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ダブルチェックでなぜミスはなくならないのか? ヒューマンエラー研究・中田亨さん(産業技術総合研究所)

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
11月23日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、ヒューマンエラーはどうすれば防げるかを研究している産業技術総合研究所・中田亨(なかた・とおる)さんをお迎えしました。メールのご送信や伝票の計算ミスから、社会を揺るがす重大な事故まで、ヒューマンエラーは私たちの暮らしのあらゆるところに関わっています。社会的ニーズがとても大きい研究とあって、産総研には数多くの企業から相談が寄せられています。

ヒューマンエラー研究は始まったばかり


ヒューマンエラーは太古の昔からあるものです。でも、それが人類にとってとても大きな課題として注目されるようになったのは、実はそれほど昔のことではありません。1979年、アメリカ・ペンシルベニア州のスリーマイル島原発事故。あまりに衝撃的なこの事故をきっかけにヒューマンエラーの研究が活発になりました。作業員のミス、設計ミス、機械の故障などが次々に重なった結果、初めは空気弁の些細なトラブルだったものが、メルトダウンまで引き起こす事態となったのです。ヒューマンエラーはときに想定以上の大きな被害をもたらすということで、原発、航空、医療などの分野で研究が進みました。でも、もっと幅広い分野に渡る研究はまだ始まったばかりだそうです。

中田亨さんは1972年、神奈川県生まれ。東京大学工学部からアメリカ留学を経て、東京大学大学院までロボット工学を研究。2001年に産業技術総合研究所に入りました。人間と比べてロボットは圧倒的にミスをしません。ロボットは賢い。世間一般ではそう思われています。でも、「人間はロボットよりずっと賢い」というのが中田さんをはじめロボット研究者の共通認識だそうです。確かにロボットは決められた作業についてはミスをしません。でも、それまで経験をしたことがないような事態が起きた場合、ロボットは人間のようにうまく立ち回ることはできません。人間はミスも多いけれど、ロボットよりずっと賢い。中田さんは、世間と研究者の認識のギャップが面白くてヒューマンエラーを研究するようになったそうです。現在は人間のミスと安全について様々な企業と共同研究を行っています。

原因究明は事故防止には効果がない?!


ヒューマンエラーによって重大な事故が起きてしまった場合、事故原因を解明することがいちばん大事…だと普通は考えます。それがエラー防止につながるからだ、と。でも実は、そうではないそうです。これまで数々の事故調査に関わってきた中田さんは、事故というのは大抵の場合いくつもの要因が複雑に重なっていて、ひとつに断定できるものではないと言います。

また、これが原因だと思われることでも、さらにその原因になっていることがあります。原因の原因の原因…というように、遡ろうと思えばどこまでもいってしまいます。

「その作業の担当者の責任だと言うこともできますが、その担当者の仕事がきつくて集中力が落ちていたということがあれば仕事のシフト管理者の責任とも言えます。さらには、そういう会社の体制を見過ごしていた経営トップの責任だとすることもできます。結局、事故原因は人間の主観で決めているということです。原因を追究するということが、世間を納得させるために誰をつるし上げるかというロシアンルーレットのようなものになってしまいます。事故の原因や責任はいろいろなところに分布しているんだという考え方が大事です。事故というのはマージャンやポーカーのようなもので、最後に弾いてきた牌やカードだけで役が決まるわけではなくて、そのほかにいろんな牌やカードが揃ったから役になるわけです」(中田さん)

事故を防ぐにはどうすればいいのか?


では、どうすればヒューマンエラーによる事故を防ぐことができるのでしょうか。そのことを考える前提として、ヒューマンエラーは必ず起きると考えることが大切だと、中田さんは言います。そのうえで、エラーが起きたときの挽回策を持っておくことが大事です。それもひとつだけでなく、二の手、三の手といくつも考えておくことです。

例えば、スマートフォンで目的地までの行き方を調べると、最短ルートや最速の到着時刻が案内されます。でも「もしその電車が人身事故で止まったら」「もしその道が渋滞していたら」と思えば、ほかのルートや交通手段も考えておくでしょう。これからやろうとすることにどんなリスクが潜んでいるか。それを知っていれば、もしエラーがあっても慌てずに対処できますから、大きな失敗や事故にならずにすむでしょう。

中田さんは普段からできるだけ自分の行動には保険をかけることを心掛けていて、運転免許は持っているけれどクルマは運転しないそうです。

「もし遅刻したり、事故を起こしたりしたら、仕事の信用もなくなっちゃいますから(笑)」(中田さん)

確かに! ヒューマンエラーの研究者って、大変ですね。

ミス防止策として「ダブルチェック」を採用しているケースも多いでしょう。間違いがないかどうか、人を変えて2度確認することでチェックの信頼度を上げようというものですが、中田さんによれば、これはあまり意味がないそうです。2人でチェックすると「オレのあとにあいつがチェックするから大丈夫だろう」「私の前にあの人がチェックしたんだから間違いないだろう」と気が緩んでしまい、結果的には信頼度が下がってしまうそうです。また、1人がミスに気づかなかくても、もう1人が高い確率でミスに気づける…とは限りません。ミスに気づきやすくすることが大事です。そう考えると、ミスをした人に反省文を書かせたり罰を与えたりすることも、防止策としては効果があまり期待できないことが分かりますね。

「TBSラジオでは、『爆笑問題の日曜サンデー』で毎年、年末に、放送の失敗を集めた珍プレー好プレー大賞をやっていますよね。あれは事故防止のためにはすごくいいんです。企業の場合、よほど大きな事故のときは事細かに報道されますけど、小さなミスのときはわざわざ会社の恥を発表しませんよね。それだとミスが共有されないのでまた同じような失敗をしてしまうんです」(中田さん)

ミスをしてしまったときにそれをすぐ正直に報告できるような雰囲気が、企業や組織にとってとても大事だということです。

中田亨さんのご感想


ミスはなくならないんだということを久米さんは残念がられていましたね(笑)。でも、それはしょうがないんです。

私は、なるべく早く行くとか、危ないスポーツはしないとか、保険ばかりかけています(笑)。低い山でも遭難しちゃう人もいますからね。




「今週のスポットライト」ゲスト:中田亨さん(ヒューマンエラー研究)を聴く

次回のゲストは、訪問診療医・小堀鷗一郎さん

11月30日の「今週のスポットライト」には、埼玉県新座市にある堀ノ内病院の訪問診療医、小堀鷗一郎(こぼり・おういちろう)さんをお迎えします。わが家で最期を迎えようとする人たちと向き合い、これまでに350人以上の患者を看取ってきました。


2019年11月30日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20191130140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)