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【全文字起こし&音声配信】特集「感染ルート、抗体検査、外出…。新型コロナウイルスとの向き合い方~第2弾」峰宗太郎(ウイルス学者)×荻上チキ▼2020年4月20日放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」22時~)

荻上チキ Session-22

荻上チキ・Session-22

TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』(平日22時~生放送)
新世代の評論家・荻上チキがお送りする発信型ニュース番組。

▼2020年4月22日(水)  Main Session
時事問題など、およそ1時間にわたり特集。

特集「新型コロナウイルスとの向き合い方~第2弾」

【スタジオゲスト】
アメリカ国立衛生研究所に勤め、ウイルス学や医療リテラシーに詳しい、医師の峰宗太郎さん

 

 

 

【全文字起こし&音声配信】

特集「新型コロナウイルスとの向き合い方~第2弾」2020年4月22日(水)放送分(文字起こし:山本ぽてと)

・・・・・・・・

南部:ゲストをご紹介いたします。アメリカ国立衛生研究所病理専門医の峰宗太郎さんとSkypeがつながっています。峰宗太郎さんはアメリカ国立衛生研究所博士研究員で、ご専門は病理学、ウイルス学、免疫学、ワクチンの情報や医療リテラシーの問題もお詳しいです。

荻上:峰さんが所属するアメリカ国立衛生研究所は、コロナ対策においてはどのような活動をされているのでしょうか。

峰:私の所属している国立衛生研究所の「アレルギー感染症研究所」が中心になり、コロナウイルスがどのようなウイルスなのか知る基本的な研究と同時に、ワクチン開発や治療薬の治験を行うことなども総合的に行っており、幅広くコロナウイルスの対策に取り組んでいます。

濃厚接触とPCR検査について

荻上:今日は様々な質問がリスナーからも来ているので、お答えいただきたいと思うのですが、ぼくの方からもいくつか質問させてください。まず国立感染研究所が「濃厚接触者」の定義を変更しました。以前よりもその範囲が広がったようにも捉えられるのですが、この動きについてはどのようにご覧になっていますか?

注:「濃厚接触者」の定義変更=患者への接触時期について、「発症日以降」から「発症2日前」に早めた。患者との距離については「手で触れる、または対面で会話することが可能な距離(目安2メートル)」を「手で触れることのできる距離(目安1メートル)」と短くした。患者との接触時間については、「(マスクなどの)必要な感染予防策なしで15分以上の接触があった者」と定めた。「積極的疫学調査実施要領」より。

峰:この定義は、最新の研究に基づいた知見を盛り込んでいます。今までは、症状が出た、つまり発症したあとに、周りにウイルスをまき散らして感染を広げているのだと考えられていました。しかし最近の研究では、潜伏期間のうち、発症する直前、例えば前日においても、ウイルスをかなりの量、まき散らしていることが分かってきました。症状のない人が、病気を広げていることが、アメリカでも現在かなり問題になっておりまして、そうした最新の研究を踏まえ、(発症前までの) 広い範囲の期間を設定して、濃厚接触者を探そうとする方向に切り替わってきたのだと思います。

荻上:もともと無症状の方でも広げるのだと言われてきたが、それが相当程度だとわかってきたのですか?

峰:約44%ほどという研究もあり、半数程度が、症状がない状態で病気を広げているのではないかとわかってきました。

荻上:新しい濃厚接触者の定義の方が、むしろ重要だということですね。

峰:そうですね。広い範囲で対策をしたほうが、より病気を広げない観点では重要だと思います。

荻上:今、PCR検査のキャパシティを各自治体や行政の方で拡大しよう、多くの人たちを検査できるようにしようと体制を整えています。他方で、民間の方でも独自のPCRキットを作って配布するような動きもありますが、これについて、峰さんはどのようにご覧になっていますか。

峰:まずPCR検査は、医師が必要だと判断した時にしっかり行える体制を整えておくことが必要です。現在、東京を中心に感染者が増えていますので、医師が必要と判断した時に、キャパシティが足りずにPCR検査ができなければ困ってしまうわけです。ですから、キャパシティを拡大していくことには大いに賛成です。しかし前回も述べたように検査には、「感度」「特異度」に伴う問題もあります。必ず、偽陰性や偽陽性も出てきますし、検査の結果に応じてどのような対処をしていくのかという「検査の出口」についても考えなければいけません。そうすると、民間の検査において、まず質が保証されるのか、陽性であれ陰性であれ実際に結果が出たときに、出口がどのように用意されているのか、医療へのアクセスがどうであるか。そうしたことまで含めて考えなければいけません。ですから検査はなるべく統一感を持って質を担保し、その出口戦略まで考え、公が中心になり、しっかりコーディネートされて行われることが大事であると考えています。

荻上:今いくつかの日本の自治体で、医療従事者によるドライブスルー型の検査も出てきていますが、このように完結したパッケージを拡大していくことそのものも重要だということですか?

峰:はい、そこも重要になってくると思います。やはり病院施設まで検査を受けに来ると、そこで感染者が広がってしまう可能性もあります。バラバラの場所に来てしまいますと、すべての病院で防護して、医療従事者と患者さんの両方を守りながら検査をしなければならなくなりますので、一か所に集中して安全に検査をし、質を担保していくことも非常に重要になると思います。

抗体検査について

荻上:抗体検査の必要性も注目されています。市中感染者がどれくらいいたのか、そしてその中でどれくらいの方が抗体を持っているのかを把握することが重要であると。ただ抗体がどのようなものなのか、どの程度のものが抗体を持っていると言えるのか、こうした定義が固まらないと、あるいは検査の仕方が確立されないとなかなか難しいのかなと思うのですが。この抗体検査の在り方については、どう考えますか?

峰:はい。いま、挙げて頂いた疑問点は、まさにその通りです。このSARSコロナウイルス2(SARS-CoV2)によって起こる、COVID-19(コビッド・ナインティーン)という病気の際に、抗体がどのように振舞うのか、基本的なことがまだわかっていません。一般的には感染した後に抗体ができ、抗体が身体につくと免疫ができ、それでその病気に二度とかからなくなると言われています。しかし実証しないと、そのウイルスではわからないことがあるのです。例えば、インフルエンザでは、1シーズンで抗体がなくなり、次の年にまたかかることもあります。エイズを引き起こすHIVウイルスは、もう40年も研究されていますが、ワクチンもできていません。非常に難しい抗体反応があるからです。当該の新型コロナウイルスが抗体に対してどのような振る舞いをするのかで、どういった検査をしたらいいのか、検査キットを使うのではあればその品質がどの程度のものであるのか……段階的に実証していかなければならないことがまだまだ多いんですね。そこを踏まえずに、見切り発車で検査を行ってしまうと、結果が出ても信頼できないことになりますし、信頼できない結果をもとに政策を決定することには危険性があると思います。

荻上:一度感染した方は抗体を持っているので、その方に率先して様々な現場で働いてもらいましょうという話が良く聞かれます。しかしその人が二度とかからないことが、今の研究でどこまで保証されているのか。むしろ積極的に活動して、2度目の感染に気がつかず、拡大することはないのか。こうした懸念があります。

峰:全くおっしゃる通りです。イギリスでは免疫パスポートを発行し、一度感染した人はもうかからない前提で戦略を組み立てようとしていました。しかし冷静に考えると、2回目にはかからないと、今の研究段階では明確に言えません。さらには、半端な抗体ができてしまうことにより、より病状が悪化するADE(抗体依存性感染増強)という現象も知られています。2003年に流行し、現在の新型コロナウィルスと非常に似ているSARS(重症急性呼吸器症候群)でも、半端に免疫ができてしまうと、2回目にかかると、より重症な病気になる可能性もあることが、動物実験でわかっています。ですから、しっかりと研究し、どのように免疫がついてくるのかが解明されないといけません。安易に免疫がつくとか、すぐ働きに出られるとか断言するのは危険であると思います。

荻上:今は様々な論文が順次書かれているような状況があるので、どこまで結論が分かったのか、どういった薬ができ、検査が確立されたのか、そうした進捗を読まないと、政治的な対応も困難になるのでしょうか。

峰:そうですね。まず、論文で示されている点が重要です。ただ、ここのところ特に、論文が急速に出てきています。マンパワーが投入されているとも言えるのですが、粗雑な論文も増えている印象がありますので、論文にこだわらず、確実に言えることは何であるのかを積み重ね、根拠に基づいて解釈をし、政策を決定することが大切であると思います。

荻上:なるほど。僕は頭の中で、「ふーん」フォルダーと、「へぇ」フォルダーを分けていて、「最近の論文でこんなことが明らかに!」というものは、「ふーん」に入れてまだ保留にしておくことにしています。論文のクオリティもちゃんと見ていくことが必要なんですね。

峰:そうですね。いま話題になってるのはプレプリント(pre-print)と呼ばれるものです。一般的な論文では、研究者仲間が目を通す、査読(ピア・レビュー、peer review)を行い、この論文を出版する価値があるかどうか、大きな間違いはないかどうかを確認します。しかし現在は査読をしない段階で、どんどんインターネット上に公開する流れになっています。論文の下書きですね。玉石混淆と言っていい状態で、どこまで信用できるかわからないものや、検証が足りないものも混じっています。よく注意することが必要です。

荻上:論文を書くと、研究者の方がしっかりとそれを審査し、これを世に出せるかどうか、出せないのであれば書き直しをするのが学界のプロセスです。しかし今こういう状況だからこそ、早めに世の中に出そうとする動きがあり、それが結果としていいのか悪いのか、疑問が残るわけですね。

南部:色々と慎重さが求められるわけですよね。

結局、ウイルスって何?

荻上:前回、峰さんに出ていただいた際にも、リスナーの方から質問をたくさんいただきました。生活に密着した基本的な質問です。

南部:基本的なところから、峰さんにお伺いしたいと。

荻上:「除菌」と呼ばれるアイテムがありますよね。「アルコール消毒で除菌しましょう」と言われます。ですが、ウイルスは菌ではない。ウイルスは毒でもないと思います。「消毒」という表現でもいいのでしょうか。

南部:そうなんですよ。「〇時間で死ぬ」と言いますが、死ぬってことは、生き物なのかしら? という印象を抱きがちなんですけど。

荻上:このウイルスとはどういった存在なのか。退治あるいは、除去することは、従来の除菌対応でできるものなのかも教えてください。

峰:ウイルスが生物か非生物かは非常に難しいところです。細菌、つまり、ばい菌とは違って、ウイルスは細胞を持っているわけではない。もっと小さいものなんですね。ウイルスは細胞に侵入して、その細胞の機能を乗っ取る形で、自分たちを増やします。なので、ウイルス自体には(それだけで)増える性能はありません。細胞に入らない限りは、勝手に増えていくことはないんですね。そこが菌との大きな違いです。菌の場合には、自分で増えてしまいますので、その細菌を殺してしまうことによって、増えないようにします。「除菌」「殺菌」「滅菌」と言われます。それに対して、ウイルスはそもそも情報が入っているだけの、つぶつぶです。細胞に侵入する「活性がある」「活性がない」という言い方をし、ウイルスに対しては「不活性化」という表現をするのが正しいと思います。「消毒」にはウイルスを不活性化するところまで含まれますので、ウイルスに対しては「消毒をすることは重要である」という言い方になると思います。

荻上:ウイルスによっては、空気中に漂うものもあれば、今回のように飛沫や接触によって感染するものもある。今回のコロナウイルスでは、くしゃみなどをしていなくて感染するケースもあると言います。新型コロナの感染の特にありがちなルートというのはどこまでわかっているのでしょうか。

峰:主な感染ルートは飛沫感染と接触感染の二つです。特に飛沫感染が問題だと言われています。くしゃみだとか咳だとか、たくさん話すことで、しぶきが飛び散る。その飛び散った飛沫の中にウイルスが含まれていて、その飛沫を吸い込んだことによって感染をしてくると。これが飛沫感染です。接触感染は、汚染された手や物を触ってしまった手でまた目や口や鼻に触れることで感染をすることです。先ほど、くしゃみをしなくても感染をしているケースがあるのではないかとおっしゃっていましたが、私どもが今喋っているような会話でも、飛沫は大量につくられています。また普通に息をしていても、換気量があがるような状態であると、呼気、つまり吐き出した息の中にもかなりの数の飛沫が入っていることが分かってます。ですので、ウイルスに感染力がそれなりにあれば、例えば深く息を吸ったり吐いたりするコーラスのような場所であったり、排気量と換気量の増えるジムで運動をしている時であったりにも、かなりの量の飛沫を飛ばしている可能性があります。ですから、飛沫対策ができていないと感染することは考えられますね。

荻上:そうすると、そうした場所を注意したり消毒をしたりすることが必要だと。今までよく「三密」という言葉で強調されてきましたよね。つい先日、私のところに来たマスクにも「三密を避けましょう」と書かれていました。三密と言われる一方で、地方からは、例えば湘南だとサーフィンに来ないでくれ、あるいは登山に来ないでくれという声もあがっている。要は、三密ではないからセーフという形で選ばれているのではないか。そうしたオープンな場所、要は密室ではない中でも感染のリスクは相当にあると考えた方がいいのでしょうか。

峰:基本的には、今回のウイルスは人から人へ感染するわけです。ですから人との接触があれば、感染するリスクはあると考えた方がいいわけですね。特に過去のクラスターがどういうところで発生したのか、要素を抽出してみたら、三つの密、「密接」「密集」「密閉」の場所であると。この三密は、特に人と接することが多かったり、飛沫を吸い込みやすくなったりする条件です。しかしこの三つの蜜が揃わなくても、人と人とが接する回数が増えれば、それだけリスクは上がることになります。ですので、混雑していても、そんなに人と接することがなければ安全だったりするわけです。混雑していなくても、先ほどの濃厚接触者の定義にもありましたように、人と密接に触れ合ってしまうような機会があれば必ずリスクは生じてきます。その意味では、海岸などで遊んでいても、物のやり取りをしたり、近くで話し込んでしまったりして、そこに感染者がいらっしゃれば当然のことながらリスクは上がって来ることになりますよね。

荻上:そうしたリスクも踏まえた上で、色々な行動を考えてほしいということですね。今日リスナーの方からの質問たくさん来てるので次々に紹介していきましょう。

ジョギングの危険性は?

南部:「今回の新型コロナウイルスで、感染しても抗体ができない可能性があると聞きましたが、本当でしょうか。ニュースでも再感染という言葉を何度か耳にしたので不安です。もし抗体ができないのなら、このパンデミックは本当に収束し、また元の生活に戻れるんでしょうか」

峰:抗体が一般的にできることが分かっていますが、いくつか問題があります。ひとつは、有効に免疫として働く「中和抗体」といわれる抗体が、どのぐらいできるかが分かっていないことです。ウイルスが細胞に侵入することを防ぎ、病気になることを防ぐ(抗体ができる)ことを「中和抗体ができる」と言います。この中和抗体ができると、基本的に免疫がつきます。しかし、中和抗体ではない抗体ができることもあることが知られてきました。また中和抗体が足りない、もしくは非常に少ない量しかできない人は、全体の1/3もいることを示すような研究もあるんですね。そうすると抗体は何らかの形でできているんでしょうけれども、必ずしもそれが「免疫がしっかりできたよ」ということに繋がるのかどうかは、今後しっかり見ていかなければいけない点でしょう。

荻上:またワクチンなどができたとしても、そのワクチンがどの程度の力なのかも、見て行かなくてはいけないわけですね。

峰:おっしゃる通りです。どのような開発をするのかにもよりますが、どのような抗体ができるワクチンをつくるのかも重要です。

荻上:先ほど呼気で感染するという話がありました。ジョギングを一人でしてくださいという話がよくありますけれども、一人でしているジョギングが、結果として集団になることもあります。僕もジョギングをする時に、前の人とどれくらい距離を離せば、その呼気は届かないことになるのだろうかと気になっています。

南部:メールも同じようにいただいています。「神田の遊歩道で、マスクなしのランナーが荒い息を吐きながら走っていて、その人が無症状感染者だった場合を考えると怖いです。山中(伸弥)教授がマスクがない場合は、ネックウォーマーやバフで口周りを覆うことで代用できると発信していますが、荒い強い息を吐きながら走る場合は、これらの薄い布地では防ぐことにはならないのではないかと思います。仮に山中教授がすすめるようにネックウォーマーで防げるのであれば、マスク不足はネックウォーマーで解消できることになります。遊歩道を歩くと30人位のランナーとすれ違います。感染防止の観点で正確な情報と発信を希望します」

峰:先ほど申し上げた飛沫がどのぐらい飛ぶのかが、まず大事になりますね。普通に私たちが話したりくしゃみをしたりしたとき、2メートルほど飛沫が飛ぶことがあります。なので、ソーシャルディスタンス、普通に静かに生活している時でも、2メートルは離れましょうと我々は言うわけです。そして、ジョギングの時にどのくらい飛沫が飛び散っているのかですが、アメリカの報道では、換気量が増える、走っている途中や、移動(する速度など)が激しいと、4メートル以上は広がっている可能性があると言います。そこにウイルスの粒子が含まれていれば、感染のリスクはあるといえます。また、布で口を覆うことで、ある程度は飛沫の拡散を防ぐことができます。マスクも同様です。ただし完璧でも完全でもない。量を減らす形になります。しかしリスクをとにかく減らすことの積み重ねが大事になりますので、距離をできるだけ取ること、それから布などで口を覆えるならば、覆ってしまったほうが、飛沫の拡散量は減り、リスク自体は下がると言えます。しかし、いずれにしても、完璧でも完全でもないことは念頭に置いて、各自がしっかり判断をしながら、できるだけ取れる距離は取る。覆えるものはしっかり覆うことをしていくことが重要だと思います。

手を洗ったあとは?

荻上:手洗い・手指衛生を確保してくださいと言われています。なので今回コロナ対策ということで手洗いをより徹底するような動きがあります。僕も南部さんも手を洗いますよね。

南部:すごく洗います。

荻上:手を洗ったあとに、はたと思うわけですよ。今までは、ハンカチを持ってそれで拭いていたり、あるいはエアータオルとかがあって、ブオーとやっていたり、そこに備え付けられているペーパータオルで拭いていた。どれが一番いいのだろうかと。

南部:考えますね。

荻上:と、思って。僕の最終的な結論として、キッチンペーパー的なものを自前で持っていくのが一番安全なのではないかと思ったりしているんですが。峰さん、これは比較ができるものなんでしょうか。

峰:まずウイルスに関しては、しっかりと石鹸を使って洗い流してしまえば、細菌と違って勝手に増えることがほとんどありません。なので、しっかり洗い流してしまった後であれば、ふき取るものに関してはそんなに神経質になりすぎる必要はありません。ハンカチで拭いたとしても、ハンカチの中でウイルスが増えることはないわけですから。十分な量を減らした手洗い後であれば、拭き取るものはそんなに関係ありません。ただし細菌感染まで防ぐ事を考えますと、やはり使い捨てというものはかなり利点がありますね。なのでキッチンペーパーを持ち歩いて、それで一回一回捨てるというのはかなり合理的です。タオルを濡れたまま放っておきますと、細菌などは増えますので、一回一回しっかり乾かすことができ、かつ使い捨てにできるのであれば使い捨ててしまう方が安全であるとは言えますね。

荻上:ただその持ち歩いているものが、半分冗談でキッチンペーパーと言いましたけれども、ゴワゴワするから手が荒れるよねとか、メリットとデメリットを比較したうえで選ぶことが大事になりそうですよね。エアータオルはどうなんでしょうか?

峰:エアータオルに関しましては、確かにしぶきが飛び散るんですね。なので汚染された手をそのまま突っ込んでしまうと、飛沫が飛び散って危ないかもしれません。でも基本的には、手をよく洗った後に使うものですから、しっかり洗ってくれてさえいれば、乾かすという意味においては悪いことはないと思います。しかしエアータオルの周辺が汚染されていたり、汚い水が溜まってしまうこともあります。そこまで考えると、やはり確実なのは布か紙で拭き取っていただくことです。

南部:公共の場にして設置してあるものだと、みんなの手洗いがしっかりなされてるかは担保できないですもんね。

荻上:気になりますよね。ちょちょっと指を濡らして、ブワーと乾かしていく人もいますよね。

南部:子どものころはちゃんと手洗いできなくて、濡らしただけでいいよってやってたこともあるなって。今はちゃんとやってますよ!

荻上:手洗いは面倒だなと思う方もいたりしますよね。

公園での新型コロナウイルス

南部:「質問なんですが、ウイルスは子供用の砂場で何時間ほど生存するんでしょうか。また石や木、プラスチック、ステンレスなど遊具はどうでしょうか」

荻上:接触感染では、直接握手をしなくても、触ったものを別の人が触ることで感染することもあります。どれだけの期間、ウイルスの活性状態が続くのでしょうか。

峰:いくつか研究はされています。いずれも実験条件なので参考程度ですが、ステンレスの表面のような平らな場所ですと、最長で三日間ウイルスが残っていることはわかっています。しかしそれが活性をしっかり保っているかは別問題です。ウイルスは半減期において、半分、半分、半分……という形で、どんどん活性のあるものが減っていきます。100万個ウイルスがついていれば、例えば三日間というのは完全にゼロに近くなるまでの時間ですので、半分になる時間を考えれば、1日以内には半分以下になっています。ですので、大切なのは、どの程度最初に汚染されていたかということなんですね。ドアノブや、エレベーターのボタン、ATM のタッチパネル、授受した現金、そういった頻繁に人が触れる場所。特に感染した人が自分の鼻水や口を触った後に触れるような場所であればあるほど、最初のウイルス量が多いので、危険性は高いと言えます。どんなに汚染されていても、最大で三日間経てばなくなることを考えれば、砂場ですとか、外の遊具であれば、ある程度時間が置いてあれば安全であると言っていいと思いますね。また紫外線が当たるだとか、湿度が大きく変わるだとか、そういった環境だとウイルスがかなり不安定になることが多いです。ですので外であれば、かなりマシであると言える可能性はあります。

荻上:接触感染の中で、ウイルスに触れて、その手で鼻や目に触ると感染するという話がありました。目でも感染するんですか?

峰:目の粘膜からも感染することは報告されているので、接触感染だけではなくて、飛沫感染、飛んできたしぶきが目に入ることも危険だと言われていますね。

荻上:例えば性器とか肛門はどうなんでしょうか。

峰:基本的に感染の報告はないです。今のところは鼻や口といった上気道、目が多いですね。

新型コロナウイルスと味覚の問題

南部:続いて匿名希望の方からです。「現在軽症で自主隔離しております。微熱と息苦しさがあり、自主隔離して20日間経過しました。息苦しさはなくなったものの、37℃前後を行き来するだけなのでPCR検査は受けられておらず確定診断はない状態です。すでに3週目に入りますが、検査なしで隔離解除するときの目安など何か想定されている基準はあるのでしょうか」

荻上:医師の方に相談されていないのかな? という感じもしますが。峰さんいかがでしょうか。

峰:まずは診断をしっかりしてもらう基準に当てはまっていると思いますので、しっかり確定診断をしてもらうことがいいと思いますね。というのも、他の病気が紛れ込んでいる場合も当然あり得ますので、熱が長く続くのは問題です。一方で、もし確定診断をされていて、かつ長く症状が続く場合の退院ですとか自主隔離が終わる目安ですと、基本的にまず症状がなくなってからどれくらいの期間なのかを考えた方がいいと思います。インフルエンザも一緒ですが、症状がなくなって7日から8日経っても、まだウイルスが検出されることは分かっています。しかし、それが活性をもったウイルスかは微妙なところで、活性状態を保っていないことも多いんですね。なので基本的には症状がなくなってから一週間程度もすれば、ウイルスを撒き散らしていることは減っていると考えられます。症状が無くなってから、1週間~2週間程度を目処に見ていただければいいと思っています。

荻上:このメールをくださった方は、症状が長く小さく続いているということです。そもそもコロナであるか否かにかかわらず、他の病気を見落としてしまうことも心配なので、プロの方に見てもらうのがいいかなと思います。今回のコロナの症状として、味覚がなくなるなどの症例が報告されていますが、現在わかっている新型コロナの特徴的な症状はどのようなものでしょうか。

峰:今おっしゃったように、味覚障害、臭覚障害ですね。匂いを感じなくなる。もちろん他の感染症でも起こりえますし、もちろん感染症以外でも起こりますが、コロナで比較的多いとは言われています。あとは一般的な風邪の症状である上気道症状ですね。咳、くしゃみ、鼻水、それから喉の痛み。あとは下気道と言って、肺の方になりますけども、息苦しさが出てきます。全身の症状としては倦怠感とか発熱が有名です。それに加えてですね、最近ニューヨークから出てきた報告によりますと、消化器症状、下痢ですね。これもけっこうな割合、30%ほどで報告されています。そうした症状が出た時にも、コロナを疑うひとつの基準になると思いますね。

荻上:30%は、結構メジャーな症状だと言えてしまうわけですか。

峰:そうだと思います。ニューヨークでの報告ではかなりメジャーであると言っていいと思います。

タバコと新型コロナウイルスの関係

南部:「率直な質問なんですが、コロナウイルスにタバコは良くないんでしょうか。もし喫煙者の場合、禁煙すべきでしょうか」

峰:これについては、いくつも検討されているんですが、まだプレプリントの状態のものが多いです。基本的には喫煙者のほうが、重症化率が高い可能性があると言われています。実際に喫煙が呼吸器系の感染症を悪化させることは他の感染症でも知られていますので、喫煙されてる方がリスクがやや高いと考えておいたほうがいいでしょう。禁煙をしていただくのも大事だとは思います。

荻上:ただ、直ちに禁煙したからもう大丈夫ということではなく、喫煙をしてきた様々な影響は、それなりに残っていくわけですよね。

峰:それはそうですが、吸い続けているアクティブスモーカーであるよりは禁煙したほうが良いでしょう。

荻上:新型コロナに対する、治療薬の研究や検討は、どういった段階になっているのでしょうか。

峰:いずれも、治療薬はゼロから開発するのではなく、他のウイルスに使っていた治療薬を転用する、スイッチする形で検討が進められているものが多いですね。その中で、初めに候補となっていたカレトラというHIVのお薬は、もうすでに効果がほとんどないことが分かってしまって、研究が尻すぼみになってきています。一方、日本で有名になっているアビガン(ファビピラビル)や、アメリカで有名なレムデシビルは、両方ともウイルスが増えるのを防ぐお薬です。これについては臨床試験が進んでおりまして、良い結果が出てきているという、リークみたいな形での情報はあるんですけども、やはり論文を待ってしっかり評価を見たい段階です。一方でアメリカではヒドロキシクロロキンというマラリアの薬を、大統領が推していたのですが、これについては逆に飲んだほうが死亡率が上がるデータが出て、尻すぼみになりつつあるところです。

荻上:候補となる薬が複数あって、どの薬もとりあえず量産したり確保しようじゃないかとする動きも起きていると思います。時に日本だと、アビガンの一択! といった感じで聞くことが多いのですが、アビガンが群を抜いて注目されているのか、それともたまたま注目されているだけで、効果はほかにも横並びのものがあるのでしょうか。

峰:これについては完全に結果を待たないと断言はできない状況なんですが、アビガンとレムデシビルは、作用機序と言って、メカニズムから言っても期待はできるお薬であることは確かです。しかしアビガンは基本的には日本発ですし、日本以外には備蓄等もないので、話題になってるのは日本であるとは言えます。どちらの薬に関してもしっかり結果が出て、それが評価できるような状況になってから、初めて言及するのがいいと思いますね。

新型コロナウイルスと地域差

荻上:ニューヨークやスペイン、イタリアなど感染が広がってる地域がある一方で、日本はそこまでの速度では今のところ広がってなさそうです。国や地域によってこうした状況が分かれている理由はどこにあるのか。それ次第で、今後の対応の知見も変わってくると思います。今の研究ではどういったことが分かっているのでしょうか。

峰:全く分かっていないに等しいです。つまり国別、地域別、人種別で、感染率、重症化率や死亡率が違う現状があります。どこに差があるのか。武漢とかイタリアのように、感染が大爆発してしまったところでは、医療体制が追いつかなかったと指摘されています。ですが、ニューヨークの医療がいきわたってそうな地域でも、死亡率が高いこともあります。差がどこにあるのかは、本当に不明で、様々な仮説もありますが、今後検証していかなければいけないところですね。

荻上:まだほぼ何も分かっていないので、「これだ」「いやこれに違いない」という当てずっぽうの議論は、今は成果を出さないだろうと。

峰:そうですね。全てがやはり予想や想像になってしまいますので。一つ一つ仮説を検証して潰していく。証明できれば、それを応用してさらに良い予防ができるようになるだろうと考えていますね。

改めて、マスクと新型コロナウイルス

荻上:今回の新型コロナウイルスに対するマスクの効能は、どういった場面でどの程度なのでしょうか。

峰:マスクには二つの効果があります。ひとつは飛沫などを飛ばさない、人にうつさない効果です。もうひとつは飛沫を吸い込まない、うつされない、予防する効果です。どちらに関しても、リスクを下げる効果はありますけれども、完全でも完璧でもないんですね。そこが大事です。飛沫を飛ばさない方に関しては、すでにいくつか研究が出ています。マスクをしてもらった状態の患者さんに咳をしてもらい、目の前に置いたお皿の中にどのくらいウイルスが検出されるのかを見た。そうした研究がすでに論文になっています、そうすると、口の濃度に比べて、ウイルスの個数を1/10000まで減らすことができます。しかし検出はされます。ウイルスの量を減らすことによって、感染するリスクを抑えることは出来るのですが、検出はされるので感染するリスクはある。マスクによって感染させるのを予防する効果はあると、基本的には考えられています。リスクは下げられますが、完全でも完璧でもない。どの程度の評価なのかは難しいところがあります。一方で予防する効果についても完ぺきではないことが分かっています。漂う飛沫は隙間などから入ってきてしまいます。そのことを考えますと、うつさない側としても、予防する側としても、マスクは限界がある。ただしリスクを下げる可能性もあるので、つけるならば、正しくしっかりしましょうという形になると思います。

休業要請、緊急事態宣言、その政策の効果は?

荻上:マスクの使い方を適切に考えると。あるいはその性質についてしっかり知ることが必要になるわけですね。また今いろいろな国で、ロックダウンや、ドライブスルー検査、休校対策、休業であるとか、様々な政策をとっています。政策の効果については、研究でどこまでわかっているのでしょうか。

峰:政策の効果は、様々なモデルなどを通じて、検証されたものが出始めています。けれども、まだまだ出始めです。ロックダウンの効果については、ロンドンやニューヨークで感染の広がりやすさを表す「基本再生産数」がどのくらい低下したのかの、客観的なデータが出始めています。そうすると、実際にどのくらい効果があったのか、わかってくると思います。ただし、いまだに休校や交通制限がどのくらい効果を発揮したのかについて、研究は進みつつも、確定的なことは言えない段階です。ここも注目して見ていくことが重要だと思いますね。

荻上:子どもがなかなか重症化しにくいという話がありますよね。でも子どもが学校でもらって親に感染させるリスクはどうなのか。子どもの感染しやすさと重症化しやすさ、どれだけうつしやすいのか、そのあたりの度合いはどうでしょうか。

峰:どの世代でも新型コロナウイルスに感染することはわかっています。感染のさせやすさは、ウイルスをどのくらい排出しているかに相関します。今回のウイルスはいくつかの研究において、高齢者であるほどウイルスの排出が多くなっているようだと言われています。つまり子どもよりも、ご高齢の方の方が、ウイルスを広めやすい可能性があると。これはあくまでも、いくつかの研究を合わせたものです。ご高齢者の方がウイルスの排出量が多いという推測と、日本のクラスター対策班の検討で、高齢者の広がり方が多いことがわかっているためです。そう考えると、若い人は感染のしやすさは変わらないですが、重症化しにくかったり、ウイルスを排出しにくいことはあるのかもしれないと思います。

荻上:それらも今は研究の最中ということなんですね。

峰:そうですね。確定的なことを知るには、まだ研究は必要だと思いますね。

荻上:現在、ロックダウンや一定程度の自粛をすることで、感染拡大を防いでいこうとする動きがあります。この対策は、当面のピークを下げることにおいては、力をそれなりに発揮できるかもしれない。一方で、抗体やワクチンの状況はまだまだわからない。コロナ災害が、どれくらい、何年単位かの見通しは立てられないことになるのでしょうか。

峰:そうですね。正確な見通しは誰にも立てられないと思います。一方でワクチンが出ない状況において、コロナ対策をする時期がどれくらい続くのかは、ハーバード大学から研究がすでに報告されています。モデルによると、最長で2022年までは、ソーシャルディスタンスを徹底する、今のような予防対策を中心とした社会になるのではないかと。ただし、これもあくまでもモデルによるものですし、治療薬やワクチンの開発状況によって、そういったものも変わってきます。どのような社会になっていくかについて、断言はできませんが、その時々にしっかり応じて対策を打っていくことが必要になると思いますね。

スーパーでの新型コロナウイルス対策

荻上:リスナーの方からまだまだ質問がたくさん来ています。

南部:ご紹介しましょう。千葉県の君津市にお住まいの方です。「私は田舎に住んでいるので、人に会うのはスーパーでの買い物の時くらいです。スーパーの入り口にはアルコール消毒スプレーがありますので、入店時は手とカゴを、退店時には手を消毒しています。心配なのは持ち帰る商品です。プラスチック包装についたコロナウイルスは長く生きている(ウイルスは生き物ではないのでしたっけ)と聞くので、家に持ち帰る前に包装を消毒した方が良いのではと考えてしまいます。塩素系の漂白剤を薄めたもので拭けば良いでしょうか。この状況での自然災害も心配です。家で手が洗えない日が、いつ来るか分かりませんね。手洗いの水の用意があればいいですが、断水が続くとなかなか難しいですよね。アルコール消毒液も売っていない、水もない場合は、手のウイルスをどう除去できますか」

荻上:どこまで気にするかもあるんでしょうけれども。プラスチックの袋などの、包装による感染リスクはどうでしょうか。

峰:これもどこまで気にするのかの話になります。特に、このウイルスは人から人にうつるので、商品の包装を触った店員さんが感染していれば、注意しなければいけないことになりますよね。けれども、こういう状況がなければ、当然のことながらほとんどリスクはないと考えてもいいわけです。流行が非常に激しい状況でなければ、一般的に買い物してきたものが大きく汚染されていると、考えすぎなくていいと思います。なおかつ、ウイルスは長い間表面で活性化を保っていると言える場合もあるのですが、そこから再び舞い上がり、それを吸って感染することはほとんどありません。あるとすれば、そこを触った手を介して接触感染をすることになります。ですので、包装を解いたあとに、もう一度手をしっかり洗っていただければ、かなりリスクは下がると考えていいと思います。外側の包装はもう捨ててしまう。そのようにしたら、気にしすぎることはないのではないかと。

荻上:例えば、パンを買ってきます。パンを皿に出す。皿に出した後、手をしっかり洗う。あるいはその袋に触れたからまた洗う。一回で実は済むのではないか。

南部:手洗いを最後の段階で、口の周りに何かを持っていくときの段階で手洗いを意識すると。水が無い場合の手のウイルスの除去ですが、アルコールの消毒液が売ってない場合は、なにが代用できますか。

峰:基本的にこれは非常に難しい問題です。アルコールか、塩素系漂白剤を薄めたものなどが、消毒にはやはり推奨されます。それ以外のものでは、ウイルスを除去するのは結構難しい。ですので、何とかして、水でもいいので、少量でもしっかり洗う行為を少しでもしていただくのが重要だと思いますね。

荻上:また洗い物を増やさないために、サランラップで紙皿を巻くとか、手にひと巻きサランラップを巻いて、それでちょっと何かをつかんで食べるとか、手をそもそも汚さない、汚れていたとしても、それが口の中にが入らないようにする災害時のノウハウがあります。そうした工夫は感染症対策としてはどうでしょうか。

峰:そうした感染症対策も、ひとつの手段だと思います。手を介して、粘膜に触れることが非常に危険になりますので、手が汚染されること、そこをできるだけ防ぐような工夫をするのは良いと思いますね。

医療従事者への偏見・差別、そして、BCGとの関係

荻上:リスナ―の方から、こうした悲痛なメールも来ています。

南部:「私は都内の大学病院に勤務する内科医です。3月の下旬に、転勤に伴い引っ越そうとした際に、引っ越し先に考えていた物件の管理人から、医者はお断りですと言われました。むなしい気持ちになりました。同じような経験をした医療従事者はたくさんいると思います。明日も明後日も感染リスクを抱えて、向き合っていきます」

荻上:日本だけではなく、海外でも医療関係の方への対応が、ポジティブなだけではない。こうした心ない反応などについてはいかがでしょうか。

峰:それは非常に危惧しています。科学的にリスクが高いことはなく、むしろ差別に関することになってしまいますよね。最大限の防御をとって、一生懸命働いている医療従事者のほうが安全であることもあると思いますので、そこは差別せず普通に人は人として扱っていくことが重要ですね。

南部:「BCGワクチン接種を行っている国や地域などが、新型コロナウイルスの感染が少ないという話もあるようなのですが、現在どのような状況ですか。」

荻上:結局、あの議論はどうなったのか気になります。いかがでしょうか。

峰:確かに、BCG接種をしている国で、感染者数や重症化率が少ない相関が見られたというプレプリントも2つほど出ています。しかし実際には、「交絡因子」といって、それ以外の因子も非常に大きいんですね。例えば、BCG接種をしている国は、保健衛生や医療行政に力を入れている国でもあるので、BCGがそもそも重要なのではなく、医療行政がしっかりしていることが大事ではないのか。このように交絡してくる因子がいっぱいあるので、それらを排除して観察する。 BCGを打った人と打ってない人に分け、実際にどのくらい感染していないのかを見ていく研究も、オーストラリアでは始まっています。これに関しましても、やはり研究の結果を待ってからでないと、断言することはできないと思いますね。

荻上:今回、新型コロナの感染によって亡くなる方が注目されてもいますが、同時にこれからより広く、新型コロナウイルスによる関連死も出てくると思います。例えば、倒産によるものや、医療状況の悪化により医療にアクセスできなかったために、出かけられないので生活習慣病や認知症が進行するなどの問題です。こうしたコロナ関連による健康悪化に関する論文は出てきているのでしょうか。

峰:少しずつ出てきています。どのくらい医療が圧迫されて他の医療に影響を及ぼしているのかを検討している人たちがいます。さらに問題になっているのは、メンタルです。コロナ関連で不安を訴える方や、自分が感染しているのではないか、人にうつしてしまうのではないかと不安をおぼえて、生活に支障が出てしまう。メンタルの相談が増えているという研究も出始めています。

荻上:そうしたことがわかると、これからどのような社会政策が必要なのか、医療論文などからも見えてくるでしょうね。

峰:はい。ただし、医学論文は非常にテーマを絞ったものです。どのような対策をしていくのかは、医学に限らず、社会学や経済学などのあらゆる知見から、皆さんで議論し、政治家が決断し、皆さんで施策していくことが必要でしょうね。

海外へはいつ行けるようになるのか?

南部:「東南アジアや南アジアで、現地の政府を支援する仕事をしています。現在海外へ渡航できません。現地で私が感染しない、私から現地の人に感染させないという状況が実現するには、ワクチンができて予防接種を受けられるようになるのを待つしかないんでしょうか」

峰:これに関してはおっしゃる通りです。自分がもうすでに感染していて回復するか、ワクチンができるかという状況でしか、はっきりとした証明はできません。やはり、どこまでリスクを取るのかと、その国がどのように対応しているのかによって、選択をしていくしかないでしょう。

荻上:先日、感染症の専門家である岩田健太郎さんにも番組に出ていただきました。その際に、専門家会議や、行政の発信の仕方についてはまだまだ課題があるとおっしゃっていた。「三密」を強調しすぎた結果、距離や接触を減らすことがなかなか伝わっていないのではないか。あるいは、緊急事態の出し方が、「出かけてもいい」というメッセージが逆に伝わる発信方法だったのではないか。こうした意見がありました。峰さんは今の行政の科学コミュニケーションの在り方については、どうお感じになっていますか。

峰:科学コミュニケーションとリスクコミュニケーションについて、まだまだ課題はあると思っています。どのような理由で「三密」を避けることや、距離を取ることが重要なのか、そうした基本的な発信をもっと重要視してもいいかなと思います。情報発信者だけではなく、メディアにおいても、日々の発症者数ばかりを報道するのではなく、基本的なこと、我々はなんのために対策をしているのかを広めるような報道のされ方も増えてもいいと思ったりします。

荻上:そうした医学的な話の基礎を、メカニズムから伝えることも重要になってくるわけですよね。

南部:「コロナの罹患から復調してきた方も、不活性化したウイルスを撒き散らす恐れがあるとおっしゃっていました。不活性化ウイルスを吸い込むとやはり感染するんでしょうか。その場合不活性化ウイルスはワクチンと同じように免疫を作る効果はあるんでしょうか」

峰:基本的に不活性化していれば感染することはほとんどないと思われます。ですので、基本的に活性化したウイルスがどの程度いるのかが重要です。しかし、まだわかっていない点も多いんですね。どの程度まで(罹患した人の)ウイルスの排出が続くのかを検出する論文もあるのですが、さらにどのくらいの人に感染させる可能性があるのかまでは、検証されていません。不活性化したウイルスを吸い込むことで、それがワクチンの替わりになるのかに関しても、免疫がどれくらい反応するのかについてまだ分かっていないことが多いので、はっきりしたことは申し上げられないですね。

荻上:今は医学情報も、日進月歩で、スピーディーに移り変わってる。だからこそ、少し前だったらHIVに効くワクチンが検討されてるという議論が、実はもう上手くいかないことまでわかってきている。こうした最新の知識などを、どうやって追っていくことが必要になりそうですか。

峰:そうですね。まずは、論文などの原本にアクセスできる方は、そうしたものを追っていただければいいのですが、なかなか難しいですよね。科学雑誌や一般向けメディアで、最新の知識などを丁寧に紹介するような記事が増えるといいなと思っています。一般の方も興味があれば、少しでも論文に近いもの、原典に近いものを見てもらえるような環境があるといいですね。

荻上:「今週のコロナ関連論文!(ただし玉石混淆です)」と、エクスキューズもつけながら紹介するということですね。そういった科学コミュニケーションの担い手、論文紹介ができるような人の、より積極的な活動も必要になるのでしょうか。

峰:そう考えています。特にアメリカでは、「ネイチャー」や「サイエンス」の科学誌を、一般の方でもけっこう読んでいます。言語の壁がなく、英語で読めることもあるとは思うのですが。そうした意味で、日本でも、日本語で読めるような良質なメディアや科学雑誌が増えることは希望していますね。

荻上:そうしたコミュニケーションを重ねてくためにも、峰さん、第三弾をやらせて下さい! よろしくお願いします。

峰:はい。よろしくお願いします。

南部:今夜は、アメリカ国立衛生研究所、病理専門医の峰宗太郎さんとお送りしました。ありがとうございました。

 

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