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宇多丸、『ターミネーター ニュー・フェイト』を語る!【映画評書き起こし 2019.11.15放送】

アフター6ジャンクション

TBSラジオ『アフター6ジャンクション』の看板コーナー「週刊映画時評ムービーウォッチメン」。ライムスター宇多丸が毎週ランダムに決まった映画を自腹で鑑賞し、生放送で評論します。

今週評論した映画は、『ターミネーター:ニュー・フェイト』(2019年11月8日公開)。

オンエア音声はこちら↓

宇多丸:

さあ、ここからは私、宇多丸がランダムに決まった最新映画を自腹で鑑賞して評論する週刊映画時評ムービーウォッチメン。今夜扱うのはこの作品、『ターミネーター:ニュー・フェイト』! (BGMを聞いて)これ、今回のあれですか? ジャンキーXL版の「♪デデン、デン、デデン」ですか? なるほどね。ジェームズ・キャメロンが生み出した『ターミネーター』シリーズの6作目にして、『2』の正統な続編、を謳った最新作。人類が滅亡する審判の日は『2』で回避されたはずだったが、未来からターミネーターと強化戦士グレースが送り込まれる。とある女性を巡って壮絶な戦いを繰り広げる彼女たちの前に、かつて人類を救ったサラ・コナーが現れる。

キャメロンがプロデューサーとして『2』以来シリーズに復帰したほか、リンダ・ハミルトンが28年ぶりにサラ・コナーを演じる。またシリーズの顔であるアーノルド・シュワルツェネッガーも出演。監督は『デッドプール』第一作を手がけたティム・ミラーさん、ということでございます。

ということで、この『ターミネーター:ニュー・フェイト』をもう見たよ、というリスナーのみなさま、<ウォッチメン>からの監視報告(感想)をメールでいただいております。ありがとうございます。メールの量は、「多い」。まあこの番組でもね、てらさわホークさんの「ターミネーターひとり総選挙」なんかもやって盛り上げたのもありますし。まあ『ターミネーター』シリーズともなるとみなさん、行くんでしょうかね。メールの量は多い。賛否の比率は褒めの意見が4割、否定的な意見が4割。残り2割が「良いところも悪いところもある」との評価。

褒めてる人の主な意見は「『ターミネーター』の新作としてはともかく、いちアクション映画としては普通に面白かった」とか「シリーズに復帰したリンダ・ハミルトンもよかったが、新キャラ・グレース役のマッケンジー・デイビスがなにより素晴らしい」などなどありました。また主要キャラクターとなる女性3名の描かれ方も好評で、そのせいか女性からの絶賛や熱狂的支持の声が目立ったということです。

一方、否定的な意見は「普通におじさんとなったT-800(シュワルツェネッガー)の姿とその裏付け設定にポカーン」「映像的な新しさがなく、これではただの凡庸なSFアクション」「『ターミネーター3』『4』を否定しつつ、ちょいちょいその要素を拝借してるのが嫌」など『ターミネーター』シリーズに深い思い入れがある人ほど本作には否定的な傾向がありました。

■「“現在のフェミニズム”を見ているという感覚。大絶賛したい!」(byリスナー)

代表的なところをご紹介いたしましょう。ラジオネーム「バーニー・ロスに添い寝されたい」さん。女性の方です。「『ターミネーター:ニュー・フェイト』、鑑賞しました。内容は良くも悪くもいつもの『ターミネーター』でしたが(それは別にいいんですけれども)、それよりも“現在のフェミニズム”を見ているという感覚が強く、世界中誰でも知ってるアクションシリーズでこの価値観のアップデートができるハリウッドってすごいなと思い 、個人的には大絶賛です。『キャプテン・マーベル』を見た時と同じ勇気をもらえる内容でした。内容に触れてしまいますが……」。ああ、ちょっとこれはネタバレの部分があるので省略しましょう。

「……ある部分に強烈に感動しました。またマッケンジー・デイビスがもう素晴らしく、全くエロくないけどマッチョすぎもしない、ただ人間として鍛え上げられ美しく、目つきはかなり辛そうというか、試練の中に生きている目で、こんなヒーローの女性描写は今まであったでしょうか? リンダ・ハミルトンは『女性は自信を持って年齢を重ねていいんだ』と自立した女性の矜持の塊みたいになっていて、二作目でも好きでしたけども、まさかまた、いまもっと好きになるとは思ってもみませんでした。

あと今回のヒロインのナタリア・レイエスもよかったです。その後、リーダーとなるポテンシャルを秘めているという演技が素晴らしかったです。三世代の強い女性3人の物語になっていて、シュワちゃんはそれをサポートするのみ。なんというか、とにかく女性のエンパワーメントを強烈に感じる映画で、『マッドマックス 怒りのデス・ロード(Mad Max: Fury Road)』と同じく、フェミニズムがビッグバジェットのアクションシリーズの中で当然のごとくスマートに体現されてることにとても驚き、時間が経てば経つほど素晴らしい内容だったのではないかなと思えてきました。映画の出来は正直、いろいろと思うところもありますが、映画以上のメッセージを受け取った気分です」というご意見でございます。

一方、ダメだったという方もいらっしゃいました。「セイントジミー」さん。「ラジオ初投稿です。今回ばかりはかならず投稿しようと決めました。私は幼稚園児の頃、『ターミネーター2』がVHSで出始めの頃に初めて見ました。冒頭、ターミネーターの全身骨格であるエンドスケルトンのビジュアルにものすごい衝撃を受けました。これは大げさでもなんでもなく、ある種の洗礼を受けた感覚に近かったと思います。それからの私は『ターミネーター』だけでなく、映画というもの自体にどっぷりとハマってしまいました」という。

で、いろいろと書いていただいて。「……そんな私は『ターミネーター1』『2』への愛が強すぎるがゆえに、今回の作品に関しては正当な判断は下せないかもしれないのですが、これだけは言わせてください。以前、宇多丸さんが『ファントム・メナス3D』評の中でおっしゃっておりましたが、『初代スター・ウォーズは聖典であり、血肉と化している』というのは、私にとっては『ターミネーター1』『2』がそうなのです。はっきり言って『ターミネーター1』『2』に流れるDNAはその後の『ターミネーター』には受け継がれておりません」。ああ、そうですか。『3』『4』『5』否定派ですか。そうかそうか。

「……今回の『ターミネーター:ニュー・フェイト』も例に漏れず、まがい物な印象は否めません。私の中ではDNAの拒絶反応を起こしてしまいました。いろいろと言いたいことはありますが……」ということでいろいろと書いていただいて。「……『ターミネーター』という映画の基本である『暗殺者からの逃走劇』である一作目に対し、二作目は基本を主軸としながらも『未来を変える』という重要なプロットが足されています。これに関しては『T2が余計だ』という意見があるのは重々理解はできますが、今回は暗殺者からの逃走劇という以外、何もありません。これではただの焼き直し以外の何物でもありません。

そもそもの『ターミネーター』という作品自体、裾野が広がっていくような話ではないと思います」というね。だからこれ、後ほども言いますけどもね。そもそもシリーズ化に向いていないのではないか、という問題もあります。「……いろいろと言いましたが、同時に作品としては楽しめました。ただ、念を押させてください。本物の『ターミネーター』は『2』で終わっています!」というご意見でございます。はい。それに対しては私も言いたいことがあって(笑)。ごっちゃごっちゃになっちゃいますけどもね。

■ターミネーターって……そもそもシリーズ化に向かない話なんじゃないか?

ということで私も『ターミネーター:ニュー・フェイト』、TOHOシネマズ六本木で2回、見てまいりました。ちょっと吹き替えとかIMAXとかいろんなバージョンで見る時間がなくて申し訳ございません。普通に字幕2Dで2回、見てまいりました。ということで『ターミネーター』シリーズ。僕は前の番組、土曜日にやっていた『ウィークエンド・シャッフル』時代の2015年7月25日に評しました、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』を含めて、長編映画としては過去5作品あったわけですね、『ターミネーター』はね。

でも、話として一応つながっていたのは四作目までで、前作のこの『ジェニシス』というのは、シリーズ全体を踏まえた上での、シュワルツェネッガー本人も登板しての仕切り直し、という色合いが非常に強い作品でしたね。で、公開タイミングで、シリーズの創造主であるジェームズ・キャメロンが、「今回の『ジェニシス』こそが、自分が作った『1』『2』に連なる、私にとっては正統な3作目だ!」なんてことをね、いろいろと宣伝コメントなんかで言っておりました。

そういう風に言っていたんですが、この『ジェニシス』、この間てらさわホークさんがひとり総選挙の時にもおっしゃっていましたが、シリーズ・ベスト版みたいな、過去シリーズのいいところ取り、オマージュをしながらのおさらい的だった前半部分はともかく……タイムトラベルがですね、「未来にも行けます!」とか、「何度も行けます!」とか、「別の時間軸もあります!」とかですね、とにかくこの前までの作品の何倍も、タイムパラドックス要素がグッチャグチャなことになってしまってですね。

要はその、作品の出来としては明らかに、ちょっと微妙だったこともあって、批評的、そして興行的にもイマイチな結果となってしまい。当初は三部作計画だったというのも、結局頓挫、というね。まあ、あれの続きが見たいか?っていうと……全くそんなことはない、ということなんですけども(笑)。で、それを言ったらこのシリーズは、結局、先ほどのメールもそうですけどね、『3』以降は常に、何かしらケチがつきがちなんですよ。やっぱりね。

で、ちなみに僕個人は、それこそ一作目公開前からですね、当時の雑誌『スターログ』で、「『殺人魚フライングキラー』を撮ったやつが、とてつもなく面白いSFを作ったらしい!」という評判を聞いて。あと、「シュワルツェネッガーがついに、本当にハマる作品に出ているらしい! 『コナン・ザ・グレート』とかよりもっと、本当にハマった作品に出ているらしい!」というような評判を聞いて。もちろん公開週に劇場に駆けつけて。日本では1985年5月ですね。行きました。高1でした。行って、ご多分に漏れず熱狂をした、という世代なんですけども。

で、前から番組の中でも言っていますけども、僕は、『3』はいろいろと言う人もいますけども、積極的に『3』は支持します。本当に、大好きです。僕はすげえよくできた三作目だと思っていますし。いや、『4』だって全然がんばっていたよ! がんばっていたじゃないか!っていう派ですよね。まあ、詳しい理由は『ジェニシス』評の時に言ったんで、今日は端折りますけども。なので、さっき言った『ジェニシス』の際のキャメロンの発言とかには、心底がっかり&おこでしたし。ちなみにキャメロン自身は、後にその「『ジェニシス』こそ正統な続編だ」みたいに言っていたことを、「いや、あれはシュワルツェネッガーを応援するために言っていたんで、本意ではなかった」とか言って、撤回しているというね。いろいろとひどいな、っていう感じなんですけども(笑)。

なので今回の『ニュー・フェイト』も、作品の出来云々は別にしても、「『3』『4』『ジェニシス』を全部なかったことにした上での、『2』の続きですよ」っていう作りに、「なんだかなぁ」っていう。てらさわホークさんも言っていましたよね。「こっちはリアルタイムでシリーズにずっと付き合ってきたんだぜ……オレたちの気持ちはどうなるんだよ?」っていう気持ちは、正直否めないでいます。はい。でも、とはいえじゃあその『4』の続き……要するに人類対マシン戦争の、リアルタイムな顛末そのものが見たいか?っていうと、まあそれは別にそんなに見たくないかな、っていう(笑)。『4』の続きが見たいのか?っていうと、そうでもない、っていう問題もあります。

要はですね、これはもう先ほどのご意見、僕もわかります。身も蓋もないことを言ってしまえば、そもそもシリーズ化に向かない話なんじゃないか、これ?っていう。一作目の完成度。これは文句なし。一作目はもちろん完成度高いです。で、『2』はそれに対する、フレッシュな変化球ですね。で、そのフレッシュな変化球のおかげでちょっと生じた疑問に対して、それにまるごと答えて見せた最終回答の『3』、ぐらいまでがせいぜい……っていう感じのシリーズなんですよね。なので、これは『ジェニシス』評の最後で言った結論に、やっぱりちょっとたどり着かざるを得ないところもある、ということです。

■『ターミネーター』シリーズで大事なのはジョン・コナーではなくサラ・コナーでは、という問い直しから始まった今作

で、その意味で今回改めて、『ジェニシス』もなかったことにしてシリーズを仕切り直す、という、そのクリエイターとして白羽の矢が立った、ティム・ミラーさん。この方は、『デッドプール』一作目の監督として一躍名を上げた方でございます。で、『デッドプール2』を降りてこっちに来た、という感じらしいんですけどね。ちなみに『デッドプール』の方は、前の番組で2016年6月18日に評していて。これは公式書き起こしがいまも残っていますので、ティム・ミラーさんのキャリアなんかについてはそちらを見ていただきたいんですが。

ちなみにこのティム・ミラーさん、その前はいろんな……『ドラゴン・タトゥーの女』のオープニングのCGを作ったりとか、そういうことをしていた人なんですけど、あの『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』の第二班監督とかをやられてた方なんですけど。その『ダーク・ワールド』の監督は、まさに『ジェニシス』のアラン・テイラー、という因縁があったりしますね。ま、それはいいんですけども。

そのティム・ミラーさん、今回は監督・制作総指揮という感じになって企画を受けて。パンフレットに載っているインタビューや解説によればですね、ストーリーを作るにあたって、小説家とかライターを大勢集めてアイデアを出させた。で、今回脚本にクレジットされているデビッド・ゴイヤーさん。いままでデビッド・S・ゴイヤーさんってクレジットされていました。まあ『ブレイド』だったり『ダークナイト』三部作とか、あとは『マン・オブ・スティール』とか『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』とか、そういうのを手がけられている方ですけども。

デビッド・ゴイヤーさんもアイデア出しに参加した1人だった、ということらしいんですけども。で、そこで「リンダ・ハミルトン演じるサラ・コナー、つまり『1』『2』のオリジナルキャストの話を続けたらどうか?」という案が出た、ということですね。で、それについてのティム・ミラーさんの、このパンフレットに乗っている発言。こんなことを言っている。「『ターミネーター』の映画がジョン・コナーの話だと思ったことはない。あれはいつでもリンダ・ハミルトンのサラの話だった」「他の映画ではジョン・コナーのストーリーを延長しようとして混乱した」という発言をされている。これは僕、「『3』『4』の支持派だ」って言いましたけども、『3』『4』支持派の僕も、「ああ、これはちょっと一理あるな」っていう風に思いました。

たしかにですね、一作目は特にそうなんですけど、その人類の救世主となるジョン・コナーというのは、この物語における、それこそ“マクガフィン”なんですよね。記号的な争奪ポイントでしかないんですよ。ジョン・コナーが重要なんじゃないんですよね。話としての本質は、その救世主となる人の母……つまりね、今回も話題に出てきましたが、それこそ聖母マリア的な役割、宿命を突然担わされた1人の女性が、その異常な運命に対して、どう反応して、成長していくかという、ここがこの話の本質なわけですよ。

で、しかもこれが……「そうだそうだ。サラ・コナーの成長がこの話の本質なんだ。主役はサラ・コナーなんだ」って考えて、そこでさらに考えを進めていくと、「でもさ、そう考えると、そもそもサラ・コナーは、“ジョン・コナーの母親”としてしか物語上の価値がないっていうこの置き方、ちょっとおかしくないか? サラ・コナー自身が強い戦士でもあって、そして救世主となるような人を育てられるような優れた教育者であり、指導者でもあるんだから、サラ・コナーが重要なんじゃないの?」っていう風になってきますよね。そんな疑問も当然わいてくる。

今回の『ニュー・フェイト』は、実はそこにもきちんと回答してみせる1本になっている、ということなんですね。なので、単に「『3』『4』『ジェニシス』もなかったことにした上での『2』の続きの話」というだけでなくて、そうしたシリーズのあり方の根本的な問い直し……今日的な問い直しを含む、仕切り直し。しかも、シュワルツェネッガーだけでなくて、リンダ・ハミルトンのサラ・コナーと、ジェームズ・キャメロンも製作に戻って。まさに本家のお墨付き体制での、「今度こそ!」の仕切り直しでもある、ということなんですね。まあ、順を追って行きましょうね。

■飲み込みづらい序盤から、いつもの『ターミネーター』らしい三つ巴展開へ

まず、リンダ・ハミルトン演じるサラ・コナーの視点から――『2』での、精神病院に入れられちゃってる状態ですね――その視点から、『2』の最短の要約ですね。いちばん短い『2』の要約。「まあこんな感じで、未来はこうなりました」っていう。で、その『2』以降の顛末が、やはりサクッと語られるという。これはあえて、どうなったかは言いません。ちょっとここ、わかりづらいんですよね。その理屈が。僕、最初に見た時には、「うん? うん?」っていうのがずっと続いていたんですけども。要は、『2』で歴史が改変されて、その将来人類に攻撃を仕掛けてくるスカイネットっていうその機械軍は、生まれないことになったのだけど……その事前に、スカイネットがないことにされる前に送り込まれたターミネーターたちは、各時代にそのまま、任務を遂行しようとするために送り込まれてくる。

要するに、スカイネットはなくなったけれども、「送り込まれてきた」という事実は残っちゃっているので、ターミネーターはスカイネットもないのに虚しく任務を遂行し続けていた、ということですよね……ですよね? この理解で合っているのかな? この感じ、「うん? うん?」ってなる感じはちょっとあるんですよね。で、まあとにかく、とある事件が起きてからの、22年後のメキシコシティ、というのが今回の本編ということでございます。で、要はここから始まる話は、かつてのサラ・コナーと同じような立場の女性主人公が、再設定される。ナタリア・レイエスさんというコロンビアの方が演じる、「ダニー」という新しいキャラクターが設定される。もう完全に、昔のサラ・コナーと同じ立場ですよね。

平凡な暮らしをしていたのになぜか……というね。平凡に生きていたのに、突然、どこまでも追ってくる不死身の殺人ロボに殺されかけ、同じく未来からやって来たというその守護者から、「自分の命が未来の人類の命運を握っている」という、異常な宿命を知らされる、ということですね。言い方を変えるとですね、これはもう『ターミネーター』シリーズ全作に言えることでもありますが、やっていることはやっぱり、一作目のバリエーション。本質的には「また同じことを繰り返している!」っていうことには変わりがないですね。

まあ、未来の命運を握る存在と、それを殺しに来た不死身のマシンと、守るために未来からやってきた存在。この三つ巴の感じっていうのは変わらないわけです。ただ逆に言うと、このある種の三つ巴の型っていうのを外しちゃうと、『ターミネーター』シリーズ「らしさ」っていうのが、全くなくなっちゃう、っていうのもある。故に、『4』は不評だったわけじゃないですか。なので、難しいところなんですが。その中で今回の『ニュー・フェイト』は、新鮮味をもたらす工夫を、なかなかがんばってしてると思います。

■今作の最もフレッシュな要素は、グレース役のマッケンジー・デイビス

まずね、追手のターミネーター。REV-9と言われる最新のターミネーター。液状化する感じっていうのはこれ、(1991年の『2』公開当時は斬新だった)T-1000の焼き直しかな?っていう風に、最初は思うんですよね。なんですけど、実は液状になる外皮というのかな、外側と、内側の内骨格……今回、しかもその内骨格が、いままでのギンギラじゃなくて、ツヤ消しブラックじゃないですか。あれがなかなかかっこいいですよね。この2つに分かれて活動できる、というあたりがまず、ちょっと新鮮味のあたり。ただまあ、ぶっちゃけ質量的にどうなっているんだ?っていう話ですよね、あいつら(笑)。合わせても見た目が変わっていないし。なにより、「2体に分かれた時の弱体化ポイント」みたいなのが特に明示されないので、2倍2倍で面倒だ!という以上には、この設定、あんまり生かされていないと言わざるを得ないところもあるな、とは思いました。

あと、これまでのターミネーターと違って、人間的に完璧なコミュニケーションが取れる。これ、だから出だしでは「おっ、これは面白い。完璧に人間的なコミュニケーションが取れるターミネーター、面白い!」って思いましたけども、こちらも、そこからさらに面白味を出しているのかっていうと、そうでもない、っていう感じがあったりすると思います。まあREV-9、強いは強いんですけども。設定の面白味を生かしているかっていうと、そうでもない。

それよりやはり今回の『ニュー・フェイト』、多くの方が絶賛ポイントとして挙げられておりましたが、最もフレッシュな新要素は、やっぱりマッケンジー・デイビスですね。マッケンジー・デイビスさんは、『ブレードランナー 2049』のあの女性とか、あとは『タリーと私の秘密の時間』とか。あとはいろんなインディ映画にいっぱい出ているような方なんですよね。ただ、今回このマッケンジー・デイビスさんが演じている強化人間グレース、本作のために作り上げた体型やアクション、技術が本当にすごいですけどね。

長身で、特に首と手足がすごい長いのが、なんというか、しなやかで美しいし、人間離れした存在感みたいなものも感じさせる。でも、すごく強いっていうには……ちょっと弱さも感じさせる、みたいなところ。それがすごい絶妙なバランスでしたね。とにかくターミネーターと互角に渡り合える存在が今回加わったことで、特に近接格闘戦には、スーパーヒーロー映画的な面白味が加味されてて。同じことの繰り返し感が、だいぶ緩和されていると思います。いままではただ追われて……っていうだけだったのが。あとは単純に、見ていて美しいしかっこいいので。見ていて楽しい、というところはあると思います。あと、長くは戦えない、というウルトラマン的な設定もね、いいんじゃないですかね。ちょっと起伏になっていてね。

世代も出自も違う三世代による「シスターフッド物」

で、その逃げる主人公たちを、より巨大な車で、他の車をふっ飛ばしながら追ってくる無敵の殺人マシーン……という、いかにも『ターミネーター』らしい、「何度見たかな?」っていう感じの(笑)カーアクション。ここはまあまあ、お約束だと思ってください。それを経て、でもそこから、高速道路上に車が止まって。さっき言ったように2体に分かれたターミネーターREV-9に、挟み撃ちにされる形で追い詰められて。絶体絶命!のその瞬間。満を持して登場する、撮影時にはたぶん62歳とかのリンダ・ハミルトン。

リンダ・ハミルトンは、女優業をほぼ引退状態だったことを考えれば、驚異的な……なるほど『2』の続きのサラ・コナーに見える上に、なんだこの、いろんな意味で現役バリバリ感は!?っていうすごさでしたよね。車でその内骨格側を、まずボーンと吹っ飛ばす。いわゆる『ジョン・ウィック』で言うところの「カーフーアクション」的な登場から、斜め横に移動しながらダニーに迫るその外皮側のREV-9を、ショットガン連射で食い止めた後に、今度は右側に向き直って……この三角形の関係ですね。右側に向き直って、内骨格側のターミネーターにロケットランチャーを、という。

で、橋の下の、外皮側のターミネーターにとどめを刺すように手榴弾を落として、「例の決めゼリフ」を今度はサラ・コナーが言い、クルッと向き直って、振り返りもせずに(手榴弾が)ドーン!っていうね。この、要するに最高に『ターミネーター』2019最新版そのもの!っていう感じの、この一連の流れ。間違いなく本作の白眉というか、大半の人がここを見に来てる、っていう瞬間だったと思いますね。とにかくリンダ・ハミルトン、60歳以上の、しかも女性俳優、女優のアクションとして、映画史上としても非常に異例な、快挙と言えると思います。60歳以上の女性で、これだけのアクションができて、しかもきっちりとかっこいい。

ただ、全女性の希望の星って言うけど、あの身体にするのは(トレーニングが)地獄のようだったらしいですけどね。本当にね。とにかく演技力といい、本当に衰えなし。素晴らしかったと思います。ということで本作、要はこの、ダニーという今回のサラ・コナーにあたる存在と、それを守るグレースという存在と、そしてサラ・コナー。この世代も出自も異なる、三世代の女性の、シスターフッド物、と言えると思いますね。で、やはりこれまでの『ターミネーター』シリーズになかった味わいをここに加えている、というのが、ある種、最大の魅力じゃないでしょうか。しかもこの3人が、ある種メキシコ側からアメリカに流入する、不法移民的にアメリカに入っていく、という非常に今っぽい……まあトランプ時代に対する、ちょっと物申す的な設定、という感じも、今っぽい感じですけども。

特に、さっき言ったような問題意識の点。(サラ・コナーが)救世主の母、マリア的な存在としてのみ物語上重要視されてきた節もあった過去のシリーズを、相対化してみせる、とある場面があるわけですね。で、そこでサラ・コナー自身も、自らの人生の意義を再定義するかのような、この一連の流れ。これ、本シリーズが、非常に重要な進化を遂げたな、という風に思います。さっき僕が言った「サラ・コナー自身が重要人物でしょう、どう考えても」っていうところに、ちゃんと回答してみせている、というあたりが、本当に最大のところですし。そこをもって、その一点評価で、「これがあるからOK!」っていうのも、ぜんぜん頷ける一点だと思います。

■前作『ジェニシス』よりは遥かに意義のある一作!

で、ぶっちゃけ、老シュワ。老いたシュワルツェネッガー。前作ですでに「ただの頼り甲斐ある人間のオヤジ」っていう風に私、評しましたけども(笑)。今回はもうですね、まあひとつのテーマでもあるんでしょうけども、「人間以上に人間らしい」ターミネーター、っていうテーマなんでしょうが、本当に……「うん、人間じゃん!」っていう(笑)。しかも、「20年かけて人間っぽくなりました」って言うけど、その使命を果たした後に、あの親子がいろいろと困っていたんで、助けてあげたんで……って、もうその時点で人間くさいじゃねえかよ!(笑)みたいな感じで。

まあね、「贖罪」というテーマが、いまの年齢のシュワの佇まいに、すごく合っているので。もちろんその流れ、一旦飲み込んじゃえば、すごく味わい深い。いまのシュワルツェネッガー、すごくいい俳優になってきてると思うんで。味わい深いんですけど、ターミネーターかと言われると……どっちかって言うとね、あの、『グラン・トリノ』的なものですよね。そういうものに見えますよね。とかね、ちょっといろいろと言いたいことのある作品なんですよ。

たとえば、ダニーの未来。その、サラ・コナーのニューバージョンであるダニーの未来を、非常に具体的な映像で、説明的に見せてしまう、っていうのはこれ、興ざめじゃないですか? 一見、いまは普通の女の子に見えるサラ・コナーが……っていうところに一作目とかの味わい深さもあったわけだし。あと僕は、こういう描写があればもっと味わい深くなったのにな、って思うのは、グレースさんは、現在の平和な時代の世界を、知っている存在なわけですよね。カイル・リースとは違うわけですよね。平和な時代も知っていて戻ってきているんだから、その平和な時代に戻ってきたグレースが、たとえば、その景色を見るだけで泣いている、とか。なんかそういうので、味わいをひとつ、増やせたんじゃないかとか。

あとは、REV-9の倒し方も、なんだかなーって。T-1000をどうやって倒すんだ?っていう時に、一工夫して倒した、みたいな……だって、「あれ」で倒せるなら、未来の戦いでもそれで倒せばいいんじゃない? みたいに思っちゃったりもしました。そしてやはり、「この続きが見たいか?」というと、微妙なところもあったりしますが……。

ということで、手放しで最高に面白いとは、言いがたいところもある。「またこれか」っていう部分も多い。ですけども、やはりサラ・コナーのキャラクターを含む、女性キャラクターの再位置づけ、というところで、しっかりと新しい意義を付け加えているという意味で、『ジェニシス』よりは遥かに意義のある、しっかりと考えられた一作ではないでしょうか。ぜひぜひ劇場でウォッチしてください!

(ガチャ回しパート中略 ~ 来週の課題映画は『ひとよ』です)

以上、「誰が映画を見張るのか?」 週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。

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