お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

放送中

放送中


難病ALSの患者が大学生と一緒に福祉器具を開発

人権TODAY

毎週土曜日「堀尾正明+PLUS!」内で8:15頃に放送している「人権トゥデイ」。
様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

難病ALSの患者が大学生と一緒に福祉器具を開発

ALS=筋萎縮性側索硬化症は、全身の筋肉が萎縮して、
運動機能が急速に衰える難病です。
そのALSの患者で、千葉県に住む51歳の男性、舩後靖彦さんが、
神奈川県にある湘南工科大学の非常勤の助手として、
学生と一緒に福祉器具を開発しています。

現在開発中なのは、寝たきりの状態でも読書をするための
「本を前後に移動するマシン」です。

ALSは症状が進むと、知能や感覚ははっきりしていますが、
身体が動かず、話すこともできません。
舩後さんが額をピクっと動かすと、その動きをセンサーが感知します。
そのセンサーを通じて、本が読みやすい位置に来るように、
舩後さんが前後に動かすことができるんです。

これが「本前後移動マシン」

これが「本前後移動マシン」


開発担当の4年生、山田雅彦さんは意見交換のため、月に1~2回、
舩後さんを訪ねています。舩後さんは同じようにセンサーを使って、
パソコン画面上で話したい言葉を選び、自動音声で意見を出します。

同行した永井洋満ディレクターが舩後さんに
「このマシンが完成したら、読みたい本は何ですか?」と聞いたところ、
「漢詩、英語小説、ハングルのテキスト」と答えました。
その理由は?
「旅に出なくても、言葉に触れる事で旅を楽しめるから」
「アジアのALSの患者をサポートする仕組みを作ろうとしていて、そのための語学学習」
ということでした。

舩後さんはパソコンをセンサーであやつり、メールをしたり、ブログを書いています。
以前からネットを通じて、国内のALSの患者の悩みに答えたり、
励ます活動をしていますが、それをアジアに広げたいと考えているんです。

「旅を楽しむため」と「語学学習のため」の「本前後移動マシン」は
2009年の3月末に完成し、湘南工科大学で発表会が行われました。

舩後さんも出席し、演壇に上がって講演しました。
スクリーンには、舩後さんが予め入力した言葉が映し出され、
それを自動音声が読み上げる形です。

講演する舩後靖彦さん

講演する舩後靖彦さん


これまでの人生や、助手としてどう関わってきたのか、といった内容でしたが、
時折ユーモアを交えながらの講演に、会場から笑いが起きると、
舩後さんの目元と口元もゆるんで、微笑んでいるのが、
永井ディレクターにも見えました。

講演の中で舩後さんは助手を引き受けた理由について、

舩後さん
『 ALSという不治の病におかされてもなお、懸命に生きる姿を見せることが、
 育ててくれた両親への感謝を込めたプレゼントになると思うからだ。
 加えて、『人に尽くす』という道をたどるためである』

と語りました。

この日は山田さんも「本前後移動マシン」について発表しました。
山田さんの話では、開発当初は、寝たきりの状態の舩後さんの
目線を把握していないことに、舩後さんに指摘されるまで
気付いていなかったそうです。

そこで山田さんは、舩後さんと添い寝の状態で目線を確認したということです。
また、舩後さんだけが操作できればいいと思いこんでいて、
介護する人のためのスイッチを最初はつけず、あとで気づいたこともあったそうです。

マシンについて説明する山田雅彦さん

マシンについて説明する山田雅彦さん


発表後に山田さんに聞くと、

山田さん
『 作ってあげるのではなく、自分が使用者に気持ちよく
 使ってもらいたいから作るんです。
 舩後さんが使って下さって、本当にこちらこそ、『ありがとうございます』
 という気持ちでいっぱいです』

と話してくれました。

湘南工科大学では「使う側の気持ちを考えたものづくり」
=「福祉ものづくり」を目指していて、舩後さんとの共同開発の他、
同じ藤沢市内の施設で、割り箸を箸袋に入れる作業をしやすくする
マシンの開発を行うなど、様々な取り組みを行っています。

舩後さんを助手として採用したのは、このように
「使う側の気持ちを考える」と共に、実際に障害がある人に接することで、
思いやりの精神を育もうとしているからです。

山田さんの次の目標は、「舩後さんがギターを演奏するマシン」です。
額の動きを読み取るセンサーを使って、「C、G、F、など、
ギターのコードを入力すると弦を弾くマシンをこの秋に完成させる!」
と意欲満々でした。

舩後さんは10年前に発病するまではアマチュアバンドのギタリストだったそうで、
開発に携わりながら、自分が作詞、作曲した曲を演奏できることを楽しみにしています。

担当:永井洋満