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日本初の「母乳バンク」

人権TODAY

毎週土曜日「堀尾正明+PLUS!」内で8:15頃に放送している「人権トゥデイ」。
様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

日本初の「母乳バンク」

今回は去年7月に日本で初めて出来た『母乳バンク』を取材してきました。

母乳バンクとは、母乳を必要としている赤ちゃんに、
他のお母さんから母乳を貰うシステムのことです。

日本では聞き慣れないですが、アメリカやヨーロッパなど世界では1910年頃からあり、100年の歴史があります。先進国で無かったのは日本と韓国だけだったんです。
日本では高齢出産や帝王切開で極低出生体重児と言われる1500g未満の赤ちゃんが増えてきています。また、その影響で母乳が出にくいお母さんも多いんです。

母乳バンクを始めた昭和大学江東豊洲病院 小児内科 水野克己教授の話です。

水野克己教授
「小さく産まれた赤ちゃんは壊死性腸炎という腸が腐ってしまって命取りになってしまうような病気、それから未熟児網膜症 視力に問題が残る病気、あとは慢性肺疾患と言いまして肺が悪くなるような病気、そういったものが、母乳で育っていくことで減ってくる、また点滴する期間も短くなりますので、痛いことから解放される、退院も早く出来る、良い事ばっかりなんです。
貰い乳ってよく言ってましたけど、貰い乳というのは感染の問題がある。母乳バンクでは必ず受け取った母乳は、低温殺菌をして菌が全くいないということを確認しています。今考えられる状態で一番安全なものを小さな赤ちゃんに届けたい、これが母乳バンクの役割だと思っています。」

母乳のメリットを活かすための仕組みなんです。
母乳が出ないお母さんが多いならば、出る人に安全な形で母乳を貰おう!と
去年の7月に日本初の母乳バンクを始めました。

母乳には新生児に必要な栄養が詰まっています。
しかし、個人的な事情や、母乳を通じた感染症などを防ごうと粉ミルクで育てる人もいます。

ただ、2500g未満の低出生体重児や、特に1500g未満の小さな赤ちゃんは、粉ミルクの栄養がうまく腸から吸収出来ず、様々な病気になりやすいことがわかっているんです。そして母乳は腸から吸収されやすい、と水野教授は話していました。

つまり、小さく産まれた赤ちゃんほど、産まれてすぐに母乳をあげることが望ましいということです。

ただ、赤ちゃんが予定日より早く産まれることで、お母さんの体がまだ母乳を出す準備が出来ていない、すぐに母乳をあげられないことが多いんです。母乳バンクを利用したお母さんに話を聞きました。

利用者
「最初は他の人のお母さんの母乳っていうのはどうしても抵抗はありましたけども、先生からお話を伺って、安全面が今の世の中でわかる最大限の安全が確保されてるっていうのがわかったので、治療として、他のお母さんの母乳を栄養として貰うことがこの子にとって一番良いことなのであれば、親として選択したいと思って利用しました。出ないとやっぱり何で出ないんだろうって自分が悪いというか、母乳バンクをお願いしてからは、変なストレスというかプレッシャーなく、助産師さんと一緒におっぱいの準備をちゃんとして、今は順調に十分な量のおっぱいをあげられてるので良かったなと思います。」

母乳は血液と同じなので、多くの方が他のお母さんの母乳を飲ませることに抵抗を感じるようです。
ご家族の反対があったりもします。実際に産んだ母親は「子どもにとって一番良いことなら」とすぐに理解出来るようですが、夫や親からは反対されることもあるんです。

この女性は母乳が出産後2日くらいで出始めたため、バンクの母乳は実際には少しの量しか使っていません。ですが、母乳は母親の精神面や体の疲れで突然出なくなることもあります。母乳バンクがあるという安心感に本当に助けられていますと話していました。

母乳は低温殺菌され、無菌状態のもと冷凍保存されています。母乳を提供してくれるドナーは、現在は昭和大学江東豊洲病院で出産した、または外来で通っている人のみです。これは母乳を利用する側も同じです。あらゆる検査をクリアした人だけがドナーになり、情報も徹底して管理しています。万が一何か起きた時に、どのドナーの母乳をあげたかわかるようにするためです。
ドナーとして母乳を提供しているお母さんに話を聞きました。

提供者
「私の母乳が出過ぎちゃっていて、そんなに出るんだったらこういうのがあるんだよって母乳バンクのことを教えていただいて、私自身の体も助かっているので、それを別の赤ちゃんが飲んでくれてるっていうのも嬉しいですし、それで元気になってるっていうのを聞くと続けようと思いますね。」

母乳を提供する側も使う側も、どちらにとっても良いシステムなんです。

母乳バンクは、今は昭和大学江東豊洲病院内だけで行われています。
もちろん、誰の母乳が使われたか、誰が使ったのか、お互いに顔も名前もわからないようにしています。
水野克己教授はこれからについてこんな話もしていました。

水野克己教授
「例えば、壊死性腸炎という、腸が腐ってしまうような病気のリスクが高いお子さんの場合には、防ぐ因子がたくさんある母乳をあげる、ある意味薬としての利用になっていくわけですね。母乳の成分によってその赤ちゃんに一番必要な母乳をあげられるようなシステム、まだ夢物語ですけど、出来ると良いなとは思っています。」

今後、他の病院とも協力し、NPO法人を作るなどして、母乳バンクの母乳を全国どこにいても使うことが出来るようにしていきたいとも話していました。

母乳の力でいろいろな病気のリスクから救われる小さな命が増えると良いなと思いました。

担当:楠葉絵美