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コロナ危機のアメリカ現地レポート~最新状況と大統領選への影響 冷泉彰彦さん(米国在住ジャーナリスト)

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
4月11日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、アメリカ在住の作家でジャーナリストの冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)さんをお迎えしました。

冷泉さんは1959年、東京都生まれ。東京大学文学部を卒業後、日本の企業を経て、1993年に渡米。2001年、アメリカ同時多発テロに遭遇したことを機に小説家の村上龍さんが主宰するメールマガジン「JMM(ジャパン・メール・メディア)」で連載を開始(現在も続いています)。現在は「ニューズウィーク」日本版やご自身のメルマガ「冷泉彰彦のプリンストン通信」でも日米の政治と社会を分析するコラムを書いています。

新型コロナウイルスの感染が止まらないアメリカの最新状況はどうなっているのか、そしてトランプ政権の危機対応は。今回は冷泉さんがお住いのニュージャージー州とインターネット回線をつないでホットな話題をお聞きしました。

迷走したトランプ大統領


新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センターの集計では、日本時間4月11日未明時点で全世界の感染者数は170万人、死者は10万人を超えました。中でも急増しているのがアメリカで、感染者数は50万人と抜きんでて多く(次に多いスペインが約16万人、イタリアは約15万人)、死者もイタリアとほぼ同じ1万9000人近くになっています(日本は同じ時点で感染者が約6000人、死者が94人)。そして特に大変な状況になっているのがニューヨーク州で、感染者は17万人(全米の感染者の3分の1)と広がっています。

トランプ大統領はアメリカでコロナウイルス感染が広がり始めた2月頃はかなり楽観的でした。「感染者の数は減っている。死亡リスクもインフルエンザより少ない」「春になればすぐに収まる」と言って、アメリカ疾病対策センター(CDC)を慌てさせました。トランプさん寄りの保守系メディア、FOXニュースのキャスターたちも「新型コロナウイルス騒ぎは政権に打撃を与えようとする民主党の陰謀だ」と言っていました。でも、その頃すでにCDCは感染拡大傾向に警告を発していました。

ここからトランプさんの発言が迷走します。3月11日に開いた記者会見で、イギリスを除くヨーロッパからアメリカへの入国を30日間禁止することを発表しました。さすがのトランプさんも新型コロナに危機感を抱き始めたのかもしれませんが、冷泉さんによると、この発言はアメリカ国民に誤解されて伝わってしまったそうです。トランプさんの認識が変わったと受け取られず、いつもの孤立主義発言と思われたというのです。ところが翌12日にイタリアが大変な状況になっていることが報道され、WHO(世界保健機関)がパンデミックを宣言すると、コロナ不安とトランプ不信が一気に広がり、1987年の「ブラック・マンデー」以来の株価大暴落となりました。

「それで、あれ? ちょっと待ってくれという話で、誰が主導権を取るでもなく混沌とした状態になって。それで13日にトランプさんが慌ててもう一回会見して、専門家と一緒に、〝普通の人〟になっちゃったみたいなすごく真剣なことを言った(国家非常事態の宣言や、感染拡大防止策として最大500億ドルの臨時支出などを発表)。それでみんな『トランプ大統領が真面目にしゃべってる。これは大変だ』ということになったんです」(冷泉さん)

「トランプ大統領が真面目になったらまずいと(笑)」(久米さん)

いまこそリーダーの資質が問われている


「ウォール街の株価が一時3万ドルに手がかかるところまでいったんですよ。それがコロナ騒動であっという間に2万ドルぎりぎりまで下がった。トランプさんの最大の強みは株価だったので、これは大変なことになるだろうなと思って。その頃からちょっとトランプさん、顔色が悪くなった気がするんです」(久米さん)

「そうですね。いわゆるトランプ節では説明できない事態ですから、彼もうろうろしている感じで。いまから考えるとそのときはまともだったんですよ。ですからトランプさんがものすごく真面目にしゃべっていて、久米さんがおっしゃる顔色が悪かった時期というのは、ひとつのターニングポイントだったような気がしますね。ただそのあと、突然また元のトランプさんに戻っちゃいまして、『このままだと経済がだめになる。経済をもういっぺんオープンしよう。盛大なお祭り(4月12日の復活祭=イースター)でパーンとやるんだ』と訳の分からないことを言い始めましたけど」(冷泉さん)

今回の新型コロナウイルスの騒ぎで、地域や自治体、国のリーダーの資質が問われている。そのことがはっきりしてきたと久米さんは言います。冷泉さんも同じ考えです。いま世界でもっとも深刻な事態になっているニューヨーク州のクオモ知事は毎日お昼に会見を開いて、その日に入院した人や亡くなった人などのデータの発表から始めて、事実と向かい合う姿勢を見ています。冷泉さんによると、ニューヨークの人たちはその会見を見ると本当に心が落ち着くと言っているそうです。

そんな中で国民から大きな信頼を寄せられているのが、政府のパンデミック封じ込めチームのブレーン3人です。アメリカ国立アレルギー感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ博士、女性のデボラ・バークス医師、そして公衆衛生局のジェローム・アダムズ長官。冷泉さんによると、この3人はコミュニケーション能力が非常に高くてスキがないそうです。トランプ大統領が根拠なく楽観的なことを言ったり、事実と違う発言をしたときには「それは違う」とはっきりと否定しつつ、大統領を非難することは決してしない。事実のみを冷静に伝える。日本でいうところの、専門家会議副座長・尾身茂さんと、厚生労働省クラスター対策班のメンバーの北海道大学大学院医学研究院教授・西浦博さんといった感じでしょうか(お二人には過去このコーナーにご出演いただきました)。

新型コロナで「分断」進むアメリカ


久米さんは、コロナ騒動によってその国の特徴がより顕わになってきたとも言います。

「アメリカの貧富の差の拡大。ここが今回のコロナ騒動でものすごく堪えているようにみえるんですが」(久米さん)

「これが頭の痛い問題で。レストランとか飲食業界で働く人たちが大量に解雇されていて大変なんですけども、その一方で、金融とかコンピュータ関係のいわゆる頭脳労働の人たちはテレワークで、在宅勤務で経済が回っちゃうわけです。中にはこれがチャンスになって儲かっている人もいる。ですから今回のコロナ危機というのは、余計に貧富の格差を拡大していくというものすごくいやな流れが出てきています」(冷泉さん)

「こういう時代になんでトランプ大統領がいるんだろう、運命というのは皮肉なものだと思うんですけど。彼は女性差別主義者、人種差別主義者でもありますけど、例えばある街では、アフリカ系アメリカ人が人口の15%ぐらいなのに死者に占める割合は40%とか。人口比率と死者の比率が全く違う。つまりアメリカ各地で黒人たちの死亡率が異常に高い。これが、いままでのツケが全部出てきたように見ているんですけど、このことはアメリカに住んでいる方はどう感じていらっしゃるんでしょうか?」(久米さん)

「アフリカ系の人たちもここで本当に肚(はら)をくくったと思うんですよ。いまみたいな時代が続いたらこういうことがまた起きるわけで、やっぱりちゃんとした政権にしなきゃいけない。だから前回の大統領選のときは、なんとなくヒラリー・クリントンさんが好きじゃないからといって棄権した人がいるかもしれませんけど、次の選挙は絶対トランプさんにやらせないために行こうという人は多いですね」(冷泉さん)

貧富や人種のほかに、共和党支持者と民主党支持者の乖離も広がっています。
いま新型コロナ感染患者が急増している東海岸や西海岸の人口密度地域(ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトル)は、民主党支持者が多い地域でもあります。ですからトランプ政権のコロナ危機対応の甘さに怒り心頭という人が多い。一方、感染者・死者が比較的少ない中西部や南部の州は共和党支持者が多い地域です。ですから、いまだに新型コロナ危機は「中国やヨーロッパの問題」と思っている人も少なくないそうです。

「運命のいたずらというか、政治の対立軸が感染状況の対立軸みたいになってしまっています」(冷泉さん)

最大の話題は「副大統領候補」


新型コロナウイルスの感染拡大の影響で選挙集会は中止。大統領候補を選ぶ党大会も延期となり、日程は未定。インターネットで党大会を行うという案が上がっています。アメリカ大統領選挙は不透明な状況になっています。

「民主党のバイデンさんはかなり高齢で、いま77歳。もし大統領選挙で当選したら就任式のあとに78歳になります。それで2期8年やったら86歳になるわけで、そういうことを考えると大統領選挙はどうなるんだろうと」(久米さん)

「いろんなシナリオが言われているんですけど、いまメディアでは、誰を副大統領候補にするかということが最大の話題になっています。バイデンさんにもし健康問題などが出たら辞任するかもしれない。とすると〝大統領になるかもしれない副大統領候補〟を選ばなければいけないので、ものすごく大きな話題になっているんです」(冷泉さん)

「冷泉さんの読みは?」(久米さん)

「新型コロナの感染は秋までには収まらないと思うんですね。そうするとバイデンさんの年齢の問題もあるし、ご自身が大病した経験もあるし、息子さんを脳腫瘍で失ったり、最初の奥さんとお嬢さんが交通事故で亡くなったり、いろんな人生の生と死のドラマを見てきた方ですから、私の勝手な推測ですけども、ある時点で身を引くということがあるような気がするんです。そうなったときには、それまでに指名していた副大統領候補が大統領候補になるという可能性がかなりある。そのときに、仮にネット上でやったとしても民主党大会で副大統領候補が承認されていると、その人はやはり権威がありますから大統領候補になれるだろうと思うんですね。となると、かなり早い時期に副大統領候補を指名しておくことが必要。そういう意味では、これまで挙がった人とは全然違う人物が副大統領候補として指名されて、その人が大統領候補になって、さらにもっと若い人を副大統領候補にして、いわゆる戦時体制にしてトランプさん以上に真剣にコロナ問題に向き合うんだということでいくという可能性があるのではないか…。それぐらいしないとアメリカ国民は許してくれないんじゃないかと思います」(冷泉さん)

冷泉彰彦さんのご感想


ネットを通じての会話でしたが本当に自然に話せました。久米さんのお顔を拝見するのは久しぶりでしたが、まったくお変わりなく、お元気でいらっしゃいますね。緻密なトークも相変わらず素晴らしく、とてもスムーズにお話をさせていただくことができて嬉しかったです。

バイデン候補は土壇場で大統領選を辞退して若い副大統領候補に民主党の代表を譲るのではないかという話をしましたが、私は、辞退を表明するのは全国党大会とみています。最高にセンセーショナルだし、アメリカの国民もこれくらいのことをやらないと納得しませんよね。バイデン氏ではトランプ大統領に勝つことが難しいというより、感染拡大が今後も続いた場合、やはり若い大統領である方が望ましい。ここは身を引くことこそがあるべき姿と本人も自覚しているはず。私はそう考えています。


「今週のスポットライト」ゲスト:冷泉彰彦さん(米国在住ジャーナリスト)を聴く

次回のゲストは、長野県立大学教授・田村秀さん

4月18日の「今週のスポットライト」には、『データ・リテラシーの鍛え方』の著者、長野県立大学グローバルマネジメント学部教授の田村秀(たむら・しげる)さんをお迎えします。内閣支持率、顧客満足度○%、住みたい街ランキングなど、もっともらしい情報に振り回されないための正しいデータの見方をお聞きします。

2020年4月18日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200418140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)