毎週土曜日「堀尾正明+PLUS!」内で8:15頃に放送している「人権トゥデイ」。
様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。
親が保育士に?!「1日保育士体験」
今日は保育園のある取り組みについてお伝えしました。
保育士の先生「今日は鈴木さつきちゃんのお母さんも皆と遊びに来てくれました。
皆で宜しくお願いしますのご挨拶をしましょう。」
子供達「はーい。宜しくお願いします!」
「お母さんが遊びに来てくれました」と言っていますが、
授業参観ではありません。
実は、この保育園に子供を預けているお母さんが、
この日、「1日保育士体験」をしていたんです。
お母さんとしてではなくて、保育士を体験するんです。
私が取材したのは、埼玉県行田市にある「私立行田保育園」です。
保育士と同じ1日を過ごすのですが、お母さんはまず【外遊び】を体験しました。
保育士の先生「さつきちゃんのお母さんがここに立っていてくれます。
最後に「じゃんけんぽん」をして走って戻りましょう。わかりましたか。」
子供達「はーい!!」
お母さんと子供達は【けんけんぱ】を楽しみました!
「じゃんけんぽい。勝ち~
パーはハサミに負けちゃうんだよ。」
なんて、元気な声が響きます。
しかし、保育士の体験ですから、楽しく遊んでいる間でも、
保育士としての指導も行います。
保育士の先生がお母さんに
「じゃんけん」の勝ち負けを教えてあげてください。ですとか、
うまく「けんけんぱ」が飛べない子のサポートの仕方などを伝えていました。
ところで、何でお母さんが保育士の体験をしているのか??
この保育園では13年前から「1日保育士体験」を行っています。
そのきっかけについて、園部浅子園長に聞きました。
- 園部浅子さん
-
『 13年ほど前だったんですけど、ある保護者が
「保育園にいる時間ってとっても長いですよね。」って言ったんです。
親よりも保育園の影響の方がたくさん受けますよね。
子供と親とが切り離してしまうのではないかなという所がとても心配だった。
何かそこに逆行するような形で、これは何か方法はないかな
と思って始めたのが、今の1日保育士参加なんです。』
親が子供を預けっぱなしではなくて、
保育園で子供がどう過ごしているかを見ることが大切なんですね。
こちらの保育園では、子供を預けている親は全員、保育士体験しています。
今年に入って、すでに70人の親が体験をしました。
保育士体験は子供達と楽しく遊ぶだけではありません。
お昼ご飯を食べて、子供達が昼寝をしている間も、
お母さんはずっと保育士として働きます。
手洗い、うがい、靴をしまう、布団をひく、ご飯を配ったり…
と休む暇はありません。
かなり大変ですが、得られるものも大きいようです。
お母さんに話を聞きました。
- お母さん
-
『 保育園での様子は、いつもは目に出来ないものが見れたので
ちょっと自分としては嬉しいですね。
家だと結構親にべったりというか、くっついてたりとか、
あとすぐ泣いちゃったりするんですけど、
保育園では結構周りのお友達とかをお世話してあげたりとか、
活動の方も積極的に参加してたので、家とは違う面ですね。
成長がわかるので良いと思います。』
親がほかの子供達とも接することで、自分の子供の成長を再発見出来るようです。
保育士の先生が、どうやって子供に注意しているのか、
どうやって箸の持ち方を教えているのか、
靴を履く時も、保育園では「立って履きなさい」と教えているのに、
家では「座って」履かせているなど、違いを知ることが出来たとも話していました。
一方、保育士の斉藤ゆか先生はこう話しています。
- 斉藤ゆかさん
-
『 1対1で保護者の方と話し合う機会っていうのが、じっくり話し合う機会が
多くとれるので、家庭でのどういう風に過ごしてるだとか、
家庭での様子を聞く良いチャンスになったなというのと、
あとは園でのこういう風にやってますよっていうのを
しっかり話す良い機会になっています。』
親と保育園がお互いに理解し合えるわけですね。
さらに、1日保育士体験を始めてから、親同士の繋がりも増えたそうです。
他にも、最近はモンスターペアレンツなんて言葉もありますが、
今までは「うちの子が嫌がることは無理にさせないで!」と言っていた親も、
実際に子供の日常を見て、理解を示してくれるようになったそうです。
こうした1日保育士体験を実施する保育園は全国で年々増えていて
今年から東京・品川区の区立保育園などでも試みが始まっています。
お互いが理解し合える場の大切さを忘れずに、
このような場を広げていきたいと話していました。
担当:楠葉絵美