音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんによる洋楽コラム(2020/10/8)
「はじめましての木曜日!名刺代わりの最新韓国シティポップ特集」
高橋:わたくしの音楽コラム、今月より木曜日の2週目と4週目にお届けすることになりました。蓮見さん、よろしくお願いいたします!
蓮見:よろしくです!
高橋:では木曜に引越ししての第一回ということで、この音楽コラムきっての人気シリーズ企画をお届けしたいと思います。「はじめましての木曜日! 名刺代わりの最新韓国シティポップ特集」。
蓮見:「シティポップ」という言葉が私の日常生活にはまだ馴染んでないですね。
高橋:「シティポップ」という言葉自体は聞いたことありますか?
蓮見:ワードは聞いたことがあります。シティポップの定義はあるんですか?
高橋:ありますあります。ちょっとぼんやりはしているんですけど、1970年代後半から1980年代前半ぐらいにかけて流行した都会的に洗練された洋楽志向のポップミュージック、といった感じでしょうか。いわゆるニューミュージックの流れを汲む音楽ですね。
蓮見:あー、松任谷由実さんとか?
高橋:まさにまさに。そのほかシティポップのディスクガイドなどに決まって取り上げられるアーティストというと、山下達郎さん、大貫妙子さん、吉田美奈子さん、南佳孝さん、角松敏生さん、竹内まりやさん……だいたいそんな感じでしょうか。でもホント、蓮見さんがおっしゃっていたようにユーミンなんかのイメージで考えてもらえますと。
蓮見:で、そんなシティポップが……K-POP?
高橋:そうなんですよ。いまシティポップが日本はもちろんアジア一帯で再評価されていて。日本のシティポップの影響を受けたアーティストがアジアのさまざまな国から出てきているんですけど、特に韓国の充実ぶりには目を見張るものがありますね。
蓮見:へー!
スー:蓮見さん、いまの韓国のポップスというとどういうイメージ?
蓮見:ビー……ビー……(笑)。
スー:BTSね?
蓮見:そう、BTS! そのぐらいの知識ですよ(笑)。
スー:韓国のポップスというとバッキバキのK-POPのイメージが強いけど……それだけじゃないんですよね。
高橋:そう、韓国のポップスにもいろいろなバリエーションがあるということです。韓国産のシティポップはもう3年ぐらい前から定期的に取り上げいるんですけど、毎回リスナーの皆さんからの評判も上々で。この音楽コラムきっての人気企画になりました。今日はその最新版をお届けしたいと思いますが、どれも気持ちいい曲ばかりなのできっと蓮見さんにも気に入っていただけると思います。
じゃあ、さっそくいってみましょうか。まずはブレイヴ・ガールズの「We Ride」。8月14日にリリースされたニューシングルです。ブレイヴ・ガールズは2011年にデビューした4人組ガールグループ。この「We Ride」は約3年ぶりのカムバックシングルですね。90年代調のミュージックビデオもなかなかキュートな仕上がりなので併せてご覧になってみてください。
M1 We Ride / Brave Girls
高橋:蓮見さん、いかがでした?
蓮見:いや、心地よいスピード感ですね。早すぎず、遅すぎず。気持ちとしては東北自動車道、館林から岩槻にかけて気持ちよく走っている感じ。
スー:アハハハハ!
高橋:さすが蓮見さん、まちがってない! シティポップはドライブミュージックとしての側面もあると思うので。
蓮見:ああ、ドライブミュージック! 外れてないですか?
高橋:ばっちりですよ。それこそ「中央フリーウェイ」なんて曲があるんですから。
蓮見:感覚としてはそんな感じです。
スー:今日これからかかる曲、ぜんぶどこを走ってるイメージか受けてもらおうよ(笑)。
高橋:フフフフフ、いいかもしれない。では次の曲にいってみましょう。続いてはYUKIKAの「Love in TV World」。これは9月22日にリリースされたニューシングルです。このYUKIKAさん、いまちょっとした話題になっているんですよ。実は彼女は日本人女性で。
スー:あ、そうなんだ。韓国で活動しているの?
高橋:そう。本名は寺本來可(てらもとゆきか)さん、27歳。韓国発の日本人シティポップ歌手として注目を集めています。詳しくは文春オンラインにご本人とプロデューサーのインタビューが掲載されているのでそちらをチェックしていただきたいんですけど……ほら、こんな感じの方。
スー:かわいい! すごいK-POP顔だね。
高橋:きっとK-POP的に見えるメイク術があるんでしょうね。このYUKIKAさん、もともとはゲームの『アイドルマスター』の韓国実写版ドラマ『アイドルマスターKR』のオーディションを受けたことが韓国デビューのきっかけになったみたいですね。楽曲のプロデュースを手掛けているのはESTi名義で活動するゲーム音楽のプロデューサー、パク・ジンベさん。今年7月に出たデビューアルバムの『Soul Lady』はアメリカやイギリスなど計8カ国のiTunesのK-POPチャートで1位を記録したんですって。
スー:へー、すごい!
高橋:実際このアルバムがめちゃくちゃ素晴らしい内容なんですけど、今日は9月22日リリースの最新のシングルを紹介したいと思います。
M2 Love in TV World / YUKIKA
高橋:これは良いでしょ?
スー:適度に力が抜けているというか、張り上げないところが素敵ですね。
蓮見:いまスーさんがおっしゃっていた力が入りすぎてない歌いっぷりがすごく心地いいですね。一応ドライブしばりで言うならば……いまのわたしの妻、大徳(絵里)さんとデートをしていたころに外環自動車道の下を行ったり来たりしてたんですよ(笑)。
スー:かわいい!(笑)
蓮見:行くあてがなくて、草加と朝霞の間を何回も何回も行ったり来たりして。そういうシチュエーション、やっぱり夜のドライブのイメージかな?
スー:甘いねー!
高橋:やっぱりそういう甘酸っぱい場面が喚起される曲ということですよね。
蓮見:そう、喚起されますね。
スー:今日家に帰ったらこの曲をふたりで一緒に聴いたりして?
蓮見:フフフフフ。YUKIKAさん、ねえ。
高橋:では3曲目にいってみましょう。次はDUSKY80の「Seoul Express」。9月30日リリースの最新シングルです。
スー:あ、今度はバンドなんだ。男女混成?
高橋:そうですね。2015年に結成された大所帯バンド、8人編成なのかな? 1930年代にフランスで流行したジプシースタイルのジャズを志向しているんですけど、この曲だけなぜか正統派シティポップで。でももともとがジプシージャズのバンドだから、通常シティポップではあまり使われない楽器、ウッドベースやバイオリン、アコーディオンなんかが入っていたりするんですよ。
スー:うんうん。
高橋:これまでの2曲に比べるとちょっと渋い印象なんですけど、聴くほどに味わいが増してくるいぶし銀のシティポップとして大推薦です。
M3 Seoul Express / DUSKY80
蓮見:皆さん、歌い方が優しいですね。
高橋:そうなんですよ、そういうメロウさがシティポップの大きな魅力のひとつで。これはどのへんを走っているイメージですか?
蓮見:これは車から降りてふたりでミッドタウン周辺を歩いてる感じですかね。
スー:フフフフフ、どこで降りたんだ? さっきまで草加と朝霞のあいだを走っていたのにずいぶんと都会になったね。
蓮見:いま館林から帰ってきています(笑)。
スー:さあ、このあとふたりはどこに行くのか?(笑)
高橋:じゃあ最後の曲を紹介しましょう。プラットフォーム・ステレオの「Flash」。9月19日にリリースされた最新シングルです。プラットフォーム・ステレオは釜山出身の4人組バンド。2018年にデビューして昨年初めてのアルバムを発表しました。これまで紹介した3アーティストに比べると王道のシティポップというよりはギターポップ/インディーロック寄りですね。ただ、メンバー自身シティポップから影響を受けていることは認めていて。実際、シティポップ的な観点からも楽しめる曲だと思います。今日の曇天にはいちばんフィットするんじゃないかな?
M4 Flash / Platform Stereo
高橋:蓮見さん、最終的にどこに到着しましたか?
蓮見:結局、あのあと友達の結婚披露宴に出席して「結婚っていいな……」って思って。その勢いでもってプロポーズをしてしまうんだけど、いま「それは本心なの?」と妻に尋ね直されているような、そんな瞬間です。場所は白金高輪駅。
スー:アハハハハハハ!
高橋:複雑なストーリーだな(笑)。
スー:ていうか白金台じゃなくて白金高輪っていうのがいいんじゃない? 白金台だったらただのセレブって感じだけど、高輪を入れてくるあたりがすごいよね。いやー蓮見さん、なかなかですよ。
蓮見:でもシティポップ、なんか聴いていてすごく気持ちが穏やかになりますね。
高輪:うわー、そう言ってもらえるとうれしいですね。これからこんな感じで音楽コラムをやっていきますのでどうぞよろしくお願いいたします!
蓮見:なんか新鮮でした。ありがとうございます!