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28年の歴史に幕、解散を表明したダフト・パンクの影響を聴く Part 1 (高橋芳朗の音楽コラム)

ジェーン・スー 生活は踊る

音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんによる音楽コラム(2021/2/25)

『28年の歴史に幕、解散を表明したダフト・パンクの影響を聴く Part 1』

28年の歴史に幕、解散を表明したダフト・パンクの影響を聴く Part 1http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20161010040000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)

高橋:本日はこんなテーマでお届けいたします。「28年の歴史に幕、解散を表明したダフト・パンクの影響を聴く Part 1」。フランスの人気ダンスミュージック/エレクトロニックミュージックデュオのダフト・パンクが2月22日、YouTubeで公開した動画「Epilogue」を通じて解散を発表しました。

スー:解散なの? 動画では片方のメンバーがボカーンって爆発していたけど……本当に解散?

高橋:うん、彼らの代理人が解散を認めたそうです。これによって1994年のデビューから続いてきた28年の活動に終止符が打たれたわけですが、今回驚いたのはテレビやラジオの通常のニュースでダフト・パンクの解散が報じられていたことでしょうか。エンタメ枠ではなく、一般のニュースとして。

スー:『生活は踊る』のニュースコーナーでも豊田綾乃アナウンサーがダフト・パンク解散の報を伝えていましたからね。「ええっ、ここで?」って(笑)。

高橋:「そこまでのニュースバリューあるんだ!」というのはちょっとした驚きでしたけど、でもそれも納得といえば納得で。ダフト・パンクはここ20年のポップミュージックでも最も強い影響力を誇ったアーティストのひとつですからね。その象徴的な作品といえるのが、2014年の第56回グラミー賞で最優秀レコード賞など5部門を受賞したアルバム『Random Access Memories』。シングルヒットした「Get Lucky」は現在まで続くディスコリバイバルの起爆剤になりました。

高橋:たとえば同じくグラミー賞最優秀レコード賞を受賞したマーク・ロンソン&ブルーノ・マーズの「Uptown Funk」、それから昨年共に全米チャートを制したドジャ・キャットの「Say So」やBTSの「Dynamite」などは、ある意味「Get Lucky」の系譜を継ぐヒット曲と位置付けてもいいでしょうね。

今日はそんなダフト・パンクの影響を検証する企画の第一弾として、彼らの登場がポップミュージックに与えたインパクトを振り返ってみたいと思います。では、まずはテレビコマーシャルにも使用されたダフト・パンクの代表曲「One More Time」から聴いてもらいましょうか。この曲は漫画家の松本零士さんが映像製作に携わったミュージックビデオでもおなじみでしょう。

M1 One More Time / Daft Punk

 

高橋:ダフト・パンクのメンバーは『Random Access Memories』のリリース時、自分たちの過去のアルバムに関してこんな発言をしているんですよ。「1997年のデビューアルバム『Homework』は、いわば僕らがロックファンに対して『エレクトロニックミュージックってクールなんだよ』と言ったようなものだった。続く2001年の2枚目のアルバム『Discovery』は、逆にエレクトロニックミュージックのファンに対して『ロックってクールだよね』と伝えたかったんだ」ーーちなみに、一曲目に聴いてもらった「One More Time」は『Discovery』の収録曲、いまBGMとして流れている「Da Funk」は『Homework』の収録曲です。

高橋:このコメントを踏まえて先に結論めいたことを言うと、ダフト・パンクはジャンルの垣根を越えて広くポップミュージック全体にダンスミュージック/エレクトロニックミュージック/クラブミュージックの美意識や価値観を浸透させた存在と言っていいでしょう。2000年代初頭にはロックがダンスミュージックに接近して「踊れるロック」がトレンドになりますが、そんな状況をもたらしたのはプロディジー、ケミカル・ブラザーズ、アンダーワールドらの躍進と共にダフト・パンクの登場がひとつの大きなポイントになっているのではないかと。

そのわかりやすい例が、ニューヨークのダンスロック/ダンスパンクバンド、LCDサウンドシステムです。彼らが2002年にリリースしたデビューシングル「Losing My Edge」にはこんな歌詞があるんですよ。

高橋:「俺はロック好きのガキにダフト・パンクを聴かせてやった最初の男だ。『CBGB』(ニューヨークの老舗ライブハウス)で奴らの曲をかけたときは、みんな俺のことをイカレてると思ったようだ。でも、いまではみんな知ってる。俺はそこにいたんだ」この一節はダフト・パンク登場の衝撃を端的に言い表しているのに加えて、彼らの音楽がロックのリスナーにもアピールし得る越境性を秘めていることを示唆した貴重な証言でしょう。

そしてLCDサウンドシステムは「Losing My Edge」の3年後、2005年にデビューアルバム『LCD Soundsystem』をリリースすることになりますが、そのオープニングを飾る曲のタイトルが「Daft Punk Is Playing at My House」なんですよ。記念すべきデビューアルバムの一曲目に「ダフト・パンクが俺の家で演奏してる」なんて曲をもってきているというね。

この「Daft Punk Is Playing at My House」はタイトル通りの内容で、まさにデビューアルバム『Homework』リリース時のダフト・パンク、出世作になった「Da Funk」あたりの影響を強く感じさせるめちゃくちゃかっこいい「踊れるロック」に仕上がっているんです。

M2 Daft Punk Is Playing at My House / LCD Soundsystem

 

高橋:LCDサウンドシステムがデビューアルバムをリリースした同時期には当時の「踊れるロック」のムーブメントの象徴的存在、イギリスのフランツ・フェルディナンドが出世作の「Take Me Out」のリミックスをダフト・パンクに依頼していて。このあたりからも当時のダンスミュージック志向のロックバンドがいかにダフト・パンクから刺激を受けていたかがうかがえると思います。

高橋:こうしたダフト・パンクの活躍は、彼らと共通する感覚を持ったフランスの素晴らしい才能にスポットを当てることにつながります。その代表的なアーティストが、かつてダフト・パンクのふたりとバンドを組んでいたメンバーを含むロックバンドのフェニックス。彼らは2000年にアルバム『Untitled』でデビューしています。

高橋:それからダフト・パンクの元マネージャーが立ち上げたレーベル、エド・バンガーからデビューしたエレクトロニックミュージックデュオのジャスティス。続いては、そのジャスティスの2007年のヒット曲「D.A.N.C.E.」を聴いてもらいましょうか。ジャスティスは初期のダフト・パンクのロック的なダイナミズムをさらに強調したダンスサウンドを打ち出していて。特にこの曲はダフト・パンクがつくり出した空気のなかで生まれた、2000年代のポップミュージックの気分を象徴するヒットシングルといっていいと思います。

M3 D.A.N.C.E / Justice

高橋:ジャスティスの「D.A.N.C.E.」は全米チャートにランクインすらしていないんですけど、数字だけでは推し量れないインパクトを残した曲で。それはこの曲のミュージックビデオが2007年開催のMTVビデオミュージックアワードにおいて、最も栄誉ある「Video of the Year」にノミネートされていることからもよくわかるのではないかと。しかもこれが、リアーナ「Umbrella」、ビヨンセ「Irreplaceable」、ジャスティン・ティンバーレイク「What Goes Around…Comes Around」、カニエ・ウェスト「Stronger」、エイミー・ワインハウス「Rehab」など、錚々たるラインナップと共に選ばれているんですよ。いま挙げたノミネート作品は全曲が全米トップテンヒット、しかもエイミー・ワインハウスの「Rehab」以外すべて全米1位になっていますからね。

そんななかダフト・パンク~ジャスティスのエッセンスを自分の作品に取り込もうと試みたのが、ヒップホップアーティストのカニエ・ウェストです。彼が2007年にリリースしたアルバム『Graduation』では、第一弾シングルの「Stronger」でダフト・パンクの「Harder, Better, Faster, Stronger」を大胆にサンプリングしていて。

高橋:さらにカニエは『Graduation』からのセカンドシングル「Good Life」のミュージックビデオでジャスティス「D.A.N.C.E.」のミュージックビデオを手掛けた映像ディレクターとグラフィックデザイナーをそのまま起用しているんですよ。

高橋:当時ヒップホップシーンの頂点に君臨して音楽のみならずファッションやアートにも強い影響力をもっていたカニエ・ウェストが、このタイミングでダフト・パンクと彼らのフォロワーであるジャスティスにアプローチしたのは途轍もなく大きな意味があったのではないかと。こうしてダフト・パンクはロックやヒップホップといったジャンルを越えて絶対的な存在になっていくわけです。

M4 Stronger / Kanye West

 

高橋:ダフト・パンクがデビューしてからの十数年でポップミュージックにどのような影響を及ぼしてきたのか、その変遷を駆け足で振り返ってみました。続編はこの音楽コラムでもやるかもしれませんが、ダフト・パンクについては僕とジェーン・スーさんでお届けしているAmazonMUSIC独占配信のポッドキャスト番組『生活が踊る歌』の3月1日更新回でも話そうと思っているのでぜひチェックしていただけますと。

なお、大ヒットしたダフト・パンクのグラミー賞受賞作『Random Access Memories』がどれだけ重要な作品であったかは同じ『生活が踊る歌』ポッドキャストのEp. 3「コロナ禍の生活を癒す現代ディスコ入門」Ep. 5「『生活は踊る』オンエア曲から学ぶポップス入門~AOR編」でも解説しているので興味のある方はこちらも併せて聴いてみてください!


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