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前立腺がん。放射線を使った最新治療

森本毅郎 スタンバイ!

前立腺がんは、60歳以上の男性の2人に1人が罹っていると言われていて、2020年には、男性のがん、第1位になるという推測もされています。そんな前立腺がんの治療について、新たな選択肢が出てきました。

そこで、10月14日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)では、前立腺がんの治療法、新たな治療についてお伝えしました。

★前立腺がんとは

前立腺は、膀胱の出口で尿道を包むようにあり、男性だけにある臓器です。前立腺がんは、男性ホルモン、遺伝など多くの要因が関係していると考えられていて、50歳あたりから増えてきます。

症状はほとんどありません。ただ、「血尿」、「尿が出にくい」「腰痛」「朝起きると下着に血がついていた」などの症状があると、既に、進行していることが多いのです。このため、普段から検査で早期発見することが重要となってきます。

★前立腺がんの検査とは?

まず大事なのは検査ですが、現在、前立腺がんの検査ではPSA検査がよく知られています。PSA検査とは血液の中に含まれるPSAという前立腺に特有な物質の量を調べる方法です。この数値が、1ミリリットルあたり、4ナノグラムを超えているとがんの疑いがあり、10ナノグラムを超えると、がんが強く疑われる、とされています。

しかし最近では、PSAが、4以下でも20%程度ガンが見つかることがわかりました。そのため、基準値が厳しくなり、年齢によっては、4以下の数値が出た場合でも、さらに詳しい精密検査が行われるようになっています。

★前立腺がんの精密検査

現在よく行われている、検査方法は、前立腺に針を刺して細胞を採る “生検”という方法。前立腺の、6~20ヶ所に針を刺して細胞を取り、そのうち1本の針にでも、がん細胞があれば、前立腺がんと診断されるものです。

この検査の精度を上げるために、超音波画像にMRI画像を組み合わせ「3D画像に変換」する。3D画像にすることで、「がんの大きさ」「場所」「形」が、よりよく見えてきて、針ががんに刺さらずに、見逃してしまう可能性を低くしています。

★進化する治療

精密検査でがんが見つかると治療になりますが、その治療も進化しています。前立腺がんの治療方法は、「監視療法」や「ダヴィンチというロボットを使った手術」、「放射線治療」、「ホルモン療法」など様々な治療があります。

こうした中で、ここ数年で、より進化しているのが、「放射線療法」です。放射線治療は、前立腺に放射線を照射して、がん細胞を死滅させる治療法で、体への負担が少ないことから、高齢などで手術が受けられない方でも可能な治療法です。また、放射線治療は、手術と同等の完治が期待できます。

一方で、重大なリスクもありました。それが直腸障害です。前立腺は直腸に接しているために、前立腺に放射線を照射すると、少なからず直腸も放射線を浴びてしまいます。

直腸に放射線が当たってしまうと、「晩期障害」と言う副作用が起こります。これは、治療をして3ヶ月以降に生じる直腸出血です。最悪の場合、人工肛門になる恐れもある。

放射線治療では、一般的に腫瘍への放射線量を増やせば、腫瘍を死滅させることのできる確率も上昇します。しかし、放射線量を増加させると、同時に放射線による副作用も増加させてしまうという問題がありました。

★放射線治療の進化

そこで、現在、多くの施設で使われ始めているのが、IMRTという方法です。IMRTは、強度変調放射線治療という名前の英語の頭文字、I・M・R・Tで、 コンピューターの助けを借り、腫瘍部分のみに放射線を集中する新技術のひとつです。要は、がんにピンポイントに放射線を当てられるということです。

もう少し具体的に説明すると、CT画像から前立腺の3次元画像を作り出して、どこにどれだけの放射線を照射するかを事前に決めて治療するものです。コンピューターでの計算によって放射線の強さを変化させて、いろんな方向から照射できるので、直腸など照射したくない臓器への影響は少なく済みます。さらにピンポイントで狙えるので、放射線の強度を強くすることもできます。

★安全性をさらに高める治療

さらに、このIMRTの安全性を高める方法がここ数年で出てきました。それが「ハイドロゲル・スペーサー」というものです。「ハイドロゲル・スペーサー」は簡単にいうと、通常は接している前立腺と直腸の間に、ハイドロゲルというゲル状の物を差し込んで、壁のようなスペースを作り、放射線が、直腸に届かないようにする、という方法です。

ハイドロゲルというのは、医薬品や化粧品の材料にも用いられている無害な物質でできたゼリー状の物質で、これを前立腺と直腸の間に駐車して、1センチの壁を作る仕組みです。この1センチのスペースができることで、放射線が直腸に極力あたらなくなるのです。

ハイドロゲルは、3か月間は個体として直腸と前立腺の間に留まり、6か月以内には身体に吸収されるので、体に残ることもありませんし、吸収されても害はない。

この「ハイドロゲル・スペーサー」とIMRTを併せてつかう治療にはもう1つメリットが。それが、放射線の照射回数。IMRTは、通常は照射を38回行い、治療期間も1ヶ月半くらいかかります。一方、ハイドロゲル・スペーサーと併用すると、効率的に当てられるので、5回の照射でOK。治療期間も1週間半で済みます。

また治療時間も放射線照射室に入っているのが10分と短く、治療は半日ですみます。

★治療費は?

このハイドロゲル・スペーサーは、去年=2018年6月から保険適用になりました。前立腺がんを切らないで治す治療は他にもありますが、保険適用ないものもあります。・その意味では、ハイドロゲル・スペーサーが保険適用になったのは助かる方も多いのでは。

放射線治療を受けている患者さんは、日本では30%弱です。しかし、ドイツでは60%、アメリカでは66%です。手術と同じ成績の放射線治療を、もっと第1選択として考える時代なのではないでしょうか。

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20191014080130

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