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【音声配信&書き起こし】「ショッキングな船内だった」~神戸大教授の岩田健太郎さんに聞く~実際に乗船したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の問題点と、新型コロナウイルス対策」(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」)

荻上チキ・ Session

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TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』(平日22時~)
新世代の評論家・荻上チキがお送りする発信型ニュース番組。

2020年2月19日(水)のニュースコーナー「Daily News Session」

「クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客が下船を開始。一方で、新たに感染者」

実際に「ダイヤモンド・プリンセス」に調査に入った、感染症について詳しい、神戸大学病院・感染症内科・教授の岩田健太郎さんにお話を伺いました。

岩田さんは、実際に横浜港に停泊するクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に専門家として乗船し、その現場の問題点を公開しました。

■下記は、岩田健太郎さんが公開した動画より。

・・・・・・・【放送書き起こし】・・・・・・・

▼なぜ、調査に入ることになったのか?

荻上:まず岩田さんは、どういう経緯で調査に入ることになったんでしょうか?

岩田:あのクルーズ船を見ていると患者さんがすごく多くて、ちょっとおかしいなと思ったんですね。それまでコロナウィルス対策、日本は非常に上手に対策とっていたんですけど。クルーズだけ上手くいっていないようにと。現場に行ってみたいと思っていたんですが、そうこうしているうちに、厚生労働省の方から17日に御電話をいただいて、入ってくださいということで、DMATといわれる、災害対策の専門チームとして入ることになりました。

荻上:もともとクルーズ船の対策がまくいってないのではないかと疑問を抱くのはどういった理由だったんでしょうか?

岩田:一つは新しい患者がどんどん出てきたこと。もう一つは情報が出てこなかったことです。普通クルーズ船の中でたくさん患者さんが出てくると、それは、どういった流れで感染しているのか。特に気になるのが、2月5日以前の感染が見つかっているのか?5日以降、隔離になっても、新しい感染が発生しているのか。両者を区別することは大切なんですね。それが出来ていなかったと。

荻上:そうした中で今回DMATのメンバーとして参加するという形にはなったわけですよね。実際に乗船をして船内の防疫体制の、環境の管理であるとか、衛生の管理この体制はどうだったでしょうか?

岩田:いろんな問題があったんですけど、一番やはり深刻な問題は、安全な「グリーンゾーン」「とレッドゾーン」の区別がついていなかったということです。

▼問題は「グリーンゾーン」と「レッドゾーン」の区別

荻上:それ具体的にはどういうことなんでしょうか?

岩田:「レッドゾーン」はウイルスがいるであろうエリア。「グリーンゾーン」はウィルスは絶対にいないエリアです。レッドゾーンにはウィルスがいるという前提で、「PP」と呼ばれる防護服を着ます。そしてこの「PP」にはウィルスがくっついているかもしれない。グリーンゾーンは、ウィルスがいないということになってますので、「PP」は着用してはだめです。「PP」は着ればいいというものではなくて、ウィルスがいないところでこれを着てしまうと、体表にウィルスが付着した「PP」を原因として、これが広がってしまう可能性があるわけです。だから、レッドゾーンでは「PP」を必ずつける、グリーンゾーンではつけてはいけない、ということですね。
ところが、プリンセスダイヤモンド号の中に入ると、「PP」をつけている人が歩いているところで、おんなじエリアで、つけてない人も歩いている。赤いところと緑のところがぐちゃぐちゃになっている。そのエリアにウィルスがいるのかいないのか、はっきり区別つかないということになります。ウィルスがいないと分かっているとこがグリーンだから、我々は自分たちを守ることが出来るんだけど、よくわからないとなると、自分が感染してしまう可能性が高まってしまう。とても怖いんです。

荻上:そうした環境の中で、乗客乗員が生活していたとなると、大きなリスクになるわけですか?

岩田:そうです。乗客、クルー、医療従事者、厚労省の官僚の方、医療の方、みんながリスクになってしまうわけですね。

荻上:これについては きょう記者会見で菅官房長官に、追及した記者がいます。そちらお聴きください。

荻上:「最大限対応している」という政府の反応についてはいかがでしょうか?

岩田:ほとんど何も言っていないのと一緒だと思います。官房長官の回答は、どんな事象についても100%正しくアプライできる回答ですよね。100%アプライできるというのは、何も言っていないのと変わらないといえる。あまり意味のあるコメントにはなっていないと思います。

荻上:船内の様子で、乗客の方とお話する機会はありましたか?

岩田:いえ、乗客とお話はしていないですね。

▼現場は「ショッキングだった」

荻上:実際に行った調査とはどんな場所だったんですか?

岩田:調査という調査はできなかった。時間がなかったので。入ってすぐの本部。本部向かいの大きな広場。その下の階のメディカルセンター、医務室ですね。その前の待合空間と、両側の廊下、こういったところが主に見ることができた。

荻上:こうした部分で、今言ったようなゾーンの区別ができてない。他に何か印象的なところはあったでしょうか?

岩田:細かいことはあるが、やはり感染対策、感染防御の専門家チームが常勤でいて、感染対策の権限を持っている、こういった、いわゆるCDCのような役割をするチームがないのがショッキングでした。

荻上:つまり透明性もさることながら、感染症対策として、しっかり機能するような組織立てになっていなかったということでしょうか?

岩田:そうです。

▼今後の課題は?

荻上:下船が始まって、今回クルーズ船の中の状況は変わっていきますが、今後の下船した方への対応や、クルーズ船の対応への検証、今後はどういったフェーズが必要だと思いますか?

岩田:難しいところがありますが、なんといっても検疫がうまくいったのかのカギは、2次感染があったのかなかったのか、あったとしてもどれくらいあったのかというのを、患者さんの発症の時期を中心として、検証する必要がある。このデータを取っていない可能性が高いので、もう一回これを再構築できるかが重要ですね。後は、隔離を解除、船から降りられたかた、今回は500人の内、何人の2次感染が発見され、3次4次になっていくかどうかが重要なポイントだと思います。

荻上:今回下船した方は陰性と判定されたわけですが、この陰性=感染していないとまでは言えないということでしょうか?

岩田:言えません。手の端々は間違いますから。感染している可能性はあります。いうなれば意味のない検査ということになります。陰性でも結局同じ判断になりますから。本来だったら、感染していない確認の検査はするべきではないと。

荻上:今回2週間ほどの期間をとるために、クルーズ船に滞在を求めたわけだが、その2週間以内にも感染が続いていたのであれば、2週間経ったから、下船を決めるというという判定についてはどうですか?

岩田:下船そのものに問題はないです。ただ、下船後に自らを隔離させる必要があるかというところでは若干問題があると思います。もし懸念材料が十分あれば、アメリカなどでも行う追加の2週間の隔離期間を置くのも理にかなっていると思います。

▼なぜ、動画を配信したのか?

荻上:今回乗船したときの模様を、YouTubeで発信し、Twitterなどで英語など含めて発信を積極的に行い、情報公開を取り組んだ目的は何でしょうか?

岩田:YouTubeはともかくとして、感染対策において、情報公開して特にデータを正確に扱うことは極めて重要。クルーズ船の時に不安に感じたのは、情報が出てこないという事。毎日患者さんはどうなっているかなど、そういったところをきちっと毎日出し続ければ、もっといい形になったかと思うが、それが滞ってしまったために不安だった。今、中国を始め、どの国でも昔と違って事実を隠蔽しない、データを歪曲しない、非常に誠実であることが信頼につながっています。普段の日本の姿もそうなんですが、とにかく事実とちゃんと向き合っていられるか、データを歪曲したり隠したりしていないか。失敗があったら認めることができるかが、感染症対策では重要なポイントなんです。

荻上:情報公開の疑問を投げかけることで、さらなる透明性を要望するアクションになったということでしょうか?

岩田:そう思います。

荻上:反響についてはいかがでしょうか?

岩田:YouTubeを見ていただいた方は、英語で20万人ぐらい、日本語で100万以上、かなりの方が見ておいでで、そのあとのたくさんの国から取材依頼が来て、ちょっと正直こんなに反響があるとは思っていなかった。

▼そのほかの対策はおおむね評価

荻上:引き続きこのクルーズ船での対応がどうだったのかより検証が必要だと思いますが、他方で各地で感染者というものが、発見されています。現在の感染の拡大状況について、クルーズ船以外の拡大状況について国内、これはいかがでしょうか?

岩田:多分、クルーズ船以外の方は、感染対策は割とうまくいってるんじゃないかと思ってます。一つ懸念するのは和歌山なんですけど、基本的にはよく患者さんが増えたというが、断片的で小規模の感染流行がポツリポツリと来ていて、それを抑え込もうとしていると。比較的小規模ですし、それなりにきちんとやっていると思います。

荻上:引き続き様々な対応を続けていく、これが必要だと思いますが、感染症対策としては、手洗いや、消毒、そうした注意喚起されていますが、こうした対応は継続をするということが必要なのですね?

岩田:そうですね。一般的に感染対策全般、健康維持に関しますので、せっかくなので、そういう習慣をつけたほうがいいと思います。

荻上:厚労省が呼び掛けている37度5分以上の熱とか、そうした判定の呼びかけについていかがですか?

岩田:まあそんなに悪い事ではないと思う。

荻上:クルーズ船以外のパートでは、現状のものを継続していくというフェーズが必要になってくるわけですね?

岩田:そうですね。コロナでひとつポイントとなるのは、これまで感染症というと、「早期発見、早期受診」早めの受診、早めの治療などとよく言われますが、コロナに限定して言うと、まず、これといった治療法が確立されていないことと、それから軽い症状で5日ぐらい続くことが多くて、そのまま治ってしまう人が大多数なので、早めの受信ではなく、発症したらゆっくり家で休むと。で、すぐには病院に行かないと。5~6日経って、息が苦しくなる人が少数いらっしゃるので、そういう方はすぐ病院に行く。そうでなく治ってしまう場合は勝手に治してしまう。これまでの感染症とは、異なるタイプの対応になるので、慣れは必要かと思います。

荻上:また、かかったと思ったら、マスクを装着したり人に会わないといった対策も有効でしょうか?

岩田:一番いいのは家から出ないことですね。ちゃんと休むというのが大事だと思います。

荻上:今回新型コロナウィルスが重症化する方は、高齢者や持病がある方がよりリスクが高いといわれていますが、こういう方にも特に注意喚起が必要になるということでしょうか?

岩田:高齢者といいますが、実際にデータを見てみると60代とか、必ずしも我々の言う基準の高齢者というわけではない。比較的若い方、寝たきりの方というわけでなくて、街を闊歩して、仕事をされる方も重症化されますので、なかなかこういう方が重症化しやすいと規定しにくいところがあります。

▼今後の行政への期待と課題は?

荻上:この新型コロナ対策、今後行政に期待することは何でしょうか?

岩田:なんといってもCDCを作ること。日本にCDCがないのは非常に世界的に見ても珍しい。基本ができていないと応用問題も解けませんので。

荻上:CDCとは、疾病予防センターのようなものを作るということですか?

岩田:感染症の専門機関で、ようは、官僚がやるのではなく、専門家が、専門的な知見から感染対策をするという、世界が標準的にやってるようなやり方は、日本も踏襲すべきだと思います

荻上:またそういったような機関を作るということが今回の反省材料、あるいは現在進行形でそうしたものを設置することも、これからでも重要なんでしょうか

岩田:とても大事ですね。残念ながら日本ではこれまでにもSARDSとか新型インフルとか、この CDC を作ったらいいというチャンスを、何回も得ているにも関わらず、結局対策が上手くいったんじゃないのというような、なあなあの評価で、結局現状維持、というのを繰り返してきたわけです。今回はどんな結果になるとしても、明らかに構造上の問題がはっきりしたので、あまり「よかった、よかった」でおしまいにせずに、もう少し根本的な改善にもっていけたらいいかなと思います。

荻上:確認ですが、CDC=疾病対策センターのようなものが、より機能するような状況を作らなければいけないということですね?

岩田:機能させるというか、日本にはありませんので、まずは作るということが大事です。もちろん、それは形だけではなく、形だけの第2厚労省のような役人の天下り先にしてはだめです。

荻上:わかりました。ありがとうございました。

 

 

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