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柴崎友香×羽田圭介、災害や戦争に思いを馳せることについて

ACTION

3月12日(木)のゲストは作家の柴崎友香さん。羽田圭介さんとたこ焼きパーティーを行うぐらい仲の良いお二人。今日はそういった場では滅多に話さないという小説の話を中心に、柴崎さんが書かれた『わたしがいなかった街で』についてお伺いしていきます。

『わたしがいなかった街で』のあらすじ…主人公は大阪で生まれ、2010年の東京で一人暮らしをしている36歳の女性・砂羽。彼女の生活で切り離せないのはテレビ。好んで見るのは戦争のドキュメンタリー。また、原爆を投下された広島や、急襲被害を受けた東京・大阪の街など、かつて起こった数々の悲劇にも目を向けていきます。

羽田:僕はこの作品を「こういうフィクションなんだな」と思って読んだのですが、ほかの構成作家は「柴崎さんの経験が大いに反映されたのでは?」と言っていて。でも僕の知っている柴崎さんとこの主人公は全然かけ離れているので(笑)そのあたりはどうですか?

柴崎:砂羽の生活そのものや人間関係はフィクションなんですけど、同じぐらいの年齢なので、砂羽が経験してきた社会的経験というのは自分の経験も反映されていると思います。また、砂羽の祖父が原爆投下直前の広島にいてという話が出てきますが、そこも私の祖父の話が基になっています。

羽田:そうなんですか!

柴崎:直前と言っても何ヶ月か前ですが。ただ祖父がいい加減な人なので、本当かどうかよく分からないんです(笑)ホテルでコックをしていたらしいんですが、聞いたホテルの名前を調べても見つからないし(笑)まぁ、広島にいたのは事実なんですが。でもそれを聞いたとき、もしそのまま祖父がそこで働き続けていたら亡くなっていて、母は戦争直後に生まれたので、もしかしたら私は存在しなかったかもしれないなと思って。それを聞いたときの現実が揺らぐ感じ。

羽田:それも聞いたら、本当におじいさんがそこで働いていたかどうかはあんまり大したことじゃなくなるというか。自分にとってその話を聞いてからの「if」みたいな仮定が大事ですよね。

柴崎:そうです。それが事実だったということが重要というよりも、揺らぐ感じとか、偶然によって人の人生や存在が左右されるという感覚は小説を読む人にとってもそういうことを考える入口になるんじゃないかなと思うんです。

羽田:この小説は現代と震災や戦争というのが思わぬところでつながっている感覚が面白いなと思ったのですが、柴崎さん自身も大きな災害や戦争みたいなこととのつながりをどのあたりで感じて小説を書かれていますか?

柴崎:最初にこういうことにはっきりと興味を持ったのは、大学で人文地理学を専攻していたのですが、その中で日本全国の空中写真ですね、飛行機から撮った写真を資料として見るんですけど、戦争直後の写真も見たことがあって、それが自分が普段暮らしていたり遊んでいたりする大阪の中心部の街が焼け野原で。爆弾の跡とかが生々しく残っていたんです。それを見た瞬間に遠いと思っていた戦争が、すごく近いというかつながっているという。自分が実際に歩いているこの道が何十年前がそうだったということが分かったときの感覚ですね。どこか別世界と思っていたことがつながっていたし、自分も同じ場所で生きているから関係があるということが強烈で。それをなにか小説で書けないかなと思って。

柴崎:それが「昔、こんな大変なことがあって…」じゃなくて、今ここにいる自分が過去のこと、あるいは遠い場所のような自分が直接関わっていないことと、そこにいなかったことと、今ここに自分がいることとがどう関係しているのか、どういう距離の取り方が可能なのかということを書きたいなと思っていたんです。たまたま東京に引っ越してきた時に、住んでいたところが小説にも出てくる海野十三さんが住んでいたところで。その日記にも空襲のことが書かれていて。

柴崎:東京で空襲と言われると東京大空襲のイメージが強いですけど、本当あらゆる都市で空襲されていない場所はないぐらい被害を受けているので、そのことをその場所で暮らしているということを書きたいなと思ったんですね。今って昔の写真や映像や遠い場所のことって見れますよね。見れるけど物理的な距離はあって、そこでどうしていいか分からないというか。どんどん技術だけが発達して、一方的に見れたり知れたりはできるけど、そこと人間の感覚がまだついていけてないというか。それをどう捉えていいかという気持ちはありますね。

過去や遠い場所に思いを馳せるお話はまだまだ続きます。GUEST ACTION全編はradikoのタイムフリーで。

3月12日(木)のGUEST ACTIONを聴くhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200312162910

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)