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持続可能な世界

森本毅郎 スタンバイ!

忙しい朝でもニュースがわかる「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)8時からは、話題のアンテナ「日本全国8時です」

全国ネットで、日替わりゲストとともに放送。
毎週木曜日は、東京大学名誉教授、月尾嘉男さんの「雑学コラム」!

月尾嘉男

解説は東大名誉教授の月尾嘉男

12月26日(木)は「持続可能な世界」

★2019年は「持続可能」

今年最後の回となりましたので、今日は1年を振り返ってみたいと思いますが、「持続可能」という視点から眺めてみると、世界の動向が見渡せると思います。

今年、持続可能という考えが話題になったのは、地球環境の持続可能について世界規模で議論する会議が2度開かれたからではないかと思います。

最初は9月にニューヨークで開催された「国連気候行動サミット」でした。

★国連気候行動サミット

地球温暖化に強い危機感を抱くグテーレス国連事務総長が世界に呼びかけて開いた国際会議ですが、5年前には「国連気候変動サミット」でしたから、それを「行動」に移す時期だという意思が会議の名称に示されています。

同時に話題になったのはスウェーデンの16歳の少女グレタ・トゥンベリさんのわずか5分間の演説でした。持続可能という言葉は使っていませんでしたが、「経済発展がいつまでも続くというお伽話」とか「現在の排出量水準を続けていけば、8年半以内に温室効果ガスの累積排出量の上限に到達してしまう」というような表現で、現在の世界の社会システムが持続可能ではないことを強調しました。

さらに12月にスペインのマドリッドで開催された、「COP25(国連気候変動枠組条約第25回締約国会議)」にも出席しましたが、これは政治的な政策を議論する会議のため、彼女の存在は大きく取り上げられませんでしたが、2回の会議で彼女の影響力の大きさを示したのが「フライトシェイム」という新語が登場したことです。

日本語では「飛び恥」と訳されていますが、飛行機に乗ることは恥ずかしいことだという雰囲気が先進諸国の中で出てきました。

彼女は9月にヨーロッパからアメリカに大西洋を渡る時も、12月にアメリカからヨーロッパに向けて大西洋を渡る時もエネルギー消費の大きい飛行機を使わずヨットを使用したのですが、その影響で飛行機に乗るのが恥ずかしいという雰囲気が社会に出てきました。

早速、オランダの航空会社KLMはテレビジョンで「飛行機の代わりに電車で移動することはできませんか?」というコマーシャルを放送し、500キロメートル以下の路線の便数を減らし、鉄道に移していく戦略をはじめています。

さらにスイスの金融機関UBSの行った世界8カ国の調査では、回答者の37%が過去1年間に飛行機を利用する回数を減らしたと回答しています。

同じように国際的な場で「持続可能」を強調されたのが、今年のノーベル化学賞受賞者の吉野彰博士です。

★吉野彰博士の「持続可能」

受賞決定以後の記者会見や講演などで「(今回の受賞は)環境問題の解決や持続可能な社会の実現への期待があり、重責を感じている」「環境問題は守りのイメージが強いが、攻めの姿勢で理解しないと持続可能な社会は生まれない」と発言され、発明したリチウムイオン電池は、小型で高性能の電源を発明したという以上に、環境問題に貢献する技術であることを強調されています。

地球環境の持続だけではなく、一般社会の持続を維持することも重要ですが、それを指摘されていたのが、12月初めにアフガニスタンで武装集団の襲撃によって亡くなられた中村哲さんです。

★中村哲さんの「持続可能」

1984年から現地で医療活動をしてこられたのですが、1992年のインタビューで「1988年にソビエトがアフガニスタンから撤退したことを契機に、国連本部が難民の帰還計画を作成し、それに日本政府が飛びついて予防接種をし、1年分の食料と種籾を渡して出身地に帰還させる20億円の大規模プロジェクトの実行を決定した。しかしアフガニスタン国内の混乱から、本格的な活動をしないまま数年後に資金援助を凍結してしまった」「この日本の国際情勢認識の甘さや情報収集の不十分さは現地で失笑を買っている。

一方、欧米の支援は金額も人数もわずかだが、30年から40年という単位で現地住みついて支援を行なっている」と述べられ、日本政府の構想が持続せず、持続可能ではなかったことを批判しておられました。

★日本政府の「持続可能」

それに関連して、日本の政策が持続可能ではないのではないかと心配されているのが先週決定された政府の2020年度予算です。

高齢者の増加によって社会保障費が増えることと、今年は自然災害が多発したために災害復旧と防災の予算が増えたこともありますが、昨年度より1兆2000億円増加し102兆7000億円となり、2年連続で100兆円を超えました。

経済成長は民間予測の0・5%を上回る1・4%と想定し、税収を63兆5000億円と多めに推定していますが、それでも不足分は国債を発行して借金で賄うことになります。

その結果、国と地方公共団体の長期債務残高という名前の借金の累積は、1100兆円を超え、GDPの2倍以上になります。

これは主要国ではイタリアがGDPの1・3倍、アメリカが1・1倍ですから、日本の2倍以上は異常な状態です。

最近、話題になっている国家の財政赤字を心配する必要はないという「MMT(現代貨幣理論)」によると、日本はその成功例ということになりますが、多数の経済学者が疑問を呈しており、日本の財政構造は持続可能性に疑問があるということになります。

最後に今年のスポーツ界のヒロイン渋野日向子選手の持続可能について考えてみたいと思います。

★渋野日向子選手の「持続可能」

今年5月の国内メジャー大会である「サロンパスカップ」で優勝した時の「日本人のメジャー優勝は久々です。ただ私でよかったのでしょうか?」とか、9月の国内メジャー第2戦「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」で5位になって年間賞金1億円を突破した時の「一億円といえば億万長者のイメージ、ご褒美には冷蔵庫を買いたい」という飾らない発言で一気に人気が出ました。

なんとなく無邪気な感じもしますが、青木翔コーチによると、練習の持続可能性は抜群で、今年だけでアプローチの練習に使うウェッジを6本もダメにしたとか、パッティングの練習は暗闇の中で灯りをつけて行うほどの持続精神があり、長期的にも、来年の東京五輪大会に出場して金メダル、再来年にはアメリカツアーに本格参戦、10年以内に海外メジャー大会すべてを制覇という持続可能な目標を設定しているそうです。

最近、日本でも頻繁に登場するようになったSDGs(持続可能な開発目標)だけではなく、社会のあらゆる面で持続可能は今後の重要なキーワードになると思います。

月尾嘉男の「日本全国8時です」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20191226080130

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