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「この週末はNetflixで『アイリッシュマン』! からの『グッドフェローズ』で決まり!」(高橋芳朗の洋楽コラム)

ジェーン・スー 生活は踊る

音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんによる洋楽コラム(2019/11/29)

「この週末はNetflixで『アイリッシュマン』! からの『グッドフェローズ』で決まり!」

【高橋芳朗】
本日はこんなテーマでお送りいたします。「この週末はNetflixで『アイリッシュマン』! からの『グッドフェローズ』で決まり!」。

【ジェーン・スー】
なんか噂はすごい聞いてるよ。

【高橋芳朗】
今週水曜日から動画配信サービスのNetflixにてマーティン・スコセッシ監督の最新作『アイリッシュマン』が公開になりました。出演はロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシ、ハーヴェイ・カイテル、さらにアル・パチーノ!

【堀井美香】
はああ……!

【高橋芳朗】
重鎮揃い踏みです!

【堀井美香】
完全に身を持ち崩す自信があります。

【ジェーン・スー】
ねえ。本当に堀井さんが大好きな役者さんばかりで。

【高橋芳朗】
枯れ専の堀井さんにそれぞれの現在の年齢をお伝えしておきますと、スコセッシが77歳、デ・ニーロとジョー・ペシが76歳、ハーヴェイ・カイテルが80歳、アル・パチーノは79歳。

【堀井美香】
もう背徳の匂いしかしない……不健全すぎる!

【ジェーン・スー】
さあ堀井さん、これを見てください(と、ノートパソコンの画面を向ける)。

【高橋芳朗】
そうそう、『アイリッシュマン』が終わったあとには間髪入れずにスコセッシとデ・ニーロとジョー・ペシとアル・パチーノによる『監督・出演陣が語るアイリッシュマン』という打ち上げ座談会的な映像が始まる仕掛けになっています。

【堀井美香】
もう! 見て見て見て見てー!

【ジェーン・スー】
うわー、素敵!

【堀井美香】
うわっ、見て! 素敵でしょ?

【高橋芳朗】
フフフフフ、いまのスコセッシですよ!

【ジェーン・スー】
「素敵でしょ?」ってあなたの持ち物でもなんでもないんだから(笑)。

【堀井美香】
もうアル・パチーノが……。

【高橋芳朗】
この『アイリッシュマン』、堀井さん的には枯れ専御用達映画になるのかもしれませんが、映画史的には1990年の『グッドフェローズ』、1995年の『カジノ』に続くスコセッシ+デ・ニーロ+ジョー・ペシの実録マフィア物第3弾にしてスコセッシの集大成としてたいへんな話題になっています。ざっくりとしたあらすじとしては、裏社会のボスに長年仕えてきたヒットマンのフランク・シーランが暴力にまみれた自らの半生を振り返る、という内容。これが実に3時間半!

【ジェーン・スー】
わお、すごい! でもNetflixだから途中で一旦止めてトイレに行ったり……堀井さん、画面じゃなくて私たちを見て!

【高橋芳朗】
3時間半のボリュームはちょっと構えてしまう方もいるかもしれませんが、でもそこはさすがというかなんというか、一度見始めると没入度はすごいです。やっぱり役者陣の殺気がハンパなくて。

【堀井美香】
うんうん。若いもんには無理!

【高橋芳朗】
「ちょっとでもナメた真似したらぶっ殺す!」的な空気が基本的に終始漂っていますからね。だから『グッドフェローズ』や『カジノ』みたいなスピード感はもう求められないんですけど、3時間半引っ張っていくだけの緊張感は十分にありますのでご安心ください。もうとにかく最高なので。

そして、スコセッシ映画といえばやっぱり音楽も大きな楽しみのひとつですよね。既存のポップスをふんだんに使った演出、特に甘美な音楽に乗せて凄惨なバイオレンスを見せる演出はこの『アイリッシュマン』でも健在です。今回は古いリズム&ブルース中心の選曲になっているんですけど、そんななかで実質的な映画のテーマソングと言えるのが1958年のドゥーワップのヒット曲、ファイヴ・サテンズの「In the Still of the Night」。これは映画『ダーティ・ダンシング』のサウンドトラックに収録されていたり、ボーイズIIメンがカバーしていたことでも知られている曲ですね。この曲の歌詞対訳は映画鑑賞後にでもちょっとチェックしてみてもいいかもしれません。

M1 In the Still of the Night / The Five Satins

【ジェーン・スー】
いまはなかなかしゃべりにくいとは思うけどさ、劇中でこの曲がかかるんだよね?

【高橋芳朗】
うん、もちろん。

【ジェーン・スー】
どんな場面でかかるかは……。

【高橋芳朗】
ひとまずは言わないでおこうかな。「実質的な映画のテーマソング」と言った意味は実際に見てもらえば一発でわかると思います。

【ジェーン・スー】
うわー、気になるね!

【高橋芳朗】
で、この『アイリッシュマン』を見ると当然その原点である『グッドフェローズ』も改めて見たくなるわけですよ。『グッドフェローズ』も実在したギャング、ヘンリー・ヒルの半生を描いた映画になるわけですが、なんとうれしいことに現在Netflixでは『グッドフェローズ』を見ることができます。絶賛配信中!

【ジェーン・スー】
おおっ!

【高橋芳朗】
これはもうハシゴ不可避ですよ。

【ジェーン・スー】
『アイリッシュマン』とトータルで5時間ぐらい?

【高橋芳朗】
いや、6時間近くいくかもね。

【堀井美香】
もういま見られるの?

【高橋芳朗】
もちろん!

【ジェーン・スー】
堀井さん、週末はやることが決まったね。

【堀井美香】
ていうか、もう帰っていいですか?(笑)

【高橋芳朗】
フフフフフ、そんなわけでここからは既存のポップミュージックを駆使するスコセッシの選曲術の最も素晴らしい成果といえる『グッドフェローズ』の印象的な音楽シーンを紹介していきたいと思います。まずスコセッシの選曲の特徴について簡単に触れておくと、彼の方法論は非常にDJ的といいますか。そのシーンやシチュエーションに対する歌詞や時代の整合性よりも、曲の背景関係なく映像とサウンドのケミストリーを重視した選曲が多いですね。

【ジェーン・スー】
なるほど。

【高橋芳朗】
その最たる例が『グッドフェローズ』の「1980年5月11日」というシークエンス。これはコカイン漬けになった主人公のヘイリーが麻薬捜査班に逮捕される一日を朝から追っていく約10分のシークエンスなんですけど、ここではローリング・ストーンズの「Monkey Man」だったりザ・フーの「Magic Bus」だったりジョージ・ハリスンの「What Is Life」だったり、ロックやブルースの名曲を5曲ぶつ切りでコラージュにしてドラッグでハイになったヘンリーのパラノイアを表現していて。個人的にはここを見るためだけに『グッドフェローズ』のDVDを引っ張り出すこともあるぐらい大好きなシーンですね。今日はその10分のシークエンスのオープニングを飾る曲を聴いてもらいましょう。ニルソンの1971年の作品です。

M2 Jump into the Fire / Nilsson

【高橋芳朗】
『グッドフェローズ』より続いての曲は、ガールグループのクリスタルズの1963年のヒット曲「Then He Kissed Me」。スコセッシ映画でよく使われる音楽というとローリング・ストーンズ、もしくはこのクリスタルズのようなフィル・スペクターのプロデュース作品を連想する方が多いんじゃないかと思います。

この曲は主人公のヘンリーがのちに彼の妻になるカレンとの最初のデートとしてニューヨークの高級ナイトクラブ『コパカバーナ』にエスコートするシーンで流れるんですけど、マフィアのヘンリーは当然行列が並んでいる正面エントランスからは入らないわけですよ。通用口からクラブに入って、ボディガードやセキュリティにチップを渡しながら迷路のように入りくんだバックヤードと厨房を抜けてコパカバーナのフロアに出ていくという。

【ジェーン・スー】
かっこいいね!

【高橋芳朗】
もう惚れ惚れするほどかっこいい! この通用口から入ってフロアに出るまでの約3分間を見事な長回しのワンショットで撮っているんだけど、そのバックにクリスタルズの「Then He Kissed Me」がかかるわけです。

【ジェーン・スー】
もう堀井さんが「早く帰りたい」って顔してる!(笑)

【堀井美香】
早く見たい!

【高橋芳朗】
フフフフフ。華やかなマフィアライフと活気あふれる『コパカバーナ』のバックヤードと賑やかで仰々しいウォールオブサウンドとのマッチングがとにかく抜群で。あと、この「Then He Kissed Me」は女の子が男の子にダンスにエスコートされて恋に落ちていく一夜の恋を綴った歌なんですけど、ヘンリーにエスコートされたカレンは『コパカバーナ』での彼の振る舞いを目の当たりにして「この男はカタギじゃないな」と察知するんですよ。でも、勝気な性格の彼女はそれで引くどころかむしろそんなヘンリーに強く惹かれていくわけです。

【ジェーン・スー】
おおーっ!

M3 Then He Kissed Me / The Crystals

【高橋芳朗】
最後は『グッドフェローズ』といえばこの曲、エリック・クラプトンをフィーチャーしたデレク&ザ・ドミノスの「Layla」。1970年の作品です。これは口封じで殺されたマフィアの死体が次々と発見されていくちょっと凄惨なシーンで流れるんですけど、「Layla」といえば皆さんよくご存知のお馴染みのあのイントロを思い浮かべますよね。でも『グッドフェローズ』の「Layla」はちょっと違うんですよ。

『グッドフェローズ』のサウンドトラックのトラックリストを見ると、「Layla」には「 Piano Exit」というサブタイトルがついてるんですよ。これはどういうことかというと、「Layla」はトータルで7分ある二部構成の曲なんですね。ここではその後半の方、曲の3分過ぎから最後まで続くピアノがメインのインストゥルメンタルのパートを使っているんです。いま言った通り惨殺死体がゴロゴロと出てくるかなりむごたらしいシーンなんですけど、これがもうめちゃくちゃ美しくて。ちょっと矛盾しているように聞こえるかもしれませんが。

【ジェーン・スー】
うん。でも見ればわかるのね?

【高橋芳朗】
うん、おそらく。まちがいなく映画史に残る名場面であり名選曲だと思います。

M4 Layla (Piano Exit) / Derek & The Dominos

【高橋芳朗】
素晴らしいですね。ちょっとした恍惚感があるというか。

【ジェーン・スー】
凄惨な死体がどんどんと上がってくるシーンにこんな美しい曲を重ねる発想がすごいよね。

【高橋芳朗】
というわけで、『アイリッシュマン』を見ようという方はぜひ併せて同じNetflixで『グッドフェローズ』も見ていただきたいですね。この週末のおすすめのコースは、まず今夜に『グッドフェローズ』。そして明日の夜に満を持して『アイリッシュマン』。

【堀井美香】
もうお暇していいですか?

【高橋芳朗】
アハハハハハ!

【ジェーン・スー】
堀井さんが恍惚とした表情をしています(笑)。

【高橋芳朗】
なんなら堀井さん、『グッドフェローズ』と『アイリッシュマン』の間に『カジノ』も挟んじゃってくださいよ。

【堀井美香】
なんかムラムラしてきました(笑)。

【ジェーン・スー】
アハハハハハ!

【高橋芳朗】
堀井さん、ちょっと大丈夫ですか?(笑)

【ジェーン・スー】
じゃあ私もこの週末で見てみますね。ヨシくん、今週もありがとうございました!

―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ――
当ラジオ番組では「日々の生活に音楽を」をコンセプトに、音楽ジャーナリスト・高橋芳朗さんによる洋楽選曲を毎日オンエア。最新1週間のリストは以下です。

11月25日(月)

(11:07) We’re in This Love Together / Al Jarreau
(11:25) One More Fool / Randy Goodrum
(11:35) Out With My Ex / Robert Kraft
(12:12) Jealousy / Michael Franks
(12:23) Spice of Life / The Manhattan Transfer
(12:52) Just a Joke / 国分友里恵

11月26日(火)

(11:05) Sweet Thing / Van Morrison
(11:27) Northern Sky / Nick Drake
(11:40) I Use Her / Tony Kosinec
(12:16) Fire and Rain / James Taylor
(12:51) Conversation / Joni Mitchell

11月27日(水)

(11:06) Dream Police / Cheap Trick
(11:38) Ronnie / The Rubinoos
(12:15) Your Number or Your Name / The Knack
(12:51) I Found a Love / Phil Seymour

11月28日(木)

(11:04) Waiting in Vain / Bob Marley & The Wailers
(11:25) Don’t Look Back / Peter Tosh
(11:35) Doctor Love / John Holt
(12:14) Melody Life / Marcia Griffiths

11月29日(金)

(11:04) Mr. Blindman / Donna McGhee
(11:37) (You’re the One) Someone Special / The Futures
(12:14) She Puts the Ease Back Into Easy / Brothers By Choice