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「黒人差別と警官の暴力に抗議する社会運動『Black Lives Matter』を知るうえで聴いてほしいプロテストソング4選」(高橋芳朗の洋楽コラム)

ジェーン・スー 生活は踊る

音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんによる洋楽コラム(2020/06/05)

「黒人差別と警官の暴力に抗議する社会運動『Black Lives Matter』を知るうえで聴いてほしいプロテストソング4選」

高橋:本日はこんな特集をお届けいたします。「黒人差別と警官の暴力に抗議する社会運動『Black Lives Matter』を知るうえで聴いてほしいプロテストソング4選」。

5月25日にアメリカはミネソタ州ミネアポリスで無抵抗の黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官によって窒息死させられた事件を受けて、いまアメリカ全土で「Black Lives Matter」と呼ばれる黒人差別と警官の暴力に抗議する社会運動が拡大しています。「Black Lives Matter」は「黒人の命を軽んじるな」「黒人の命を軽視するな」という意味。これは2013年、フロリダ州サンフォードで黒人少年トレイヴォン・マーティンさんが丸腰であったにも関わらず白人警官に射殺された事件に抗議する目的から生まれた運動になります。今日はその「Black Lives Matter」運動を知るうえで皆さんに聴いてほしい曲を4曲選んでみました。

まずはR&Bシンガーのディアンジェロが2014年12月にリリースしたアルバム『Black Messiah』より「The Charade」。このアルバム『Black Messiah』は当時「Black Lives Matter」の運動が注目を集めるなか、そのムーブメントを後押しするように当初の予定より前倒しでリリースされたという経緯があります。有名アーティストが「Black Lives Matter」運動に呼応した作品としては比較的早かったもののひとつですね。

『Black Messiah』のジャケットには群衆が拳を掲げているモノトーンの写真が使われていますが、これに示唆されているようにタイトルの『Black Messiah』(黒い救世主)はディアンジェロ自身のことではなく、「我慢し難い状況に対して変化を求めるべく決起しているすべての人々」を意味しています。

これから聴いてもらう「The Charade」はそんなアルバムを象徴する曲で、警官の暴行によって黒人男性が犠牲になった一連の事件にインスパイアされた曲になります。サビの歌詞を紹介しましょう。

「欲しかったのは話し合う機会だけだった。でも、その代わりに手に入れたのはチョークで引かれた死体の跡。俺たちは足が血まみれになるほどに遠い道のりを歩いてきた。いつか、ある一日の終わりに必ずこの茶番劇を暴き出す。目を覆うベールを剥がして、真実に目を向けよう。そして行進を始めるんだ。決して長い時間はかからないはずだから」

M1 The Charade / D’Angelo and The Vanguard

高橋:2曲目は大御所ヒップホッププロデューサーのドクター・ドレーが2015年にリリースしたアルバム『Compton』より、グラミー賞の最優秀新人賞にノミネートされたこともあるシンガー/ラッパーのアンダーソン・パークをフィーチャーした「Animals」。

今回のジョージ・フロイドさん殺害事件に伴う抗議運動を報じるメディアに対してたびたび指摘されているのは、警官とデモ隊が衝突する模様だったり、一部の暴徒が店舗を破壊して商品を略奪する様子だったり、そういう過激な映像ばかり流して平和的なデモにはあまりスポットが当てられていないことです。

抗議運動に参加した歌手のアリアナ・グランデもSNSを通じてこんなことを訴えていました。「何時間も何マイルもかけて平和的な抗議が行われていたのに、そのほとんどが報道されていない。私たちが歩いたビバリーヒルズとウェストハリウッドは、人々の情熱と大きな声、そして愛にあふれていた。こうしたデモもしっかり報道してほしい」

これから聴いてもらう「Animals」はそういうメディアの報道姿勢を糾弾した歌です。アンダーソン・パークは「メディアが俺たちにスポットを当てるのはきまってなにか悪いことが起こっているときなんだ」と主張しています。サビの歌詞はこんな内容です。「こんなときだけ俺たちの周りにやってきて、自分たちのことを動物の集まりのように扱うのはやめてくれ。メディアが黒人にカメラを向けるのは、俺たちにネガティブなことが起こっているときばかりなんだ」

M2 Animals feat. Anderson Paak / Dr. Dre

3曲目はブルース・スプリングスティーンの「American Skin (41 Shots)」。この曲はもともと2001年にライブバージョンとして発表したものになりますが、2014年になってスタジオ録音の新バージョンがつくられました。おそらく「Black Lives Matter」の動きに応じて再レコーディングしたのでしょう。

ブルース・スプリングスティーンは新型コロナウィルス感染を受けていま自宅から定期的にラジオ番組を放送していますが、ちょうど昨日の放送ではオープニングで今回亡くなったジョージ・フロイドさんへの追悼としてこの「American Skin (41 Shots)」を演奏して「現在アメリカで起こっていることは新しい公民権運動だ」とコメントしました。

この「Amercian Skin」は1999年2月にニューヨークで起きた事件からインスピレーションを得ています。丸腰だったギニア移民のアマドゥ・ディアロさんが4人の警官によって誤って41発もの銃弾を打ち込まれて射殺された事件です。

スプリングスティーンはこの曲を歌ったことによって、ニューヨークのマディソンスクエアガーデンでコンサートを開催したときにニューヨーク市警より警備をボイコットされました。そして多くのこうしたケースの事件がそうであるように、アマドゥさんを射殺した4人の警官は無罪になっています。

この曲のサビはアマドゥさんが上着のポケットから財布を取ろうとしたところで銃撃されたことに基づいています。歌詞はこんな内容です。「ポケットにあったものは、銃なのか、ナイフなのか、それとも財布なのか、いや、君の命だったんだ。それは決して隠し持っていたものじゃない。隠す必要などないものだ。ここでは、ただアメリカ人として生きているだけで殺されてしまうんだ」

そのほか、曲中では黒人の母親が息子を学校に送り出すときのやり取りを描いた歌詞もあります。「ママに約束して。おまわりさんに呼び止められたときは絶対に逃げ出したらダメ。必ず両手を隠さないようにするんだよ」。まさに日常的に命を脅かされている状況にある、ただアメリカ人として生きているだけで殺されてしまう、そんな黒人を取り巻く理不尽な現実を歌っている曲です。

M3 American Skin (41 Shots) / Bruce Springsteen


*映像はライブバージョンになります

高橋:最後はグラミー賞で最優秀プロデューサー賞を受賞しているファレル・ウィリアムス率いるグループ、N.E.R.D.の「Don’t Don’t Do It!」。2017年のアルバム『No One Ever Really Die』の収録曲です。

この曲のタイトル「Don’t Don’t Do It!」は「やめてくれ、撃たないでくれ」という意味になりますがが、これもまた実際の事件を題材にしている曲です。2016年9月、ノースカロライナで丸腰の黒人男性キース・ラモン・スコットさんが白人警官に射殺された事件を受けてつくられています。

この事件の一部始終は今回のジョージ・フロイドさんの一件と同様に映像に残されています。キースさんを取り囲んだ警官に対して、彼の妻が必死に「撃たないで! Don’t Do It!」と繰り返し訴えてるなかで警官が発砲するさまが克明に記録されているんです。この曲のタイトルは、そのキースさんの妻の「撃たないで!」という叫びに由来しているわけです。

M4 Don’t Don’t Do It! / N.E.R.D. feat. Kendrick Lamar

高橋:今日は5年前に「Black Lives Matter」運動が盛り上がったときの曲を中心に取り上げましたが、今回のジョージ・フロイドさんが殺害された事件にインスパイアされた曲も徐々にリリースされ始めています。機会があればこのコーナーや同じTBSラジオの『アフター6ジャンクション』で毎月企画している新譜情報などで紹介できたらと思っています。

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当ラジオ番組では「日々の生活に音楽を」をコンセプトに、音楽ジャーナリスト・高橋芳朗さんによる洋楽選曲を毎日オンエア。最新1週間のリストは以下です。

6月1日(月)

(11:05) It’s Going to Take Some Time(小さな愛の願い) / Carpenters
(11:26) Disney Girls / The Beach Boys
(11:37) Guitar Man / Bread
(12:15) Muskrat Love / America
(12:50) 雨の日暮れ / 赤い鳥

6月2日(火)

(11:06) Ask / The Smiths
(11:27) Get Up Off Our Knees / The Housemartins
(11:36) Sensitive Touch / Max Eider
(12:16) Skankin Queens / The Bodines
(12:49) Happy Like a Honeybee / Flipper’s Guitar

6月3日(水)

(11:05) Make Her Mine / The Hipster Image
(11:38) Get On the Right Track Baby / Georgie Fame
(12:15) Fool Killer / The Brian Auger & the Trinity
(12:49) Who Can I Turn To / The Peddlers
Elza Soares – Tristeza (1967)

6月4日(木)

(11:05) Tristeza / Elza Soares
(12:15) Clara / Claudette Soares
(12:23) Se Voce Quiser Saber / Nara Leao
(12:50) Amor de Carnaval / Jorge Ben

6月5日(金)

(11:06) He’s The Greatest Dancer / Sister Sledge
(11:25) My Forbidden Lover / Chic
(11:36) More Than One Way to Love aWoman / Raydio
(12:11) Stay Free / Ashford & Simpson