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放送中

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生活困窮者の葬送を支援する

人権TODAY

毎週土曜日「堀尾正明+PLUS!」内で8:15頃に放送している「人権トゥデイ」。
様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

生活困窮者の葬送を支援する

5月に四十九日の合同法要が行われた「たまゆら」の火災現場 (以下、合同法要の写真は「葬送支援ネットワーク」提供)

5月に四十九日の合同法要が行われた「たまゆら」の火災現場
(以下、合同法要の写真は「葬送支援ネットワーク」提供)


今年3月、群馬県渋川市の老人施設「たまゆら」で起きた火災で、
生活保護を受けていた10人の高齢者が犠牲になりました。
東京・墨田区の紹介で入所して、亡くなったのは6人。
そのうち3人は遺骨の引き取り手もいませんでした。

「誰も弔う人がいないのは寂しすぎる」と、
貧困問題に取り組むNPOが中心になって5月6日、
火災の現場で10人の方の四十九日の合同法要が営まれました。
NPOの関係者や近所の人が参列しましたが、親族の姿はありませんでした。

四十九日の合同法要

四十九日の合同法要


合同法要でお経をあげた僧侶の一人が、宗派を超えた僧侶のグループ
「寺ネット・サンガ」の代表をつとめる中下大樹さんです。中下さんは

中下さん
『 こういう現場で亡くなった方は、死後しばらく身元すらわからなかった、
 という現実があるわけです。そういう社会にどうしてなってしまったのか、
 ということをあらためて感じました』

と話します。

そこで、中下さんは法要と前後して、何か社会的な運動につなげようと考え、
「葬送支援ネットワーク」を作りました。
中下さんと、同じく「たまゆら」の法要でお経をあげた
平久江剛志さんが共同代表をつとめています。

平久江さんは霊柩車の会社を経営していて、
様々な死を見てきました。

母子家庭で、母親が生活苦から自殺し、子供だけが残されたり。
亡くなってみたら本当にお金がなくて、火葬にする費用さえ、
捻出することがなかなかできなかったり。

そういう場合、最低限の葬儀は、亡くなった方を棺に入れて、
自宅や病院から直接火葬場に運び、焼いてお骨にするだけです。

平久江さん
『 お花もないし、遺影もない。位牌もない。
 ただ、人知れず亡くなられて、いつのまにかお骨にされて
 埋葬される、というのは、葬儀の『葬』の部分であって、
 『儀』が何にもつかないわけです』

と平久江さんは話します。

例えば自殺の場合、火葬だけで済ますケースがほとんどなので、
平久江さんはこれまでも、希望があれば、ボランティアで
読経に行ったこともあります。

また、低価格でこじんまりとした葬儀だけど、きちんと心のこもった
「葬儀」を行う、葬祭関係者のボランティア団体
「志聖会」の活動にも代表として取り組んできました。

合同法要では平久江剛志さん、中下大樹さんたちが読経した

合同法要では平久江剛志さん、中下大樹さんたちが読経した


中下さんも同じような活動に取り組んできました。
中下さんはホスピスに勤めていた時、宗教関係なく、
様々な患者の最後を看取りました。

亡くなるまでは接点を持てなかった方でも、「最後ぐらいはお経ぐらい
あげてほしい」と、家族から真夜中に呼ばれることもあり、
あらためて「最後の別れの時間」の必要性を感じたそうです。

中下さんは新宿のホームレス支援の活動に加わっています。
生活保護を受けていると、およそ20万円の費用は自治体から出ますが、
「火葬のみ」です。
生活保護を受けていて、身寄りがない元ホームレスの男性が亡くなった時は、
ホームレスの仲間約30人と共に火葬場に行き、手作りの位牌を用意して、
お花を手向け、中下さんがお経を読みました。

中下さん
『 病院から直に火葬場に行って、すぐ焼くのではなく、
 30分程度のお別れの時間ですけれど、ワンクッションを置いて、
 みんなで手を合わせて送るということが
 できただけでもよかったと思います』

と中下さんは話します。

インタビューに答える平久江さん(右)、中下さん(左)

インタビューに答える平久江さん(右)、中下さん(左)


二人のこうした普段の活動の延長上に
「葬送支援ネットワーク」があります。

そして、状況や事情によって、最低限の葬儀のお金も足りない、
どこからも出ない、という場合、二人の個人資金や
「葬送支援ネットワーク」への寄付金の中から、
最大で20万円を立て替え、その範囲で、遺影や位牌、
お花をきちんと用意し、僧侶が読経します。平久江さんは

平久江さん
『 葬儀社やNPOの努力でできれば、私たちを頼らなくてもいいんです。
 ただどうしてもだめな場合は、頼ってください。
 葬送支援ネットワークは最後のセーフティネットです』

と話します。

4月に発足してから、8月の時点までは、お金を立て替えたことはありません。
ただ、孤独死は増え、路上で亡くなる人も減らず、
自殺者も減る様子は見せていません。
「棺に入れて、運んで火葬するだけ」=「直葬」
という形が日本の社会に増えているのは、確かです。

取材した崎山敏也記者に中下さんは

中下さん
『 葬儀については色々な考え方があると思うが、
 人間として尊厳のある葬送は誰でも受けられるべきだ、
 という考え方を理解してほしい』

と話していました。また、

平久江さん
『 こういうネットワークが全国のあちこちに作られていかないと、
 本当の意味で機能するネットワークにはならないんです』

と平久江さんは話していました。

担当:崎山敏也

<関連情報・お問い合わせ先>
葬送支援ネットワーク
http://sousousien.web.fc2.com/index.html