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【映画評書き起こし】宇多丸、『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』を語る!(2016.9.10放送)

ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル

『グランド・イリュージヨン 見破られたトリック』

「映画館では、今も新作映画が公開されている。
 一体、誰が映画を見張るのか?
 一体、誰が映画をウォッチするのか?
 映画ウォッチ超人、“シネマンディアス”宇多丸がいま立ち上がる――
 その名も、週刊映画時評ムービーウォッチメン!」

宇多丸:
ここから夜11時までは、劇場で公開されている最新映画を映画ウォッチ超人こと<シネマンディアス宇多丸>が毎週自腹でウキウキウォッチング。その<監視結果>を報告するという映画評論コーナーでございます。今夜扱う映画は先週「ムービーガチャマシン」(ガチャガチャ)を回して当たったこの映画……『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』!

(BGM: テーマ曲が流れる)

ドヤ感がハンパないですよね、この曲(笑)。曲のドヤ感。「どうだ!?」っていうような感じがね(笑)。

イリュージョニスト集団「フォー・ホースメン」とFBIの攻防を描いた前作『グランド・イリュージョン』の続編。ハイテク企業の不正を暴露するため、フォー・ホースメンは新たなショーを仕掛けるが、何者かの策略により失敗に終わってしまう……。ジェシー・アイゼンバーグを筆頭に、ウディ・ハレルソン、マーク・ラファロ、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマンら豪華キャストが再集結。また、新たな敵をダニエル・ラドクリフが演じている。監督は前作から変わって『G.I.ジョー バック2リベンジ』のジョン・M・チュウが担当ということでございます。

こちら、『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』を見たよというリスナーのみなさま、<ウォッチメン>からの監視報告(感想)、メールなどで頂いております。メールの量なんですが、うーん……残念ながら少ないということで。ああ、そうですか。全体の4割が賛、もしくはやや賛。残り6割が、「楽しかったけど、でも……」もしくは、「ダメ」という感想。全体的にそれほど評価が高いというわけではなかったようでございました。主な意見としては、「役者たちの豪華な共演が楽しい」「単純にケイパーものとして楽しかった」。まあね、チーム強奪ものというか。後ほど、このワード出てきますけども。「ケイパーものとして楽しかった」という声がある一方、「イリュージョンやマジックは全てCGに見えてしまって驚きがない」といった声も多かった。また、前作(一作目)との比較では、「前作よりよかった」派と「前作を台無しにしやがって!」派で真っ二つに分かれていたということでございます。代表的なところをご紹介いたしましょう……。

(メール紹介、中略)

……はい。みなさん、メールありがとうございました。ということで、『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』。私もTOHOシネマズ渋谷とみゆき座で見てきたんですけど。これね、僕が見た回はどっちもすげー入ってましたよ。結構入っていた。昼間の回から。まあ、やっぱりなんとなくケイパーもの的な雰囲気で、一定量の面白さが保証されている感じがするのかな? あとは一作目の人気がそれなりにあるということでしょうか。ということで、続編なんですけどね、今回。いろんなパターンがあるわけです。もちろん、続編って言っても。この原題『Now You See Me 2』の場合、まずはっきり言えるのは、この二作目を見てから一作目にさかのぼるという順で見るのは、絶対にやめた方がいいということですね。

なので、一作目を見ていなくて二作目から見てしまったという方は、もう一作目にさかのぼらない方がいいと思いますっていう(笑)。っていうのはですね、一作目の『グランド・イリュージョン(Now You See Me)』。2013年。結末にある大きなどんでん返し。それも、それまでの話を根底から覆すような大きなどんでん返しがあるわけですね。まあ、今日どんでん返し、できるだけネタバレしないように言いますけども。そういうどんでん返し要素が非常に多いシリーズなので、気をつけながら話しますけども。まぁ、どんでん返しが最後にあるわけです。今回の続編は、もちろんその(一作目結末の)どんでん返しが明かされた「後」の話なので、これを見た後に一作目にさかのぼっても、たとえばそのどんでん返しに関わるある登場人物が、いろんなことにいちいち驚いて見せたりするわけですけど、いちいち驚いて見せたりするのが非常に白々しく見えてしまうと思うんですよね。

ただでさえ、どんでん返しに向けてミスリードをするわけですけど、ちょっとそのミスリードが、反則気味のところがあるなっていう作品でもあるわけですよ。この人は実はこうでしたっていうのが。「だったら、この人が1人のときの主観視点の時にも、なんでこんなに驚いた描写が入るの?」みたいなのとか。おかしいでしょうみたいな。ちょっとミスリード、反則気味なのがあったりするぐらいなので。この二作目からさかのぼるとさらに白々しく見えがちではないかと。加えて、今回の二作目。『見破られたトリック』の方にも、最後の方に同じようにやっぱりそれまでの話を根底から覆すような、どデカいどんでん返しがつくわけですね。なので、ちょっと字幕だとわかりづらいですけど、オープニングとエンディングにあるナレーションがつくんですけど。そのナレーション、全く言葉上は同じことを言っているはずなのに、意味が180度変わって響くという、そういう仕掛けがあったりするという感じなんですけどね。

とにかく、それまでの話を根底から覆すようなどんでん返しがつくんだけど、今回の二作目の場合、その「それまでの話を」っていうのは、一作目まで含むんですね。一作目まで含めて、根底からひっくり返すようなどんでん返しが最後につくため、特に一作目が好きな人ほどですね、完全にハシゴを外されたような気持ちになることは間違いないと思いますね。少なくとも、今後一作目を見直しても、さっき言ったようなもうひとつのどんでん返しの件と合わせて、非常に微妙な気分にならざるをえないことになってしまうのは間違いないんじゃないかと思います。ちなみにこれ、脚本を書いているわけではないので彼のせいではないはずなんだけど、今回の二作目の監督を引き受けたジョン・M・チュウさんという方。『G.I.ジョー バック2リベンジ』という作品。『G.I.ジョー』の二作目をやっているんだけど、これも同様の、一作目丸ごとちゃぶ台ひっくり返しの続編でございましたということは、一応付け加えておこうかと思います。

またね、一作目のちゃぶ台ひっくり返しがあると言いましたけど、お話として、映画としての作り自体もある意味、一作目と非常に対照的な作品になっております。今回の『見破られたトリック』。要はマジシャン、イリュージョニスト、手品師。なんでもいいですけど。集団による、いわゆる「ケイパーもの」。チーム強奪ものですね。みなさんがわかりやすいところで言えば、『ミッション:インポッシブル』とか。『ワイルド・スピード』シリーズも後半はね、割とケイパーもの化していますし。近年だと『ペントハウス』なんていう傑作もあったりなんかしましたけどね。あと、変形型だと『インセプション』とかね。あれだってケイパーものですけども。ケイパーものというジャンルであることには変わりないんですが。一作目はむしろ、その強奪する者を、追う側の視点。つまり、マーク・ラファロが演じるFBI捜査官側の視点が一作目はメインなわけです。一作目は。

言ってみれば、要はルパン一味を追う銭形警部的な視点が中心の話だと思ってください。銭形警部の視点でくる。で、追う者……銭形警部=観客は、その視点より常に一歩先んじている主人公たち、フォー・ホースメンが次々と仕掛けてくるトリックに、翻弄される。「ルパ〜ン!」って追っかけている銭形(=観客の視点)が、まんまとそのトリックにはまって翻弄される、その「まんまと翻弄される感覚」こそを楽しむのが、一作目だったということですね。で、これはまさしくマジシャン、イリュージョニストのショーを見る感覚、楽しむ感覚に似ていますよね。僕らはもう翻弄されるわけです。で、実際になにがどうなったか? はわからないまま驚かされる。そこを楽しむという構造になっていると。そこにさらに、ルイ・レテリエという監督の、はっきり言って必要以上にグワーン、グワーンって、常に、全く必要ないところまでグワーン、グワーンって動き回ってるカメラ。(そのカメラワークに)頭をグワングワンされているような感じがずーっとする、というの込みでの作品でございました。

ただ、先ほどのメールにもありましたけどね。これ、なにも『グランド・イリュージョン』だけの問題ではなく、そもそも「映画と手品、マジックというものの根本的な相性」という問題がございまして。以前、『シネマハスラー』の超初期ですね。2008年6月7日にやりました『幻影師アイゼンハイム』を評した時にも僕、指摘しましたが。要は、映画っていうのはそもそも時空を好き勝手にねじ曲げられるメディアであるため、その中でマジック、手品的なものを見せられても——手品っていうのは、要はわれわれがこうだと思っている物理法則なりが、ねじ曲げられた、飛び越えられた、ように見えるトリックで、「おおっ!」と驚かせるわけで——つまり、映画はそもそも時空をねじ曲げられて当たり前のメディアなので、特にいまみたいに映画とか映像メディアに対するリテラシーがある程度、観客側にも高まっているいまとなっては、正直僕ら、映画の中で手品を見せられても、「そんなの、なんでもできるでしょ?」って驚けないわけですよね。よっぽどワンカットで、なおかついまだったらCGを使ってないですよっていうことをすごく意識的に強調した見せ方でもしない限り、驚けないと。

その意味で、たとえば劇団ひとりさんが監督された『青天の霹靂』(※宇多丸註:2014年6月7日ウォッチ済み)のオープニングシーン。大泉洋さんがしゃべりながら、自分の人生を嘆きながら一連のマジックをして見せるんですけど。あれなんかがいちばんクレバーな見せ方だなという風にね。そういう意味で『青天の霹靂』はやっぱり、あのオープニングシーンは素晴らしかったですね。とか、思うんですけども。ということで正直、一作目の『グランド・イリュージョン』はやっぱり、「とは言えこれだったらなんだってできちゃうよね?」っていう感は否めなかったと思うんですよね。特にこれはね、今回の続編でもある意味進行しているんだけども。先ほどのメールにもあった通り、催眠術が無双すぎる(笑)。もう、とにかく催眠術を使えばなんでもできるだろ!っていうことになっちゃっているということはありますけどね。

ただ一方で、これは一作目の『グランド・イリュージョン』で僕、すごくよかったところなんですけど。オープニングでジェシー・アイゼンバーグ演じるアトラスが見せるあるマジックがあるんですけど。これは映画というメディアならではの仕掛けで、すごくうならされました。タネはなんとなく想像はつくんだけど、要はその観客という安全圏にいるつもりだったこちら側の、しかも心理ですよね。心理までもスクリーンの中から見透かされたような気がする。「えっ、なんでわかったの?」って、やっぱりリアルに思うんですよ。カードをシャッフルして、「心の中で(カードを)決めてね。あなたが選んだカードは、これですね?」「えっ!?」っていう。なんとなくタネの想像はつくんだけど。つまり、僕がよく言う映画の醍醐味。「見る/見られる関係の逆転」っていうのが一番スリリングだって言っているけど、それの究極系ですよね。「お前の心の中もこっちは見ているぞ」って言われている感じがして、「うわっ!」ってなる。そのオープニングの素晴らしい仕掛けのインパクトである意味、その後も引っ張るというところはあったかもしれません。

とにかく、観客側がフォー・ホースメンたちに一方的に翻弄される快感。まさにイリュージョン、マジックショーと同様の構造のエンターテイメントっていうのが一作目の『グランド・イリュージョン』だったという風に私は思うわけですね。で、今回の二作目『見破られたトリック(Now You See Me 2)』はですね、ある種それに比べると、より「普通の」ケイパーものになっているということは言えるんじゃないんでしょうか。つまり、フォー・ホースメン側の視点から、どういうトリックを仕掛けようとしているか? 仕掛けているか? タネ明かしは先にしておいて、それを成功させられるかどうか?っていうところに焦点を絞っている。これ、言い方を変えると、「サプライズ」より「サスペンス」を取った作りっていうことですよね。驚かせるよりも、それが成功するか、ハラハラ・ドキドキの方を取っていると。

で、たとえば終盤の、先ほどからどのメールでもあったように……だからこの映画の中で白眉というか、いちばん印象に残るシーンということですね。中盤、カード形のチップをまさにカードマジック的にリレーしていく。本当にアホらしくも楽しいシークエンス。この場面、なにがアホらしいって、さっきスタッフのみんなでキャッキャ話していて、もう爆笑しちゃったんだけど。これ、ディレクターの小荒井さんが指摘したんだね。カードを持っているかどうか、調べられるっていう。それでハラハラするんだけど、調べられ終わったやつにパスしていきゃいいものを、わざわざこれから調べられるやつのところにばかりカードが回るっていう(笑)。「逆だろ、それ!」っていう(笑)。まあ、このアホらしい感じ。

でも、要はケイパーものっていうのはどこかしら漫画チックな、その荒唐無稽とリアルのバランスっていうのがすごく大事なわけで。やたらとそのリレーが長いところも含めて、僕はその漫画的な快感みたいな、ケイパーものならではの快楽にあふれていて、僕はこの場面、すごい好きなんですよ。ものすごい不自然な行動、パンッ!(と手を叩いてカードをキャッチする)とか(笑)。もうおかしくてしょうがないんですけど。そういうような、いわゆるケイパーものとしての見せ場があって。で、最後の最後、いちばん大きなトリックだけはサプライズとして用意されているんだけど、これもどっちかっていうと、モロに『スパイ大作戦』。『ミッション:インポッシブル』っていうよりは(テレビシリーズのほうの)『スパイ大作戦』。(『スパイ大作戦』の映画版である)『ミッションインポッシブル』では唯一、『ローグ・ネイション』だけがやっていたあのオチですね。要は、悪役に対する罠、逆襲という物語的機能の方が強い最後のサプライズなので。

要は、あれをイリュージョンのショー的に、外側にいる聴衆の視点で見たら、実はよくわからない見世物になっちゃっているわけですね。あくまで内側の視点でこそ面白い話という。だからたぶん、あえて理屈をつけるなら、テムズ川で見ている観客は、僕たちが映画で見ているそのままの映像を外から見ていた……ということじゃない限り、単にテムズ川の上に乗った箱からなにか大きなものが出てきたっていう、「はい、だから?」っていうことになってしまう見世物。ある意味、だから映画としては普通なんですよ。内側の視点で話が進んでいくわけだから、むしろ正攻法な作りになっている。ということで、いろんな意味で一作目とは非常に対照的な作品になっているため、一作目に対する評価、思い入れによって本作の感じ方、大きく変わってくるのは当然のことだと思います。

僕はというと、僕はさっきから言っているようにケイパーものというジャンルが大好きなので、その比重が高まったということはもちろん大歓迎でございますし。特にさっき言った、カードリレー。カードを回していくシーンや、序盤で新型携帯発表会に潜り込むというくだりでのスピーディーなコメディー演出の感じ。あれ、もう完全にコメディータッチですよね。すっごく楽しい。ポンポンポンッと服を替えていって、とかね。あと、「電話かけさせろ!」って(トリックを仕掛けられた側が)パッと電話を取ろうと思ったら、アレだった、みたいなあたりとかも気の利いたギャグだと思います。

で、先ほど言った一作目のハシゴ外し的などんでん返しも、一作目を好きな人が怒るのはもちろん当たり前だと思うんだけど。一作目ファンに対してこんなのはどうなんだ? とは思うけども、そもそも僕は一作目を見ていて、一作目に設定されている対立項……つまり、「マジックvs合理主義」みたいな対立項の立て方が、「え、そういう問題?」「マジックって別に魔術じゃないから。マジックだって合理主義でしょう。別に対立してなくない?」っていうちょっと釈然としないものを感じていたので、その意味では納得度が高まりました。あと、悪役とされている人の恨まれ方が、「うん、逆恨みだね」っていう感じがしていたので。まあ、今回も、たとえばあいつが、(今回の敵役のダニエル・)ラドクリフが、またしても「マジックに科学が勝った!」みたいな、そういうなんか「はあ? そういう問題じゃねえだろ?」みたいなセリフ(を言ったり)、チョロチョロ出てきたりはするんですけど。

あと、前作のヘンリーという女の子を演じていたアイラ・フィッシャーさんが妊娠したため、新メンバーとして加入したリジー・キャプランさんが演じるルーラという役の悪趣味芸。特に登場シーンとか、あとコックさん、シェフに化けるところでの自傷ネタは僕、大変好みでしたし。あと、ウディ・ハレルソン。今回一人二役をやっているんですけど、楽しそうすぎる一人二役もまあ楽しいっていうことがございます。

ただ、もちろんね、はっきり言って突っ込みだすとキリがないぐらい、もう本当におかしなところが山ほどある映画です。もう、穴だらけっちゃあ穴だらけな映画だと思います。まず、やっぱり特にクライマックスの計画ですよね。どんだけ人員と資金がいるんだよ? と。事実上、悪役の3人以外全員グルで初めて成り立つ計画ですよね、これ、っていう。それってもう、上手く行くとか行かないじゃなくない?っていう感じだとかですね。あまりにも全てが主人公たちに都合よく事が運びすぎ——1個1個突っ込んでいくとキリがないので省略しますけど——なのは言うまでもなく、実はですね、お話の本筋に不要な、見せ場のための見せ場があまりにも多くてですね。

たとえば、バイクで逃げるっていうくだりがありますね。バイクで逃走を仕掛けるっていうくだり。あれ、全然あんな場面にする必要、全くないですよね。単に捕まったっていうだけでいいのに、バイクの見せ場みたいなのをわざわざつけようと。しかも、大して盛り上がらない。このジョン・M・チュウ監督。さっき言った『G.I.ジョー バック2リベンジ』。アクションシーンがすごいよかったんですけど、あれはイ・ビョンホンがアクションコーディネーターとしてチョン・ドゥホンさんっていう優秀な方を連れて来て、それを入れていたからよかったということなのか、はっきり言って今回の『見破られたトリック』に限って言えば、ジョン・M・チュウさん、アクションの見せ方、全然上手くないっす。もうぶっちゃけ、下手っす。

マカオでの格闘シーンもそうですし、さっきのバイクのシーンもそうですし。目まぐるしくカットを割って、やたらとカメラを揺らすばっかりで、もう何がなんだかよくわからないことになっている。まあ、うがった見方をすれば、その後のトリックの若干の力技なところを、そういう見せ方の荒っぽさでごまかしてるのかな?っていう気もしなくもないんだけど。こういう、とにかくお話上、本当は必要ない見せ場のための見せ場をバッサリ削ってもっとタイトにすれば、ケイパーものとしてもっとキビキビしたプロフェッショナルな感じが出て、絶対にもっとよくなったはずだと思うんですけどね。

あとはもちろん、大どんでん返しのインフレっていう問題があります。特にやっぱり今回の映画ですね、一通り話が終わってから、要するに事件が解決してから、さらに10分ぐらいね、「実はこうでした。実はこうでした」っていう説明が続く。しかも、言葉でクドクドクドクド説明するのが続くわけですね。理屈的に、特に一作目との整合性的におかしなところもさることながら、ねえ。だって……もういいや。ちょっとネタバレになるから。とにかく、一作目と考えれば考えるほど整合性のおかしなところもさることながら、要はあまりにも大きなどんでん返しが連続して続くと、観客っていうのはですね、結局、「うーん……もうなんか、なんでもいいや」っていう気持ちになってくるんだと僕は思うんですよ。

先週、『後妻業の女』で「大きすぎないどんでん返しが要所に配置されていて、とてもいい」って言ったけど、それと好対照な話だと思います。要は一時期ね、アメリカ映画でも『ワイルドシングス』だの『レインディア・ゲーム』だの、「実はこうでした。実はこうでした」っていうひっくり返しがいくつも最後に重なるタイプの映画が流行ったことがあるんですよ。でもとにかく、まさに妹尾(匡夫・番組アドバイザー)さんが言うところの「後出しジャンケン」なんですよ。後から、「こうでした、こうでした。実は嘘でした、実は嘘でした」って、なんだってできるわけですよ。そのうち、「もうなんでもいいよ!」っていう気持ちになってくるというね。

で、今回の『見破られたトリック』でも、たとえば終盤ね、苦労して盗んだチップが、「あれっ? 偽物だ!」みたいなことを言い出すところがあるわけです。ところが、偽物だと思っていたのが、「かと思いきや、本物だった!」「えっ?」みたいになる展開があるんですよ。あるんだけど、なぜそれが入れ替わっていたのか?っていうのも、結局どっちだったのかっていうのも、納得できる理屈や説明がないまま終盤まで流れていっちゃう。お話上、これが偽物だろうと本物だろうと関係ないってこと?(笑)っていうのがあったりとかですね。

あと、まあさっき古川(耕・番組構成作家)さんが指摘して思い出したけど、序盤でミスリードっちゃあミスリードだけど、「ここにも鳩がいます! ここにも鳩がいる!」っていうんだけど、「うーん……この件で5分も引っ張らなくてもいいんじゃないかな?」みたいな。だと思いますね。あと、あれだね。主人公たちが騙されて、間違った脱出口を選んでしまうっていうところで、「本当の脱出口はここにあって……」みたいな説明が後から出るんだけど。「うーん……近くにモロに出てるな。隠されてもいないのか」みたいな(笑)。まあ、もうここまで来るとちょっとかわいくなってくるっていうね。あまりのバカっぽい感じにかわいくなってくるんだけど。とにかく、そんな感じで「実はこうでした。実はこうでした」ってやるほど、なんかどうでもよくなってくるという傾向がある。

こういう感じで無駄なアクション、見せ場と、あとラストの10分云々をタイトに刈り込んでみれば、あと20分から30分——この映画、130分もあるんですよ——あと20分、30分短くできると思うんですよね。そしたらもっと好ましいB級的な味わいの大作にもなったんだろうになと思って、ちょっと惜しいなと思います。あと、やっぱり手品問題。「できるだけCGなどに頼らず、役者本人によるライブなマジックにこだわった」っていう風にインタビューなどで答えていて。まあ、メイキングなんかを見てもそうっていうのはあるんだけど、出来上がった映画を見ても、実際にやっている感がちょっとね、そこまで伝わらない見せ方に終わってしまっていて、これは残念。もったいない。ちゃんとワンカットで見せ切るとか、もうちょっと本物っていうことを強調する見せ方はあったと思うんで。マジックを映画としてどう見せるか? 問題。ちょっと課題は残ったなという風に思います。

でも、楽しいシーンはいっぱいありますし。ユルユルなところも含めて、僕はそのユルユルなところがだんだん笑けてくるっていうか。ちょっとかわいく思えてきて、全然好きですね。ということでございます。ちなみにもう三作目も制作が決定しているみたいなので。終わり方もいかにもね、これ以降に引っ張るような感じでございましたし。さっき言ったようなマジシャン版『スパイ大作戦』。特に敵に逆襲するところの『スパイ大作戦』的な仕掛けからの逆襲みたいな感じは、正直もっと面白いものがこれから出てくる可能性をすごく感じるセッティングだなと思ったんで。僕は今回でセッティング完了っていう風に思ったんで。以降から、もういよいよ、マジシャン版『ミッション:インポッシブル』というか、『ワイルド・スピード』的なと言いますか、さらにちょっと加速がかかる可能性もあるかなと思っておりますので。

ということで、劇場に行く前に一作目……見るなら一作目を先に見ておいて。とにかく、(一作目の)オープニングシーンはむちゃくちゃびっくりしますし、今回のもまあ楽しい映画ではございました。脱出口を間違えるシーンとかのかわいさを味わいながら、ぜひぜひ劇場でウォッチしていただきたいと思います!

(ガチャ回しパート中略 〜 来週の課題映画は『HiGH&LOW THE MOVIE』に決定!)

以上、「誰が映画を見張るのか?」 週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。

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