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あなたのマスク、肝心なときに役に立ってる? 大西一成さん(聖路加国際大学大学院准教授)

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
2月15日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、聖路加国際大学公衆衛生大学院の准教授・大西一成(おおにし・かずなり)さんをお迎えしました。大西さんの専門は公衆衛生学、環境疫学、気候変動による健康影響調査など。現在は医学と気象・環境学を結びつけた多角的なアプローチで研究を行なっています。そんな大西さんに今回伺ったのは「マスク」の話。いま新型コロナウイルス感染症(COVID−19)が広がる中で、ドラッグストアやコンビニエンスストアではマスクが品切れ状態になっています。もうスギ花粉も飛び始めているようですからマスクがないと不安ですね。でも、ちょっと待ってください。マスクがあればそれで本当に安心なのでしょうか?

史上初のマスク専門書を出す


大西さんは1978年、鳥取県生まれ(見た目は大学生のようにお若い!)。岡山大学医学部大学院でアレルギーや免疫学などについて研究。2008年から鳥取大学医学部大学院で大陸から飛来する黄砂や大気汚染物質の健康への影響について本格的に調査を始めました。そうした中で興味を持ったのが「マスク」の効用でした。大西さんは2009年から独自に調査・研究するようになり、学会の講演会やホームページなどで正しいマスクの活用法の話をしてきました。もう10年以上になります。それでもマスクの正しい知識は、医療関係の仕事に関わっている人たちの間でもまだまだ浸透していないそうです。世間一般にはほとんど理解が進んでいないといっていいでしょう。

そこで大西さんは、去年(2019年)11月、史上初(?!)のマスクの専門書『マスクの品格』(幻冬舎・1200円+税)を出版しました。一般の人でも読めるように書いてありますが、職務上マスクの着用が必要な人にこそ正しい知識を身につけてほしいという思いで書いたそうです。マスクのことだけでよく200ページ以上も書けましたねと伺うと、最初に書いた原稿はその倍以上あったそうです。

「ウイルスや大気汚染が体に入ってくるのを防ぐためにマスクをつけることが日本では一般的になっていますけれども、正しく選んで正しくつけるということがされていません。これでは本当にウイルスが猛威を振るったときに『マスクは最後の砦としての機能を果たさない』と言われてしまいます。そういうことを危惧してこの本を出しました。ウイルスが猛威を振るう前に知識を付けて備えておくことを意図した本だったんですけど、あまりにも早くこういうこと(新型コロナウイルスの感染拡大)になってすごく心配しているところです」(大西さん)

「大西先生は電車に乗ってマスクをしている人を見ると気になるでしょう。『はい、みなさん注目してください。いまから正しいマスクのつけ方を1分間で…』ってやりたくなるんじゃないですか?」(久米さん)

「やりたくなります(笑)。みなさん、上と下を逆に付けていたりとか。あのマスクはこのメーカーだけど隙間ができちゃってるなとか」(大西さん)

「メーカーによっていろいろあるんですか」(久米さん)

「ありますね。もう大体のマスクは購入して調べたんですけど、良し悪しがあります。フィルターの性能は担保されているんですけど、顔にフィットしやすいデザインというのはやはりメーカーによってそれぞれ特徴があります。その中で私は自分の顔に合うものを選んでいます」(大西さん)

マスクの「漏れ率」は80%!


おそらく多くの方がマスクを買うときに注目するのはフィルターの性能でしょう。テレビCMや広告でも強調されるのそこです。パッケージに「99.9%粒子カット」と書いてあると、これならウイルスも花粉もブロックできると思いますよね。ところがここが落とし穴。フィルターの性能と、実際に着用した状態で粒子をブロックできているかどうかは、別の話なのです。

着用したマスクと顔の間にわずかな隙間があれば、どんなにフィルターが高性能でも、粒子が内側に入り込んできます。大西さんは、マスクの外側に浮遊している粒子の数と、マスク内の粒子の数を計測して、外側の粒子がどれくらいマスクの内側に入り込んでいるかを統計解析しました。これをマスクの「漏れ率」といいます。

225人の人にドラッグストアやコンビニエンスストアで売られているマスクを着用してもらって調べたところ、漏れ率はなんと平均86.3%でした。つまり、マスクをつけていても、外に浮遊している粒子の80%以上がマスク内に入ってきているということです。驚いたことに、漏れ率100%の人が126人もいたそうです。マスクをつけてはいてもまったく機能していない。

マスクのパッケージをよく見ると、「マスクは感染(侵入)を完全に防ぐものではありません」とちゃん書いてあります。すごく小さい文字ですけど。フィルターの性能と実際にブロックできているかは別の話というのは、こういうことです。

感染防止なら「防塵マスク」しかない


上の写真の中で、左上にある白いマスクはドラッグストアなどでよく売られているもので「衛生マスク」といいます。おそらく多くの方が「マスク」と言って思い浮かべるのがこのタイプ。実際に使っている方も多いでしょう。いまは実にたくさんの種類が市販されていてフィルターの性能はよくなっています。でも着用すると鼻や頬との間にどうしても隙間ができてしまうので、漏れ率は80%以上になってしまうのです。衛生マスクは、自分の菌やつばを外に飛ばさないためにつけるものなのです。ですからインフルエンザに感染した人が周りの人にうつさないために着用するのは十分有効なのです。でも、外から粒子の侵入を防いだりウイルスから身を守るためには不十分だということです。

衛生マスクの隣りにある青いマスクは「サージカルマスク(医療用マスク)」。外科医が手術室などで着用するもので、フィルターは市販のマスクよりも高性能です。でも、これも機能としては衛生マスクと同じです。医療用ということで感染症が防げるように思われるかもしれませんが、先の衛生マスクと同様、その目的はあくまで自分の菌やつばを外に飛ばさないためのもの。外に浮遊しているウイルスの侵入を防ぐにはこれも不十分です。

この写真に写っているもうひとつのマスク(黄緑色のもの)については、もう少しあとでご紹介します。


外からウイルスが侵入するのを防ぐのに有効なのは、上の写真のようなカップ型の「防塵(ぼうじん)マスク」です。フィルターが高性能で、なおかつ顔にフィットするようにつくられています。代表的なのは「N95」(アメリカの規格)や「DS2」(日本の規格)というものです。これからスギ花粉のシーズンになったときに症状をやわらげるのなら、やはり選ぶべきはこのタイプです。これもドラッグストアやインターネットで市販されています(もっとも、いまはこれも品薄もしくは品切れ状態ですが)。

ただし、防塵マスクを着用していれば安全だと決めつけるのは危険です。防塵マスクを着けていても油断は禁物。自分の顔にフィットするものを着用していなければ、結局、マスク内に粒子が侵入してくるのです。自分に合った防塵マスクを見つけなければいけません。

衛生マスクはコロナ対策に「無意味」なのか?


ここまでの話を読んで、衛生マスクは新型コロナウイルス対策には無意味だと思った方も多いかと思います。特に最近、WHOが「マスクは新型コロナウイルスの感染予防にならない」と発表したことで、テレビなどでもそのように伝えるところが出てきました。でもそう考えるのは乱暴だと大西さんは言います。

確かに新型コロナウイルスの感染は徐々に広がってきていて予断は許しませんが、日常生活の中で流行しているという状況ではありません。こうした中では、防塵マスクでないと感染してしまうということはありません。衛生マスクでも、例え「漏れ率」80%だとしても、20%ほどはウイルスの侵入を防いでくれるので、その分リスクも下げられます。また、衛生マスクには喉を保湿する効果もあります。喉が保湿されていればウイルスが侵入しても感染のリスクは下がります。ですから、衛生マスクは新型コロナウイルス対策としては不十分ではありますが、「まったく意味がない」とも言い切れません。繰り返しになりますが、また流行していないいまの状況であれば、衛生マスクでも予防に一定の効果はあるといえます。ただし正しく着用することが大事です。

新型コロナウイルスに感染したときのマスク


もしこの先、自分が新型コロナウイルスに感染してしまった場合、周りの人にうつさないことが大事です。自分のウイルスを拡散させないためには衛生マスクが効果があるということでしたが、新型コロナウイルスの場合は違うと大西さんは言います。

衛生マスクを着用して咳やくしゃみをすると、わずかに隙間ができるので飛沫が飛び出してしまいます。それでもその範囲は2mほどなので、普通の風邪などでしたら衛生マスクで十分です。でも、新型コロナウイルスに感染した場合、患者の近くには当然ケアする人がいるはずです。2mもウイルスが飛び出せば感染が広がるのは目に見えています。

その場合は、衛生マスクよりももっとウイルスを外に出さないマスクがあります。前に載せた衛生マスクの写真の中に一緒に写っている黄緑色のカップ型のマスクがそれです(特に名称はまだないそうです)。これは外からの空気はマスク内に入ってきますが、患者が吐く息はマスク外に出さない仕組みになっています。なおかつ顔にフィットする形になっているので、感染拡大に効果があります。

「もし新型コロナウイルスに感染してしまったらこうしたマスクをつけてほしいです。また、新型コロナウイルスの感染現場に入るような仕事の方も、ぜひこうしたマスクをつけてほしいと思います」(大西さん)

大西一成さんのご感想


今回はマスクについて一般向けの話がメインになっていたので、最初に「衛生マスク」の付け方が出てきましたが、いまはまだ日常生活で衛生マスクで過ごしたとしてもすぐに感染したり人が死んだりといった状況ではないので、付けるときにはきちんと付けましょうという話です。

ただ、感染力の強いウイルスのある現場に行くような人がいまの日常生活と同じような感覚のままで入ってしまうと感染の危険性は高まってしまいます。それが今回の新型コロナウイルスの感染が広がっている要因のひとつなので、横浜に停まっている船とか現場を取材される方も含めて、いまは入国拒否の対象の地域もありますが中国からの観光客に対応する可能性のある人にとってはきちんと「防塵マスク」をつけること。その防塵マスクも自分の顔に合ったものをきちんとつけるということをしっかり徹底してほしいです。それが感染を防ぐひとつの手立てになると思っています。

現状では衛生マスクで確実に防塵できるものはないので、花粉症の症状をやわらげたいとか、インフルエンザや風邪にかかりたくないというのであれば、いまの状況では防塵マスク一択しかありません。私は確実に防塵できる衛生マスクをつくりたいと思っているんです。

きょうは久米さんが『マスクの品格』に付箋を付けて予習していただいていたので話がしやすかったです。ありがとうございました。


「今週のスポットライト」ゲスト:大西一成さん(聖路加国際大学大学院准教授)を聴く

次回のゲストは、ジャーナリスト・小西克哉さん

2月22日の「今週のスポットライト」には、アメリカ大統領選挙を取材するようになって30年以上というジャーナリストの小西克哉さんをお迎えします。混戦模様の民主党候補者争いは、22日に予備選挙の第3弾・ネバダ州の党員集会。ここまでの動きと今後のポイントをお聞きします。

2020年2月22日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200222140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)