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トイレは「焼き物」!?TOTOが誇る手作りの秘密

見事なお仕事

企業の“見事な”取り組みや新情報をお届けする番組『見事なお仕事』。ポップカルチャーの総合誌「BRUTUS」の編集長でカルチャーに精通する西田善太さんならではの視点で、企業の“見事なお仕事”の内容と秘訣を、インタビュー形式で伺っていきます。

1月5日(日)のゲストは、TOTO株式会社の松竹博文さん。未だなお、その全ての工程に「手作業」が必要とされている「衛生陶器」の製作過程や、社内で開かれているコンテストの裏側のお話をお聞きしました。

トイレのアレ、「衛生陶器」と言います

西田 「松竹さん」って珍しい名前ですよね。

松竹 松竹って長崎の諫早の方に多い名前なんですよ。子供の頃に自分の苗字って珍しいよねって話をしてたら、諫早の方に本家があるんだと。

西田 そうなんだ。

松竹 へぇと思って、以前長崎に行った時に電話ボックス入ってタウンページ見たら「松竹」がズラーっと並んでて。私の生まれは山口県の下関なんですけど、そこにはうちの親戚以外1件しかなかったんですよ。だから絶対悪いことしたらバレちゃうよなんて言われて。

西田 じゃあなんか悪いことしたら諫早の方に逃げちゃえばいい。

松竹 そうですね(笑)

西田 今まで松竹さんはどのような畑を歩いてきたんですか?

松竹 入社時点では滋賀県の滋賀工場に配属されまして、タネ型っていう、衛生陶器の元になる型を作るところに配属になりまして。職人みたいな仕事でした。

西田 つまり型を作る元になるってこと?

松竹 はい。泥漿(でいしょう)っていう、粘土を水に溶かしたものを石膏の型の中に流し込む作業から始まって。で、最終的に焼き物なので焼くと縮むし、石膏も水分を吸い取るのでタネ型からは13パーセントくらい縮むんです。

西田 そうなんですね。

松竹 その縮む前の最初の型を作らなきゃいけなくて、「割り当て」というんですけど、大きくなった状態の図面を作らないといけない。

西田 縮んで曲がったりするのも予想しないといけないんですね。

松竹 上の部分は重力でだんだん落ちてきたりするので、まっすぐ作ってると凹んじゃうんですね。だから膨らましておかなきゃいけないとか。

西田 へぇ!ちょっと疑問なんですけど、ちゃんと図面上で計算したら、土の混合の割合とかが多少変わったとしても全く同じものができるものなんですか?

松竹 やっぱりそこの差は出てきてしまって。信楽焼とか、ああいうものでしたら形の違いとか色の違いも「味」になるんですけど、私共の商品は同じ焼き物でも工業製品ですので。「この形は味があっていいね〜」とはならないんですよね。

西田 返品されちゃう。

松竹 なので均質っていうのが大事になってまして。私共の5代目社長の江副孫右衛門(えぞえ まごえもん)が残した言葉に、「1000個の商品のうち1つでも不良品があったら、その不良品が行ったお客さんにとっては100パーセントなんだから、たとえ1個足りとも不良があってはいけない」というのがあります。そういった志でやっているので、今でも全数検査していますね。

西田 抜き打ちでやるんじゃなくて、全部なんですね。

松竹 水が漏れないか、便座をつける穴の位置がずれてないかとか。割れてないかを木の槌で叩いて調べたり。抜けがないようチェックしています。

手作業でつくる、職人たちのコンテスト

西田 TOTOさんには「衛陶技能選手権」という、衛生陶器の技能の選手権というのがあるそうで、これはどういったものなんでしょう?

松竹 2012年からはじめまして、当初は小倉工場だけだったんですけど、今は海外の事業所も含め、各国の技術者が集まって製法の技能を競うというものですね。

西田 衛生陶器づくりは完全な機械化ではなく人力で、人の目が入っているものだから、その技術を競うんですね。

松竹 はい。非常に多い作業工程を伝承していかないといけないので、元々は若手技能者の育成・腕試しを目的にはじまったという経緯もあります。

西田 選手権の写真を見せてもらったんですけど、ミニチュアの衛生陶器を作ってらっしゃるんですよね。それってどんな意味があるんでしょう?

松竹 実はミニチュアだから簡単って訳でもなくて、それを型から出して表面の仕上げをして、穴を空けてそこを塞いで。本物の衛生陶器もいろんなところに穴が空いておりますので、そういう技能も必要になってくるんですね。小さくはあるんですが、その中に衛生陶器を作る為に必要な技能が全て詰まってるんです。

西田 完全に「手」の仕事なんですね。

松竹 手の仕事です。

西田 みんなその選手権で優勝する為に日々練習を積んでいくっていう。全体で何人くらい参加するんですか?

松竹 30人くらいですね。遠くはアメリカ・メキシコ・中国・ベトナム・タイから。前に優勝したベトナムの選手とかは気合の入り方がすごくて。試合前のボクサーみたいに、顔つきがすごいんですよ。

西田 「選手」っていうの面白いね(笑)。

松竹 ふふふ。彼もまた1500人くらいいるベトナムの工場の中で、予選を2ヶ月くらいかけて選ばれた選手で。優勝して帰ると、チャンピオンってことで指導する立場にもなりますし、「自分の先生はチャンピオンになった人なんだ!」って弟子側にも尊敬されて。

西田 高みを目指してやってらっしゃるんですね。技術はここまで磨けるんだと。

松竹 そうですね。

西田 まさか今でも手作業とは。まさに見事なお仕事。「マスプロダクトで大量生産する商品かと思いきや、細かなところまで人の手が入っている」。これが、品質のいい衛生陶器の秘密ですね。

松竹 はい。ほとんどの工程に人の手が入ってますので、よくよく見ていただくと本当に陶器なんだな、焼き物なんだなとわかっていただけると思います。

西田 これからは、ありがたがって使うようにします!

編集・執筆:今井雄紀(株式会社ツドイ)