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内田樹×武田砂鉄、「身の程を知れ」という抑圧について

ACTION

TBSラジオで放送中の「ACTION」。金曜パーソナリティは、武田砂鉄さん。

6月26日(金)のゲストは、思想家の内田樹さん。滝行終わりでリモート出演して頂きました。今日は内田さんの著書『サル化する世界』を中心に武田砂鉄さんがお話を伺いました。

武田:『サル化する世界』という本を出されましたが、なかなか誤解を生みやすいタイトルだと思います。このサル化の意味はなんでしょうか?

内田:これは時間意識の縮減ですね。長期的な時間の中や大きな空間の中で物事の判断をする習慣がなくなって、目先のことしかない状態ですね。長いタイムスパンの中で物事を考えられなくなっていることに警鐘を乱打しました。

武田:2ページ目からある人に「内田さん、評判悪いですよ」と言われてて、何故かというと「自分の専門以外にやたらと口を出すから」と書かれていて。自分もライターの仕事をしていて、言われることが多くて。この「身の程を知れ」的な社会の圧力はあらゆるところに広がっていますよね。

内田:これは昔はなかったんです。小学校のときしか言われてなくて、それからは60年代の学生というのは身の程を知らない学生たちですから(笑)それから高度成長期やバブルの頃は誰一人身の程を知らないわけですから。身の程を弁えずに大騒ぎをして経済成長したわけですから。半世紀ぶりに聞きましたよ。

武田:「身の丈を考えて」と言った文科大臣もいましたが、どうしてこういった考え方が急浮上したのでしょうか?

内田:貧乏になったからですよ。成長してるときは言わないです。成長が止まって分配するパイが目減りすると「ちょっと待て、なんでそんなに取り分を持っていくのか理由を言え」と言い出して、それぞれの身の丈に合った取り分しか持っていけないんですよね。社会的資源を分配するとき、「皆の身の丈を決めよう」と。いくつか基準を設けるんです。いくら稼いでいるのか、社会的有用性、生産性とか効率とかの基準で人々をランク付けして、「お前は◯点の人間だから、◯点の人間にふさわしいものを要求しろ」と。型にはめていく。これはバブルが崩壊してからの社会的傾向ですよね。

武田:社会の中でランク付けをすると、そのランクの上にいる連中というのは、常にランクの上から下の者を査定することができますよね。そうすると、その上の人たちの言説というの聞かなきゃいけない世界になっちゃってしんどいですよね。

内田:これは権力を持っている人たちはもちろんなんですが、例えばそうではないサブカルチャーの世界でもそうなんです。中途半端なことを言うと、その世界の重鎮的な人が「知らないことに口を出すな!」と言うんです。有名なのがサッカーワールドカップで盛り上がって、テレビを見ながらあーだこーだ喋っていると、「にわかが語るな!」と。語るなって平然と言うんですよ。「昨日今日サッカーを見出した奴に、語る権利はない」と。こういう抑圧は僕の子供の頃はなかったですね。それが今や全てのサブカルチャー、アニメや映画や音楽やスポーツでも、ありとあらゆるところで「身の丈を知れ」という抑圧が強まってますよね。

武田:知らないのに言ってみるとか、ものを知らない人の話を聞いてみるとかを受け入れないと、文化や社会や政治も活性化しないですよね。

内田:誰だってある分野に興味を持った瞬間は素人じゃないですか。「これは何なんだ」と思って調べたり人の話を聞いたりすると、「俺はこう思う」ということが出てくるじゃないですか。そのときに「ガタガタ言うんじゃねえよ」って言われたら言われたらそれっきりで、新しく学習することも自分の意見を周りの意見も突き合わせて検証することもできないですよね。

武田:内田さんの本にも触れられていますが、明確にはっきりとした物事が良しとされていて、「成熟とは複雑化すること、ということを認めない社会だ」と書かれていて、なるほどと思いました。今は知識を得ることが重要視されていて、でも本当は物事を考えていったらなんでも複雑化するんだけど、その状態に行こうとしない節がありますね。

内田:大人の作法というのは「複雑化しよう」なのですが、今は「話を簡単にしようぜ」って持っていこうとしてますよね。それは子供です。今の日本は子供が威張ってるんですよ。本当は逆です。話が複雑になったほうが解決しやすくなるんです。思いもつかなかった解決ができるので。話を簡単にするやつは自分の正解を押し付けるやつなので。それに同意できない人を排除するという。話を簡単にする方法は全然賢くないですね。

武田:ご本には「僕の記憶する限り、日本の政治史上今が一番最低です」とお書きになっていますが、今の日本の政治は話を簡単にしたがる人が多いように思いますね。

内田:単に頭が悪いんです(笑)複数の可能性を同時並行するんです。プランA、プランB、プランCとかを用意して、全部走らせて、Aが失敗したらBに行くみたいな。それって頭の器が大きくないとできないんですが、今の日本の政治家は脳が萎縮してますよね。プランAしかないんですよ。複数の仮説を同時並行して、だんだん絞り込む複雑な作業はある程度頭が良くないとできないんですが、今の政治家は端的に頭が悪すぎますね。

引き続き、サル化していく社会についてお話を伺いました。GUEST ACTION全編はradikoのタイムフリーで。

6月26日(金)のGUEST ACTIONを聴くhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200626163020

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)