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患者が望む死に方を叶える 訪問診療医・小堀鷗一郎さん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
11月30日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、在宅での終末期医療に携わる訪問診療医の小堀鷗一郎(こぼり・おういちろう)さんをお迎えしました。外科手術の中でも難易度が高い食道がんの専門医として、大学病院と国立の医療機関で40年間メスを握ってきました。「手術室にいることが自分のすべて」だった小堀さんですが、現在は、病院から半径15kmも範囲を四輪駆動車で訪問する日々を送っています。そしてこれまでに400人近い患者の最期に関わってきました。

全く知らなかった在宅医療の世界


小堀鷗一郎さんは1938年、東京都生まれ。81歳。背が高くて、若々しくて、とてもダンディー。週に2回、5kmずつ走っているそうです。祖父は明治の文豪で陸軍医の森鷗外。でも医学を志したきっかけは鷗外ではなく、中学の友人の勧めだったそうです。東京大学医学部を出て東大病院の外科医となり、その後、国立国際医療センター(現・国立国際医療研究センター)の院長を務めました。

65歳で定年退職し、埼玉県新座市にある堀ノ内病院に赴任。ここでも外科医として手術を行っていましたが、2年後の2005年から訪問診療を始めました。退職する同僚の医師に、寝たきりの患者2名の訪問診療を引き継いでほしいと頼まれたのでした。小堀さんはこのとき初めて、医者が患者宅を訪ねることで成り立つ「在宅医療」というものがあることを知りました。引き受けたものの、初めはあまり気が進まなかった小堀さんでしたが、徐々に考え方が変わっていきました。

「3年やって患者が非常に増えたんです。平均30名ぐらいだったのに一挙に倍ぐらいになったんです。危機感を持って、そのときから本腰を入れて、外来もやめちゃって、訪問診療一本になったんです。そこでいろんなことを考えて、いろんな人と会って、これはすごい世界だなと。その3年は、美しく言えば飛行機が飛び立つ滑走のようなもので、そこから舞い上がった」(小堀さん)

「全く違うものでしたか、いままでの医療の考え方と」(久米さん)

「そうですねえ。それまでの医療というのは『救命・根治・延命』の世界です。とにかく患者を助ける。病気を治す。できるだけ命を生かす。それが最高だと考えられる世界に住んでいたものが、そうでもないなと。97歳でどこも悪くなくて、ただ、ご飯を食べられなくなって、動けなくなって…という患者がいる。大事なことは、その人たちにも語るべき豊かな人生がある。それに基づいて、最期はこういうふうにして過ごしたいとか、こういうふうにして死にたいという望みがある。これはいままでの世界とは違うなということを、だんだん学んでいったわけです」(小堀さん)

いちばん望む死に方を叶える


小堀さんが訪問診療を始める5年前の2000年4月、国は年々膨らんでいく医療費を抑えるために「介護保険制度」を創設して、終末期医療の場を病院から自宅にシフトしていく方向に舵を切っていました。医師が患者に立ち会う場が病院か在宅か。それによって患者への向き合い方は全く違います。

病院で医師は、病気が治らない患者に対しても少しでも長く生かそうと努めます。死亡率を低く抑えることが医者の使命です。一方、在宅医療は死を受け入れることです。それはいわば「死なせる医療」。だから患者がいちばん望む「死に方」を叶えてあげることが目標になると小堀さんは言います。

病院ではなく、自宅で最期を迎えたいと考える人が増えていると言われています。小堀さんが2005年に同僚から訪問診療を引き継いだときに2人だった患者は、数年後には100人ほどに増え、現在、堀ノ内病院では160人のお宅を5人の医師が回っています。でも小堀さんが出版した『死を生きた人々』(みすず書房・2018年)を読むと、その思いが実現するのは簡単なことではないことが分かります。患者が家での最期を望んでもその家族が受け入れられないケース。患者と家族は同じ思いでもアパートの大家さんが在宅死に難色を示すケース。入院していた病院の一般病棟勤務医が反対するケース。

「要するに、社会は在宅死というものをまだ認めていないんです」(小堀さん)

「ただ、小堀先生は在宅で亡くなることを薦めているわけではないんですね」(久米さん)

「もちろん」(小堀さん)

「病院で亡くなっても在宅で亡くなっても、いろんなケース・バイ・ケースがある」(久米さん)

「そうです。在宅医療とか死の問題というのは、医者にとっても患者にとっても新しい問題ですからね。ですから、そういうものはみんなでよく考えて、いい形にもっていく。ただただ避難するんじゃなくて、気長に取り組む姿勢が必要だと思いますね」(小堀さん)


小堀さんがこれまで関わってきた400人近い患者の最期を綴った『死を生きた人々』や、小堀さんの活動に密着した『いのちの終いかた 「在宅看取り」一年の記録』(NHK出版・2019年)が、良いテキストになると思います。

小堀鷗一郎さんのご感想


本当に久米さんはよく本を読まれていて、ぼくが憶えていないようなことまでよくご存じで、感心しました。これまでいろんなゲストがいらして、みんなああいう形で対応されているのかと不思議なぐらいです。

でも彼は、ぼくの本を読む前から生きることや死ぬということについて、いろんなことを考えていらしたんじゃないかという気がしました。『ニュースステーション』を拝見していたときはあんまりそういうふうに思いませんでしたけど。テレビではなかなか表現できない世界ってあるわけでしょう。だから、彼のやりたい世界というのはそういうところにあったのかなという感じが、今になってしました。ありがとうございました。


「今週のスポットライト」ゲスト:小堀鷗一郎さん(堀ノ内病院・訪問診療医)を聴く

次回のゲストは、手紙文化研究家・中川越さん

12月7日の「今週のスポットライト」には、夏目漱石や芥川龍之介といった文豪たちをはじめ、古今東西、有名無名を問わず、様々な人たちが残した手紙を研究している中川越(なかがわ・えつ)さんをお迎えします。手紙の文例集も数多く出版している中川さんに、年賀状の書き方・やめ方、手紙の楽しみなどをお聞きします。


2019年12月7日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20191207140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)