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「地震予知」に異議あり! 地震はいつでもどこでも不意打ち ロバート・ゲラーさん(東京大学名誉教授)

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
1月18日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、地震学者で東京大学名誉教授のロバート・ゲラーさんをお迎えしました。

ロバート・ゲラーさんは1952年、アメリカ・ニューヨーク市生まれ。カリフォルニア工科大学から同大学院に進んで地震学を研究。スタンフォード大学の助教授を経て、1984年に東京大学初の「任期なし」の外国人教員として招かれ、来日しました。専門は地震波動論と地球内部構造の推定。1991年「日本の地震予知計画は、成功の可能性はない」と厳しく批判した論文をイギリスの科学雑誌『ネイチャー』に発表、波紋を呼びます。その後も一貫して、地震予知研究や予知を前提にした政府の防災対策には批判的な立場を取っています。99年に東京大学大学院理学系研究科の教授となり、2017年に定年退職。東京名誉教授となったいまも鋭い舌鋒は衰えず、新聞・テレビ・SNSなどで積極的に発言。『日本人は知らない「地震予知」の正体』(双葉社・2017年)、『ゲラーさん、ニッポンに物申す』(東京堂出版・2018年)といった著書もあります。

「予知」と「予測」


1995年1月17日の阪神・淡路大震災から25年が経ちました。いま多くの人が気にかけているのは南海トラフ巨大地震や首都直下地震ではないでしょうか。今後30年以内にマグニチュード8~9クラスの南海トラフ巨大地震が発生する確率は70~80%、マグニチュード7クラスの首都直下地震は70%。政府の地震調査委員会はこのように想定しています。でも「この数字、どこまで信憑性があるの?」と思ったことはありませんか。地震予知は果たしてどこまで可能なのでしょうか。

その話を進める前に、ゲラーさんは「まず『地震予知』と『地震予測』の違いを知らなければいけない」と言います。
予知というのは、地震が「いつ」「どこで」「どのくらいの規模で」起きるのかを予測すること。例えば、「3日以内にマグニチュード8の地震が東海地方で起きる」というような、具体的で短期的な予測が予知です。これがかなり精度よく予測できるようになれば、「地震予知はできる」ということになります。一方、地震予測というのは、地震調査委員会が行っているような確率論的な予測です。ゲラーさんはこのどちらに対しても批判的です。

「地震予知」は幻想か?!


地震予知(短期的な予知)のカギを握るのが「前兆現象」です。これまで多くの地震学者が、予知に有効な「前兆現象」を探してきました。体には感じないほどの微小な振動をはじめ様々なことを観測し、膨大なデータを集め、その中から地震発生との関連を探る研究がずっと続けられています。ところがいまだに成功していないとゲラーさんは言います。前兆だと思われる現象があっても地震が起きないケースはたくさんあります。反対に、前兆現象だと思われることが起きていなくても地震が発生したケースもたくさんあります。また、地震のあとによく「地震雲が現れた」「普段おとなしいうちの犬がやたらと吠えていた」「井戸の水が急に減った」といったことが報告されることもありますが、いずれも地震の「前兆現象」として科学的に認められたものはいまのところありません。つまり短期的な予知はできない、というのがゲラーさんの考えです。

では確率論的な地震予測はどうでしょう。これにもゲラーさんは否定的です。南海トラフ地震も首都直下型地震も近いうちに起きることは間違いない。それはゲラーさんも認めています。ただし、ここで言う「近いうち」とは「明日」かもしれないし、「20~30年後」かもしれないし、「100年後」「1000年後」かもしれない。46億年という長い時間を刻んできた地球にとっては、これくらいの幅も「近いうち」の範囲なのだそうです。

それでも予知を捨てられないワケ


「本当は多くの地震学者は予知はできないと分かっている。マイクやカメラがないところではみんなそう言っている(笑)。でも、予知はできないと言うと研究予算がもらえない。だから、予知はできないとは言えない」(ゲラーさん)

1978年、研究者たちによる「東海地震はいつ起きてもおかしくない」というレポートを受けて、「予知は可能」を前提とした「大規模地震対策特別措置法(大震法)」が成立。毎年100億円規模の予算が投じられてきました。阪神・淡路大震災を契機に政府機関として地震調査研究推進本部が設立され、体制を強化。さらに東日本大震災の翌年には予算が年356億円に達しました。「地震予知のため」と言えば莫大な研究予算が獲得できる。それが日本の地震研究の構造的問題だとゲラーさんは指摘します。間違いだと分かってもいったん進み出してしまうとなかなか後戻りできない。日本の組織に共通する話です。

地震は「いつでもどこでも不意打ち」


実は政府も地震予知に「白旗」をあげています。2017年、内閣府・中央防災会議の調査会は「南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性について」という調査報告書を発表しました。この中で次のようにことが書かれています。

『現時点においては、地震の発生時期や場所、規模を確度高く予測する科学的に確立した手法はなく…(中略)…確度の高い地震の予測はできないのが実情である。このことは、東海地域に限定した場合においても同じである』

ところが大震法は廃止されていません。約40年ぶりに内容が見直されましたが、対象を東海地震から南海トラフ地震に拡大しました。これでは「確度の高い地震の予測はできないけど、南海トラフ地震の予知は可能です」と言っているようなものです。

「政府の言っていることは国会答弁のようなもの。ウソではないけれど、国民をミスリードしています。その政府発表をあたかも真実のように垂れ流すマスコミも、戦争中の大本営発表と同じ」(ゲラーさん)

ゲラーさんは、地震予知の研究をまったく否定するわけではないけれど、そこにかける予算と労力をもっと基礎研究と防災対策にかけるべきだと主張しています。そして、いまの科学では地震予知はできないということを認めて、地震のハザードマップで特定地域の危険性をことさらに煽るのではなく、日本全国に同じようにリスクがあることを伝えなければいけないと言います。

「南海トラフ巨大地震や首都直下型地震地震のリスクはないとは言いませんが、地震はどこでも起きる。そしてどこにに来るか分からない。『いつでも、どこでも、不意打ちで』。それが地震です」(ゲラーさん)

ロバート・ゲラーさんのご感想


大変楽しくて、有意義な対談になりました。久米さんとは、期待していたよりすごく突っ込んだ話ができました。大変ありがとうございました。



「今週のスポットライト」ゲスト:ロバート・ゲラーさん(地震学者)を聴く

次回のゲストは、東京大学生産技術研究所教授・腰原幹雄さん

1月25日の「今週のスポットライト」には、年の木造建築に取り組んでいる東京大学生産技術研究所教授・腰原幹雄(こしはら・みきお)さんをお迎えします。いま世界各地で建設が進む「木造の高層ビル」について伺います。

2020年1月25日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200125140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)