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性的マイノリティの街に生きる人々を描いた「生と性が交錯する街 新宿二丁目」▼人権TODAY(2020年6月27日放送分)

人権TODAY

毎週土曜日「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内で8時20分頃から放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

今回のテーマは、「性的マイノリティの街に生きる人々を描いた『生と性が交錯する街 新宿二丁目』(長谷川晶一著)」です。

新宿二丁目の実像に迫る一冊

    
 今回のテーマは…ノンフィクション作家の長谷川晶一さんが出した新著「生と性が交錯する街 新宿二丁目」という本を紹介します。

著書と長谷川さん

「新宿二丁目」という街はJR新宿駅の東側、歩いて10分程度の位置にある200メートル四方ほどのごく狭い一角です。
いわゆる「LGBT」などとされる、同性愛、性同一性障害などの方が経営する飲食店や小売店などが多く集まっています。
新宿区の中では、歌舞伎町に次いでマスコミに取りあげられることの多い盛り場なので、ご存知の方も多いと思います。

「生と性が交錯する街 新宿二丁目」はその「新宿二丁目」の街で仕事をしたり、性的マイノリティの文化や理解に関わる取組みをしている6人の方たちに、歩んできた歴史や、仕事や取組みの困難さ、成果などをインタビューした本です。
登場する方それぞれに非常に深く真面目に話を聞いて、「新宿二丁目」の街の、外からは見えない実状や、働く人々の胸のうちが浮き上がってくる内容です。

著者の長谷川晶一さんはこれまでプロ野球やスポーツをテーマにした本を多く出版されています。
「新宿二丁目」やLGBTなどに関する本は初めてだそうですが、どういうテーマで書こうと思ったかを長谷川さんにうかがいました。

長谷川晶一さん
もともと僕は毎晩お酒を飲むタイプの人間なので、新宿という場所はよく飲みに来ていて馴染みがありました。ただ新宿二丁目は人に連れられていったことはあたんですけど、自分から積極的に足を運ぼうという場所ではなかったんです。なので、取材にあたって、自分の立ち位置をどうするかが課題というかポイントでした。僕は性的マイノリティの当事者ではない立場がまずひとつあって「等身大の長谷川という作者が今の二丁目に触れた時に感じたことをきちんと書こう」、「お会いした方の話を虚心坦懐に聞いたうえで、わからないことは、それはどうしてなんですか?」と率直に聞いて、何か書けるるのかなという取材のスタートでした。

新宿二丁目の6人

長谷川さん近影


  
    
「生と性が交錯する街 新宿二丁目」に登場するのはつぎの6人です。

・HIV、いわゆるエイズウイルスの陽性者(キャリア)で、同じ立場の人々に向けた情報ネットワークNPOの理事をしている長谷川博史さんにHIVとの向き合いかた、どのように生きてこられたかを聞いています。

・ゲイ雑誌「バディ」のもと編集長、村上ひろしさんにゲイ雑誌の内容のや読者が求める情報の移り変わりを中心に雑誌編集者として表現しようとしたものについて伺っています。

・レズビアンのカミングアウトをして同性婚を経験したタレントの一ノ瀬文香さんに、カミングアウトの難しさや、「新宿二丁目」で店を経営しながら、この街のレズビアン文化がどう変化してきたか、自分の視点で感じたことをなどを語ってもらっています。

・老舗のニューハーフクラブ「白い部屋」を経営するコンチママに半世紀以上、「新宿二丁目」をみつめてきた歴史とお客さんや働いている人たちの意識がどう変わってきたか、じっくり聞いています。

・深夜レストラン「クイン」を経営するママのりっちゃんに名物ママはどうお客さんや街の空気の変化を見てきたか生き証人として語っていただいています。りっちゃんママは本書で話を聞いている、唯一の異性愛者です。
    
・性的マイノリティの人たちを主体に開催される日本最大のイベント「東京レインボープライド」をたちあげた山縣真矢さんが、イベントが成功するまでの道のりや克服しなければならなかった問題、そして社会に与えた影響など興味深い話を語っています。

それぞれの方が様々な視点から「新宿二丁目」を語っていて、街の中にある意見の違いや課題なども見えてきます。

長谷川さん近影


    
著者の長谷川晶一さんは取材をした人々にどんな思いを抱いたのかを聞きました。

長谷川晶一さん
いちばん緊張したのは長谷川博史さんです。この方はHIVに感染されていて、感染が分かってから発症の恐怖に脅えながらもどうやって生きてきたか、彼の本音とか本心がきちんと話を引きだせるのかプレッシャーがとても大きかったんですが、ちゃんと向きあえば話をしていただけるという手応えを長谷川さんの取材でようやく得られました。それによって以降の取材を緊張せずに進められました。今回取材した人たちのコメントを総合すると、かつては限られた人たちの街だった「新宿二丁目」が今は多くの人たちにオープン化しつつあり、多様性のある街を目指していることが分かりました。だから非当事者が足を踏み入れていくことは後ろめたいことでもやましいことでもないし、この街の人々にとってむしろウエルカムなんだ、余計な緊張を持つ必要はないんだと、取材を通じて感じました。

新宿二丁目が果たす役割

「新宿二丁目」という街は、性的マイノリティの当事者が多いことで今もさまざまに誤解されている面があります。
著者の長谷川晶一さんも、取材前はわだかまりがあったそうですが、この本の取材を通じて多くの人に話を聞き、考え方も変わり、新宿二丁目が誰にでも優しい街に感じられたり同性愛者の友人たちの思いを身近に理解できるようになったそうです。
    
「新宿二丁目」には長年培われた歴史があり、現在は世界中から観光客が訪れて、多様性のある理想的な街と憧れる人たちもいます。
今、世界で性的マイノリティの人権や生き方をより深く理解しようという流れがありますが、その流れにこの街が果たした役割も大きいと長谷川さんは本の中に書いています。
   
最後に、どのような人たちに読んで欲しいかや、本を読んだ人たちから寄せられた感想を長谷川さんに聞きました。
   

長谷川晶一さん
「新宿二丁目」の名前は知ってるけど、行ったことのない方に読んでほしいです。感想に関しては、性的マイノリティの当事者の方よりは、非当事者の人からの感想がよく耳に入るります。「新宿二丁目」ってどんな所か分からなかった、でもこういう人がいる街なんですねとか、こういう考え方をしている人たちが日々生活してるんですねとか、知らないことを知れたという感想が多いですね。

    

長谷川さんが話しているように、この本は性的マイノリティの人たちについて知るきっかけにもなると思います。
新書サイズで手に取りやすい本なので、多くの人に読んでいただき、性的マイノリティに対する理解を深めてほしいと思いました。

「生と性が交錯する街 新宿二丁目」は角川新書から
940円+消費税で発売中です。

https://www.kadokawa.co.jp/product/321806000082/

(取材報告:藤木TDC)