毎週土曜日「堀尾正明+PLUS!」内で8:15頃に放送している「人権トゥデイ」。
様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。
街で聞こえる「音サイン」をご存知ですか?
街で聞こえる「音」についてTBSラジオ澤田大樹記者が調べました。
駅の改札で「ピンポン」という音を聴いたことはありませんか?
この音は音サインと呼ばれていて、視覚障害者の方向けに設置されています。
この音サインは2000年に施行された「交通バリアフリー法」にともなう
「移動円滑化基準」という基準で定められていて、
駅の改札口、エスカレーター、トイレの入り口、地下鉄の地上出入口、
ホームの階段に設置することが義務付けられています。
改札の「ピンポン」という音のほかにも、「エスレーターの行き先を示す音」や
「障害者用トイレの案内音」など様々なものがあります。
今年、こうした音サインについての調査結果が発表されたのですが、
それによるとアンケートに答えた視覚障害者の半数以上が駅では
音サインを参考に移動していると答えています。
今回実際に毎日通勤で音サインを聞いているという加藤満裕美さんに
ご協力いただいて、加藤さんの通勤先から自宅の最寄り駅までの道のりを
音サインを参考にしながら歩いてみました。
- 加藤さん
-
『 階段のところで鳥が鳴いているんです。それで階段の位置がわかるんですね。
例えば階段をお知らせする音があったりなかったり、改札口の誘導の
チャイムがあったりなかったり、毎日通っている場所でも
その違いはありますね。』
実際利用されている方でも不便な点というのがあるようです。
今回の音サインに関する調査では、視覚障害者の3割が音サインに対して
不便だと感じる点があると答えています。
どういった点が不便だと感じているのか、この音サインの調査を行った
交通エコロジー・モビリティ財団の吉川博之さんに話を伺いました。
- 吉川博之さん
-
『 視覚障害者の方からは「音が小さい」という指摘が多いわけなんですけど、
事業者のほうとして、じゃあ音を大きくすればいいかというと、
地域の住民からも「うるさいよ」というクレームが
挙げられるケースもございます。
事業者さんのほうも音量をどれくらいにしたらいいか
規定がないもので困っているという話もあります』
と吉川さんは話します。
視覚障害者だけじゃなく、鉄道会社も困っているということがわかってきました。
「交通バリアフリー法」のガイドラインで音サインの設置が
義務付けられましたが、どこに設置するか、どのくらいの音の
大きさにしなければいけないかといったことは細かく決められていません。
そのため、鉄道会社や駅によって、音サインの設置位置や音の大きさに
ばらつきがあって、視覚障害を持った方にとってわかりづらくなっているそうです。
また、吉川さんの話にもあったように視覚障害の方以外の利用者からの
「うるさい」という意見で鉄道会社によっては、
音を小さくしたりすることもあるようです。
今回取材したある駅では、たしかに音サインの設備はあるのですが、
音がまったく鳴っていないということもありました。
実は音サインの設置は義務付けられているんですが、
努力義務でして罰則はありません。
せっかく設置義務があっても、難しい問題があります。
また細かい規定がないため、駅員のいる改札で鳴っている音と同じ音が
地下鉄の入口で鳴っていたり、鉄道会社ごとの音の統一がなかったりして、
はじめていった駅では迷ってしまうということも出てきています。
ただ、音声が統一されていれば必ずしもいいという訳ではなくて、
取材にご協力いただいた加藤さんは複数の路線が乗り入れしている駅などでは、
同じ音が鳴ってしまうと、どの路線に乗っていいのか
わからなくなってしまうとおっしゃっていました。
こうして課題はたくさん見えてきたのですが、これといった解決策が
見えないのが現状です。
最後に吉川さんにこういった音サインに関する問題を
今後どう解決していくべきか伺ったところ、
- 吉川さん
-
『 実際に鉄道事業者さんで啓発ポスターを出したところがありまして、
クレームが減ったというところもありますんで、何のための音なのか
と言う広報、PRして推進していくことでですね、
これ他の人にとって必要なんだということになれば逆にそれは
普段なってるものだという認識になるんじゃないでしょうかね』
と話します。
普段耳にしながら気づいているようで気づかない「音サイン」には
考えさせられる大きな問題があります。
「音サイン」を耳にしたら、視覚障害者にとっては本当に
大切なものだと思い出して戴ければと思います。
担当:澤田大樹