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東京・東村山市のハンセン病療養所「多磨全生園」の歴史と自然を親子で学ぶ

人権TODAY

毎週土曜日「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内で放送している「人権トゥデイ」。

様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

今回のテーマは・・・東京・東村山市のハンセン病療養所「多磨全生園」の歴史と自然を親子で学ぶ。

 

担当:崎山敏也

 

東京・東村山市にある国立ハンセン病療養所「多磨全生園」は2019年で設立110年。記念事業として11月30日(土)、「親子で学ぶ多磨全生園」というイベントが開かれ、13組、31人の親子が集まりました。35万平方メートルと広大な多磨全生園にはおよそ250種類、3万本の樹木があります。全生園の豊かな自然と、その歴史を合わせて、親子で楽しみながら学んでもらおうと、東村山市と入所者の自治会、隣接する国立ハンセン病資料館の共催のイベントです。

この日は、資料館の学芸員がまず、ハンセン病がどんな病気なのか、患者が間違った政策で療養所に強制的に隔離されてきた歴史など基本的なことを説明しました。そして、講師をつとめるNPO「birth」の久保田潤一さんがこのイベントについて、「全生園の森の中で皆さんには探検をしてもらいます。探検をして、いろんなことを発見してもらうのがこのイベントの目的です。いろんな人たちのいろんな思いがこもった森がこの全生園の森です。さらに、そこに、東村山に昔から暮らしていた野生の生き物が住みついた、ということなので、世界中を探しても多磨全生園にしかない森がここにあるということなんです」と説明しました。

全生園の森について説明する久保田潤一さん

参加者は、久保田さんたち「birth」のスタッフの案内で森の一部を見て回りました。子供たちはさっそくイナゴやバッタを見つけたり、様々な葉っぱや木の実などについて、久保田さんたちに教えてもらっていました。

そして、13歳だった1940年から80年近く暮らしてきた入所者自治会長の平沢保治さんの話を聞きました。平沢さんは、ハンセン病だということで差別された恨みを恨みで返してはいけないという考えもあり、「この土地に、木を植えて、地域の人たちに色々いじめも受けたけど、それを恨むんじゃなくて、ありがとうという感謝の印として、緑の森を残そうとみんなしたんです。近くの学校、1年生、2年生はね、花を見に来たり、虫を捕りに来たりします。カブトムシがいっぱいいるんだよ、夏は」と語りかけていました。

森に込められた思いや、差別や偏見の歴史を語る、入所者自治会の平沢保治さん

桜並木には「いつかは偏見や差別を乗り越えて、一緒に花見をしたい」という思いが込められていますし、それぞれの故郷の県の木を寄贈してもらった樹木や、入所者が「自分の生きた証」として、お金を出して一人で一本ずつ植えた木など、ほんとうに様々な思いがこもっています。

平沢さんはまた、全生園の中には様々な史跡もあると話しました。子供の患者のための学校の跡の石碑や、逃走防止用の堀を自分たちで掘った作業で出た残土を積み上げ、そこに登って遠くの故郷に思いをはせた「望郷の丘」など。神社や図書館として使われていた建物、独身男性の入所者の寮だった建物なども残っています。中には入所者が自分たちで建てたものもあります。

チェックポイントの一つ。旧図書館(現在は理美容室として使われている)

参加者は話を聞いた後、史跡と様々な自然をチェックポイントにして、写真に撮り、どれだけたくさん回れたかを競いました。どんぐりや葉っぱ、バッタやセミの抜け殻など持ち帰れるものは持ち帰り、そうでないものは撮影します。広大な全生園の中を地図を持ち、親子で協力しながら探します。戻ってきたら、採点。子供たちはみんな得意げに、持って帰ってきた葉っぱや、取ってきた写真を東村山市の職員やNPO「birth」のスタッフに見せていました。そして、表彰式が行われて、終わりです。

二人の子供と一緒に参加した母親は「たくさん歩きました。中広くて、子供と回れて楽しかったです。いい勉強になりました」と話し、子供は「虫とか植物とかがいっぱいあったり、神社もちゃんとあったからよかったです」と感想を話してくれました。また、一家で参加したお父さんは「全生園の中に入るのは初めてです。何度かそばは通ってはいたんですけど。こんな森があって、楽しかったです」と話し、女の子は「いろんな施設があることがわかった。石碑とか写真をいろいろ撮りました」、男の子は「山道っぽい場所が楽しかった」とそれぞれ感想を話してくれました。

多磨全生園の入所者自治会は、この多磨全生園そのものを生きた証として、「人権の森」として残し、地域の人の楽しむ場、ハンセン病の歴史を物語る場として残す運動を行っていて、東村山市も協力しています。現在、入所者は140人ほど。平均年齢は86歳。亡くなっても故郷の墓に入れない方は園内の納骨堂に眠っています。土地を所有するのは国ですが、強制隔離と同じような過ちを繰り返さないためにもこの「人権の森」構想に、国も取り組むことが求められていると思います。