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地名に秘められた日本の心~ロバート・キャンベルさん

コシノジュンコ MASACA

2019年2月2日(日)放送
ロバート・キャンベルさん(part 2)
アメリカ、ニューヨーク出身。近世文学から明治期文学を専門とする日本文学研究者。東京大学名誉教授、国文学研究資料館館長。TVのMCやコメンテーター、新聞や雑誌の連載・書評など様々な分野で活躍していらっしゃいます。

出水:キャンベルさんと話してると楽しい! 私たち日本人でありながら、そこまで思って生きてるわけじゃないから、生きてる楽しみを発見してくれるのよね。心って見えないから、それを見えるものにしてくれる。

RC:クールJAPANって言うけれども、それは氷山の一角なんです。いろんなイメージや感性をもっとmining=炭鉱の中に入って掘削していく。発掘していくストーリーやイメージや音や味はもっとあるということを、みんなと一緒に探っていく。

JK:興味を持つってことよね。まだまだ日本って神秘的ですよね。その名残ってあるじゃないですか。いつかロバート・キャンベルさんに案内してもらおうと思ってて。「下町には江戸の名残がいっぱいあるよ」って言うから。江戸ツアー! 歴史散歩!

RC:そうですね! ぜひ連れて行きたいな。江戸時代の初めぐらいに「切絵図」といって、多色刷りのカラフルな木版刷りの地図があるんですね。ちょうど今の目黒駅を権之助坂から降りて行って、目黒川に行きます・・・ちょうどホリプロが右側にあるあたりに、広重の時代に「富士見茶屋」っていうのがあったんです。すごい急峻な坂道で、ちょうど真ん中に茶屋がある。息を整えないと登り切れないんですね(笑)でも、富士山が見えるっていうのが重要で、すごい名所だったんです。

JK:そこでお団子食べて(^^)それが浮世絵にあるわけですね。

RC:広重の『名所百景』にあるんです。でも、それは地名にもあるんです、富士見坂って。日本中に富士見坂っていうのがいっぱいある。日本ほど地名がある国は地球上にないんです。ものすごい数! 実は正確に数えきれない。なんとか坂とか、なんとか岬とか、落窪とか落合とか河が一緒になっているところとか・・・

JK:全部そのときの名残のまんまなんですね!

RC:どこにも水がないのに「島」がついていたり、中洲の「洲」だったり、ものすごく多様。いま銀座は一丁目から八丁目までですが、「鍋町」だったり「烏森」だったり、「尾張町」だったり、もっと細かくあったんですね。文学や人と心の造形が地名にはあったんです。

JK:今年も外国人がたくさんいらっしゃると思うんですけど、外国人のためにすごい地図を作りましたよね?

出水:即位の儀に来賓された方々に配布された、記念の地図ですね。

RC:皇居を中心に、現在の東京の中心部を1/10000にして・・・ちょっといい紙を使って、色鮮やか。すごく楽しいんですよ! いま見ていただいてるのは英語版です。

JK:これ英語のお勉強にもなるわね。ナントカ橋が英語で書かれてたり。

RC:実は私、3~4年前に国土地理院の有識者会議の委員になっていて、外国人にもわかりやすい地名を考える委員会をしたんです。隅田川をどういう風にローマ字で表記するか? ヘボン式とかいろいろあるんですけれど、まずそのルールを決める。もうひとつは墨田川をSumida Riverにするのか、SUmidagawa Riverにするのか? すごい白熱した議論を1年ぐらいしたんですが(笑)たとえば外国人が知らない土地に行って、道端で高校生とか叔父さんに道を聞いたときに、地名を完璧な日本語で発音していない。相手に通じるようにしなくてはいけない。Sumida Riverだと、Riverがわからないこともあるけれど、Sumidagawa Riverだと「川」と「River」が重複してしまう。

出水:墨田川川になってしまうんですね(笑)

RC:そう。僕は美しくないと思うんです。そこは重複を避けるようにして、できるだけ「川」とか「橋」は除いてRiverとかBridgeとかを入れるようにする。ただ、例えば富士山はMt. Fujiと決まっているわけですけど、じゃあ神奈川県の大山は・・・Mt. Oh?

出水:それは誰もわからないですね!

RC:わからないですよね(笑)具体的な話ですが、一音拍の「おお」とか「おう」とかは聞き取れないでしょうから、そこはyamaとかkawaとかをつけよう、という風にしました。

JK:これは東京ですけれども、京都もできますか? 京都も外国人すごく多いんですよ。

RC:作ろうと思えばできます。京都にはすごくいい地図がありますよ。でも今回国土地理院が作ってくれたのは、非常に正確で、一目で全部わかる。でねコシノさん、これは江戸時代につながるんですよ。江戸時代の鍬形蕙斎という浮世絵師が『一目江戸図屏風』というのを作っているんですが、鳥観図で同じように絵屏風を作っているんです。

JK:もっとわかりやすい! 上から見た図だけど、斜めから見てるから立体的。高い家なのか、低い家なのかぜんぶわかりますね。

RC:これ18世紀の終わりぐらいに作っているんです。空間をこういう風にとらえる感性が2~300年前から日本人にはあるんですね。

JK:スカイツリーの地下にありますよね? あれ立派にできてますよ! 私、スカイツリーに登るよりもそれに感動しちゃう(^^)

RC:あれは素晴らしい復刻です。コシノさん、江戸時代に通じてますね(^^)日本語の地名は、小字のところまで行くと本当に数えきれないぐらい・・・例えば「中村」という地名は一番多くて、いろんなところにあるんです。ちょっとした筋道の中に入ったところとか。あと、坂道にはもれなく、これは坂なのかな?と思うようなところにも名前をつける。今の銀座は、江戸初期までは「前島半島」だったんです。銀座通りの中央通りは一番岩盤がしっかりしていたところ。そういう風に細かく地名があるんです。1億以上!

JK:1億?! 東京??

RC:いや日本列島、全国ですね。そこで生まれた人の名前とか、あと文学者からすると、心の情景がひとつひとつにある。たとえば「藍染川」というのが大宰府にあって、これも万葉集に謡われているんですが、藍という色が移ろいやすいということから、そこにない恋人のことを歌っている。場所と心、地名と心が結びついているんですね。手と手を一緒に取っていく「手取川」だとか「笛吹川」とか。最も美しい地名だと思うんです。

JK:状況が絵に描けますもんね。本当にそれを絵にしたらかわいい(*^^*)ねえキャンベルさん、これはマサカだった!というエピソードはありますか?

RC:最近すごく感じているんですけど・・・国文学資料館という1000年以上の文献資料を集めて、アーカイブして発信している大学共同利用機関の浣腸をしているんですね。ありとあらゆるもの、無尽蔵の書物を処理して発掘しているわけですが、2年前からアーティスト・イン・レジデンス、つまりアーティストを呼んで、書物に触れてもらってアートを作ってもらうという「アート共創ラボ」をやっているんです。研究者たちが研究している3~400前の書物を、舞台演出家の長塚圭史さんが来て芝居を作ってくださった。長塚さんは江戸時代の書物を手に取ったことはなくて、手に持っただけで、ページをめくっただけで興奮するんです!

JK:わあ~!

RC:彼はものすごくブッ飛んだ芝居を作ってくれて、今は演出を考えてくださっているんですけれど、そこまでは想定内。そこで私がマサカと思ったのは、アニメーション作家や小説家、現代美術の作家と触れ合うことによって、私も含む研究者の研究そのものが深まるんです。つまりアーティストが、本当は知り尽くしているはずの専門家に気づかせてくれる。たとえば、山村浩二さんというアニメーション作家が、19世紀の初めに作られた江戸時代の絵本にぞっこん惚れ込んで、何度も何度も描線をなぞって、そこからオリジナルな短編アニメーション『夢見の絵』を作ったんですね。彼はどうやって描線をなぞったのか、そのプロセスを見ることによって、元の作品の隠れた性質、研究者の目からは読み解けないようなものが見えてきたんです。だからアーティストと関わることによって、専門家の私たちがひっくり返るような発見が生まれる!

JK:ふしぎ発見!

RC:まさに(笑)私が10年、20年東京大学の教壇に立っても気づかないようなことを、小説家だったりアニメーション作家に説明して、その人の感性や気づきから発見がある。だから研究者の世界はすごく狭いかもしれないけれど、文化だったり、立場だったり、地域の中で当たり前だと思っていると、地球の裏側から降り立ってきた他者がぽーんと、腕のあるフロントランナーがそこに入ってくることによって、全然変わってくる。これからの時代はAIだったり、既定路線で与えられてきた知識や技術で生きていくだけではなく、どうやって火花を起こすかというのが勝負どころ。これからの私たちはしなやかな感性を持たなくてはいけない。そういうことを感じています。

=OA楽曲=

M1. 青い闇の警告 / 井上陽水

「コシノジュンコ MASACA」
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