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「天才ソングライター、アダム・シュレシンジャーを偲んで~スクリーンから聞こえてきた魔法のポップソング」(高橋芳朗の洋楽コラム)

ジェーン・スー 生活は踊る

音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんによる洋楽コラム(2020/04/17)

「天才ソングライター、アダム・シュレシンジャーを偲んで~スクリーンから聞こえてきた魔法のポップソング」

高橋:本日はこんなテーマでお送りいたします。「天才ソングライター、アダム・シュレシンジャーを偲んで~スクリーンから聞こえてきた魔法のポップソング」。アメリカのシンガーソングライター/ミュージシャンのアダム・シュレシンジャーが4月1日、新型コロナウイルスの合併症により亡くなりました。52歳でした。

スー:最近続いてますね。

高橋:そうですね。アダム・シュレシンジャーは1967年、ニューヨーク生まれ。1996年にロックバンド、ファウンテンズ・オブ・ウェインのメンバーとしてデビューしているんですけど、正直日本ではそんなに知られていないミュージシャンだと思います。おふたりはご存知でしたか?

スー:好きな映画の音楽で「ああ、このひとが曲をつくってるんだ!」という認知はありました。でも詳しくは存じ上げてないですね。堀井さんは?

堀井:今日これから紹介される映画の曲にいくつか好きなものがあって。「へー、このひとがつくっていたんだ!」という驚きがありました。

高橋:まさにそんな感じだと思うんですよ。アダム・シュレシンジャーの名前は知らなくても、彼が書いた曲は皆さん知らず知らずのうちに耳にしている可能性が高いと思います。いまスーさんと堀井さんがおっしゃていたように、アダムは映画やテレビドラマの音楽を数多く手掛けていて。アカデミー賞やゴールデングローブ賞にノミネートされたことがあるほか、エミー賞を受賞した実績もあるんです。今日はそんな偉大なソングライター、アダム・シュレシンジャーを知ってもらうきっかけとして、彼が映画に提供した素晴らしいポップソングの数々を紹介していきたいと思います。

まずは1996年公開の映画『すべてをあなたに』より、実質的な映画の主題歌、ザ・ワンダーズの「That Thing You Do!」。いろいろなアーティストにカバーされているアダムの代表作です。

『すべてをあなたに』は、俳優のトム・ハンクスの初監督作品。ビートルズがアメリカに上陸した年、1964年のペンシルバニアを舞台に、彼らに憧れる若者たちが結成したロックバンド、ザ・ワンダーズのサクセスストーリーを描いた青春映画になります。

この物語は実話ではなくフィクションなんですけど、フィクションの音楽映画、特に架空のバンドのサクセスストーリーを製作するにあたって必要不可欠なものは、やっぱり魅力的な音楽ですよね。もうこれに尽きると思います。どうしても決定的な一曲がほしい。音楽のクオリティがそのまま映画のクオリティに直結することになると思うんですよ。

だから、こういう架空のバンドの物語を製作するにあたってプロデューサーや監督がソングライターにどんなオファーをしているかというと、その映画の設定に応じた細かい要望はあるかもしれませんが、突き詰めると「名曲お願いします!」「名曲つくってください!」ということになるんじゃないかと思います。言ってみれば「ホームランを打て!」的な無茶なリクエストですよ。でも、そんな無茶なリクエストに応えてきたのがアダム・シュレシンジャーという男であり、そんな彼の会心の一撃といえるのがこの『すべてをあなたに』の「That Thing You Do!」です。

M1 That Thing You Do! / The Wonders

That Thing You Do!

スー:これは売れるよ!

高橋:フフフフフ、だよね。アダム・シュレシンジャーの訃報には監督のトム・ハンクスも自身のTwitterを通じて追悼コメントを発表しています。「アダムと『That Thing You Do!』なしにプレイトーンレコード(劇中でワンダーズが契約したレコード会社)は存在し得なかった。彼はまさに『One-der』だった」と。

そして、この『すべてをあなたに』の出演者がアダムのトリビュートを兼ねた新型コロナウイルスのチャリティーストリーミングイベントのために20年ぶりに再集結することになりました。日本時間の4月18日(土)午前8時より、ワンダーズのYouTube公式チャンネルにて行われるそうです。ワンダーズのメンバーはもちろん、ヒロインのリヴ・タイラーも参加予定とのことなので盛り上がりそうですね。

スー:ねえ!

高橋:続いては、レイチェル・リー・クックが主演を務める2001年公開の映画『プッシーキャッツ』より、ジョシー&ザ・プッシーキャッツの「Pretend to Be Nice」。

『プッシーキャッツ』は、女の子3人組のロックンロールバンド、ジョシー&ザ・プッシーキャッツの活躍を描いたコメディー映画。1970年代にアメリカで放映されていたテレビアニメ『ドラドラ子猫とチャカチャカ娘』を実写映画化したものになります。

この『プッシーキャッツ』のサウンドトラックはパワーポップの名盤としてカルト人気がすごくて。2017年にアナログ化が実現した際にはリリースパーティーも開催されました。

アダムは『プッシーキャッツ』のサウンドトラックにおいて6曲をプロデュース、2曲でソングライティングに携わっているんですけど、これもまた「ホームランを打て!」のリクエストに場外ホームランで応えたような傑作といっていいと思います。

これから聴いてもらう「Pretend to Be Nice」はソングライティングがアダム、プロデュースを務めるのがR&Bシーンの重鎮ベイビーフェイス。これがめちゃくちゃキュートなガールロックで、実際にこんなバンドが存在していたら確実にヲタになっていたと思います(笑)。

M2 Pretend To Be Nice / Josie And The Pussycats

Pretend to Be Nice

スー:かわいらしい曲だね!

高橋:ね、かわいくてかっこいいんだよな。では3曲目、2007年公開の映画『ラブソングができるまで』より、ヒュー・グラントとヘイリー・ベネットのデュエット曲で「Way Back Into Love」。この映画はスーさんも堀井さんも大好きですよね?

スー:大好き!

堀井:大好きでーす!

スー:たぶん、この映画でアダムの名前を知ったんだと思うよ。

高橋:そっかそっか。『ラブソングができるまで』はヒュー・グラントとドリュー・バリモアのダブル主演で当時話題になったんですよね。人気シンガーへの楽曲提供でカムバックを図る元ポップスターと、成り行きで彼の曲作りを手伝うことになった植木世話係の女性との恋の行方を描くラブコメディです。

この映画は、これから聴いてもらうアダム書き下ろしの「Way Back Into Love」をヒュー・グラントとドリュー・バリモアがつくり上げていく過程が物語の軸になっていて。苦い過去を持つふたりがそれを乗り越えて心を通い合わせる、その結晶が「Way Back Into Love」なんですよ。

だから当然この「Way Back Into Love」は映画のクライマックス、ここぞという場面で流れるわけなんですけど、これはもう名曲じゃないと物語が成り立たない。

スー:ねえ。本当に!

高橋:だから製作側としてはまさに「アダムさん、またホームランお願いします!」という局面だったわけなんですけど、アダムはまたしてもそんなむちゃくちゃな要求にバックスクリーン直撃のホームランで応えたという。アメリカの『Billboard』は、このアダムの仕事に対して「fictional-songwriting GOAT」(最高のフィクショナルソングライター)との賛辞を捧げています。

M3 A Way Back Into Love / Hugh Grant & Haley Bennett

オリジナル・サウンドトラック ラブソングができるまで

高橋:フフフフフ、ふたりとも体を揺らしながら聴いてますね。

スー:いやー、映画の感動を思い出すね。

高橋:このシーンがまた泣けるんだよねえ。

スー:本当にここぞ!ってシーンでかかるんだよね。もうこれ以上はないっていう。

堀井:私のiPodに入っている数少ない洋楽のひとつがこの曲で。アダム・シュレシンジャーさんは私のiPodのなかで生きています。

高橋:堀井さん、素晴らしい! アダムは『ラブソングができるまで』のサウンドトラックに「Way Back Into Love」を含めて3曲提供しているんですけど、なかではヒュー・グラントがかつてヒットさせたという設定の「Meaningless Kiss」がもろにジョージ・マイケルの「Careless Whisper」をモチーフにしていて最高なのでぜひ。

この『ラブソングができるまで』の監督のマーク・ローレンスはその他の監督作品、たとえば『トゥー・ウィークス・ノーティス』や『噂のモーガン夫妻』でもアダムの楽曲を使用していて。こんなところからも映画業界におけるアダムの信頼の厚さがうかがえると思います。

そして、このマーク・ローレンスと共にアダムの才能に惚れ込んだ映画監督には2018年の『グリーンブック』でアカデミー賞作品賞を受賞したピーター・ファレリー監督、ファレリー兄弟がいます。日本でも人気が高いファレリー兄弟の一連のラブコメ映画、『メリーに首ったけ』『ふたりの男とひとりの女』『愛しのローズマリー』『2番目のキス』など、アダムはこのすべてに楽曲提供しているんですよ。

最後の曲はこの映画のなかから、ジム・キャリーとレニー・ゼルウィガーが主演した2000年公開の『ふたりの男とひとりの女』よりアイヴィーの「Only a Fool Would Say That」を聴いてもらいたいと思います。アイヴィーはファウンテンズ・オブ・ウェインと共にアダムが率いていたバンドですね。

『ふたりの男とひとりの女』のサウンドトラックは基本的にスティーリー・ダンのカバー曲で統一されたコンセプチュアルな内容になっていて、この曲もスティーリー・ダンの1972年の作品のカバーになります。だからこれまでの3曲とちがってアダムが書いた曲ではないんですけど、音楽通で知られるファレリー兄弟の眼鏡にかなったアダムのポップセンスはこのカバーでも十分に発揮されています。

M4 Only A Fool Would Say That / Ivy

ふたりの男とひとりの女

高橋:以上4曲、これだけの名曲を映画に提供してきたアダムですから、本業のバンドの曲が悪いわけがなくて。ファウンテンズ・オブ・ウェイン、アイヴィー、ティンテッド・ウィンドウズなど、アダムが率いたバンドの作品もまさにポップミュージックの魔法が堪能できる傑作ぞろいなのでぜひこの機会にチェックしてみてください。

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当ラジオ番組では「日々の生活に音楽を」をコンセプトに、音楽ジャーナリスト・高橋芳朗さんによる洋楽選曲を毎日オンエア。最新1週間のリストは以下です。

4月13日(月)

(11:06) Hysteria / Def Leppard
(11:23) Feels So Good / Van Halen
(11:35) I’m Gonna Miss You / Kenny Loggins
(12:12) Hungry Eyes / Eric Carmen
(12:24) One More Day / Chicago
(12:52) バスケットボール / 岡村靖幸

4月14日(火)

(11:08) 堀込泰行 / サンシャインガール + SKIRT
(11:36) Todd Rundgren / Long Flowing Robe
(12:13) Emitt Rhodes / Fresh as a Daisy
(12:23) Colin Blunstone / She Loves the Way They Love Her
(12:50) Nilsson / Gotta Get Up

4月15日(水)

(11:06) Shout to the Top! / The Style Council
(11:38) Don’t Be Scared of Me / The Blow Monkeys
(12:13) I’m Your Man / Wham!
(12:23) When Smokey Sings / ABC
(12:50) Young Bloods / 佐野元春

4月16日(木)

(11:05) Three Little Birds / Bob Marley & The Wailers
(11:36) Can’t Go Through with Life / Marie Pierre
(12:13) 6 Sixth Street / Louisa Mark
(12:23) Some Guys Have All the Luck / Junior Tucker
(12:52) 昔の彼に会うのなら / 松任谷由実

4月17日(金)

(11:05) Feel Like Makin’ Love / Roberta Flack
(11:28) Cause You Love Me Baby / Deniece Williams
(11:40) One Love in My Lifetime / Diana Ross
(12:11) Promise Me Your Love / Margie Joseph