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森友問題・近畿財務局職員はなぜ死に追い込まれたのか 相澤冬樹さん(大阪日日新聞・記者)

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
4月4日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、「森友問題」の公文書改竄(かいざん)に関わって自ら命を絶った財務省近畿財務局・赤木俊夫さんが書き遺していた「手記」をスクープした大阪日日新聞の記者・相澤冬樹(あいざわ・ふゆき)さんをお迎えしました。相澤さんのスクープ記事は、いままた森友問題に注目が集まるきっかけとなりました。

森友問題の発覚から取材


相澤さんは1962年、宮崎県生まれ。東京大学法学部を卒業して1987年、NHKに入社。記者として山口、神戸、東京に赴任したあと、徳島のニュースデスク、大阪府警キャップ、東京でBSニュースの制作を担当。2012年に再び大阪放送局に戻ると、2016年に司法担当キャップに就任。そして、2017年に「森友問題」をどこよりも早く報道し、この事件に深く関わることになったのです。

ところが翌年、相澤さんは記者を外されてしまいます。何かへの忖度が働いたような人事です。取材を続けるため相澤さんはNHKを退職し、大阪日日新聞(新日本海新聞社)に転職して引き続き森友問題を追っています。

奇しくもこの放送日(4月4日)は、2年前に相澤さんがNHKで最後の「森友」スクープを出した日と重なりました。

夫がかわいそすぎる


森友問題に関わる公文書の改竄を上司に強要され、命を絶った近畿財務局職員・赤木俊夫さん。彼が死ぬ前に何かを書き遺していたという話は以前からありました。その「手記」が「週刊文春」3月26日号と大阪日日新聞に掲載されました。記事を書いた相澤さんは、NHKを辞めて少し経った2018年10月に赤木さんの妻・昌子さん(仮名)に手記を見せてもらっていました。ただ昌子さんが当初、手記は公表しないと言っていたため、相澤さんは記事にしませんでした。ところが財務省と近畿財務局の誠意のない態度に昌子さんの気持ちは変わり、公表となったのです。

「森友問題が表に出たのは2017年の2月8日のNHKのニュースが最初で、翌日の朝日新聞がそれを大きく書いたわけですが、赤木さんが自殺したのは2018年の3月7日。ということは、本当にあっという間に起きたことなんですね」(久米さん)

「公文書の改竄(かいざん)自体は2017年2月26日に始まっていますから、それから3月7日、8日ぐらいにかけてやっているんです」(相澤さん)

3年前の2月26日は日曜日でした。午前中、赤木さんはイタリア製ブランドのパンツを2本買いました。赤木さんはお洒落な方でした。服を買ってもすぐには身につけず、大切なことがある日やいいことがあったときに新品をおろすのでした。でも、その2本のパンツがおろされることはありませんでした。この日の午後、赤木さんは上司に呼び出され、改竄を命じられたのです。

「結局、彼にとっては、改竄させられたあとはいいことはなかったんです。いいことどころかどんどん悪くなって、鬱病(うつびょう)になって休職して、結局命を絶ってしまうわけです。だから彼はあの日買ったパンツを履かないまま終わってしまっているんです。新品のまま残っているんです。奥さんは一時はそれを捨てようかと思ったそうです。見ているだけで辛いから。でも捨てずにとっておいてあるんです。奥さんは赤木俊夫さんのことを『トッちゃん』と呼んでいて、『トッちゃんがこれを履かずに亡くなってしまった。かわいそすぎるでしょ』って言うんです」(相澤さん)

赤木さんは自分は犯罪者だという意識だったと相澤さんは言います。決してやってはいけない改竄に手を貸した。それも何度も。そして翌年(2018年)の3月2日、公文書改竄の事実が朝日新聞で報じられると、5日後に赤木さんは命を絶ってしまいました。

「俊夫さんが亡くなって、財務局の人たちが自宅に来るわけです。その中のひとりが『赤木を殺したのは朝日新聞や!』って叫んだそうです。でもそのときに奥さんは思ったんですよ、『殺したのは財務省でしょ』って。朝日新聞はたまたま改竄の事実を掴んで記事を書いただけであって、それを見て俊夫さんがもう終わりだと思ったというのは時系列としては事実なんだけど、そもそも朝日新聞に書かれるようなことを誰がさせたのって。そして、そのあとに誰も責任を取らずに、心病んでいる夫だけに責任を押しかぶせてみんな知らんぷりをしていた。その財務省の責任でしょうって」(相澤さん)

本分を忘れた官僚


赤木さんは自分たち国家公務員の使命は国民に奉仕することだと考えている人でした。「ぼくの契約相手は国民です」というのが口ぐせだったそうです。ところが森友問題で露呈したのは本分を忘れた官僚の姿でした。いまの日本は非常に危ないと久米さんは言います。

「国に奉仕するという精神でやっているはずなのに、これほど時の政権に忖度して公務員が動くようになると…、いまや検事も動かそうなんていうような内閣がいるわけですけど。本当だったら大臣の首が4回くらい跳んだっておかしくないのに、ずっと同じ人が大臣をやっているわけです。こんなことって普通の国の常識としてはあり得ない話です。日本という国は危ないぞという警鐘だというふうに、ぼくはこの遺書を公開した奥さんの意思をそう受け取っています。こういう官僚たちがいまリーダーシップを執って新型コロナウイルスと戦っている。これはとても危険だという話をこの日の放送のオープニングでもしたんですけど、公務員のレベルがどうしてここまで下がったのか」(久米さん)

これに対し相澤さんは、昔から公務員の腐敗はあるけれど、責任の取り方が曖昧にされていると言います。そして大きな組織の問題を指摘しました。

「いまでも真っ当にやっている公務員の人はちゃんといらっしゃると思うんです。ぼくもNHKという大組織にいたから分かりますけど、NHKにも真っ当にやっている職員は当然いっぱいいます。むしろそちらのほうが多いです。たぶん役所もそうなんですよ。だけど、大組織って真っ当にやっている人をすり潰しちゃうところがあって、真っ当な意見がそのときどきの上層部の都合に押しつぶされちゃうということが起きる。そのときに下の人間がなかなか抵抗できない。赤木俊夫さんがまさにそうです。一度は『こんなことはすべきじゃない』と言って抵抗しているわけです。抵抗したんだけど結局、上のほうから『これはやりなさい』と言われて、やらされちゃうわけです。大組織の中で上役からの命令を本気で拒否しようとしたら、職場を辞めるしかないんですよ。職場を辞めるなんていう決断はなかなか簡単にできないじゃないですか。そうするともう涙を呑んで我慢する。そういう思いで俊夫さんもやったんじゃないかと思うんです。そういうことは大組織には起きがちですよね」(相澤さん)

森友問題の本質


森友問題は安倍政権批判とセットで取り上げられることが多いのですが、事件の本質は政権批判ではないと相澤さんは言います。

「そもそもいちばん肝心なのは、この手記を公開した本人である昌子さんが、そんな意識はこれっぽちもないということです。彼女が求めているのはただひとつ。『夫はどうして死んだのですか』。その真相を知りたいです、財務省の報告書では全然分かりません、だから再調査してくださいと言っているだけで、政権批判も何も関係ないですよね。真っ当なことを言っているだけだと思います。そのことを記事にしているだけなのに、これが安倍政権に不利だというふうに受け止める人がいて、政権に対する有利・不利で判断して物を言っている人がいる。日本社会っていま完全に分断しているんですけど、どういう分断の仕方をしているかというと、実にけったいなんですけど、『安倍政権、是か非か』で分断しているんですよ。そんなことってあるのかなあと。例えば昔だったら『自民党、是か非か』という問題の立て方はあったと思うんです。いまはもうそうじゃないですよね。すごくおかしなことになっているなあと思いますよ」(相澤さん)

昌子さんが「手記」の公表に合わせて国と佐川宣寿元国税庁長官に損害賠償を求めて大阪地裁に提訴したのも、佐川さんを法廷に呼び出し、真相を追求するのが目的です。また昌子さんは、財務省とは独立した第三者委員会による再調査を求めています。

ところが「手記」の公表したあと、麻生大臣は「新たな事実が判明したことはない」「再調査を行う考えはない」と突き放し、安倍総理も国会で「検察ですでに捜査を行い結果が出ていると考えている」「国会答弁が決済文書の改ざんのターニングポイントになったとは、手記には書かれていない」と答え、再調査を否定しました。

これに対し、昌子さんは「2人は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではないと思います」というコメントを発表。さらに、再調査を求めてインターネットによる署名を呼びかけました。すると異例のスピードで賛同の署名が集まり、この日の放送の時点で28万人に達しています。

「彼女が言っていることはたぶん誰も否定できないです。それはものすごくインパクトがありますよね。森友の国有地がどうのこうのというのは理屈の話です。それよりもぐっと心を惹きつける。だからすごい力があるんです」(相澤さん)

相澤冬樹さんのご感想


久米さんというと、ぼくは「ザ・ベストテン」なんですよ。正直言って「ニュースステーション」は見ていなかったので、そのイメージはあまりなくて。ザ・ベストテンの久米さんと一緒にラジオに出られることがすごく嬉しかったので、今日はその話をしようかなと思っていたら久米さんがいきなり本題に入ってしまったので、できなくて残念です(笑)。

久米さんが矢継ぎ早に質問してくるので、出演している間はマラソンを走っている感じでした。でも、すごく上手に話をリードしていただいたなあと思います。

いまの安倍政権はおかしくなっているということをどう思いますかという話がありましたけども、赤木さんの奥さんは純粋に真相を知りたいと言っているだけで、政治的な思惑でやっているわけではありません。それを勝手に政治的な色を付けているのは、それを受け止める側なんです。特に安倍政権を支持する人たちは、政権に不都合な事実が出てくるとすぐ「反安倍のためにやっている」と結びつけるんですけど、結果的に政権に不利になるかもしれませんけど、やっていることは事実の追求にすぎないわけです。私もそうしてきたし、彼女もそういうふうにしたいと思っているわけです。それは「安倍政権、是か非か」ではなく、むしろ与野党一致してちゃんと向き合ってほしいと思います。再調査を始めるというのもそうですし、証人喚問ももちろんそうです。国会でできることをぜひやってほしいと思います。今日はありがとうございました。

「今週のスポットライト」ゲスト:相澤冬樹さん(大阪日日新聞記者)を聴く

次回のゲストは、米国在住ジャーナリスト・冷泉彰彦さん

4月11日の「今週のスポットライト」には、アメリカ在住の作家・ジャーナリストの冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)さんをお迎えします。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないアメリカの最新状況や大統領選挙への影響などをお聞きします。

2019年4月11日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200411140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)