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新型コロナ深刻なスペイン「それでも光が見えてきた」清水建宇さん(在バルセロナ豆腐店主、元朝日新聞論説委員)

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
4月25日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、元朝日新聞論説委員で現在はスペイン・バルセロナで豆腐店を経営する清水建宇(しみず・たてお)さんをお迎えしました。

清水さんは1947年、北海道生まれ。神戸大学を卒業し、1971年、朝日新聞に入社。警視庁キャップ、「週刊朝日」の副編集長、オピニオン雑誌「Ronza(論座)」の編集長などを経て、2004年に論説委員。その間、テレビ朝日の『ニュースステーション』のコメンテーターとして久米さんと4年間ご一緒でした。2007年に定年退職。するとなぜか豆腐作りの修行を始めたのです。実は清水さんは記者時代、取材で訪れたスペインに一目惚れ。いつか移住すると決めたものの、唯一困ったことは大好きな豆腐が食べられなること。「それなら自分で豆腐店を出せばいい!」と考えていたのでした。修行中の2008年6月28日にはこのコーナーでご自身の第二の人生について話していただきました。そして2010年、スペインのバルセロナに念願の豆腐店「TOFU CATALAN」をオープン。日本人にもスペイン人にも人気のお店になっています。

スペインはいま新型コロナウイルスの感染拡大が深刻です。その状況を伝えるメールが清水さんから久米さんに届き、4月11日の放送のオープニングでご紹介しました。今回はさらに詳しいお話を伺いました。

スペインは感染者22万人、死者2万2500人


スペインの新型コロナウイルスの感染状況は、感染者21万9764人・死者2万2524人(日本時間4月25日午前4時時点。以下のデータも同じ)。一方、日本は感染者1万3231人・死者334人。先週のゲスト、長野県立大学教授・田村秀さんが「日本と海外を比べる場合は、人口当たりの数字に直して」とおっしゃっていましたから、人口10万人あたりの数を比較してみます。

(人口10万人あたり感染者数・死者数)
スペイン 感染者470.03人・死者48.17人
イタリア 感染者268.74人・死者42.95人
アメリカ 感染者184.14人・死者15.41人
日本   感染者 10.19人・死者 0.26人

スペインはいま医療崩壊の危機に直面しています。実はスペインの医療は今回の新型コロナ騒動の以前から崩壊しかかっていました。2008年のリーマンショックに不動産バブル崩壊が重なったスペインは、深刻な財政危機を乗り切るために医療を切り捨てたのです。公立病院をつぶすなどして医療費を削減。その結果、医療関係者3000人が職を失ったと言われています。残った病院の待合室は人であふれ、急患でさえ何時間も待たされるような状況。

「そこに新型コロナウイルスが襲ってきたもんだから、大混乱になったんです」(清水さん)

清水さんによると、スペインでの感染死者の多くは高齢者ですが若い人たちは他人事とは捉えていないそうです。スペイン人は家族の結びつきがとても強いため、自分のおじいさん、おばあさんは大丈夫かという心配がある。そして自分たちが感染してしまったら当然、家族への感染リスクが高くなります。ですから、みんなが我が事として受けて止めていて、危機感がとても強いそうです。

バルが閉まっていることの衝撃


スペインでは3月14日に厳格な移動制限や店舗休業を伴う「警戒事態」が宣言され、外出が禁止されました。日本では不要不急の「お願い」ですが、スペインは「外出禁止令」です。その内容はヨーロッパでいちばん厳しいと言われています。その外出禁止が2週間ごとに2回延長され、もう1ヵ月以上続きました。

日常生活に様々な支障が出る中で、スペインの人たちにとって特に影響が大きいのは「バル」の営業中止だと清水さんは言います。

「レストラン、バルが閉まっているということの衝撃は、一般市民にとってはすごく大きいんですよ。なぜかというと、スペイン人は一日に5回食事をすると言われているんです。朝、バルでクロワッサンとミルクコーヒー。午前11時頃、またバルで小皿料理をちょっとつまむ。午後1時頃、レストランやバルで昼ごはん。夕方、またバルでちょっとつまむ。そして夜9時から晩ごはん、これもレストランやバルが多い。一日5回ともバルやレストランで外食するという人が結構いるんです。そういう町で、3月15日から全部のレストランとバルが一斉に閉まっちゃったわけです。これがどれほどの衝撃か。日本の人にはなかなか想像してもらえないだろうと思います」(清水さん)

スペイン人の一日はバルに始まり、バルで終わります。彼らとってバルは、単なる軽食喫茶店・酒場などではなく、生活の中心にあるもの。その日常が失われた1ヵ月は、先の見えないトンネルが続いている感じだということです。

希望が見えてきたスペイン


スペインでは警戒宣言が続いていますが、この放送の翌日(4月26日)から、外出禁止令が少し緩和されることになっています。14歳未満の子供たちは外出が禁止されていましたが、一日1時間、自宅から1キロの範囲に限って屋外に出られることになります。親同伴で、公園の遊具で遊んだり友だちと会うことなどはできないといった条件つきですが、それでも3月に外出が禁じられてから初めての制限緩和です。

「散歩もできないって辛いですよ。スペインの南のほうでニワトリの首に縄をつけて引っ張って歩いていた人がいたんですよ。犬の散歩は外出の条件として認められているんですけど、その人は犬を飼っていなかったんですね。それでニワトリ。でもやっぱり検察に見つかって罰金を払っていました。そのぐらい外出禁止が厳しくて、ニワトリでも引っ張って歩きたいというぐらいの気持ちはみんなにあると思うんですよ。でも我慢してここまできたわけです。それは危機感がものすごく強いから。でも、もう頑張るのも限界に近づいていた。そこへ『明日から子供たちは条件つきで出てよい』と。これは意味が大きいんですよ。長いトンネルの先のほうに小さな光が見えたということなんです。出口が見えた。みんなで希望も共有し始めたんですよね。そうすると、もうひと頑張りできる」(清水さん)

清水さんは、このところの感染数・死者数の減り方を見ると、スペインはピークアウトして減少傾向に入っただろうと思うと言います。新型コロナウイルスの感染者の3分の2は抗体を持っていることも明らかになり、回復者の数も9万2000人に上ったそうです。

「ジョンズ・ホプキンス大学が発表する数字をいつも見ているんですけど、回復者が多い1位はドイツで10万6000人。人口を考えるとスペインの9万人というのはなかなかいい数字ですよね。イタリアはまだ6万人ぐらいですから。回復者が多いということは、医療が機能しているということなんです。感染者数も確かに多いですけど、退院する人が増えるから、病院があいてきたんです。この間、マドリッド(マドリード)の臨時病院のひとつが、もう役目は終わったというので撤収しました」(清水さん)

「お話を聞いていると、日本もなんとかスペインのようになっていければなと思いますよね」(久米さん)

「日本が難しいのは、検査が少なすぎて、一体増えてるんだか減ってるんだか、分かりませんね。そうすると日本の場合、漠然とした不安感があるだけで、危機感の共有というところにいけないですよね」(清水さん)

「まあ、数字をコントロールするのは得意ですからね、日本の政府は」(久米さん)

「ピークアウトも分からない。ピークアウトが分からないということは、トンネルの先の出口も見えない。希望を共有することもできない。まずい状況だなと思いますね」(清水さん)

清水建宇さんのご感想


久米さん流の「ぶっつけ本番、出たとこ勝負」で緊張しましたが、何とか無事に終わって、安堵しました。久米さんのリードでとにかくゴールまでたどり着けたみたいです。

放送でも話しましたが、スペインはもともと医療崩壊寸前で病院の資材も乏しく、医師や看護師らが次々と感染しました。感染者の15%、3万人以上が医療従事者です。それでも症状が治まったり、隔離期間が終わると、みんな病院へ戻ってウィルスとの戦いの最前線に立ちました。その様子が報じられ、バルセロナを含む多くの都市で、午後8時になると市民がベランダに立ち、拍手するようになりました。医療従事者に「ありがとう、がんばってください」と励ますためです。3月15日の外出禁止令から40日余り、一度も途切れたことはありません。私たち夫婦も毎日拍手します。放送があった25日は、翌日から初めて厳戒態勢が緩和され、子供たちが外出できるようになるとあって、拍手が一段と大きくなりました。口笛を吹く人もいました。

しかし、メキシコは違います。CNNによると、メキシコでは医者や看護婦はウィルスをまき散らしているというので乱暴されたり路上で劇薬をかけられたりして40人以上が犠牲になりました。日本でも医者や看護婦はタクシー乗車や入店を断られたり、子供が保育園から拒否されたりする例が報じられています。ネットのニュースを見る限り、命がけで頑張っている医療従事者が迫害される国は日本とメキシコ以外にありません。とても悲しいことです。

「今週のスポットライト」ゲスト:清水建宇さん(元朝日新聞論説委員)を聴く

次回は、厚生労働省クラスター対策班・西浦博さん

5月2日の「今週のスポットライト」は、新型コロナウイルス対策の最前線で今や時の人となった、厚生労働省クラスター対策班の北海道大学教授・西浦博(にしうら・ひろし)さん。数理モデルを使った感染症対策について、昨年3月にご出演いただいたときの対談を今またあらためてお聞きいただきます。

2020年5月2日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200502140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)