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文明がもたらすパンデミック

森本毅郎 スタンバイ!

忙しい朝でもニュースがわかる「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)8時からは、話題のアンテナ「日本全国8時です」

全国ネットで、日替わりゲストとともに放送。
毎週木曜日は、東京大学名誉教授、月尾嘉男さんの「雑学コラム」!

月尾嘉男

解説は東大名誉教授の月尾嘉男

3月26日(木)は「文明がもたらすパンデミック」

★1:世界規模で移動が急増

新型コロナウイルスの蔓延は依然として終息する気配がなく、感染者数、そして死者数も増加の一途です。今日は、この原因は文明の進歩がもたらした結果だということを紹介させていただこうと思います。

第一の文明の進歩は世界規模で移動が急増していることです。移動には旅行などの短期の移動と、移民のような長期の移動があります。

短期の移動は仕事や観光などの目的での移動ですが、4半世紀前の1995年には世界全体で国際旅行者数は5億2500万人でしたが、2018年には14億人に増えており、毎年4・2%の割合で増加しています。

このままの傾向で増加していけば、10年後には18億人になり、世界の人口の5人に1人が1年に1度は国外に旅行することになります。

しかもヨーロッパの26カ国は1995年に締結された「シェンゲン協定」により国境を自由に往来できるようになっているため、毎日、他国に通勤している人々がいるほどです。

そしてかつて陸路や海路しか手段がなかった時代は移動に時間がかかっていましたが空路が実現し、移動時間が一気に短縮されました。

その結果、今回の新型コロナウイルスの伝染でもそうですが、極めて短い時間で世界に伝播するようになりました。

そして、移民の移動もあります。ヨーロッパでは4世紀から6世紀にかけて中央アジアに生活していた遊牧民のフン族がヨーロッパに移動しはじめ、その影響で玉突き状態の人口移動が発生し、多くの国々が栄枯盛衰を繰り返しました。これは現代にも再現されており、ヨーロッパからアジアにかけておよそ2000万人の難民が国外に移動し、国内に生活している避難民を加えると6000万人以上が本来の場所で生活できていない状態です。

それらの人々は不衛生な生活環境や食料不足などにより病気になりやすく、伝染病が伝播する原因になっています。

★2:未知の病原菌に遭遇する機会が増えた

第二は地球の人口が増加して、これまで人間が生活していなかった土地へ人間が進出するようになり、未知の病原菌に遭遇する機会が増えていることです。

アメリカが1903年にパナマ運河の掘削するため熱帯雨林を伐採していったところ、疫病が大流行して数年間、工事ができなかったという記録があります。

アフリカでエイズが登場したのは、カメルーンで密林の開発が進み、それまで接触のなかったチンパンジーと遭遇するようになり感染したと推定されています。

人口の増加と食料の不足により、人間が未開の土地を開拓し、それまで食料としていなかった動物を食べるようになって流行するようになった例が多数あります。今年1月、アメリカの研究者たちが「氷河に閉じ込められていた太古のウイルス」という論文を発表していますが、アメリカのアラスカや中国のチベットで地下50メートルほどの凍土の中から28種類の未知のウイルスが発見されたという内容です。ウイルスはどこにでも潜んでいることを示しています。

★3:地球環境の変化

第三は人間の活動を原因とする地球環境の変化で、それらの中でも最大の影響をもたらしているのが温暖化です。

2014年に日本でデング熱の国内感染が発生したということで大騒ぎになり、東京の代々木公園の一部が閉鎖される事態になりました。

それまでも毎年100人近くが感染していたのですが、すべて海外で感染して帰国した人々でしたから国内で感染したことは衝撃でした。

媒介するヒトスジシマカが越冬できるのは平均気温が11℃以上の土地で、1950年までは関東平野の北部まででした。

ところが2000年には東北地方の南部まで、2010年には東北地方の北部までヒトスジシマカが繁殖し、流行するようになりました。

同様に、黄熱病、デング熱病、ジカ熱などを媒介するネッタイシマカもアフリカ大陸から地中海を越えてヨーロッパ大陸にまで北上しているという研究もあります。

そうなれば、これまでアフリカ大陸に封じ込められていた伝染病がヨーロッパに伝染し、地球規模の人間の移動によって世界に拡散することも予想されます。

現在、憂慮されているのは地球全体の気温が上昇し、シベリアなどの永久凍土が溶けはじめ、それまで永久凍土の中に封じ込められていた動物や人間の死体が露出して空気に触れるようになり、それらに付着していたウイルスが蘇ることです。

ユーラシア大陸から北極海に突き出しているヤマル半島は、永久凍土に覆われていますが2016年に35℃の高温になり、永久凍土が溶解した結果、75年前に死んだトナカイの死骸が露出し、そこに付着していた炭疽菌が蘇り、10数人の住民や2500頭のトナカイが炭疽病で死亡するという事件がありました。

このヤマル半島では天然ガスの存在が次々と発見され、今後、開発が進んでいくと予想されますが、それは同時に未知のウイルスなどを掘り出すことにもなります。

長めに見ても500万年前に登場した人間は地球の歴史では一瞬にしか過ぎない直近の1万年程度の期間に様々な技術を発明し、それによって人口を急速に増大させてきましたが、その技術が創り出した文明によって短期間で衰退していく運命にあるのかもしれません。

現在の新型コロナウイルスの蔓延も、当面の対策は重要ですが、長い目で見た人間の文明の流れの中で対策を検討する必要があると思います。

月尾嘉男の「日本全国8時です」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200326080130

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