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「音読」のススメ! 山口謠司さん(大東文化大学准教授)

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
11月16日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、ことばや日本語を研究している大東文化大学文学部准教授の山口謠司(やまぐち・ようじ)さんをお迎えしました。専門は書誌学、文献学、音韻学、日本語史。大和言葉、漢文、サンスクリット語、フランス語、ラテン語などなど、いろいろな言語に精通していて、ことばについて語りだすと止まらないという山口さん。テレビやラジオへの出演も多く、ユニークで分かりやすい解説でおなじみの先生です。

「語彙本」ブームの火付け役


山口さんは1963年、長崎県生まれ。能楽師の父に小さい頃から「謡(うたい)」を習っていたことや、佐世保の米軍キャンプ内のアメリカンスクールに通った経験から、日本語・外国語に関して幅広く興味を持つようになりました。大東文化大学大学院やフランス国立社会科学高等研究院大学院で中国・唐代の漢字の発音を研究。また「リンポウ先生」こと古典学者の林望さんに師事し、イギリス・ケンブリッジ大学の共同研究員となってヨーロッパ各地に持ち出された日本の古典の書物の調査・目録づくりのプロジェクトに10年間、携わりました。


2005年以降、一般向けの本をたくさん執筆するようになり、『ん 日本語最後の謎に挑む』(新潮新書)、『てんてん 日本語究極の謎に迫る』(角川選書)、『カタカナの正体』(河出書房新社)、『となりの漱石』(ディスカバー21)、『日本語を作った男 上田万年とその時代』(集英社インターナショナル)、『感ジテ!漢詩 昭和歌謡で解き明かす漢字のヒミツ』(游学社)、『音読力 読み間違う日本語の罠99』(游学社)、『知性と教養が一瞬で伝わる! 一流の語彙力ノート』(宝島社)など、これまでに出版した本は50冊以上(ご本人によれば80冊!)。

いまの「語彙力本」ブームの火付け役ともいえる『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)は2016年に出版されるとベストセラーとなり、第2弾の【超「基礎」編】との累計で17万部。また『おとなのための1分音読』シリーズ(自由国民社)も累計22万部突破のヒット。書店をのぞけば山口さんの本がどこかしらに置いてある…と言っていいほどです。

音読で読書の質が格段に上がる!


山口さんは様々なメディアで「音読を習慣化しましょう」と提唱しています。音読よりも黙読することのほうが圧倒的に多いのが現代の読書。特に大学入試やTOEICなどの資格試験では限られた時間に大量の問題を解かなければならないため、より速い黙読が要求されます。そのような黙読による多読も必要ですが、あまりにも偏りすぎていないかというのが山口さんの考えです。音読が大事だという理由は、黙読つまり目は、実はあまり信用できないからです。

「小説やエッセイを読んだりして、自分がこの漢字を読めるか読めないかというのは、あまり考えずに読んでいるケースは多いですよね。かなり難しい漢字を使う小説家もいますけど、この漢字は音に出すとどう読むのか…そんなものは構わずに、ストーリーが気になるからどんどん先に行っちゃうというケースがほとんどなんです」(久米さん)

「目はうそをつきますので、分かっているふりをしてどんどん先に進んでいくことができるんです。でも、実際に口に出してみると読めない漢字はいっぱいある。音というのはとっても重要なもので、声に出してことばを読んでいくと、それが悲しい音だったり、寂しい音だったり、楽しい音だったりということも分かってくるわけです。昔の小説…だいたい戦前に書かれたようなものは、作家も頭の中で音を出して書いていっていますので、音の羅列といいますか、音の響きというものが小説でも非常に重要になってくるわけです」(山口さん)

「昔の作家は声に出して原稿を書いていたんですか」(久米さん)

「そうすることによって心の中に響いていくような文章ができあがってくるわけですね」(山口さん)

「ぼく、かすかな記憶があって、大昔、新聞の朝刊を読むときに、特に1面の政治欄なんかを声を出して読んでいたじいさんがいたんですよ。そういう人って、最近はありえないですもんね」(久米さん)

「でも、北杜夫さんの『楡家の人々』を読むと、声を出して新聞を読むところが書いてあります(※)」(山口さん)

「そうなんだ」(久米さん)

(※)いつも独特の節をつけて古新聞を読む「ビリケンさん」という人物が出てきます。

「元々、新聞は…。日本でも昔は、仕事に行ってお昼になるといったん自分のうちに帰ってきてご飯を食べるんですね。そのときに書生さんなんかがいると、書生が新聞を読んでくれる。それをみんなで聞いたんですよ。だから新聞小説は、いまのラジオドラマやテレビドラマの代わりだったんですね。新聞を読むというより『音』として聞いているんですよ。黙読するのではなくて、誰かが声に出して読むのを聞いてみんなで共有したんです」(山口さん)

声にして読むとその文章が体に染み込んでいきます。音読によって日本語の響きを感じたり、それぞれのことばが持っている力や重さを感じることができれば、読書の質は格段に上がると山口さんは言います。

五七調で話すと人は聞いてくれる


最近よく見聞きするようになった「サブスク」という単語。これは英語の「サブスクリプション」を省略した言い方ですね。パソコン(パーソナル・コンピュータ)、セクハラ(セクシャル・ハラスメント)なども同様です。どうして省略するときには4文字(4音)になるのでしょう? それは日本語の独特のリズム(五七調、七五調)に合うように、自然とそうなるのだそうです。日本語の名詞には「が」「を」「の」といった助詞が付きますから、「サブスクが」「パソコンを」「セクハラの」で5音になりますよね。それほど私たちの身体には五七調・七五調が染みついているということです。

五七調・七五調というのは日本人にとってとても聞きやすいリズム。ですから五七調・七五調で話すと、人は聞いてくれるのだそうです。反対に、五七調・七五調のリズムがなければ、人はあまり話を聞いてくれないそうです。

「考えたことなかったなあ、そんなこと。きみ、いつも五七調で話してる?」(久米さん)

「話してない(笑)」(堀井さん)

「わたしホントに、ばかなのね(笑)って」(久米さん)

「コマーシャルやコピーはなんかはそうやって作ってます。五七調で作るとすごく強いメッセージになる。七五調で作るとやさしい。女性をターゲットにしたようなコビーができるんです。音読をすると五七調・七五調のリズムが身についてきます。だから古い文章を声に出して読んでいくと、だんだん五七調・七五調のリズムが体に染み込んでくるので、人が聞いてくれるような言葉をしゃべることができるようになってくるんです」(山口さん)

「だから夏目漱石を音読するのはいいんですね」(久米さん)

音読というと上手に読まなければ思われるかもしれませんが、音読は上手に読まなくていいそうです。上手に読むのは「朗読」であって、音読とは違うのだそうです。

「朗読は人に聞かせるために読みますが、音読は自分のために読む。自分に向かって読む。朝起きたときと夜寝る前に、ぜひ音読してみてください」(山口さん)

今回は日本語について伺いましたが、実は山口さんは大変ユニークな方で、書道は免許皆伝の腕前、絵画もおやりになってパリで個展を開いたこともあるそうです。そして、奥さまはフランス人の弁護士! 奥さまとの出会いやフランス語と日本語の違いなどを綴った『妻はパリジェンヌ』(文藝春秋)も大変面白い本ですよ。

山口謠司さんのご感想


久米さんのおしゃべりの速さ、そしてあっという間に過ぎた30分、怒涛のようでしたね(笑)。

新美南吉の「でんでんむしのかなしみ」を読んでいただいて本当にありがたかったと思います。黙読するのと音読するのとではエネルギーの使い方が違うということを久米さんに言っていただきましたし、ラジオを聴いてくださっている方は久米さんの言葉を聞いて、かたつむりの殻の中には悲しみがいっぱい詰まっているんだなということをおそらくイメージされたんじゃないかと思います。

またぜひ、よろしくお願いします。今日はありがとうございました。



「今週のスポットライト」ゲスト:山口謠司さん(大東文化大学准教授)を聴く

次回のゲストは、ヒューマンエラー防止研究・中田亨さん

11月23日の「今週のスポットライト」には、ヒューマンエラーはどうすれば防げるのかを研究している産業技術総合研究所の中田亨(なかた・とおる)さんをお迎えします。マニュアルがあってもダブルチェックをしてもミスがなくならないのはどうしてなのか? 原因を究明すれば事故は防げるのか? 興味深いヒューマンエラーの話をお聞きします。

2019年11月23日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20191123140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)