お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

放送中

放送中


  • 放送ログ

キットカットを100種類作った人が、いちばん苦労した味は?

見事なお仕事

企業の“見事な”取り組みや新情報をお届けする番組『見事なお仕事』。ポップカルチャーの総合誌「BRUTUS」の編集長でカルチャーに精通する西田善太さんならではの視点で、企業の“見事なお仕事”の内容と秘訣を、インタビュー形式で伺っていきます。

10月27日(日)放送のゲストは、ネスレ日本の村田香織さん。マーケティングスペシャリストとして、あの「キットカット」を盛り上げていくのがお仕事です。世界一のキットカット消費国だという日本。わたしたちはどうして、そんなにこのチョコレートが好きなんでしょうか。

難産だった「もみじまんじゅう味」

西田 キットカット、いろんな味がありますが、のべいくつぐらいの種類があるんでしょうか?

村田 歴史的には、390種類以上の味があります。わたしが担当したのは、そのうち100ぐらいです。

西田 100! 今まで、作るのに苦労したキットカットってどんなのですか?

村田 わたしの場合はそうですね……広島のご当地土産、もみじまんじゅう味ですね。

西田 お。ぼく、子どものころ広島に住んでたことがあるのでもみじまんじゅうにはちょっとうるさいんです。あんこのまわりのふわふわ感がポイントだと思うんですが、ウエハースを固いチョコでコーティングしてるキットカットでそれを表現することって可能なんでしょうか?

村田 まさにそこがたいへんで。あのふわっとした生地の感じは、香料を使って出しています。

西田 香りでそんなことが! 他にもありますか?

村田 東京ばな奈味もたいへんでした。あのしっとり感をどう出すか……。

西田 すぐそうやってお菓子をお菓子にするんですね(笑)。

村田 お互いいいことがあるんです。キットカットは世界中のお客さまに知っていただいているので、インバウンド需要が見込めます。

西田 なるほど! もみじまんじゅうが何かはわからないけど、キットカットなら買ってみようかとなると。キットカットがメディアになってるんですね。おもしろい。

村田 いっぽう、東京ばな奈なんかは特にそうですけど、ご当地土産のお菓子って販路が強力なんですね。駅とか空港とか。こちらとしては、一等地でキットカットを売ってもらえるんです。

世界一のキットカット消費国は、日本!

西田 キットカット、世界中で売られているんですよね?

村田 100カ国以上で売られています。

西田 そして、世界でいちばん売れているのが日本だと聞きました。

村田 はい。ここ10年、日本がナンバーワンです。

西田 どうして人気なんでしょう?

村田 わたしたちは「軽さ」ではないかと考えています。ネスレのものに限らず、国内で売れているチョコレートを分析すると、ビスケットはじめ何かと一緒になっているものばっかりなんです。わたしたちが「無垢チョコ」と呼んでいる、チョコレートだけで作られ商品と比較すると、人気に明確な差があります。

西田 たしかに、日本のチョコ菓子は多様ですよね。

村田 実際この嗜好は、数字にもあらわれていて。日本人の年間チョコレート消費量って2キロぐらい。ヨーロッパはこの数倍で、スイスなんて10キロとかあるんですが。この差は、購入するチョコレート菓子における「無垢チョコ」の割合と深い関係があると思います。

西田 おもしろいですねえ。

村田 おそらく日本人にとって、無垢チョコはちょっと「重い」んです。だから、ウエハースが入って軽い食感のキットカットが好まれる。

西田 そうそう、キットカットは「軽い」ですよね。わかります。

村田 いちばんの購買層って40代主婦の方々なんですけど、ご本人はもちろん、そのお子さんにも食べてもらいやすい、とにかく「軽い」お菓子として、自宅に常備していただいているのかなと思います。

九州からはじまった「受験と言えばキットカット」

西田 お子さんと言えばキットカット、知らないうちに受験のお守りとしてすっかり定着しているそうで。

村田 「きっと勝っとー!」ですね!

西田 九州弁?

村田 そうです。90年代後半、受験期に九州のキットカットの売り上げが急上昇していると気づいた営業マンがいまして。よくよく調べてみたら、地元の高校生が大量に買ってくれているとわかったんです。それがきっかけですね。

西田 そんなに前から! ネットからとかじゃないんですね。

村田 口コミで、自然発生したものなんです。キットカットには“Have a break, Have a KitKat”というグローバル共通のスローガンがありまして……。

西田 この「break」って、「休憩」とポキッと「折る」をかけてます?

村田 です! 日本では、「折る」の方はほとんど気づいてもらっていませんが(笑)。

西田 やっぱり! 当たってよかったです。さえぎってごめんなさい。“Have a break, Have a KitKat”があって?

村田 この「break」の意味を再考しようと消費者インタビューを繰り返していくうちに、日本人はストレスを緩和するためにbreakをとるというのがわかってきたんです。疲れたからお風呂に入るとか、イヤなことがあったからカフェでひといきつくとか。

 

西田 ふむふむ。

村田 すごく、ストレスにさらされているんですね。で、日本人の多くの人が経験するストレスが受験だなと。

西田 たしかに。終わるまでも、長いですしね。

村田 これは応援しがいがあるということで、全国的にキャンペーンを展開することにしました。

西田 それが15年以上も続いてるんですね。九州のみなさんに大感謝!

村田 そうなんです。だから「きっと願いかなう」とか、「きっとサクラサク」と言うことはあっても、わたしたち自ら「きっと勝っとー!」とは絶対言わないようにしています。わたしたちが考えたものではないので。

ネスレの異常な権限委譲

西田 最後に、パッケージのお話を。最近、包装紙をぜんぶ紙に変えたそうですね。

村田 はい。

西田 世界的にみても、プラスチックの存在は大きな問題となっていますが、対応が早いなと思いました。

村田 ありがとうございます。2018年の11月に紙にするということを決めて、2019年の9月に新パッケージが発売開始になりました。正直タイトなスケジュールだったんですが、どうせなら「どこより早くやろう」とみんなでがんばりました。

西田 100カ国中何番目でした?

村田 1番でした! ネスレ全体として、2025年までにすべての包装材料をリサイクル・リユース可能なものに変えると宣言しています。それに応じて、各国が独自に動いているのが現在です。

西田 反響はどうでしょう?

村田 「高級感があっていい」と、すごくうれしいリアクションをもらっています。プラスチックってつるつるしてるから、店舗の照明を反射して目立つんですよね。そこが損なわれるのが怖かったのですが、あまり問題なく受け入れていただいて。ただ、中の個別の包装がまだプラスチックのままなので、ここがゴールとは思っていません。

西田 それ、ツッコミを入れるか迷ってました(笑)。

村田 プラスチックが持つ機密性・バリア性みたいなところは、まだ紙では実現できないんです。まずは、よりリサイクルしやすいプラスチックに変えようと奮闘しています。

西田 包装もそうだし390種類以上の味もそうですが、「日本独自」のものが多いですよね。グローバル企業ですから、本国の承認とかたいへんなんじゃないですか?

村田 そこがネスレのいちばんいいところで。ブランドはグローバルで管理しますが、どんな味を作るか、パッケージをどうするかはローカル任せなんです。

西田 へー!

村田 ネスレにはこの指針を指す「シンクグローバル・アクトローカル」という言葉があります。この言葉がちゃんと根付いているから、いろんな判断が日本だけで出来るんです。

西田 すばらしい。村田さんはじめ、優秀なみなさんへの信頼を感じますね。まったくもって、見事なお仕事です。

編集・執筆:今井雄紀(株式会社ツドイ)