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ジュンサイは増えすぎ!ナチシダは激減?天然記念物保護の皮肉な結果。

森本毅郎 スタンバイ!

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東京・上野の国立西洋美術館が世界遺産に・・・というニュース、おめでたいことですが、実は、この後の維持、管理が大変なんですよね。そうした中、実は同じように、国の天然記念物も大変・・・という話を聞いたので、「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)の「現場にアタック」。で、レポーター近堂かおりが取材しました。

現場にアタック(近堂かおり)

国の天然記念物も維持管理が大変・・・というのは、どういう事か。

京都にある深泥池(みぞろがいけ、みどろがいけ)という池に浮かぶ「ジュンサイ」という水生植物が天然記念物になっています。ジュンサイとはスイレンの仲間で、新芽を酢の物やお吸い物にします。一般的にはちょうと今の時期が最盛期なのですが、
それが問題になっているというんです。まずは、深泥池とそこのジュンサイがどういうものなのか、詳しい方に伺いました。深泥池水生生物研究会の田末利治さんのお話。

★魯山人の愛した天然記念物「ジュンサイ」!

田末利治さん
「あの深泥池という自然は、今まで知られなかった動植物がたくさん棲んでいるということがわかり、生き物全てを天然記念物にした池なんです。昔からジュンサイはあって、北大路魯山人が京都の深泥池のジュンサイはすごくおいしいとほめているんです。そういうこともあって深泥池のジュンサイは昔から有名なんですね。」

深泥池は氷河期時代の生態系が今も残っている貴重な池。ジュンサイのほかにも、たくさんの植物、昆虫、魚、野鳥などが見られ、その全ての生き物が国の天然記念物。その中でもジュンサイは、あの魯山人が絶賛しているんです。

北大路魯山人曰く
「無色透明の、弾力のある、ところてんのような付着物。この粘液体が厚くじゅんさいの新芽に付着しているために、じゅんさいは美食としての価値がある。どこのじゅんさいが一番よいかと言うと、京の洛北・深泥池の産が飛切である」。

ところが戦後、水質が悪化。1960年代には深泥池のジュンサイ採りは見られなくなり5年ほど前には、絶滅が心配されるほど減ってしまったんです。そこで地元の方たちと京都市が水質改善とジュンサイの復活に取り組みました。それが何とかいい方向に向かったと思ったところ、思わぬ事態が待っていました。再び田末さんのお話です。

★どうしてそんなに増えるんだ!?

田末利治さん
「水道局の人と話をしまして、ポンプを使って(汚れた水が)入らないように吸い上げて戻したんです。それから2002年ぐらいからどんどん水質が良くなったんです。そして2003年になってちょぼちょぼと、葉っぱを浮かべていたジュンサイが増えてきたんです。悪い水がなくなったからジュンサイが生き返ったんだ・・・という方につなげたんですよね。これが3年ほど前から、元気を取り戻したジュンサイがますます元気になって、ここ2、3年の間にわあっと増えて、今度は増えすぎて困っているという状態にまで至っているんです。これ以上どうして増えるんだというほど、はびこっているんです。自然というのは皮肉なものですねえ。」

水質を良くしたら、ジュンサイが増えすぎてしまった!池の水面をびっしり多いつくすほどになって、ほかの動植物への悪影響が心配されるくらいになってしまったそうです。今は京都大の先生にも協力してもらい、ドローンを使ってジュンサイの分布密度を調査中だという事。どのくらい間引いたらいいか、3年かけて調査実験する計画です。深泥池はジュンサイだけでなく全ての生き物が天然記念物だから、こうなると大変です。自然の保護は難しいですね。

実は同じように、天然記念物の保護の難しさに直面している所が、静岡県にもあった。こちらは「ナチシダ」というシダの仲間。一体、どういう状況なのか。静岡在住で、国立科学博物館名誉研究員の松本定さんに伺いました。

★河津町の天然記念物ナチシダも激減!?

松本定さん
「伊豆半島の真ん中に天城山がありまして、それよりちょっと南の谷です。河津町の大滝(おおだる)という場所で、大きな滝がある所なんですが、そこが国指定の天然記念物になっているナチシダです。元々、熱帯、亜熱帯のシダなんですけど、北限自生地ということで指定されたんですね。大きな群落で生えてました。それが、保護されている柵の中はほとんど消えてますね。保護柵の外に、石の上にひと株ありましたけどね。愕然と減っていますね。」

松本さん、地元の新聞に「伊豆の特集記事をやりたい」と持ちかけられ、それなら天然記念物がありますよ! と誘って行ったところ、保護柵の中でたくさん群生しているはすのナチシダが、ほぼなくなっていてびっくり。ここは1953年に国の天然記念物に指定されました。今、文化庁の天然記念物のサイトを見ると「わが国における自生北限地の一(ひとつ)で、その発育は特に良好である」と書いてあるけど、実際には激減。野生のシカから守るための柵も作ったのになぜなのか?松本定さんに伺いました。

★柵で保護したが・・・

松本定さん
「そこは柵で囲われていました。柵で囲ってしまったのがひとつの原因かなと思うんです。ナチシダはちょっと毒があるせいかシカが食べないんです。その代わり周りの草を食べてくれるんですよ、きれいに、シカが。(それが柵の中にあると?)シカも近寄れないので、食べてくれないから、そういう草に負けてしまうんだろうと思います。ナチシダは草が生い茂ってしまうと、長い間に消えてしまうことがあるみたいです。ちょっと皮肉ですね。」

こちらは保護したら、深泥池とは反対に、減ってしまった!!このままでは天然記念物の指定も心配だと松本さんは言います。それは、大滝のナチシダが激減していることに加えて、もう一つ別の理由もあるから。松本定さんのお話。

★しかも北限も・・・

松本定さん
「大滝(おおだる)以外のところでは結構増えているんですよ。天城峠付近の道路沿いにも見られますし、西伊豆の宇久須(うぐす)では結構、大群落がありました。東伊豆の白田川にもありましたし、神奈川県とか千葉県、福井県とか。北限が広がっていますね。だから大滝のナチシダは北限産地で天然記念物に指定されているんですけれども、ちょっと本来の意味の指定から外れるかもしれませんね。」

北限だったはず伊豆のナチシダが千葉や福井に「天城越え」・・・。

ひとつの策が、保護になるのか、過保護になるのか、逆効果になるのか・・・難しい。自然の保護、環境の変化とか、保護したことによる影響を長い目で見る必要があります。

世界遺産も天然記念物も維持し続けなければならないから、指定されてからが本当に大変ですね。

(取材・レポート:近堂かおり)