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その『頭痛』や『むち打ち』、実は深刻な脳の病気かも!?

森本毅郎 スタンバイ!

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「頭痛」や「むち打ち」だけではなく、「めまい」「耳鳴り」「視覚の機能障害」「倦怠、軽い疲労感」こうした病気の中には、実は、もっと深刻な病気の可能性があります。怪しいのは、横になっていると問題ないけれど、起き上がって3時間もすると悪化するような場合・・・どんな病気なのか?森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)の「日本全国8時です」で、医学ジャーナリスト・松井宏夫さんが解説しました。

松井宏夫

★頭痛?むち打ち?横になってすぐ治るものは「怪しい」

「頭痛」や「むち打ち」「めまい」「耳鳴り」「視覚の機能障害」「倦怠、軽い疲労感」。普段、横になっていると問題ないけれど、起き上がって3時間もすると悪化して、その逆に、また横になると治ったりするようなら要注意です。それは、ただの「頭痛」や「むち打ち」ではない可能性があります。横になるとすぐ治る「頭痛」「むち打ち」は怪しい、と思ってください。

 

★それは・・「脳脊髄液減少症」という病気

それは「脳脊髄液減少症」という病気です。名前の通り、脳や脊髄にある、液体が減ってしまう病気です。

「脳脊髄液」というのは、脳や脊髄は硬い膜で覆われていますが、その内側を満たす、無色透明な液体が「脳脊髄液」です。脳内には、この脳脊髄液が、常に80ミリリットルくらいあるので、脳はその液体に浮いた形になって守られる、という役割もあります。

ところが、その「脳脊髄液」がなんらかの事故で減ってしまうのが「脳脊髄液減少症」です。浮いていた、脳が沈み、それによって血管や神経が引っ張られ、様々な症状が出てきます。頭痛、けい部の痛み、めまい、吐き気、難聴、倦怠感など、「症状のデパート」といってもいいほどです。横になっていると、血管や神経が、引っ張られることがなく、何の問題もないのですが、座ったり、立ち上がると3時間以内に、さきほどの、色々な症状が出てきます。国内では、少なくとも年間1万人が、この病気を発症し、悩まされています。

では、なんでその液体が減ってしまうのか?その理由は、不明な点もありますが、漏れ出ることが1つの原因です。漏れ出る原因として、多いのが、交通事故やスポーツ、転倒して頭を打つなど、強い衝撃で、液体を包んでいる膜に裂け目ができてしまうことです。この他、せきや大笑い、マッサージ、飛行機での気圧変化で、漏れ出るケースもあります。

 

★見落とされてきた病気

ただ、この「脳脊髄液減少症」という病気が、なかなか認識されていない問題があります。

その一番大きな理由が、つい10年程前まで、医学会で「脳脊髄液は漏れるはずがない」、という考えが強かったからです。先ほどのつらい、様々な症状が出ても、他の病気と誤った診断をされる、もしくは、原因不明とされることが多かったんです。でも実は脳脊髄液減少症だったという人が、「むち打ち」や「頭痛」のほかに、「更年期障害」などと、診断されている人が10%くらいいる、と考えられています。

脳脊髄液が「漏れるか、漏れないか」は、結構大きな違いです。漏れている、という考えが、多くの医師の頭に無いので、交通事故で、頭痛やめまいなどを発症しても、はっきりとした病名での診断が出ず、損害保険会社から補償されず、治療費に苦しむ、問題も起きます。また、治療が遅れた子どもは、ただの「心の病」とされ、不登校になってしまうケースも。行政機関、職場や学校の理解も進まないので、金銭的・精神的に追い詰められます。

 

★「脳脊髄液減少症」の発見

一方で、2000年以降、「脳脊髄液は漏れるもの」という認識は、一部でありました。日本のある脳神経外科医が研究会を作って、液体の圧力が下がるのはなぜかなど、むち打ち症の患者さんを詳しく調査した結果、脳脊髄液が漏れて減ってしまうことと、その治療法を指摘する報告がされていました。しかし、当時はほとんど関心を持たれていませんでした。

その指摘から、少し時間が経った2005年以降、状況が変わってきます。交通事故の後遺症を巡り、全国で、「脳脊髄液減少症」が病気として認められず、訴訟が多発していることが表面化し、考えが見直され始めることになりました。この事態を重く見た国も、そこからまた2年後ですが、2007年に、研究班を発足。2011年に、やっと、「脳脊髄液減少症」を、画像で病気気と診断する基準ができます。さらに、有効とされる治療が、保険適用となるのは、今年の4月でした。その治療法は、2012年から先進医療として、40以上の施設で行われていたもので、「ブラッドパッチ治療」といいます。

 

★「脳脊髄液減少賞」の治療法「ブラッドパッチ治療」とは?

ブラッドパッチ治療は、日本語でいうと、ブラッド=血液で、パッチ=穴を防ぐ治療です。日本医科大学付属病院の喜多村孝幸教授らが行っています。

まずは、髄液が漏れている付近に、背中から、針を挿入します。その針から、脳脊髄を包む膜の外側に、患者自身の静脈から採った、血液を30ミリリットル程注入します。すると、血液が脳脊髄全体に広がり、徐々に固まって、漏れている穴を塞いでいきます。つまり、血液が固まって、のりの役割をするんですが、治療時間は、大体30分程度です。大人の場合は、これを2、3回、子どもの場合は、これを1、2回。

この病気の基本となる考えは1930年代からあり、ブラッドパッチ治療の最初の報告は、1960年代にあったそうです。これまでの治療実績としては、去年6月まで1年間で行われた、577件のうち、477件で改善しました。つまり、8割を越える人が、髄液漏れがなくなって病気が治っています。

最先端の技術を追い求めがちですが、随分前からあるシンプルな治療法を実際の治療に活かすことも、有効な手の一つであると言えます。ただ、脳髄液の本来の機能や、減少する理由には、まだまだ不明なところが多いのも事実。課題としてあるのは、病気の診断精度を上げることです。