毎週日曜、夜9時からお送りしている
【ラジオシアター~文学の扉】
先週に引き続き、ゲストに俳優の手塚とおるさんを迎え、中嶋朋子さんと共に、アメリカの作家ナサニエル・ホーソーンの「ウェークフィールド」をラジオドラマで届けしました。
ロンドンに住んでいる男が長年、連れ添った妻を残し突然、姿を消してしまう。そんな謎に満ちた始まりのドラマでした。
手塚とおるさんが演じられたウェークフィールドは、この作中でなんと20年もの間、自らの家には帰宅せず、何故か家からほど近い所で隠れながら暮らすという奇行に走っていました。
この難解な役を、様々な表情を彷彿とさせる演技は最高でした!
自分がこれから起こす行動へのワクワク感や、妻を本気で心配したり、“何かと理由をつけて家に帰らない”まごついている様な演技など、一つの作品の中で二度三度、と手塚とおるさんの演技を堪能できます。
興奮、焦燥、悲しみ、困惑などの沢山の感情を手塚とおるさんが演じられている傍らで、中嶋さんの語りは、世界観を伝え、演技のバリエーションを引き立たせていました!
このラジオドラマでは、主にウェークフィールドの視点で物語が進行し、役として台詞を発するのはウェークフィールドですが、『語り』の重要性を再確認する作品にもなりました。
『ウェークフィールド』は、世界的な短編作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスが、とても高く評価した事で有名な作品のようです!
今回のラジオドラマのように、100年以上も前の名作との出会いを最高の形でさせてくれるラジオシアター「文学の扉」。次回の作品との出会いが待ち遠しいです!
by 西村成忠