった。主演はAKIRAやTAKAHIROといったEXILE TRIBEのメンバーに加え、窪田正孝、林遣都、井浦新ら実力派が出演しているということでございます。

ということで、昨週リスナーメール枠で当たってしまった……「しまった」と言ってしまいましたけども。『HiGH&LOW THE MOVIE』、もう見たよというリスナーのみなさま、<ウォッチメン>からの監視報告(感想)、メールなどで頂いております。メールの量は……普通。「普通」っていう言葉が似合わないぜこの映画、琥珀さんっ! まあ、だいぶね、劇場公開から時間も経っておりますし。でも、これが意外って言ったら失礼なんですけど、賛否でいったら8割方が賛。残り2割が否定的意見。ただし、絶賛派にしても「1本の映画としてはかなり破綻している」と欠点は認めている。また、「ドラマシリーズを見ていない。EXILE、よく知らない。野次馬気分で見に行った」という人も多かった。でも、そういう人も「結構盛り上がっちゃいました」っていう人が多かったんですよね。その上で、「アクションがすごかった」「テンションが高くてセリフも熱い。問答無用で持っていかれた」「どうしちまったんだよ琥珀さん!」と熱狂の渦に巻き込まれていった様子。今回、女性からのキレのある感想メールも目立ったということでございます。

代表的なところをご紹介いたしましょう……

(メール紹介、中略)

……ということで、『HiGH&LOW THE MOVIE』。ごめんなさい、私ね、2回しか見ていないんだけど。非常に濃い2回を体験しました。1回目、初見は新宿ピカデリーで見ました。公開されてから結構経っていたのに、上映回数が減った分か、ものすごく埋まっておりました。で、まずその初回は私、予備知識ほぼゼロ状態で敢えて……「なにも知らない状態には戻せない」っていうのがありますから、知らない状態でまず見た。で、こういう、言わば一見さんお断り型の劇場版。テレビシリーズの続きですよ、とかなにかの話の続きですよとか、そういうのはこれまでもこのコーナーでたくさんやってきたので。『ハリー・ポッター』の最終章の前半だけ、そこだけ急に見るとかやっていますから。その意味では、そこまで僕は知識がないことに関して面食らうことはなかった。一応わかるように説明はついてますし。

それでも、まあ、まずは衝撃を受けました。いろんな意味で。良くも悪くも。「なんなんだ、これは?」っていうね。正直最初は、「おい! 勘弁してくれよ。誰だよ、これ推薦したの!」っていう風に、最初始まってしばらくはちょっとそういう風なのがあったんですが。まあ、そこからテレビシリーズ、シーズン1、2があって両方ぶっ通しで1日かけて見て、資料なども読み込み、一通り事情を理解し……で、ひとまず先ほどのオープニングトークでも言いましたけど、僕は毎週の評でもそうしているつもりですが、その作品にいったんはどっぷり浸かってみる、ダイブしてみる、というところまでいったところでの、2度目がですね……

最初は僕は普通に新宿ピカデリーにもう1回行こうと思っていたんですけども、回数も減っていたんで。そこへちょうどですね、橋本名誉プロデューサー、橋Pに、「応援上映」に誘ってもらったんですよ。で、最初は行けないはずだったんだけど、RHYMESTERのリハーサルが早めに終わって、「行けます!」っていうんで、浦和での応援上映。それも、最終応援上映になるのかな? まあ、あちこちでやっている中で、豊洲は(チケットが)取れなかったみたいな感じで、浦和の応援上映に行けたんですよ。で、とにかくこの応援上映が、超〜〜〜楽しくて! この形こそがある意味『HiGH&LOW』、ハイローの鑑賞の完成形なんじゃないか? という風に思えてきたほどですね。ということで、これは『HiGH&LOW』という、言っちゃえば……これは最初に言っちゃいます。単体の映画作品として評価しようとしても、はっきり言って「単体の映画作品としてどうか?」と言われれば、それはめちゃくちゃダメダメなところがいっぱいある映画なんですが、そういう問題じゃないだろう!っていうのがどうしてもつきまとう感じが出てきてしまう。良くも悪くもイマドキっぽい構造を持つエンターテイメント。『HiGH&LOW』というエンターテイメント、そのあり方の本質に関わる話なので。

じゃあ、どういうエンターテイメントかっていうと、最初に言っておきますけども、まあ「EXILEだんじり祭」ですよね。まあ、久々の「奇祭紛れ込み系」。いままででいちばん近いのは、やっぱり『バトルシップ』だと思いますけどもね。奇祭に紛れ込んじゃったっていうね。『アンストッパブル』って(このコーナーで)やっているんだっけ? とにかく『アンストッパブル』『バトルシップ』系の奇祭紛れ込み系。もしくは、「琥珀さん棒倒し」っていうね。琥珀さんという棒を誰が倒すか?っていう、そういうゲーム、そういう祭なんですけど。とにかくそういうね、単体の映画としてってやると、どうしてもピントがズレてしまうエンターテイメントの本質にかかわる話なので、ちょっとその応援上映がなんでそんなに僕、楽しめたのか?っていう話をしておきます。これは本当に、本質とかかわる話なので。

とにかく、来ているのは当然、筋金入りのEXILE TRIBEファンなんでしょうけど。特にやっぱり、画面上にかける声援の大きさももちろん多少差があって。ああ、いまはやっぱり、三代目J Soul Brothersが人気って聞いていたけど、本当にそうなんだな、と。登坂広臣さん、あと、ガンちゃん(岩田剛典)が出てくると、キャーッ!ってなる。これは本当に納得だし。女性っつっても、結構でも幅広い年齢層なんだな、みたいな感じ。あと、1割ぐらいは男性もいて。男性もしっかり声を出している感じなんですけど。ただ、僕が想像していたのとは全然違ったんです。この応援上映が。っていうのは、もっとファン限定の内向きなムードだと当然思っていた。つまり、僕はEXILEをかっこいいとは思っているけど、その熱心なファンとは言いがたいから。やっぱりファンがキャーッ!って言って、それをある意味蚊帳の外的な視点で、言っちゃえば失礼だけど、「ファンだからなんでも喜んじゃうっていうことなんでしょ? キャーキャーいう感じなんでしょ?」っていう風に事前には予想していたんですね。

ところが、全然そんなじゃなかったんですよ。全然ファン限定の内向きなムードじゃないんです。もちろんね、ファンとしてストレートにアガるところはアガっている。たとえば曲に合わせて盛り上がるみたいな。それはもちろんやっているし、それはそれでもちろんこっちも盛り上がるわけですよ。曲のシーンで盛り上がるのは全然いいんですけど。ただ、そのみなさんの応援というか、発声。なにを言っているか?っていうのは、基本的には、視線としてものすごく批評的なんです。すごく愛にあふれた突っ込み目線っていう感じなんですよ。で、しかもそれがすごい絶妙すぎて、はっきり言って僕、全編もうこんなに映画を見ている間中、爆笑しまくっていたことはない。もう涙を流して笑っていて。

ちなみに、もう予告の時点でちょっとそのムードは出ていて。『闇金ウシジマくん』の今度パート3とファイナルっていうのをやるんですけど。その『ウシジマくん』パート3、そしてファイナル。ドーン!って出た時に、「終わらないでー、終わらないでー」っていう(笑)。「あっ、これは……こいつらは、ひょっとして?」と思ったんで。そのテンションでずっと行くと。たとえばですね、お話上、言っちゃえばそういうヤンキーというか、不良、アウトロー物語なので、当然登場人物たちがやたらとケンカする、ケンカをしそうになるわけですけども。そのたびに、「怒らないでー」「睨まないでー」とかね。あと、怒りそうになって、キレそうになりつつ、そこはグッと我慢して、結局手は出さないってなると、「よく我慢した!(拍手)。えらーい!」とかってやっているわけですよ。

とか、あるいはですね、これ枚挙にいとまがないんだけど、たとえばTAKAHIROさんが演じる雨宮兄弟っていうね、登坂さんとの雨宮兄弟の、お兄さんの方をTAKAHIROさんが演じてるんだけど。そのTAKAHIROさんのバイクがなくなるっていう、ちょっとギャグっぽい展開があるわけです。そうするとね、その手前のあたりから──このバイクがなくなるギャグシーン、僕は初見で見た時は、「笑わせようとしてるんだろうけど、見せ方としてちょっとハズしてないかな? ちょっとこれ、見せ方どうなんだ?」って思って見ていたんだけど──そのバイクがなくなるシーンのちょっと手前あたりから、「ところでお兄ちゃん、バイク大丈夫?」「お兄ちゃん、バイク! バイク見て! バイク、ちゃんと見て!」みたいなことを言って、ゲラゲラゲラとやっているわけですよ。そんな感じ。

とかですね、先ほどから名前を……もうね、オープニングから何回名前を呼んでいるんだ?っていう、AKIRAさん演じる琥珀さん。全ての物語の発端となる、MUGENというグループの創始者の1人なんですけども。特に今回の劇場版はこの琥珀さんが中心的存在なので、当然この琥珀さん絡みの突っ込みは特に熱いというのがございます。たとえばですね、結構終わりの方。要は、スローモーションで琥珀さんが慙愧の念にかられてというか、クラブの室内なんだけど、天を見上げながら「ワーッ!」って大声で泣いているっぽいのがスローモーションで映る。で、後ろはなにか電球みたいなのが割れたんですかね? 床に火花みたいなのがバーッて散っているような場面。で、センチメンタルな音楽が流れる。

これ、シーン単体だけで見ると、それ自体は昨今の日本映画でありがちな、「はい、こういう鈍重な“感動的”演出、本当こういうの嫌だな」と思って見がちなシーンなんですけど、この応援上映ではそこはさすがにEXILEファン。静かに見るべきシーンは静かになるので、琥珀さんが「ワーッ!」って泣いているし、「ポーン……」みたいな感じで音楽鳴ってるし、シーンとして、大人しく見ているのかな? と思いきや……その「ワーッ!」って口を開けたところにかぶせるように、「火花が」っていうことでしょうね、「口に入るよ!」とか(笑)。

あるいはですね、そのちょっと前のシーン。琥珀さんが殴られて……よくありますよね。バーン!って殴られて、口をぬぐうっていう仕草。よくアクション映画でありますよね? 殴られて口をぬぐう琥珀さんに対して、応援上映のみなさん。こんなことを言っていました。「大丈夫、なにも出てないよー!」。これね、要はですね、この『HiGH&LOW』という作品世界、たしかに振るわれている暴力の量とか質に対して、血とかがほとんど出ない。まあ、はっきり言って非常にフィクショナルな暴力の振るい方をするわけです。つまり、そういう、言わば作品としての突っ込みどころ。「こんだけやってんのに、血が全然出てねえじゃん」みたいなそういう突っ込みどころにみなさん、とても意識的になった上で楽しんでいるんですよ。この応援上映のみなさんは。

いちばん感心したのはですね、僕、最初に見た時に「このカット、無駄に長すぎるな」と……さっきのスローモーションで嘆くシーンじゃないですけど、山王連合会の、ガレージなのかな? で、ちょっとしんみりした会話をするようなところで、「こういうしんみりしたカットになるとなんかやっぱり鈍重に……今時の日本映画の悪い癖だな」と思って初見は見ていた、ある長〜いカットがあるわけです。それもね、応援上映で見ていると、そこも一応静かに見てはいるんですよ。しんみりしたシーンで、みんなシーンと見ていると、その長いカットの絶妙な終わり際に、「アハ体験!」って突っ込みが入る(笑)。つまり、このカットが必要以上に長いっていうことを批評しているわけですよ。「アハ体験みたいだよね。無駄にこうやって同じ画を見させられて」っていうことを突っ込んでいるわけ。それをギャグにしているわけ。すげー秀逸だな! と思って、大爆笑しちゃったりとか。

そういうのと、それぞれのキャラクターの見せ場に盛り上がったり、ストレートに応援するっていうことが、完全に等価なんです。突っ込んでゲラゲラ楽しむのと、キャラクターを応援したりして盛り上がるのが、等価なんですよ。そこに僕は、あっ、すげえクレバーなエンターテイメントの楽しみ方をしているなって。たとえばですね、EXILE TRIBEじゃないのに、いちばん声援が多い方だった、「ああ、人気あるな」と思った窪田正孝さん演じるスモーキーというね、キャラクターがいる。そのスモーキーっていうキャラクターはもともとそんなにしゃべんないキャラクターなんだけど、今回特に登場してもほとんどセリフがない。無名街っていう彼の地元のスラム街が燃やされて。その燃え盛る炎の中で窪田正孝さんがセリフはないんだけど、とにかくポージング、佇まい、かっこいい顔の角度。こうやってこう……すいません。ラジオで全く伝わらないと思いますけども。こう、窪田正孝な顔の角度でこう、出てきて。その佇まいだけなんすよ。最初の方は、スモーキーは。なんにも言わないのね。

このスモーキーは、要するに「窪田正孝力」というか、窪田正孝のキャラクター体現力だけで一種強引に説得力を持たせている。で、このキャラクターがようやくセリフを発したその瞬間に、「やっとしゃべった」って(笑)。「ようやくしゃべったね!」みたいな突っ込みが入ったりするわけですよ。つまり、キャラクター造形としてちょっと極端な……「ちょっとこれ、強引じゃない?」っていうところを含めて、そのスモーキーっていうキャラの突出性として、推し要素として盛り上がっているわけですよ。これは面白いなと思ったりとかですね。

同様に、たとえばこれもEXILE TRIBE外部の若手実力派っていうことなんでしょう。林遣都さん演じる日向っていうね。達磨一家っていうちょっと和風なクルーがいて、その達磨一家が、要はさっき言った『マッドマックス』風にSWORD地区連合会がどんどんどんどん集結してくる……要は、だんじりのあれが来るわけですよ、山車(だし)がね。ガーッと集まってくるから盛り上がる。で、EXILEだんじり、始まるぜ!っていうところで、達磨一家の、クラシカルなアメ車かなんか、車のボンネットに、ボスの日向がふんぞり返って乗っかっていると。まずこれ自体が祭チックっていうかね、神輿の上に乗っかっているようなものですから。「ウェーイ!」って。当然、「達磨通せや!」って(決めゼリフを言って)。

で、その一種のバカバカしさ込みで、この時点ですでにアガるんだけど、戦いが終わって……っていうか、戦いっていうか「琥珀さん棒倒し」。琥珀落とし祭。琥珀を落とした方が勝つという祭が終わって、「はい、琥珀落ちました!」「なんだ、終わりか……」って三々五々解散していく。で、この三々五々解散が本当に、もう本当にですよ。さっきまで結構生きるの死ぬのの戦いの話をしていたはずなのに、「おつかれ〜」っつって(笑)。冗談抜きで、「おつかれ〜」って言いながら、しかも相当に名残惜しそうに、みんな帰りたくなさそうに帰っていくという。まあ、祭がね、解散するんだけど、その解散していく時もこの日向さん、またボンネットに乗っかっているわけですよ。すると、そこですかさず応援上映の客席から「ちゃんと座席座って! 危ないよ!」みたいな(笑)。要するに、その日向の「なんなんだお前そのポーズ」みたいなの、込みでの魅力なんですよね。そこもわかった上で、ちゃんと盛り上げているっていうことなんですよね。だから、バカにしているようだけど、でもやっぱり愛して盛り上げているっていう、この非常にクレバーなスタンスなわけです。

他にもですね、さっきのメールにあった通りですよ。後にキーとなるアイテムをポーンと受け渡しするところで、要はそのアイテムがなんなのか、ちゃんと説明を先にしておけば、こんなに問題こじれなかったのに……まあ、後でこじれるわけです。後からそれを言うからこじれるっていうのがあるんだけど、そのポーンって鍵を渡す時に、やっぱり応援上映の客席。「ちゃんと説明して!」って突っ込みが入ったりとかですね(笑)。他にも、いろいろありますよ。人の話をちゃんと聞かないでプイッと行こうとすると、「ちゃんと聞いてー」とか。あと、雨宮兄弟が無名街にやってきて、(行方不明になっている一番上の)兄さんを探している、と。でも、TAKAHIROさんのほうがすぐに「もう行こう」って言いだすから、(登坂広臣演じる)弟も思わず「はぁっ?」って言うんだけど。その場面でも、「もっとちゃんと探してー」って(笑)。とにかくもう、いちいち最高なわけです。

ちなみに客席からの突っ込みがいちばん激しかったのは、琥珀さんの親友。MUGENの創始者、龍也っていうね、井浦新さんが演じてますけども。と、九十九さん。さっき言った琥珀さんの相方が車に跳ねられるっていうくだりで、「歩道戻って〜!」「左右確認して〜!」「琥珀さん、後ろ、後ろーっ!」(笑)。もう、ここの盛り上がりが「ワーッ!」って半端なくて。この場面を含めてですね、この『HiGH&LOW』は、過剰に回想シーンが多いのも特徴なんですが。特にテレビシリーズの段階ですでにね、要はバックストーリーの説明みたいなのを回想で済ますということが非常に多いんですね。なのに、今回の映画版は、その回想をしている場面をさらに回想するっていうところが出てくるので、要は普通の単体の映画作品としてはぶっちゃけめちゃくちゃな作りですよ。こんな作りはダメだよっていう作りをしているんだけど、ちゃんとそこで応援上映。「ハイ、回想入ります」「ここ、回想の回想でーす!」とか(突っ込みを入れている)。

あと、そこの回想でちょっとね、会話シーンでちょっと人物の位置関係がわかりづらいぞ?っていうところは、「左にいまーす!」とか(笑)。そういうのが入っていたりするとかね。ということで、要はフラットに映画として見て、「これはでも、映画としたらちょっとさすがにどうかな?」って思ったところほど、楽しめるわけですよ。しかも、それがエンターテイメントとしての『HiGH&LOW THE MOVIE』の楽しさを損なっていない、どころか、むしろ増しているということなので。まあ、初見でだから普通にいったん見て、そこからの応援上映っていうこの順番、僕が観た順番は非常に正解だったなと思います。

他も面白いのがいっぱいあったんだよね。登場人物が後ろを向いているカットで、「こっち見て〜」って声をかける。で、まさにその通り振り返ったところで、パッとカットが切り替わると、(当然また登場人物の後頭部が映っているので)「こっち見て〜」ってまた言う(笑)とか。まぁとにかく、こういうことです。全ては、見る人がいろんな角度、いろんな切り口、いろんな入り口──それこそ突っ込みどころも含めて──いろんな入り口から楽しむための、言っちゃえば「ツール」であり、「パーツ」であるような、そういうエンターテイメントなんだなって思ったの、『HiGH&LOW』は。そういうことがよりクリアに見えた応援上映でございました。

まあ、応援上映に関してはいろいろ情報というか、僕も知らないことがいっぱいあって。たとえば、どういう風に広まっていったのか……ある程度のテンプレがすでにあるようで、それが広まっているらしいとか。元はやっぱり、『KING OF PRISM by PrettyRhythm(キンプリ)』応援上映らしいとか、さらに行けば『テニスの王子様』(のミュージカルが源流なんじゃないか)とか、いろいろな話があるので。これ、実は近日、ちょっと『サタデーナイト・ラボ』で特集しようかと思って、カネジュンさん(金田淳子)に、この後の放課後クラウドで、その予告編みたいな形でちょっと応援上映についてお話を伺おうと思っています。

とにかく、突っ込みどころがあるからこそ、単体の作品としてはダメダメなところが多いからこそ、ファンの参加意識が生まれる余地があるっていうのは、これはそれこそ元祖参加型映画の『ロッキー・ホラー・ショー』がまさにそうだから。ある意味カルト作品の必須条件なわけですよね。隙があるっていうのは。なので、まあこういう風になるのもすごく納得できるんだけど。特に『HiGH&LOW』の場合はですね、さっき「全ては楽しむためのパーツ」と言ったけど、否定的なメールにあった通り、そもそも物語の世界観自体がいろんなパーツの寄せ集めなわけです。チームごとにいろんなカラーがある。まあ高橋ヒロシさんの漫画『クローズ』『WORST』っぽかったり、『新宿スワン』プラス『時計じかけのオレンジ』っぽかったり。当然『TOKYO TRIBE』風もあったり、松本大洋さん風があったり、(リスナーからのメールで指摘されていた)『HUNTER×HUNTER』とかいろいろありましたけど。まあHIROさんという方は、自分が若い時に影響を受けたものを、割と直接的にフィードバックするところがすごく強い人だと僕は思っていて。なので、やっぱり90年代文化が非常に中心になっているなというのは思ったんだけど。

全体としては当然、石井聰互の『爆裂都市 BURST CITY』のカジュアルかつラグジュアリーなアップデート版という感じもある。組織っていうかコミュニティーに属さない最凶/狂の兄弟がいるっていうのは、全然キャラクターとしては違うけど、やっぱり『爆裂都市』を思わせるし。あるいはMIGHTY WARRIORSみたいに完全に今時なヒップホップ、クラブ的なチームもいたりとかっていうことで。まあ、とにかくいろいろ要素を挙げていくとキリがないくらい、過去のアウトロー、不良チームものエンターテイメントの様々なパーツのある意味、寄せ集めなんですよ。なので個々のディテールとかを取り出すと、まあどこかで見たような感じ……なんならちょっと陳腐化しかけているイメージ。何度目の焼き直しなんだ?っていうイメージばかりではあるんだけど、この『HiGH&LOW』では、そのそれぞれを、やっぱりパーツとして割り切って提示してくる。

なので、個々の設定とかバックストーリーとかは、ものすごーく雑な回想説明でさっさと済ましたり、さっき言ったスモーキーみたいに「もう、佇まいだけでわかるっしょ? こういうキャラ、わかるっしょ?」みたいな感じでさっさと済ませて。で、パーツはパーツとして提示して、それを自由に組み合わせて遊び倒せる物語空間を作りましたよっていうこと。そっちの方をキモにしているっていうことだと思います。要するに、ここから先はなんでも入れられる。どんだけでも拡張できる、拡張性があるっていう感じだと思うんですよね。仮面ライダーで言えば、やはりディケイド。『仮面ライダーディケイド』に非常に近い試みじゃないかなと思います。その意味では、今回の劇場版はさしずめ『仮面ライダー×仮面ライダー』『MOVIE大戦』みたいな、それ的なものだと思いますね。

戦いのシーンにその都度、クルーというか主人公たちの「主題歌」が流れるっていう感じも、まあ特撮ヒーローのノリ、ちょっと近いかなという風に思います。で、そのパーツ全部ブチ込み感、過剰な足し算感と、異常に割り切った、通常のストーリーテリング的な手順の切り捨てという、この『HiGH&LOW』というエンターテイメントの良くも悪くも特徴的な部分が、今回の劇場版はより突出したものとして凝縮されているので、門外漢はむしろテレビシリーズから順番に見て理解してから見るより、まずこれを見て、ショックを受けた方がいいかもしれないという風に思いましたね。

ただ、これ忘れちゃいけないんだけど、『HiGH&LOW』はたしかに記号的なイメージの集積なんだけど、同時に、それをどこまでも具体的で肉体的なアクション、格闘シーンの、最新かつ最高に贅沢な進化系として見せ切っている。その意味で、すごい志が高い作品でもあると思います。美術とかセットの豪華さ、カメラワークの斬新さ。それら全てと連携して、チームごと、キャラクターごとの個性もしっかり表現したアクション演出。今回の映画もすごいですし、テレビシリーズもこのレベルを毎回、毎週テレビでやっていたっていうのも結構画期的なことだと思います。ここで達成したものが今後、日本映画のエンターテイメントに残すものはすごく大きいと思いますし。なにが素晴らしいって、これらをしっかり自分のものにして、きっちり体現できちゃっている、やっぱりLDH、EXILE TRIBE組の圧倒的身体能力の高さ。なんでこんなに動けるの?っていう。足のきれいな上がり方とか。とにかく僕、「LDHは新世代のJACか!?」って本当に思いましたね。

で、実際に格闘アクション映画というのは、以前『チョコレート・ファイター』評の時にも言いましたけど、限りなくミュージカル映画に近い作りになっていくものなんですよ。振り付けと、それを体現する演者の体技こそが作品の中心的な価値になるという。その意味で、EXILE TRIBEが映画を作った時に、そういう格闘シーン=ダンスシーンの羅列、しかも、主題歌を必ず流しながらっていうものになるのは、非常に理にかなった話だという風に思います。しかも、その戦いの物語が、ここも重要ですが、実際の、現実のEXILE TRIBEサーガ。つまり、HIROさんが考える「俺たちの歴史」のメタファーとしても読めるわけですよ。「本当の脅威は、旧芸能界と外国勢力……か?」みたいなところとかね。

ということで、様々なパーツ、様々な入り口を取っ掛かりに、受け手が能動的に、勝手に楽しむ余地を残す、とってもイマっぽいエンターテイメント。だから特に今回の劇場版、どう考えても琥珀さんの行動はめちゃくちゃというか理屈がよくわかんないんだけど、もうそれは山王連合会とかと(心情的に)シンクロして、「琥珀さ〜んっ! なんでわかってくんないんすか〜っ!?」ってこう、そのわかってくれなさを楽しんでナンボ。っていうかみんな、琥珀さん好きすぎだろ?っていう。敵は敵で、どうしても琥珀さんを利用するという手順を踏まないと気が済まないっていうね。「構いたい」っていう。で、AKIRAさんがこの琥珀さんの佇まいを……園子温監督の『ちゃんと伝える』評の中でも言いましたけども、あのデカい身体を持て余している感じの不器用感が、やっぱり本質として素朴ないい人、っていうのがにじみ出る感じで、素晴らしい佇まいだったと思います。

まあ、いつの間にか琥珀さんを落とすか落とさないかが戦いのルールになっているのとか、ちょっとね、なんかよくわかんないけど、これはこれで……次作の『THE RED RAIN』が琥珀さん中心の話じゃなくなるとしたら、こんなに乗れるのかどうか不安だっていうぐらい。敢えて最後に(ややマジに)突っ込ませてもらうなら、ちょっとレディースたちっていうか、女性像がちょっと古くさいですよね。「幼い」とすら言っていいかもしれない。男の子たちの同性世界で邪魔なのはわかるけど、だったらむしろ、こんだけ古くさい、「おにぎり作ります」みたいなそんな描き方なら描かない方が……ただ、MIGHTY WARRIORSの大屋夏南さん演じるセイラ。あれが超かっこよかったから、そこもまぁよしっ!って感じで。

ということで、全ての映画がこんな感じのエンターテイメントになっていったら、それは私は映画から離れてしまうかもしれませんが。「これでいいのか?」っていう感じもあるけど。この『HiGH&LOW』に関しては、これはこれで、僕はこういうエンターテイメントとして、超絶楽しんでしまいました。ぜひ劇場で、応援上映を。9月29日にピカデリーでもやるらしいんで、ぜひ行ってください。応援上映がおすすめ!

(ガチャ回しパート中略 〜 来週の課題映画は『スーサイド・スクワッド』に決定!)

以上、「誰が映画を見張るのか?」 週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。

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