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精神疾患などの親を持つ子どものための『生きる冒険地図』 ▼人権TODAY(2019年12月21日放送分)

人権TODAY

毎週土曜日「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内で8時20分頃から放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

今回のテーマは、「精神疾患などの親を持つ子どものための『生きる冒険地図』」です。

知りたいの親の病名ではなくて、生活していくための知恵と工夫

ここ数年、精神医療や福祉の現場で、精神疾患の親を持つ子どもの存在に少しずつ光が当たるようになってきています。こうした子どもたちは、親から日常の世話をされず衣食住に困ったり、周囲の助けもなく我慢を強いられたりするような困難を抱えていることが少なくありません。

今回私が取材してきたのは、親が精神疾患などを患っていて、身近に頼れる大人がいない子どもたちに向けて生活を生き抜くための知恵や工夫を伝える本『生きる冒険地図』です。

精神科クリニックなどでの看護師としての勤務経験も長いという、この本を制作したNPO法人「ぷるすあるは」細尾ちあきさんに伺いました。

NPO法人「ぷるすあるは」の細尾ちあきさん

精神科の病院・診療所で働いていて、親御さんが心配だから付いてくる子どもたちとか、結構子ども連れで待合室で待ってるってことも多かった。子どもたちって親御さんの病名とかを聞きたいわけじゃない。それこそストレートで、「高校行くお金あるのかな?」とか、「いつなったら仕事行くようなるのかな?」とか、「遠足があるけど、弁当がない時どうしたらいいのかな?」とか。「弁当はコンビニで買って、お弁当箱に詰め替えて行ったらいいよ」みたいな感じで、子どもたちと一緒にいろんなことを考えて作り上げた知恵と工夫が『生きる冒険地図』です。

『生きる冒険地図』には、子どもだけの力で何とか暮らしている2人の小中学生が登場し、自分たちを助けてくれる道具や頼れる大人を捜す冒険に出るという設定で描かれています。文とイラストを担当した細尾ちあきさん自身も複雑な家庭で育ったそうで、試行錯誤してきた自身の経験も反映されているそうです。そして、支援機関で同僚だった医師の北野陽子さんが編集に参加し、この本を制作しました。

生きる冒険地図

 

地図にはどんなことが載っている?

例えば、
*親が食事を用意してくれない
→ 家電を味方につけるべし!炊飯器はこうやって使う道具なんだよ!
*おやつが食べたいなぁ…
→ サツマイモやジャガイモをラップで包んでレンジでチン!
*家族が誰も来られない学校行事
→ いっそのこと休んでしまおう!行かないことは逃げることじゃない。避難だよ!
…などとアドバイスしています。

具体的ケースが書かれている中で所々、細尾さんなりのメッセージが書かれている部分があります。
私が興味深いと感じたのは、「どんな気持ちがあっても大丈夫」というメッセージです。複雑な家庭で過ごしている子どもにとって、同情の言葉をかけられたり、「つらい経験が将来あなたを強くさせるよ」という根拠のないアドバイスは、本人に過度なプレッシャーをかけるだけの場合があります。そんな言葉は気にする必要がないし、スルーしてしまえと話します。

「君は生きていいし、夢見ていいし、親とは違う人生歩んでいいんだよ」という
メッセージって、想像力豊かな子どもにだからこそと届けたい。「自分が親を何とか引っ張っていかなきゃいけない」とか、「外に出たら、あなたがしっかりしなくっちゃね」という“呪いの言葉”みたいなことを散々大人はかけてくるけど、気にしないでいいと。君の人生だからと。だけど、すごく困ったら大人の機動力、経済力、検索力は使えって!大人をうまく使って生き抜け10代!って。

自分だけで抱え込まなくていい、味方になってくれる大人はたくさんいる。
アドバイスを求めた人と気持ちが通じないなんてことは、大人の世界でもよくある。
「あきらめて、4人目、5人目」とアドバイスします。

 

大人側のちょっとした工夫で、子どもはラクになる

大人が読んでも、気づかされる点が多そうです。
子どもの背景には何があるのか想像力を働かせて欲しいと言います。
大人側のちょっとした工夫で、子どもが躊躇している段差を取り除くことができる。
そのひとつのツールとして、この『生きる冒険地図』を活用して欲しいと言います。

例えば、忘れ物ばかりしていて、学校では子どもも「モゴモゴ」言ってる。先生が「また忘れ物して!」って怒る…。それってお互いしんどいじゃないですか。でも、この視点があれば、「もしかすると、準備する親御さんのサポートがないのかな?」って想像力が働く。学校って学びの場。鉛筆とか、消しゴムとかが入っていて誰でも使っていいボックス、手ぶらで行っても勉強はできるみたいなことができれば、そういう具体的なサポートって負担なくできるかなって。私自身小学生5、 6年生の時の先生が、そういう忘れ物ボックスっていうのを作ってくれていたんです。怒られなかったという経験って、私の足を学校に向かわせたんですよね。

文とイラストは細尾ちあきさん自身が担当。展覧会も開いている

+αの視点で、生活をよりよくしたいという意味を込めたNPO法人「ぷるすあるは」。
団体では、このように出版物だけではなく、子ども・親・支援者向けに病気の知識や相談先、制度などを発信するサイト「子ども情報ステーション」も運営しています。

また、12月22日(日)まで、東京・小平市の「ルネこだいら」で、細尾ちあきさんの絵画展『ココロがしんどくなる前に-だれでもだれかのサポーター』が開かれています。

(取材報告:TBSラジオ・ディレクター 瀬尾崇信)