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いじめに悩む子供の味方になる『こども六法』 山崎聡一郎さん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
11月9日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、いま法律関係の本としては異例のヒットとなっている『こども六法』(弘文堂)の著者、山崎聡一郎(やまさき・そういちろう)さんをお迎えしました。

いじめや虐待に悩んでいる子供たちの助けになればと、難しい法律の条文を小中学生にも分かる易しい文章に直したこの本は、発売から2ヵ月で15万部を突破しました。山崎さんがこのような本を書いたのは、ご自身のいじめ体験が原点になっています。

いじめは犯罪だということを知ろう


教室で友だちが数人に囲まれて嫌がらせをされています。多くの人は「あ、いじめ」と思うでしょう。では「あ、犯罪だ」と思う人は、どうでしょう? おそらくあまりいないのではないでしょうか。

殴ったりケガをさせたりすれば「暴行罪」(刑法第208条)や「傷害罪」(第204条)になります。これは分かりますよね。でも、当たらないように石を投げつけたり、水をかけたりしただけでも「暴行罪」になります。答えが分からないのに無理やり手を挙げさせれば「強要罪」(第223条)。「ゲームを貸さなきゃ、お前のテストの点数をみんなにばらすぞ」と言うのも強要です。たくさん人がいる前でバカ、アホ、キモイ、ウザイなどと悪口を言えば「侮辱罪」(第231条)。SNSなどで悪口を言ったり「死ね」などと書き込むことも刑法に触れます。

「親も自分の子供がいじめを受けたときに、けしからんとは思うけど、これが法律に違反してるとはなかなか思いつかなかったんです。でも、これ全部〝罪〟なんですよ。こういうことは子供もそうですけど、親がまず知らないといけない。これは嫌がせとは違って、日本の刑法に引っかかるようなことを自分の子供がされているとなれば、親としては考え方は変わりますよね」(久米さん)

「そうですね。あとは、子供の考え方も変えたいこともあります。それは、侮辱罪とか名誉棄損罪(第230条)は自分から『こういう被害を受けました』ということを国に届け出ないと犯罪にならないということです」(山崎さん)

「親告罪ということですね」(久米さん)

「そうです。大人でも自分で訴えないと助けてもらえないんだよ、子供もそうなんだよということです。すごく残酷なんですけど、そこは自分も知らなくてすごくショックを受けたことなので、子供たちにも知ってほしいと思って書きました」(山崎さん)

子供でも読める法律書に


『こども六法』は小中学生がひとりで読んでも理解できるように、工夫して書かれています。難解な法律の言葉を分かりやすい言葉に置き換え、それでいて元の条文の趣旨を正確に伝えなければいけません。また、分かりやすい表現にしようとするとどうしても文章が長くなるものですが、この本ではできるだけ短くしてあります。例えば、民法の第921条を比べてみると…


六法全書
【事実タル慣習】法令中ノ公ノ秩序ニ関セサル規定ニ異ナリタル慣習アル場合ニ於テ法律行為ノ当事者カ之ニ依ル意志ヲ有セルモノト認ムヘキトキハ其慣習ニ従フ


こども六法
【任意規定と異なる慣習】社会の秩序に関係ない決まり(任意規定)とは違った慣習がある場合、契約をしたいと考えている本人たちが、その慣習に従いたいと考えているときは、その慣習を尊重します。

『こども六法』は全ての漢字にルビがふってあるので、小学校低学年の子供でも読むことができます。山崎さんは、10~15歳の子供を読者に想定して書いたそうですが、実際にはもっと幼い、6~8歳の子供たちにも読まれているそうです。

法律は困った人を守るためにある


山崎聡一郎さんは1993年東京都で生まれ、埼玉県で育ちました。小学5年のとき、いじめられていた友だちをかばったことで自分がいじめのターゲットにされました。いじめは6年生になっても続き、左手首を骨折する大けがを負ったこともありました。両親は学校に訴えましたが、学校はいじめを認めず、形だけ相手の子供たちに謝らせて収束させました。相手も謝っているのだから許してやれ、お互いこれで終わりにしろという「ごめんなさいの儀式」です。

授業で憲法や基本的人権を学習した山崎さんは、教科書に掲載されていた日本国憲法を全文読んでみました。自分はいじめを受けて人権を侵害された。でも誰も守ってくれなかった。それはどうしてなのか。どうすればよかったのか。でも憲法には知りたいことは書いてありませんでした。

それが分かったのは、山崎さんが東京の私立中学に進んでから。学校の図書館で六法全書を見つけたので読んでみると、自分が受けたいじめは刑法に触れるということが分かりました。つまり、いじめは「犯罪」だったのです。それなのにどうしていじめの加害者は何のペナルティも受けないのか。どうして自分は救われなかったのか。六法を読み込んでいくと、「親告罪」のことが書いてありました。

「そうか。自分が訴えなかったから誰も助けてくれなかったのか。自分が救われなかったのは、法律を知らなかったからなんだ。法律の知識があれば自分を守る力になるんだ」

ますます高まる法教育の必要性


これからは法律の専門家ではない一般の人々も法や司法制度の知識や基本的な考え方を身につけることがとても重要になってきます。法教育の必要性が高まっています。これは大人にも子供にも言えることです。こうした時代の流れに合わせる形で、山崎さんはいじめの問題に取り組んでいるのです。

「いじめの問題を考えるときに、多くの人が『ルール』と『マナー』を混同している」と山崎さんは言います。学校の生活指導でも「いじめは道徳的に良くないことだからやめましょう」という視点で教えられます。でも、いじめはマナー違反の範囲を超えたルール違反です。犯罪なのです。その意識が子供にも大人にもしっかり植え付けられれば、軽い気持ちでやっていることが犯罪行為になるかもしれないというふうに意識が変わるでしょう。

山崎聡一郎さんのご感想


リスナーの方に分かりやすく話すということもすごく難しいなと思いながらしゃべりました。久米さんが「つまり…」と何度もおっしゃいましたけど、あの方は分かりやすく伝えることをすごく意識されているんだなと思いました。久米さんにも伝わっていないなと思うことが何回かあったので、自分の伝え方をもっとブラッシュアップしていかないといけないと思いました。ありがとうございました。

「今週のスポットライト」ゲスト:山崎聡一郎さん(教育研究者)を聴く

次回のゲストは、大東文化大学准教授・山口謠司さん

11月16日の「今週のスポットライト」には、『日本語を作った男』『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』『1分音読』シリーズなど、ことばや日本に関する本をたくさんお書きになりベストセラーも多い、大東文化大学准教授の山口謠司(やまぐち・ようじ)さんをお迎えします。山口さんは「音読」を見直し、習慣にすることを提唱しています。

2019年11月16日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20191116140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)