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新型コロナ感染「データ」はここに注目 / 田村秀さん(長野県立大学教授)

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
4月18日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、『データ・リテラシーの鍛え方 ”思い込み”で社会が歪む』(集英社新書)の著者、長野県立大学教授・田村秀(たむら・しげる)さんをお迎えしました。

田村秀さんは1962年、北海道出身。東京大学工学部を卒業し1986年、旧・自治省に入って、岐阜県、香川県、三重県の県庁に出向するなど、地域の行政に関わってきました。その後、新潟大学法学部の教授を経て、現在は長野県立大学グローバルマネジメント学部の教授となり、公共政策学などを教えています。『B級グルメが地方を救う』(集英社新書)、『暴走する地方自治』(ちくま新書)、『自治体崩壊』(イースト新書)、『改革派首長はなにを改革したのか』(亜紀書房)、『地方都市の持続可能性 「東京ひとり勝ち」を超えて』(ちくま新書)、『「ご当地もの」と日本人』(祥伝社新書)など、地方行政や地域活性化について現場の経験をベースに数多くの本を書いています。

そして、いちばん新しい本が『データ・リテラシーの鍛え方』。私たちのまわりには様々なデータがあふれています。世論調査、ネットアンケート、ランキング調査…。情報に振り回されないためのデータの読みこなし方がこの本に書かれています。この日の対談は、いまいちばん気になる新型コロナウイルスの話から始まりました。

新型コロナは「人口当たり」で比較


「データに関しては注意深く読み解かなければいけないと思うんですけど、新型コロナウイルスについてはどのへんに注意して数字を見ていけばいいんでしょうか」(久米さん)

「もちろんデータ(数)そのものも注意しなければいけないんですが、亡くなった方の数の人口に対する割合、要は『比率』を、地域やほかの国と比べることが大事だと思います」(田村さん)

データを読むときは、何事も「比べること」を強く意識すること。これがデータ・リテラシーを鍛える第一歩だと田村さんは言います。そのときに「数」だけを比較するのではなく、「比率」(人口当たり、面積当たりなど)にも注目することが大事です。

国内の新型コロナウイルスの感染者数を見ると、東京都が突出して多く、続いて大阪府、神奈川県、千葉県、埼玉県、福岡県、兵庫県、北海道、愛知県…などが多くなっています。ところが人口当たりの感染者数を見てみると、石川県、福井県が東京に次いで多いのです。石川・福井の感染者数は東京や大阪と比べると約20分の1、約10分の1ですが、状況は同じくらい厳しいということが分かります。ほかには高知県も人口当たりの感染者が多く、高齢者が多い地域だけに大変な状況だと田村さんは言います。

また、日本と諸外国の感染者数を比較する数字やグラフもよく目にしますが、田村さんによると、諸外国と比較する場合は感染者数(これも人口当たり)よりも死者数(人口当たり)を比べるほうが妥当だということです。

そのほかに、新型コロナウイルスに関するデータを見るときに気をつけることを田村さんに挙げていただきました。

  • 一つの情報だけで判断しない。
  • 煽っているようなネットの情報には要注意する(客観性が少ないものがある)。
  • 瞬間的なデータで一喜一憂するのではなく、中長期的な推移(例えば1週間ごとなど)を見守ることが重要。

テレビ、ネットのアンケート調査


データといえば、テレビの街頭アンケート調査で出てくる数字も気をつけなければいけません。政権や政策に対する支持・不支持、自粛生活で困っていること、芸能人のSNSでの発言に対する賛否など、気になる話題について人々の生の声が紹介され、あたかもそれが世論のように扱われることも少なくありません。でもテレビの街頭アンケート結果やインタビューの声を「世論」や「民意」として受け取ってはいけないと田村さんは言います。

世論調査は、調査対象者ができるだけ偏らないよう「無作為抽出」で選んで行われます。無作為抽出とは、誰でも選ばれる確率が同じということ。例えば、いま主流となっている「RDD」(ランダム・デジット・ダイヤリングの略)と呼ばれる方式は、コンピュータを使って無作為に数字を並べて電話番号をつくり、その番号に電話をかけて調査するというやり方です。これなら北海道の人も東京の人も沖縄の人も、選び出される確率は同じ。これが無作為抽出です。

それに対してテレビの「街頭100人アンケート」のような調査は、誰もが選ばれる確率が同じというわけではありません。アンケート調査を行っているところにたまたま居合わせなければ、声をかけられる可能性はありません。いくらテレビのスタッフが無作為に声をかけたとしても無作為抽出といえず、田村さん曰く、これは「手当たり次第」ということです。

「テレビでやっている悪い癖があって、ボードの枠に赤いシールや緑のシールを貼っていくやつがあるんです。あんなものは世論調査でも何でもないわけですよね」(久米さん)

「なんでもないです。ああいうのがいちばんまずいと言いますか、あれは結局、そこで答えた人がそうですということであって、一般化してはいけないということです」(田村さん)

「ここは50人を超えましたとか、ここは貼る人がいませんとか…」(久米さん)

「あれは話半分どころか、たまたま答えた人がその割合だったというだけです」(田村さん)

世論や民意と誤解しがちでという点では、インターネットによるアンケートも注意が必要です。ここでもポイントとなるのは「無作為抽出」かどうか。田村さんの本『データ・リテラシーの鍛え方』によると、インターネット・アンケートは、どちらかというとネットのヘビーユーザーが対象となったり、募集によって回答に協力するモニターが選ばれているので、無作為抽出に基づく世論調査とは根本的に異なります。そしてその結果、世論調査に比べて、インターネット・アンケートのほうが社会に対する不安や不満を表明する割合が高くなり、また、社会よりも個人を重視する傾向が強くなるのだそうです。ですからインターネット・アンケートの結果を世間一般の声のように取り上げているマスコミや、「インターネットによる世論調査」というフレーズには、気をつけなければいけません。さらにいえば、ネットやテレビに限らず、民間で行われているアンケート調査の大部分は無作為抽出となっていないそうです。

「回答率」が大事


回答者が100人のアンケート結果よりも、回答者が1万人のほうが信用できると思ったことはありませんか? でも、回答者が多ければ信憑性が高いというものではないのです。田村さんが著書の中で例を挙げています。ある調査で「回答者1万人 死刑廃止に賛成70%」という結果が出ても、この情報だけでは死刑廃止賛成派が圧倒的多数かどうかは本当は分かりません。アンケート調査に関しては、「回答者数よりも回答率に注目する」ことが大事です。仮にこのアンケートの回答率が20%だったら、回答しなかった人が4万人いるということになりますが、その人たちの意見は結果に反映されていないのです。テレビ、雑誌、インターネットなどで回答率の低い調査や回答率を公表していない調査のデータを読むときは要注意です。

また、日本人が大好きなものに「ランキング」があります。人気企業ランキング、大学ランキング、住みたい街ランキング、病院ランキング、顧客満足度調査…。話のタネとしては面白いですが、こうしたデータに知らず知らずのうちに振り回されていないでしょうか。

「我々がよく目にするランキング、調査方法をきちんと書いてあるものはないですよね」(久米さん)

「ほとんどないですし、そもそも無作為抽出じゃないですし、過去の結果などに影響も受けますから、結局まあ、『答えた人がそうだった』というだけなんですよね。それを一般化できるかどうかは別ですよということです。そう受け止めたほうがいいと思います」(田村さん)

無作為抽出を旨とする世論調査だったら、その結果はだいたい世の中の人全体の意見に近いとみることができます。ところがランキングの多くはそうではありません。それなのに、例えば特定のインターネット・サイトの利用者を対象にしたアンケート調査をもとしたランキングをあたかも広く一般の意見のようにマスコミが取り上げたり、企業が宣伝に使っているケースはとても多いそうです。

また、ランキングはどんなデータを使ってどのような手法で順位をつけるのかによって結果は大きく変わりますし、ランキングの作り手の考え方も影響します。ですから、必ずしも客観的な評価とはいえないのです。田村さんは著書の中で、「国際競争力」や「顧客満足度調査」なども疑問点や問題点が多いと指摘しています。

データとグルメで地域を元気に


田村さんがデータ・リテラシーの重要さに目を向けるようになったのは、自治省に入ってから。小学校時代に福岡、茨城、北海道と3回転校した経験がある田村さんは、地域に関わる仕事がしたいと考えていました。そして岐阜県、香川県など地方に赴任したときに、多くの人は意外と地元のことを知らないことに気づいたそうです。地域の特徴や長所について語っていても、それはなんとなく持っているイメージであったり、行政の職員でさえ客観的な情報に基づかずに地元のことを話していたのです。地域の実情をいろいろな人に知ってもらうためには、「大変なんです」とか「人口がとても減っています」と言うだけでは伝わりません。やはり客観的なデータを使って分析・比較をすることがとても大事になります。また、地域を元気にするためには、その地域にどういう問題があるのかをデータできちんと把握しなければいけません。

見過ごされている地域の魅力や個性、あるいは誤解されていることを、データを使って明らかにする。田村さんは「地方自治」「ご当地グルメ」「データ・リテラシー」がご自身にとっての3本柱だと言います。

「地域には必ずいいところはありますし、宝がいっぱいありますよね。ただ、宝に地元の人は意外と気づいていない。それに光を当てるのが、ひとつはグルメだし、ひとつはデータ。データを使って実はこういうものがあるんですよということが見えてくると思います」(田村さん)

「地元の人にとってはそれが地元の恥だと思っているようなことが、実は外から見ると素晴らしいことだったりするケースは、結構ありますよね」(久米さん)

「そうですよ。グルメの世界でも、小ぎたない店でもそれがすごく地元にファンがいて、結局それが有名になって、各地から食べに来るというケースもあるわけですから。やっぱり地元で愛されているものは、素晴らしいものがたくさんあるんですよ」(田村さん)

「それは地元のことに限らず、自分のことをろくでもない人間だと思っているけど実は傍(はた)から見ると『キミみたいな人間、めったにいるもんじゃないんだよ』ってこと、よくあったりしますよね」(久米さん)

「地域もそうですし人間でもそうですけど、なんとなく否定的な部分に目が行きがちですけども、むしろ違う部分に宝がある、個性があるというふうに、前向きに見ていったほうがいいと思います」(田村さん)

田村秀さんのご感想


慣れない環境での出演でしたが、あっという間の30分でした。

久米さんのテンポのいい会話に上手くついていけるのか、最初は不安でしたが、データ・リテラシーに限らず、ご当地グルメや地域ネタ、特に埼玉のことなども話題にしてもらえて、それなりにリラックスして話ができたように思います。

ランキングもそうですが、様々なデータについて、どのような定義がされているかとか、どのような調べ方をしているかといった点を気にかけることからリテラシーは鍛えられると思います。様々なデータや情報がネット上に氾濫しています。惑わされることも多いでしょうが、一つの情報だけで判断せず、いろいろなデータを比べる中で、多くの人がデータ・リテラシーということを意識することが大切です。

次回はご当地グルメのテーマでお願いします!

「今週のスポットライト」ゲスト:田村秀さん(長野県立大学教授)を聴く

次回のゲストは、元朝日新聞論説委員・清水建宇さん

4月25日の「今週のスポットライト」には、元朝日新聞論説委員で、現在はスペイン・バルセロナで豆腐店を営む清水建宇(しみず・たてお)さんが登場。新型コロナウイルスの感染者数が欧州ではイタリアと並んで多いスペインの様子をお聞きします。

2020年4月25日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200425140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)