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「コロナ」と「これから」 元に戻すのか、変えるのか 高橋源一郎×久米宏

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
5月16日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、作家の高橋源一郎さんをお迎えしました。これまで高橋さんには3度の年末対談にご出演いただいて、2015年は「民主主義とことば」、2016年は「政治家とことば」、2018年は「平成の終わり」について伺ってきました。新型コロナウイルスへの不安が広がる中で4回目の対談となった今回は「コロナによってみえてきたこと」そして「これから」についての話になりました。

高橋源一郎さんは1951年、広島県生まれ。1969年、東京大学を受験するつもりが学生運動のあおりで入試が中止となったため、横浜国立大学に入学。その年、学生運動に加わり逮捕、翌年まで7ヵ月東京拘置所で過ごしました。1981年に『さようなら、ギャングたち』で群像新人長編小説賞の優秀作を受賞し、作家デビュー。以降、『優雅で感傷的な日本野球』(三島由紀夫賞・1988年)、『日本文学盛衰史』(伊藤整文学賞・2002年)、『さよならクリストファー・ロビン』(谷崎潤一郎賞・2012年)など多数の小説を発表。また大衆文化、マンガ、競馬など、幅広いジャンルで評論やコラムを執筆。東日本大震災後は日本社会についての著書も多く、『「あの日」からぼくが考えている「正しさ」について』(河出書房新社・2012年)、『非常時のことば 震災の後で』(朝日新聞出版・2012年)、『国民のコトバ』(毎日新聞社・2013年)、『「あの戦争」から「この戦争」へ ニッポンの小説3』(文藝春秋・2014年)、『ぼくらの民主主義なんだぜ』(朝日新書・2015年)、『ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた』(集英社・2017年)、『一億三千万人のための「論語」教室』(河出新書・2019年)などがあるほか、ツイッターでも発信を続けています。

新型コロナ禍の中での発見


今回は新型コロナウイルスの感染防止のため、神奈川県・鎌倉にある仕事場からオンラインでのリモート出演となった高橋さん。4月からNHKラジオ第1で始まった新番組も同じようにリモートでやっていて、さしずめ私設スタジオ「ラジオ鎌倉」といった状態。高校生の息子さんがフロアディレクター代わりになって助けてくれているそうです。

高橋さんは大学でも初めてオンラインで授業をやってみて(明治学院大学名誉教授です)、ひとつ発見があったそうです。普段教室で講義をしているときよりも生徒たちが活発に発言するようになったというのです。

「学校というのは彼らにとってアウェーなんですよ。先生はホームですよね。ホーム&アウェー。彼らはアウェーなので、両方ホームでやればいいと思ったんです。だとすると、いまはある意味、理想なのかもしれない。もちろんそれが最高かどうかは分からないんですけれども、そういうことも可能性としてあるというのは、今回のコロナのおかげで知ったことですね。それはとてもよかったと思います」(高橋さん)

みなさんもこの数ヵ月の生活の変化の中でいろいろな発見があったのではないでしょうか。ステイホームすることになったものの、家には自分の場所がないことに気づいたり。これまであまり会話をする時間もなくなっていた家族と久しぶりに向き合うことになったり。毎日何の疑問も持たずに乗っていた通勤通学の満員電車はなんだったのかと考えたり。働き方、家族、いままでの生き方を半ば強制的に見つめ直す機会になっているのではないか、と高橋さんは言います。

「人間、暮らし方が変われば、考え方も変わりますから。家庭第一だとか、こういうことがあると、もしかすると変わるんですよね」(久米さん)

「ぼくまだちょっとやってないんですけど、『Zoom飲み会』って聞きました?」(高橋さん)

「話は聞いてますけど、ぼくは禁酒しちゃったんで」(久米さん)

「やった人によるとすごくいい、と。なんでって聞いたら、家だから嫌になったら退出できると。それから普段飲み会って、例えば10人、15人だと、実は話せるのって周りの3~4人じゃないですか。ところがZoom飲みだと全員の顔が見えるので、そのほうがずっと会話ができるって」(高橋さん)

「システムが変わるだけじゃなくて、もしかすると人と人の関係が変わる可能性があるんですよね」(久米さん)

「それが大きいんじゃないかと思いますね。だからポジティブに考えてもいいのかなとは思います」(高橋さん)

「あいつはちょっと…ていうやつ、いますよね、会社でも学校でも。そういうのをいままではどこで判断してたかっていうと、教室での雰囲気とか職場で遠目で見た感じとか。いままで面と向かってネットで話すっていうことはなかったわけですけど、面と向かって表情をよく見たり話し方を正面からよく見ると、いままで自分が思ってた彼あるいは彼女とちょっと違ってたりね。違う人間性を発見する可能性ってあるわけですよ」(久米さん)

「それはあると思います。ぼくらもある意味で紋切り型の考えで『人は対面コミュニケーションが大事。インターネットなんかやってるから人とのコミュニケーションが取れなくなっちゃう』とよく言ってるじゃないですか。ところが今回対面ができなくなって、ネットのコミュニケーションを対面でやってるんですよね。そうすると、対面でやってるよりもポジティブな面がいろいろ出てきた。アウェーの学校に行って先生と話すとかしこまっちゃうけど、自分もホームにいるとリラックスしてミスの部分が出てくるとかね。これ、実際に対面でやるよりもいいコミュニケーションが取れてるんですよ、ネットのほうが」(高橋さん)

「パソコンに顔のサイズがみんな同じに映るじゃないですか。先生の顔が同じ大きさに映ってると、教室では『先生』だったのが、画面だと『源ちゃん』みたいになる可能性があるわけですよね」(久米さん)

忘れてしまわないように記録しておく


なかなか外出できない状況になって「こんなに本を読むことに集中する時間ができたのは、学生運動で拘置所に入れられたとき以来」と笑う高橋さん。その中には『ペストの記憶』(ダニエル・デフォー著)、『ペスト』(アルベール・カミュ著)、『流行性感冒 「スペイン風邪」大流行の記録』(内務省衛生局・編)、『コロナの時代の僕ら』(パオロ・ジョルダーノ著)といった本がありました。

「ぼく今回いろいろ本を読む機会があったんですけど、こういうとてつもない大災害は繰り返し起こってるんですよね。ペストの大流行とか、100年前のスペイン風邪も1億人近く死んだって言われてますし。実はそういう世界を襲った大災害、とてつもない被害っていうのは、歴史上初めてじゃないんです。それをちゃんと書き残した人がいて、ちょっと驚いたのは、みんな異口同音に『大災害が終わると、みんなきれいに忘れてしまうんだよね』って書いてあるんです。もちろん人間は嫌なことは忘れたい。それで未来を目指すという気持ちもあると思いますけど、忘れちゃった結果、おんなじ過ちを繰り返すということもある。いまはまだコロナの流行の最中ですし、これからもっといろんなことが起こるのかもしれないんですけど、いまどうですかね。このことを絶対忘れないようにしておこうと書いておくとか、しゃべっておくとか、そういうのが大切かもしれません。でも、そんなこと3.11のときも言ってたんだよね」(高橋さん)

「うーん。スペイン風邪って、第1次世界大戦の死者よりも死んだ人が多いんですよね。第1次大戦というのは新しい兵器がどんどん出てきて、タンク(戦車)は出てくる飛行機は出てくる、大量殺戮だっていって毒ガスまで出てきて、ものすごく大勢死んだんだけど、スペイン風邪で死んだほうが多かったっていう。それを忘れちゃうって…。ペストもスペイン風邪も忘れちゃうっていうのは、忘れないと生きていけないからじゃないかって。憶えてたらとても生きていけない、怖くて」(久米さん)

「ただ、同時にね、どうしてそういう失敗が起こったのかっていうことも一緒に忘れてるので。今回の新型コロナウイルスの大流行だって、やっぱりすごく初期の段階から『大丈夫か?』って思ってた人がいたみたいなんです。感染症に詳しい方とか、それこそ『ペストの記憶』を読んでる人は、放っておいたら危ないんじゃないかなって。でもヨーロッパの大流行もアメリカの大流行も、初期には『なに騒いでるんだよ』ってみんな言って。ぼくが朝日新聞で紹介した本の中でも(『コロナの時代の僕ら』)、イタリアでこれはヤバイって用心してて、パーティーに行ったら『お前、ハグもしないしキスもしないって、頭おかしいんじゃないの』っていうような言われ方をされたって書いてある。でもその2週間後にはイタリアが全部ロックダウンした。だから、知識を持って警戒する人が何か言っても「ただ不安がらせようとしてるんだ」というような言い方をされるんですよね。あとになってみれば残念だなってことになるんですけど。これ、メディアがもし最初の段階でそういう知識を持っていたらどうだったかな、とは考えますよね」(高橋さん)

「ちょっと乱暴な言い方をしちゃうと、変人と思われるような少数者、あるいは卑怯者と呼ばれているような人の意見も聞いてみろってことですよね。怖がり屋さんの意見も聞いてみろっていうことでしょう、馬鹿にするんじゃなくて。少数者の意見て、貴重なことを言っていることがとても多いから、聞けってことですよね」(久米さん)

早く元に戻りたいとばかり考えないほうがいい


「我々、どういう心持ちで過ごしていったらいいもんでしょうね」(久米さん)

「ひとつはパニックに陥らないってことですよね。もちろん経済的なものも含めていろいろ手当はしていかなきゃいけないし、きちんと要求はしていくと。ただ、早く元に戻りたいってことばかりを考えないほうがいいと思います。元に戻っていいことと、せっかくだからこの際変えたほうがいいことを、分けておくってことが大事だと思うんですよね。戻りたい日常もあるでしょう。でも、今回分かった『これ、やっぱりヤバかったな』ということは、いい機会だから変えちゃうのもいい。人によっては『やっぱり対面授業じゃなくてオンラインでいいよ、いじめがなくなるから』みたいな人もいるし。これはもちろん極論ですけど。そういう見直しをするいい機会だと思います。ぼくもそうですけど、やっぱりいろいろ考えてるつもりでも、なんとなく『これはもう決まりだから』みたいなことがいっぱいあるじゃない、頭の中に。こういうもんだと思ってること」(高橋さん)

「いわゆる既成概念てやつですね」(久米さん)

「そうです。自分の中にもいっぱいありますよね、人のことは言っててもね。ある程度時間も取れるのならちょうどいい機会だし。嫌かもしれませんが、ずっと家にいるので(笑)。こういうことも利用するって言ったらおかしいんですけども、いい時期なのかなというふうには思います。だから自分の中に溜まっていた古いものを全部出してこの際、虫干しする」(高橋さん)

「考える時間がたっぷりできたっていうのは、数あるマイナスの面を考えればかなり大きなプラスではありますよね、我々にとっては」(久米さん)

「ネガティブになっていけばキリがないので、やっぱりどんな場合でも、未来をどうやってつくっていこうかというふうに考えて、立ち上がっていかないと。それこそ自分の子供とか孫がいるわけですからね、やつらに申し訳ないんで。あんまりガックリしてるわけにはいかないってことですね」(高橋さん)

「未来は必ずやってきますからねえ。つくり上げなきゃいけない」(久米さん)

高橋源一郎さんのご感想


久米ラジオ、リモート出演っていうのが、またいいですね(笑)。
ゲストなので、なにを言ってもかまわないし、久米さんが相手なので、どんなボールでもキャッチしていただけるから楽ちんです。
いまのような時期こそ、久米ラジオのような番組の大切さが、分かると思いました。
ぼくも、4月から始まったNHKの新番組に戻って頑張ります。担当スタッフに訊いたら、もう最初から、どうやって久米さんに出てもらおうかと考えていたそうです。なので、久米さん、出てくださいね。お願いします!





「今週のスポットライト」ゲスト:高橋源一郎さん(作家)を聴く

次回は、特別企画「あのゲストが語った日本社会とメディア」

5月23日の「今週のスポットライト」は特別企画、スポットライト・スペシャル「あのゲストが語った日本社会とメディア」をお送りします。世の中に不安が広がるいまだからこそ聴き直したいゲスト対談集。森達也さん(ドキュメンタリー作家)、池澤夏樹さん(作家)、太田愛さん(脚本家・小説家)の3人が語る「日本社会とメディア」。どうぞお楽しみに。

2020年5月23日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200523140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)