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全国の高齢者の「腰」を守れ!2年で定価を8割引にしたマッスルスーツの本気

見事なお仕事

企業の“見事な”取り組みや新情報をお届けする番組『見事なお仕事』。ポップカルチャーの総合誌「BRUTUS」の編集長でカルチャーに精通する西田善太さんならではの視点で、企業の“見事なお仕事”の内容と秘訣を、インタビュー形式で伺っていきます。

3月8日(日)のゲストは、株式会社イノフィス社長の古川尚史さん。イノフィスといえば、腰の補助に特化したウェアラブルロボット・マッスルスーツ。今回は、マッスルスーツEveryを持ってきてくれました。使ってみればわかる、その「楽さ」を体感!「世の中の役に立ちたい」という熱い思いの開発秘話を伺います。

百聞は一見に如かず!まずはマッスルスーツを初体験

西田 今日はイノフィス社長の古川尚史さんにお声がけしました。イノフィスといえば、マッスルスーツ。

古川 ありがとうございます。

西田 実は今、話す段階で僕がマッスルスーツを身につけています。ちゃんと機能しない状態でつけているんですけど。肩から背中に薄めのリュックを背負っている感じで、両腿の前に支えてくれるサポートがついています。

さて、これからどうすればいいですか?

古川 これ、自転車の空気入れと一緒なんですよね。電気は一切使わずに動きます。ポンプで……。

西田 えっ、自分で?

古川 はい(笑)

西田 (シュコシュコと空気を入れながら)なんか身体に空気がはいって膨らんでいくような気分ですね(笑)。だんだんと背中が引っ張られていきます。補助されているような感じが強くなってきました。

古川 それでちょっと屈んで立っていただくと。びよーん、と。

西田 なるほど! なんと言えばいいんでしょう。スクワットが楽になる感覚というか。

古川 そうですね。それから、ちょっとだらんと前屈みになっていただくと、人が後ろから上半身を抱えてくれているような感覚がありませんか?

西田 ほんとだ! ぶら下がれます。電車でこうやって休めますね(笑)。こんな簡単な器具なのに、なんだかはしゃいじゃいます。

西田 じゃあ、荷物を持ち上げてみますね。(少し重いものを上げ下ろししながら)置くときと持ち上げるとき、どちらもすごく楽になりました。

古川 そうですね。特に荷物を置くときって、実はすごく膝に負担がかかっているんですが、マッスルスーツでその負担を軽減してくれます。

西田 「百聞は一見に如かず」じゃないですが、使ってみてわかることがたくさんありますね。”マッスル”スーツと聞くと自分の腕の力が強くなるような印象を受けますが、そうじゃなくて、腰の曲げ伸ばしが楽になって……なんだか二人羽織をしているような感覚です。すごく安定感がある。

古川 ええ。使っていただかないと商品をなかなかうまく伝えられないんですよね。重い物を持つためのものという印象が強いかもしれませんが、「腰を守ってくれる」器具なんです。腰にかかる負担を軽減してくれるから、その結果として重いものも持てる。

常に「後ろから体を支えてくれる人がいる」ようになる道具だと思ってもらえればいいかなと思います。

今、この状態だと座りづらいと思うんですが、この赤い穴を爪で押していただくと、

(プシューッ)

空気が抜けるようになっています。スイッチとかもなく簡単な器具なので、本当に高齢者の方でも使っていただいていますね。

西田 装着もリュックサックみたいに背負うだけだから、慣れれば3分くらいでできそうですね。

古川 慣れたら、10秒もかからず装着できますよ!

西田 ウィーンガシャン、みたいな機械音がしないのもいいですね。

古川 そうなんです。このマッスルスーツは「人工筋肉」というアナログな動力を使っていて、まさに「自転車」みたいなものだと思っています。誰でも直感的に使えて、電源も充電も不要、メンテナンスもいりません。自転車のタイヤと一緒で、使うごとに何かが減るわけではなく、1度空気を入れればずっと使えます。

西田 なるほど。「人工筋肉」とは、どういったものですか?

古川 ゴムでできた、体を引っ張り上げてくれる装置です。空気を入れると膨らんで、ちょうど力こぶができるようなイメージですね。前屈みになると、力こぶがびよーんと伸ばされる形になって、それが引っ張る力になってくれます。

西田 背中に、軽くてとっても効率的な筋肉をひとつ付けてあげますっていう感じですね。装着も楽だし、すごく助かりますね。

古川 ありがとうございます。

「世の中の役に立ちたい!」10万円台のマッスルスーツを実現するまで

西田 そもそも、このマッスルスーツを作ろうと思ったきっかけはなんだったんですか?

古川 もともとは介護用に開発したものなんです。介護のお仕事は人を抱えたり重労働が多いので、50歳くらいで辞めてしまう人が多いそうで。7年ほど前に、介護事業者さんから「みんなが定年まで働けるような装置を作ってほしい」とお話をいただいたことがきっかけです。

西田 始めは、大学ベンチャーみたいなものだったんですか?

古川 そうですね。20年以上東京理科大で1年ほどかけて開発しました。

西田 今に至るまでの苦労話なんかも聞けたらと思うんですが。

古川 値段ですね。今は14万9千円で発売しているんですが、最初は80万円もしたんです。80万円から今の10万円台にまで落とすのには苦労しました。「もう完成しているものなのになんでわざわざいじるんですが、ありえない」ってみんなに言われまして。そもそも、市場原理から言えば減額の必要性がないんです。なぜなら、競合商品がない。

西田 オリジナリティのある商品だから、みなさん80万円でも売れる自信があったんですね。

古川  そうです。でも実際に個人使いで80万円も出すかと言われればなかなか難しい。だったら軽トラ買うよと(笑)。それでやっぱり10万円台にしようと決めて、軽量化やデザインの見直しを行っていきました。なんとか2年かかって実現できました。

西田 2年て早いですよ! 月2、3万のペース(笑)。利益も減っちゃうと思うんですけど、そこに迷いはなかったんですか?

古川 使っていただく方のことを考えると、全くなかったですね。もともと「世の中の役に立ちたい」と思ってこの世界に入ったので。

西田 そうそう、古川さん、昔は企業再生のお仕事をされていたと聞きました。

古川 そうです、コンサルタントの仕事をしていました。

西田 そこからどうしてマッスルスーツの世界に?

古川 企業再生の仕事って、世間の役に立ってないって気づいたんです。再生が必要になるような会社って、極端に言うと「なくても大丈夫」な会社なんです。

西田 どういう意味ですか?

古川 需要がなくて代替可能だから、破綻してしまう。再生の仕事は、その”代替可能な会社”を無理矢理延命させるような仕事だと感じるようになったんです。それって世の中の役に立っているのかな、と。

西田 なるほど。もちろんそこに醍醐味もあるんだけれども。

古川 そうです。もちろん、従業員の方とそのご家族は救われるので意味がないことはないんですけど、自分は代替のきかないものを作りたいなと思いました。

マッスルスーツをプレゼント!ますます広がる活用場面

西田 実際にはどういう方が使われているんですか?

古川 介護や農業、あとは工場などでも使っていただいています。特に農業では重宝していただいてます。高齢の方が多いので。

西田 そうそう、農業従事者の高齢化問題は日本が抱えている大きな問題ですよね。

古川 今、農業に関わっている方々の平均年齢が67歳なんです。70歳、80歳の方もたくさん働いています。そういった高齢者の方へのプレゼントとして買われる方も多いです。

西田 すごくいい話。工場とかではどんなところで使われるんですか?

古川 工場ではさまざまな場面で使っていただいていますが、例えば洋酒メーカーさんでは、女性に標準装備として使用していただいているケースなんかもあります。

西田 古川さんも使われているんですか?

古川 はい。自分がいちばん役に立つなあと思うのは、雪かきのときですね。今年はまだ降ってませんけど(笑)。

西田 うずうずしてるんだ(笑)。いやー、機能といい値段の下がり方といい、見事なお仕事です。

古川 ありがとうございました!