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「音楽業界の常識を覆す最強ファンクバンド、ヴルフペック特集」(高橋芳朗の洋楽コラム)

ジェーン・スー 生活は踊る

音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんによる洋楽コラム(2020/02/28)

「音楽業界の常識を覆す最強ファンクバンド、ヴルフペック特集」

音楽業界の常識を覆す最強ファンクバンド、ヴルフペック特集http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200228123308

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)

高橋:本日はこんなテーマでお送りいたします! 「音楽業界の常識を覆す最強ファンクバンド、ヴルフペック特集」。いまグッドミュージック好きに絶大な支持を誇るロサンゼルスに拠点を置くファンクバンド、ヴルフペックの特集です。ヴルフペックはデトロイトで結成されて2011年にデビューした4人組。この番組では以前KIRINJIの堀込高樹さんがゲストに来られたときに高樹さんのお気に入りとして紹介したことがありますね。あとは彼らの出世作になった2016年リリースのアルバム『The Beautiful Game』を僕がスーさんの誕生日にプレゼントしたことでもおなじみのバンドです。

スー:ケイトラナダ?

高橋:フフフフフ、ケイトラナダの『99.9%』の翌年にプレゼントしたアルバムですね。ではまずはそのヴルフペックがどんな音楽性のバンドなのか、2018年リリースの目下最新アルバムになる『Hill Climber』から一曲聴いてもらいましょう

M1 Darwin Derby feat. Theo Katzman & Antwaun Stanley / VULFPECK

高橋:もう最高にご機嫌なファンクミュージック!

スー:そうですね。プリンスとか好きな人にはぴったりな感じ。

高橋:まさにまさに。このヴルフペックは自分たちで「Vulf Records」というインディペンデントレーベルを運営しているんですけど、そんな彼らのビジネスモデルがいまアメリカで注目を集めているんです。というのもヴルフペック、去年9月にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで公演を行なってソールドアウトにしているんですけど、彼らはこのコンサートをマネージャーなし、大手レーベルとの契約なし、シングルヒットなし、この条件で実現した初めてのアーティストなんですよ。

スー:すごい! ワオッ!

高橋:ちなみにマジソン・スクエア・ガーデンのキャパシティは約2万人。日本武道館とさいたまスーパーアリーナの中間ぐらいかな? それはともかく、ここでコンサートを行うことは世界に誇れる一流ミュージシャンの証になるようなところがあるんです。

つまりヴルフペックは、いまのこの時代だったら良質な音楽を作り続けて地道にファンベースを築いていけば、業界のコネクションやメジャーレーベルの後ろ盾や大きなヒット曲がなくてもマジソン・スクエア・ガーデンを埋めることができると証明してみせたわけです。これによって、ヴルフペックは音楽業界の常識を打ち破ったストリーミング時代のヒーローになりました。

もともとヴルフペックは知能犯的なところがあって、音楽配信サービスにまつわるちょっとした伝説を残しているんですよ。彼らがまだ本格ブレイクする前の2014年、ツアー資金を捻出するためにメンバーが考えた作戦がケッサクで。まず、演奏時間30秒ぐらいの無音の曲を10曲収録したアルバムを作って音楽配信サービスのSpotifyにアップしたんですよ。

スー:無音の?

高橋:そう、30秒ぐらいの無音の曲が10曲入ったアルバムです。そして、それをファンに向けて寝てる間にずっと再生してほしいと呼びかけたんですね。さらに、その無音アルバムがいちばん再生された地域で無料コンサートを行うことを発表して。

スー:はいはい! うわっ、逆手に取ってるね!

高橋:フフフフフ、もうわかりますよね。Spotifyでは曲が一回再生されるごとにアーティストに支払われるロイヤリティはだいたい0.4円ぐらいなんですね。インディペンデントのアーティストはこれではとてもじゃないけど満足な収入を得られない。でも、10曲入りトータル5分の無音アルバムをファンが寝てる間に競うようにして再生した「チリツモ作戦」によって、結果ヴルフペックは200万円稼いだんですよ。

スー:すごい! すごーい!

高橋:ちなみに、ヴルフペックがSpotifyにアップしてファンに寝てる間に再生してほしいと呼び掛けたアルバムのタイトルは『Sleepify』(笑)。もう痛快すぎるでしょ!

スー:えっ、それっていまだにあるのかな?

高橋:いや、削除されました。最初はSpotifyも自分たちのプロモーションになると考えたのか『Sleepify』を容認していたんですけど、さすがに真似されたらたまらないということなんでしょうか、その後バンドに削除要請をしています。世紀の名盤『Sleepify』(笑)。

スー:あの名盤『Sleepify』。誰もが寝てしまうという(笑)。

高橋:当時はレディオヘッドやテイラー・スウィフトがSpotifyのロイヤリティをめぐって自分たちの音源を取り下げたりしていたから、『Sleepify』の登場は結果的に音楽配信サービスの在り方についての問題提起にもなったんじゃないかと思います。

では、ヴルフペックが「マネージャーなし、大手レーベルとの契約なし、シングルヒットなし」でソールドアウトにした歴史的なマディソン・スクエア・ガーデン公演の模様を収めたライブアルバム『Live at Madison Square Garden』から一曲紹介しましょう。

M2 Animal Spirits(Live) / VULFPECK

※こちらはマディソン・スクエア・ガーデン公演のフル映像。「Animal Spirits」はコンサートの一曲目になります

高橋:このマディソン・スクエア・ガーデン公演の模様はYouTubeのヴルフペック公式アカウントに全編アップされていますのでぜひチェックしてみてください。

スー:楽しい感じがいいですね。

高橋:音楽を心底エンジョイしてる感じがいいですよね。このヴルフペック、ここ最近はメンバーや周辺ミュージシャンのソロ活動が活発化してきているので、ここからはその一部を紹介していきたいと思います。

まずはヴルフペックの中心メンバーでボーカル、ギター、ドラムなどを担当しているテオ・カッツマン。これまで聴いてもらった2曲も彼がボーカルを務めているんですけど、そのテオが今年1月10日にリリースしたソロアルバム『Modern Johnny Sings: Songs in the Age of Vibe』から「You Could Be President」を聴いてもらいたいと思います。ヴルフペックほどファンキーではないんですけど、これがまた非常に良質なポップソングで。ヴルフペック作品がそうであるように、自然と笑顔になってしまうような楽しい曲に仕上がっています。

M3 You Could Be President / Theo Katzman

高橋:続いてはヴルフペックのツアーメンバー/準メンバーでありながらもはやバンドに欠かせない存在になっているギタリストのコリー・ウォン。彼が1月10日にリリースしたソロアルバム『Elevator Music for an Elevated Mood』から「Golden feat. Cody Fry」を紹介します。このコリー・ウォンはファンクギターと言いますか、リズムギター/ギターカッティングの名手としていま急速に評価を高めているんですよ。日本のギター雑誌でも彼の特集が組まれていたりするほどで。

さっきスーさんからプリンスの話が出ましたけど、コリー・ウォンは一時期ミネアポリスを活動の拠点にしていて、プリンスのバッキングを務めていたミュージシャンとバンドを組んでステージに立っていたことがあるんですよ。だからスーさんの指摘はすごく鋭くて、彼はプリンスの影響がものすごく強いんですよ。しかもこれからかける曲を聴いてもらえばわかると思いますけど、コリーはポップセンスにもめちゃくちゃ長けていて。ギタリストとしてのタイプはまったく異なりますけど、トム・ミッシュに続く人気者/ギターヒーローになれる可能性もあるんじゃないかと思っています。

M4 Golden feat. Cody Fry / Cory Wong

スー:みんなで集まっているときに流しているとテンションが上がって楽しくなりそう(笑)。

堀井:いまちょっと会話が楽しかったよね(笑)。

スー:うん、曲がかかってるあいだすごい盛り上がってた(笑)。

高橋:やっぱり自ずと笑顔になってしまうような音楽なんですよね。いまヴルフペック界隈はサイドプロジェクトやソロ活動も活発化してきていて、ぐっと広がりが出てきているので追っかけてみると相当楽しいと思います。まずはフィアレス・フライヤーズ(The Fearless Flyers)やジョーイ・ドーシック(Joey Dosik)あたりをチェックしてみてください!

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当ラジオ番組では「日々の生活に音楽を」をコンセプトに、音楽ジャーナリスト・高橋芳朗さんによる洋楽選曲を毎日オンエア。最新1週間のリストは以下です。

2月24日(月)

(11:08) It’s the Falling in Love / Dionne Warwick
(11:28) You Made Me a Believer / Lamont Dozier
(11:44) He’s So Shy / Pointer Sisters
(12:17) What You Won’t Do for Love / Natalie Cole & Peabo Bryson
(12:24) Gimmie What You Got / Al Jarreau

2月25日(火)

(11:05) Here’s One That Got Away / The Style Council
(11:24) Wildflower / The Blow Monkeys
(11:36) Thank You / Tracie
(12:12) Blue Hat for a Blue Day / Nick Heyward
(12:48) タンタンの冒険 /大貫妙子

2月26日(水)

(11:04) Rock This Town / Stray Cats
(11:25) Make a Circuit with Me / The Polecats
(11:36) Ice Cold / Restless
(12:11) One Hand Loose / The Bop Cats
(12:25) This Ole House / Shakin’ Stevens
(12:50) Friend or Foe 〜敵か味方か〜 / Adam Ant

2月27日(木)

(11:07) It’s a Lovely Day Today / Astrud Gilberto & Walter Wanderley
(11:36) Jazz ‘n’ Samba / Wanda Sa
(12:16) Voce / Quarteto Em Cy
(12:52) Brasileiro / Marcos Valle

2月28日(金)

(11:06) Upside Down / Diana Ross
(11:25) Let’s Get Serious / Jermain Jackson
(11:38) A Lover’s Holiday / Change
(12:11) Real People / Chic